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【PtoP NEWS vol.15/2017.6 特集】マスコバド糖民衆交易に取り組んで30周年

【PtoP NEWS vol.15/2017.6 特集】マスコバド糖民衆交易に取り組んで30周年

ダマ農園生産者

ダマ農園生産者

マスコバド糖民衆交易の始まり

1985年、フィリピンのNGOから「ネグロス島の飢餓に苦しむ子どもたちを助けて欲しい」という緊急救援の要請が届きました。サトウキビ農園労働者たちのデモに軍が発砲する、病院には栄養失調の子どもたちが溢れているという状況でした。1986年、日本ネグロスキャンペーン委員会(JCNC)が設立され、「ネグロスの子どもたちに生きる力を!」を合言葉にキャンペーンが始まりました。

フィリピンの砂糖生産量の6割を生産するネグロス島では、国際的な砂糖価格の暴落の影響を受けてサトウキビ農園が次々と閉鎖され、失業した農園労働者の子どもたちが食べ物を買えないという理由から深刻な飢餓に陥っていました。JCNCは1年間の緊急援助の後、ネグロスの人びとと協働する経済活動を考案しました。そのひとつがマスコバド糖を輸入して日本で販売する事業でした。本当に困難な状況にある人びとの具体的な力となることを目指した経済活動(=民衆交易)の始まりでした。

 

初代精糖工場

初代精糖工場

現在の製糖工場

現在の製糖工場

始まったばかりの頃は問題がたくさん

マスコバド糖の製造は、大きなお釜に屋根をかけただけのような壁もない小さな自前の製糖工場からスタートしました。1992年には小規模な製糖工場が建てられましたが、大きな鉄釜に、サトウキビ汁を入れ、直火でクツクツ煮込んでいたので、立ち昇る蒸気のために工場を密閉できず、工場内に迷い込んだ虫がはいってくるのを防ぐため天井に布を張り、虫取り器を設置していました。日本の消費者からの「〇〇が入っていた」「砂が入っていた」「針金が入っていた」というようなクレームが相次ぎました。

 

現在はステンレス製の閉鎖釜を使用し、スチームで加熱できるようになったので、虫が入りこむこともなく加熱ムラもなくなりました。異物問題にも真摯に取り組み、工場の衛生環境や品質管理で国際的にも認められるようになりました。

 

現在の品質は、「日本の消費者のおかげです」と工場長のスティーブさんは話します。輸出販売を担うオルタートレード社(ATC)は、マスコバド糖をフェアトレード商品としてヨーロッパや韓国に輸出を伸ばしており、EUへの出荷の条件である有機認証・フェアトレード認証の取得にも取り組んでいます。

 

ダマ農園のダニエル委員長

ダマ農園のダニエル委員長

自分たちのためのサトウキビ生産から地域づくりへ

そのマスコバド糖用サトウキビの生産地のひとつであるダマ農園をご紹介します。生産者協会のダニエル委員長はネグロス中部出身で、地主が経営するダマ農園に労働者として入りました。地主に賃上げを要求するため、1997年に自分たちでダマ農園労働者組合を組織化して地主に交渉を始めると、地主からの嫌がらせを受けるようになりました。こうした嫌がらせにも屈せず組合は暴力ではなく法律に基づいた闘争に徹しました。

 

自分たちが食べる米は自給できるようになりました。

自分たちが食べる米は自給できるようになりました。

そして2003年、農地改革省は、ようやくダマ農園の元サトウキビ労働者29人に78㌶の土地への土地所有裁定証書(CLOA)を発行しました。

それは農地の耕作権を保証するものです。「サトウキビの刈り取り、トラックへの積み込み作業は相変わらずきついけれども、誰にも支配されないで自由に働けるのが嬉しい!収入は働いた分だけ自分のものになります。子どもたちを学校に行かせられるようになりました」と生産者たちの表情は明るくなりました。

養魚池をつくってティラピアの養殖も始まりました。

養魚池をつくってティラピアの養殖も始まりました。

ダマの生産者たちは、最初は作付け資金がなく、メンバーそれぞれが220ペソ(約500円)を出して、サトウキビ栽培を続けました。その後ATCから、作付け資金を調達できるようになり、出荷も始まりました。2006年には有機認証も取得しています。

サトウキビの他に米づくりを始め、メンバーの分は自給できるようになりました。野菜づくり、放し飼い養鶏、ティラピアの養殖、食品加工なども始め、サトウキビに依存しない作物の多様化や有畜複合農業を目指した取り組みが進んでいます。

 

 

 

民衆交易30年を経て

飢餓の子どもを抱えたネグロスの人びとが援助金を受けるだけでなく、自立につながる具体的なこと、つまりネグロス民衆の利益を生み出す経済活動を、日本の消費者と共に創ろうという民衆交易。フィリピンの生産者と日本の消費者がつながり、力を出し合って実現してきました。かつては地主のもとで低賃金労働に喘いでいた元サトウキビ農園労働者たちは、民衆交易の仲間たちと共に自立した地域づくりへの歩みを進めています。

幕田恵美子(まくた・えみこ/ATJ)

サトウキビは有機栽培、除草は手作業で。

サトウキビは有機栽培、除草は手作業で。

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