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【PtoP NEWS vol.10/2017.01 特集】パラダイスパプア~わたしたちのカカオを味わいたい~

【PtoP NEWS vol.10/2017.01 特集】パラダイスパプア~わたしたちのカカオを味わいたい~

サルモンさんのカカオは「カカオ・ブランダ」

サルモンさんのカカオは「カカオ・ブランダ」

人びとが大切にしてきたカカオ
インドネシア・パプア州ではオランダの統治下だった1950年代にカカオの栽培が始まりました。それから60年あまり、カカオキタ社(先住民族のカカオ事業体)のメンバーは、先代から受け継いだ丈夫なカカオの木から苗木を育て、カカオの森の再生に取り組み始めました。

「カカオ・ブランダ(インドネシア語で「オランダのカカオ」という意味)と人びとに呼ばれているカカオは、オランダ時代に植えられていた品種だと言われ、病気に強くて良いカカオだ」、パプアの村々で生産者がよく口にする言葉です。カカオキタと一緒に取り組む生産者の奥深い森の中、1950年代に植えられた木に今でも果実が実っています。

カカオの苗

カカオの苗

パプアでカカオが植えられた当初、パプアニューギニアとの国境に近いジャヤプラ周辺地域では、パプアニューギニアのケラファット町に設立された低地農業試験場 (LAES) で開発された交配種をオランダが広めたと言われています。

当時植えられたカカオの苗木は、近年インドネシア政府が推奨・普及させているような生産性を重視した改良種と比べて、収量は低いものの、病気や害虫に強く、パプアのように農薬や化学肥料を使用しない非集約的なカカオが栽培されている土地柄に適しているとの調査結果が古い文献にも記されています。

 

カカオの2020年問題

カカオ生産者のウィレムさん

カカオ生産者のウィレムさん

2020年にはカカオが不足して、みんなの大好きなチョコレートが食べられなくなってしまう、最近そんな話題をよく耳にします。
病害虫の被害や油椰子のプランテーションなど他の作物への転換によりカカオの生産量は減少しています(世界第3位の生産国であるインドネシアの場合、過去4年間で28%減少)。

また、人口の多い中国やインドでの消費増などの事情もあり、2020年にはカカオの生産量が需要に比べて100万トン不足する見込みであると、チョコレート業界は危機感を募らせています。

カカオの出荷

カカオの出荷

チョコレートメーカーや穀物商社は、価格高騰を抑え数量を確保するために各地のカカオ産地で増産プログラム* を展開しており、パプアでもそうしたプログラムに参加している生産者もいますが、その多くはパプアの外から移住してきたジャワ人などのグループです。

 

インドネシアのコーヒー・カカオ研究所でチョコレート製造研修を受けるカカオキタのメンバー

インドネシアの珈琲カカオ研究所でチョコレート製造研修を受けるカカオキタのメンバー

カカオの国際価格は、ニューヨークとロンドンに開設された先物取引市場での取引価格が基準となっており、天候や作柄、チョコレートの需給、投資資金の流入などにより日々変動しています。国際ココア機関(ICCO)によれば、近年カカオの生産者価格は10年前の約2倍になっています。

 

生産者の暮らしむきは良くなってきたのでは…と思われがちですが、残念ながら、主なカカオ生産国のカカオ農家の多くは未だに貧困状態にあると言われています。例えばインドネシアでは、著しい経済成長に伴い過去10年間で物価も2倍** に上がっています。
生産国の暮らし向きと切り離された、国際相場・先物取引市場で決まるカカオの価格。パプアのカカオ生産者もそんな世界経済の仕組みの中でカカオを収穫し仲買人に販売してきました。

 

パラダイス・パプアの挑戦

カカオの実

カカオの実

カカオポットの中には果肉に包まれたカカオ豆が詰まっています。

カカオポットの中には果肉に包まれたカカオ豆が詰まっています。

パプアのカカオ生産者たちは長年カカオを栽培しているにもかかわらず、これまでは仲買人に安値でカカオ豆を売るだけで、カカオ豆から作るチョコレートを食べる機会がほとんどありませんでした。

 

 

ATJが日本で販売しているパプア州産カカオ100%のチョコレートを、カカオ生産者に食べてもらうと、目を丸くして「とってもおいしい!わたしたちはどうして今までカカオ豆からこんなに美味しい食べ物ができるのを知らなかったのか!」と嬉しさと驚きが入り混じった感想が返ってきました。

 

そうしてカカオキタには「大切に育てたカカオを使ったチョコレートを自分たちも味わいたい!」という、生産者からの声が寄せられるようになりました。ここから人びとによるパプアをはじめインドネシア国内で販売するチョコレート作りへの挑戦が始まりました。

カカオ豆は果肉を除去して天日乾燥します。

カカオ豆は果肉を除去して天日乾燥します。

そして試行錯誤の末、ついに完成した、カカオ豆と砂糖だけを使ったシンプルなチョコレート。「パラダイス・パプア」と冠したそれは、カカオは森の果実だと実感できるフルーティーな味わいで、食べた人びとから「爽やか!」「後に引くおいしさ!」という声が上がりました。

 

 

カカオキタ事務所を訪れたジャカルタの環境ジャーナリストは、早速「パラダイス・パプア」を購入!

「パラダイス・パプア」の名付け親、カカオキタ代表のデッキーさんは、「パプアの自然はパラダイス。そこで育ったカカオから美味しいチョコレートを作りたい。パラダイスは私たちが努力して守っていかなければならないもの」と言い、森のカカオを通じて、人と自然にとってのパラダイスがこれからも続くようにとの思いを込めています。

津留歴子(つる・あきこ/ATJ)
義村浩司(よしむら・ひろし/ATJ)

*   施肥、農薬の使用、農薬購入資金のローン、農薬の販売を兼ねた普及員の育成など集約的・管理農業の普及

**  出典:国際通貨基金(IMF)、2005-2016年比較値

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