【PtoP NEWS vol.30 ここが知りたい!】エビの「プリプリ」の秘密(ひみつ)

2019年2月28日
これが池から揚げたばかりの透き通ったエコシュリンプだ!

これが池から揚げたばかりの透き通ったエコシュリンプだ!

エビを普段は余り買わないけれど、お祝いごとの時ばかりは買う、という方も多いかと思います。

エビの赤い色彩はお料理に華やかさを添えますが、その魅力はなんといっても、あのプリプリとした食感と口の中にひろがる風味でしょう。

エビを口にした時の、はじけるような噛みごたえとプリプリとした食感、実は人工的につくられていることがあるのをご存知ですか?市販のエビは、食感を良くするために「保水剤」という薬剤を使用していることがあります。

たんぱく質が豊富なエビの身は、生だと半透明ですが、身も加熱すると本来は白く変色します。一方で人工的に保水されているエビは、加熱してもエビの身が半透明のまま。そして味はというと、保水されていないエビと比較するとその差は歴然です。保水によって味が薄まってしまい、ほとんど味がありません。
インドネシア産の粗放養殖のブラックタイガー「エコシュリンプ」は池の中でのびのびと泳ぎ回っていて筋肉質なうえに、「保水剤」は使っていないので、口に入れると「プリプリ」の食感と、ブラックタイガーならではの濃厚な味わいが楽しめます。

山下万里子(やました・まりこ/ATJ)

【バナナニュース285号】西ネグロス州パンダノン村マイケルさん ④  ~東ティモールの若者の刺激にもなりました~

2019年2月19日

 

若手農民の研修農場を卒業したバランゴンバナナ生産者のマイケルさんを、ATJの関連団体で研修農場の運営をサポートするAPLAのスタッフが連載で紹介しています。

 

3カ国交流プログラム(注)で東ティモールを訪問し、さらにコーヒー栽培への意欲をかきたてられたマイケルさんですが、彼も東ティモールの農民にもたくさんの刺激を与えました。印象的な一場面をご紹介します。

 

交流の休憩中、何気なく池の周りでおしゃべりをしていた時、ふとしたことからマイケルさんの話を聞くことになりました。彼は、家庭の事情で小学校を中退しています。行きたかった学校に行くことができず、長男として他の兄弟を学校に送るために、辛い中で農業を続けてきたことや、その中で楽しさも見つけ、今は農業にやり甲斐を感じていることを話してくれました。その場には同じく小学校を中退してしまった東ティモールの青年がいました。マイケルさんの話は、青年を勇気づけ、さらに東ティモールの地域の人たちにも刺激を与えたのでした。

 

その後、「マイケルは学校へ行けなかったのに、あれだけの循環型農業で家計を支えている。なぜ自分たちはできていないのか」という議論が夜中まで続いたそうです。学歴ではなく、やる気や自分がしていることをどれほど誇りに思っているかが大切ということを、彼はその振る舞いや農業に対する姿勢から私たちに教えてくれています。

 

 

NPO法人APLA スタッフ 寺田俊

 

(注)フィリピン-東ティモール-ラオス3カ国交流プログラム
2016年10月から2017年9月にかけてAPLAが企画した3か所の民衆交易産地(フィリピン・ネグロス島=マスコバド糖+バランゴンバナナ、東ティモール=コーヒー、ラオス=コーヒー)の若手農民の交流プログラム。民衆交易を通じた暮らしの改善、単一作物栽培への依存から脱却するための作物多様化の取り組みや技術をお互いに学びました。

【報告】東ティモールでの交流プログラム

【動画】学び合いが生み出す農家の未来

 

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カネシゲファーム・ルーラルキャンパスなど、APLAの活動をぜひ支えてください!

 

【バナナニュース284号】西ネグロス州パンダノン村マイケルさん ③ ~柔軟な行動力がマイケルさんの魅力です~

2019年2月14日

若手農民の研修農場を卒業したバランゴンバナナ生産者のマイケルさんを、ATJの関連団体で研修農場を軸に地域創り活動をしているAPLAのスタッフが連載で紹介しています。

 

マイケルさんが「最近バナナとコーヒーの混作を始めたよ」と教えてくれました。そのきっかけは、APLAが企画した、フィリピン-東ティモール-ラオスの3カ国交流プログラム(注)に参加したこと。フィリピンから4名の若手農民が参加し、マイケルさんもその一人として東ティモールを訪問しました。そこでのコーヒー栽培の技術に刺激され、今まで片手間でやっていたコーヒー栽培を今後はもっと頑張ろうと思ったそうです。

 

ここパンダノン村も山間部に位置しているため、コーヒーを栽培している農家がたくさんいます。コーヒーの木にはシェイドツリーといって、木を直射日光から守るための影をつくる植物が必要で、背の高い木を周りに植えることが一般的なのですが、実の成るバナナをシェイドツリーとすることで、そこからも収入を得て、多様化をしていこうと学んだのでした。

 

学んだことをすぐに自分ができる範囲で実践する行動力や柔軟性がマイケルさんの魅力でもあり、同世代の若者農民に影響を与えています。それはフィリピンの若者だけではありません。東ティモールから刺激をもらった彼ですが、東ティモールの農民にも刺激を与えました。それはまた次回に。

 

NPO法人APLA スタッフ 寺田俊

(注)フィリピン-東ティモール-ラオス3カ国交流プログラム
2016年10月から2017年9月にかけてAPLAが企画した3か所の民衆交易産地(フィリピン・ネグロス島=マスコバド糖+バランゴンバナナ、東ティモール=コーヒー、ラオス=コーヒー)の若手農民の交流プログラム。民衆交易を通じた暮らしの改善、単一作物栽培への依存から脱却するための作物多様化の取り組みや技術をお互いに学びました。

【報告】東ティモールでの交流プログラム

【動画】学び合いが生み出す農家の未来

 

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パプアからの便り Vol.06 発行/2018年12月26日

2018年12月26日







親愛なる皆さま

パプアのチョコレートをいつも応援してくださってありがとうございます。

今回の便りではスラバヤから11月19日に出港したコンテナカフェが、12月6日、YPMD(パプア農村発展財団)内にあるカカオキタの事務所に到着したことをお知らせします。

事務所の門を何とか通過

事務所の門を何とか通過

コンテナカフェはアジア民衆基金(APF)からの融資とATJ株主団体からお寄せいただいたカンパを資金源として計画した「チョコ工房&カフェ」の取り組みの第一段階です。第二段階
はチョコ工房の設置となりますが、まずは皆が集うカフェを立ち上げ軌道に乗せたいと思っています。

カカオキタのチョコアイスを堪能!

カカオキタのチョコアイスを堪能!

カフェと聞くとコーヒーショップを連想されるかも知れませんが、カカオキタのカフェはアイスクリームを中心としたメニューでスタートさせる予定です。

年間通して摂氏30度を超す熱帯気候のパプアでは、喉を冷たく潤すアイスクリームはとても魅力的です。現にカカオキタでは一年ほど前から手作りでパプア産カカオ100%のチョコレートアイスを作って事務所で販売していますが、口コミで外から買いに来る人も増えてきました。

「アイスならいける!」と自信を持ったカカオキタは、20フィートコンテナをカフェ仕様に改造して、ここでアイスクリームを対面販売することにしました。アイスクリームもジェラードやソフトクリームとレパートリーも広げる予定です。ソフトクリームを嬉しそうに頬張る子どもたちの笑顔が想像できて、今からワクワクします。

コンテナの扉が開かれるのをじっと待ちます。

コンテナの扉が開かれるのをじっと待ちます。

さて、そのコンテナカフェの本体がアイスクリームやチョコ菓子を製造する機械を載せて、はるばるジャワ島(スラバヤ)から12日間の船旅のすえ11月30日、パプア(ジャヤプラ)に入港しました。

そこから荷卸しの順番を待つことさらに一週間、12月6日の朝、「コンテナが船から下されたので、今日の午後3時ごろ事務所に届けます」と連絡を受けました。

コンテナの引き揚げに固唾をのむ瞬間!

コンテナの引き揚げに固唾をのむ瞬間!

午後3時少し過ぎた頃、まずコンテナを持ち上げるフォークリフトが警察に誘導されながら事務所に到着しました。(フォークリフトは一般車両ではないので、警察が伴走することが義務付けられているようです。)

さっそくフォークリフトはコンテナを載せる土台に上がろうとしましたが、土台が地表から30 cm程高くなっており、そこに上がる斜面を作っていたものの土が緩すぎてタイヤが空転してしまいました。あわてて板や石で補強して、フォークリフトは何とか土台に乗り上がりました。

皆が楽しみにしていたアイスクリーム製造機!

皆が楽しみにしていたアイスクリーム製造機!

そうこうしているうちに、コンテナを積んだトラックが事務所に通じる細い道に入ってきました。コンテナの上には人が乗り、低く垂れている電線を棒で押し上げながら徐々に近づいてきます。

スラバヤからコンテナを出すときに荷物の積み込みに立ち会ったハンスが誘導、皆から「オーライ、オーライ」の声援を受けながらコンテナを搭載したトラックがゆっくり事務所敷地内に入ってきました。

「夢を形に」の第一歩。これからが本番!!!

「夢を形に」の第一歩。これからが本番!!!

コンテナを土台に載せる前に、荷物の積み出しを行いました。コンテナの錠はノコギリでごしごし切っていきます。その間、皆の視線はこれから開けられる扉一点に集中。気が付いたらYPMD事務所内の人が全員出てきてカカオキタスタッフと共にコンテナの扉が開かれるのをドキドキ・ワクワクの面持ちで待っていました。(YPMDは他のNGOに部屋を貸していて、いわばNGOアパートのようなのです。)

さあ、ようやくコンテナの扉が開かれました!先のハンス君がコンテナに飛び乗って中の様子を確認。彼がスラバヤで荷積みしたときとまったく同じ状態で物品の破損もないことにまずはホッとしました。それから後は次から次へと手際良くカフェ設備機材を運び出す作業です。力持ちのパプア人、こういうとき本当に頼もしいです。

さて、コンテナはあっという間に空になり、いよいよ土台の上に載せる作業の開始です。土台はフォークリフトが動き回るにはぎりぎりの狭さで、オペレーターも汗だく。周りで見ている私たちもフォークリフトが土台から落ちるのではないかとハラハラしました。

そして、ここでアクシデントが・・・。フォークリフトがコンテナをトラックから引き揚げた途端、その重みで土台の一部がミシミシっと陥没してしまったのです!その部分に石がきちんと埋め込まれていなかったようです。デッキーさん(カカオキタ代表)の表情が一気に険しくなり、土台づくりの責任者ヨセフさんは真っ青!(幸いコンテナを置く場所は強固で問題ありませんでした。)

フォークリフトに持ち上げられたコンテナは、「もっと右、いや左!」などといろいろな声が飛び交うなか、空中を何度がグルグル舞い上がった後、何とか正しい位置に設置できました。「あー、良かったぁ」と緊張の糸が緩み、気がつくともう日が暮れる時刻でした。

コンクリートの土台の上にポツンと置かれたコンテナカフェ。カカオキタの新しい仲間になりました。このカフェに息を吹き込む作業がこれから始まります。夢を形にする一歩を踏み出しました!

(報告:ATJ 津留歴子)

【この便りについて】
株式会社オルター・トレード・ジャパンが取り組むインドネシア・パプア州のカカオ民衆交易プロジェクトの、顔の見える関係だからこその産地の情報をお届けします。このカカオ民衆交易では、「パプア人の、パプア人による、パプア人のためのカカオ事業」を現地で推進すると同時に、カカオを作る人、チョコレートを食べる人が相互に学び合い、励まし合いながら人と自然にやさしいチョコレートを一緒に創造していくことを目指しています。
HP:https://altertrade.jp/cacao

【バナナニュース283号】西ネグロス州パンダノン村マイケルさん ② ~養殖した魚を食べない!?~

2018年12月13日
養殖池の周りで

養殖池の周りで

若手農民の研修農場を卒業したバランゴンバナナ生産者のマイケルさんを、ATJの関連団体で研修農場を軸に地域創り活動をしているAPLAのスタッフが連載で紹介しています。

ここはネグロス島パンダノン村。幹線道路から山に入り、車を停め、細い道を約1時間登っていきます。サトウキビ畑の光景の隙間に時々やってくる水田や山あいの風景に癒やされながらも、炎天下では体力が奪われていきます。

歩き疲れた頃、ようやくマイケルくんの家に到着すると、綺麗な花や様々な植物たちが私たちを迎えてくれました。木陰や養殖池の周りにはお手製ベンチがあり、つい毎回のんびり時間を過ごしてしまいます。

お昼を食べた午後に、この木陰のベンチでみんなと他愛もない話をするひとときは最高です。

養殖池にはたくさんの魚がいるのですが、料理として出てきたことがこれまで一度もありませんでした。「どうしてなの?」と質問をすると、「食べるのがもったいないから」とマイケルくん。食べる魚を養殖するために始めたのですが、だんだんと愛着が湧いてきて食べることができなくなってしまったとのことです。そんなおちゃめな一面もみんなから愛されている理由です。

両親がバランゴンバナナの生産者で、小さい時からバナナ生産の手伝いもしていました。最近は畑の一部を父親から譲ってもらい、自分のバランゴンバナナとして、約300株を植えたそうです。そこではバナナとコーヒーの混作をしているそう。その理由は次回♪
NPO法人APLA スタッフ 寺田俊

 

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【バナナニュース282号】西ネグロス州パンダノン村マイケルさん ① ~農業研修で学んだことを実践しています~

2018年12月7日
豚舎の前で

豚舎の前で

ATJの関連団体であるNPO法人APLAは、フィリピン・ネグロス島で若手農民の研修農場(カネシゲファーム・ルーラルキャンパス、KF-RC)の運営を支援しています。

その卒業生でバランゴン生産者のマイケルさんを今回からシリーズで紹介します。

 

西ネグロス州パンダノン村のマイケル・リアネスさん(28歳)。バランゴンバナナやマスコバド糖用サトウキビ生産者でありながら、米・野菜・果物・家畜なども育てる複合循環型有機農業を実践し、さらには養殖池や家造りなどもしてしまう、まさに百姓です。
マイケルさんは、カネシゲファーム・ルーラルキャンパスの研修生として、2013年に約半年間、家畜を育てながら栄養分をまた土に戻す循環型の農業知識を深めました。現在は学んだことを地元で実践しながら、その知識や経験を地域に広めています。

生まれ持った才能を持ち、ネグロスの農民からも一目置かれる存在です。農業の知識が豊富なこともそうですが、考え方が柔軟で、今あるもので工夫してやりくりする能力がずば抜けています。

きっとみなさんもマイケルさんに一度会ったら、その能力と優しさと、そしてとびきりの笑顔にファンになってしまうこと間違いなしです。
マイケルさんの紹介、次回も是非お楽しみに!

 

NPO法人APLA スタッフ  寺田俊

 

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【PtoP NEWS vol.28 特集】土地を守るためのオリーブ栽培 from パレスチナ

2018年11月28日
長い分離壁で包囲された街

長い分離壁で包囲された街

なかなか伝わってこないパレスチナの暮らし

パレスチナと聞いて、皆さんはどういうイメージをお持ちだろうか?私の知り合いの大半は「あぁ、あの大変な所ね」という反応である。新聞やマスコミでパレスチナが取り上げられるのは、物々しい話ばかり。

ここ最近では、イスラエルの米国大使館のエルサレム移転に抗議する市民のデモに対してイスラエル軍が攻撃を繰り返し、多くの死者負傷者が出たことが記憶に新しい方も多いと思うが、パレスチナに普通に暮らす人びとの様子はなかなか伝わってこないのが現状だ。

パレスチナ側の住居。屋上には水タンクが設置されている

パレスチナ側の住居。イスラエルによる水の制限があり、屋上には水タンクが設置されている

オリーブオイルで平和な暮らしを目指す
オルター・トレード・ジャパン(ATJ)が2004年から取り扱っているパレスチナのオリーブオイルは、パレスチナ農業復興委員会(PARC)とパレスチナ農業開発センター(UAWC)という2つの団体から届いている。ヨルダン川西岸地区で栽培されたオリーブから搾油されたエキストラバージンオリーブオイルだ。

PARC、UAWCともに、生産者が手塩にかけて育てたオリーブから搾油したオリーブオイルやその他の農産物を加工品にして世界の市場につなげることで、パレスチナの産品の商品価値を高めてゆくこと、そして人びとが自分たちの土地で平和に暮らしてゆけることを目指している。

オリーブ栽培そのものが、イスラエルによる入植地の建設のために土地が収奪される危機に常にさらされているパレスチナの人びとの土地を守るための運動であるが、それ以外に、農業技術改善の支援や生産者に向けた研修などにも力を入れている。

目や耳を疑うようなパレスチナの現状
このように生産者の支援を続けるPARCやUAWCの担当スタッフから聞くパレスチナの現状は、目や耳を疑うようなものばかりだ。

オリーブの木を重機を使って抜き取り

オリーブの木を重機を使って抜き取り

冒頭でも少し触れた「土地の没収」については、オスロ合意(いまや完全な崩壊が決定的になってしまっていると言っても過言ではない協定だが…)で認められたパレスチナ人による暫定自治があるにもかかわらず、パレスチナの土地はコマ切れに区分されてしまっている。

行政権や警察権がすべてパレスチナにゆだねられているA地区。行政権はパレスチナ、警察権はイスラエルのB地区、そして、行政権と警察権すべてがイスラエルに管轄されているC地区だ。特にC地区は、自然保護地区、森林、井戸が豊富にあり、農地としての力をもった重要な地域だが、イスラエルは、パレスチナ自治政府に返還するという署名合意も無視し続け、占拠を続けている。

オリーブの木の植樹

オリーブの木の植樹

また、新たな入植地を建設するために、パレスチナの人びとがオリーブ栽培をしているにも関わらず、「使っていない土地」と見なすや否や、文化遺産として国際法で守られている樹齢数百年というオリーブの木をもお構いなしに引き抜き、その土地を造成してしまう。そんなことが、日常茶飯事として起こっているという。

高い分離壁で分断されている街

高い分離壁で分断されている街

さらに、イスラエルは「自爆テロの防止」という名目でパレスチナの土地に高さ8メートルにも及ぶ分離壁を張り巡らせている。それによって人びとの移動が極度に制限されている。自分のオリーブ畑に行きたいだけなのに、分離壁のために何キロも遠回りをし、なおかつ検問所を何カ所も通過しないとたどり着けないという不便を強いられているのだ。

おまけに、人間が生きていくのに欠かせない水、農業を営むのに必要な水もイスラエルにより制限されている。世界保健機構によれば、一人当たり1日100リットルの水が必要とされているが、水の使用が制限されているため、パレスチナの人びとが使える水は1日わずか70リットル。一方で、イスラエル側、そして入植地に融通されている水は260~280リットルだという。こんな理不尽があってよいものなのか。

人びとの平和な暮らしを祈りながら・・・
パレスチナでは例年10月に入ると、オリーブの収穫が始まる。

家族総出で収穫作業をして、本来は一年の実りを皆で喜ぶ時期なのだが、今年は例年にない不作が見込まれているとの連絡が入ってきている。

PARC、UAWCの担当者はこう話す。「どうか、どこか遠い国で起こっている自分たちに関係のないことと思わないでほしい。無関心でいることが一番罪深いことだから。日本で、そして世界でパレスチナのことを思ってくれている人びとがいるということが、自分たちの力になる」

パレスチナの人びとが当たり前に平和に暮らせる日々が近い将来やってくることを祈りながら、パレスチナの大地の恵みであるオリーブオイルを味わいたいと思っている。

山下万里子(やました・まりこ/ATJ)

【PtoP NEWS vol.21 ここが知りたい!】日本の市販エビ

2018年11月19日

スーパーでエビをジッと眺めると、大体がバナメイだと思います。iPhoneが登場した10年前には、まだブラックタイガーが主流でした。

両者の共通点は、「養殖しやすい」こと。ですがここ10年強でバナメイの生産量は一気に拡大し、1999年にはゼロだった東南アジア産バナメイは、今や世界の80%を占めているという事態です。

病気に強く、また泳ぎ回るために養殖池の深さを活用できるバナメイは、瞬く間に養殖エビ業界のスターにのし上がりました(一方のブラックタイガーは池底を歩き回るだけなので、池底の面積分しか活用できない)。

小さいので安価なところもウケたようです。

 

しかし2013年、最大の輸出国であるタイで病気が発生し、世界のエビ供給は激減。価格が暴騰し、「てん屋」からエビ天が消える事態にまで発展しました。

やはり、集約的に給餌する養殖方法にはどこか無理があるようですが、そんなことは表示を見てもわかりません。

 

表示と言えばもう一つ。「製造者(もしくは加工者)」とか「販売者」とか書いてあれば、それは国内で何らかの手が加えられた証拠。エビの場合、大抵は一度解凍されて再凍結されたり保水処理*をされたり、ということです。pH調整剤と書いてあっても、その目的は保水かもしれません。エビ一つをとっても、結構色々なことが見えてきます。

*解凍したときなどにエビから水分が出ないよう保水剤が用いられる処理。

 

若井俊宏(わかい・としひろ/ATJ)

【PtoP NEWS vol.26 ここが知りたい!】オリーブオイルの品質

2018年10月30日
パレスチナのオリーブオイル

パレスチナのオリーブオイル

お店に並ぶオリーブオイル、どれを選ぶかとても悩ましい商品の一つではないでしょうか。

 

地中海沿岸地域を原産地として紀元前から栽培されるオリーブ。

オリーブの搾油技術が確立するまでは「貴重品」として扱われていたこともあり、偽の品質表示などが絶えず、古代ローマ時代からすでに「格付」が存在していたといわれています。

 

 

 

オリーブの実の摘み取り

オリーブの実の摘み取り

第二次世界大戦以降、戦争で産地が荒れたスペインやイタリアの農業復興の目的で「国際オリーブ協会(IOC)」が設立され品質規格が設けられましたが、それでも品質偽装が絶えず、その規格や官能検査基準の甘さを指摘する声もあるようです。

 

 

熟したオリーブの実

熟したオリーブの実

オリーブオイルにもワインのように「ソムリエ」がいます。

絶対的な優劣はつけず、オリーブオイルが持つ香り、風味のなかにディフェット(欠点)がないかを確認し、そのオイルがどんな料理に合うのかを判断します。

 

 

ちなみに、オルタート・レード・ジャパンが取り扱うパレスチナのオリーブオイルの産地では、「何と言っても、自分の畑で採れたオリーブからとったオイルが一番!」と、搾りたてフレッシュなオリーブオイルよりも時間をおいて落ち着いた状態のものを好み、大地の恵みを余すことなく味わっている生産者もいます。

パレスチナ料理「ムサハン」。食べた後は、口の周りがピカピカになるぐらいオリーブオイルがたっぷり!

パレスチナ料理「ムサハン」。食べた後は、口の周りがピカピカになるぐらいオリーブオイルがたっぷり!

出会ったオイルの風味を感じ、どんな料理に合うか想像しながら使ってみるのも楽しいですね。

山下万里子(やました・まりこ/ATJ)

 

【PtoP NEWS vol.27】特集:収穫シーズン真っ只中の、東ティモールに行ってきました。

2018年10月29日

昨今のコーヒー焙煎屋を覗くと、体感では2軒に1軒程度の割合で、東ティモールの豆が置いてあるように思います。

オルター・トレード・ジャパン(ATT)が東ティモール産のコーヒーを取り扱い始めて17年ですが、今後も「東ティモール」の名は、じわじわと広がっていくのではないでしょうか。

今回訪問した6月下旬は、コーヒーの収穫真っ只中。産地に行くと、どこへ行ってもコーヒー豆が軒先で天日干しされている光景が広がります。

そして、初めてその光景を見た私でもわかるほどに、オルター・トレード・ティモール(ATT)へ出荷される豆は丁寧に加工されていました。

この機会に、簡単にコーヒー豆が届くまでをご紹介します。生産者たちの努力を、ぜひご覧ください。

【①収穫】
東ティモールのコーヒー産地は、結構急斜面です。奥まった村に行くには、車一台分の崖っぷちの道をひた走ります。

一歩間違えたら一発アウト、なスリルを味わいつつ、その絶景に見とれていると、急斜面からヒトがひょっこり顔を出します。スキーのジャンプ台顔負けの斜面で、鼻歌交じりにコーヒーの実を摘んでいます。

【②選別】
コーヒーの実は、熟すと赤くなります。これが収穫適期。

ただ、もちろんバラつきがあるので、中には未熟で緑色だったり、過熟で黒っぽかったり、収穫後はカラフルな状態です。

この中から赤い実だけを選り分け、良い品質の実だけを加工できるようにしています。なお、取り除いたものは、一般業者に販売する豆になります。

【③果肉除去】
赤い実を、手回し果肉除去機に掛けて果肉を剥いていきます。商店街の福引を彷彿とさせるこの器具は、スリット(すき間)の調節が肝心。広すぎるとうまく剥けず、狭すぎると豆が欠けてしまいます。調子に乗って最速の回しに挑戦してみたところ、「豆が痛むからやめろー」と直ちに制止されました。

【④洗浄~発酵】
果肉を除去したコーヒー豆(つまり種)は、果肉の繊維でヌルヌルしている状態です。水で良く洗い、きれいになったところで、一晩水に浸けて発酵させます。このひと手間を惜しむと、出来上がった豆に雑味が出たりして、商品としての価値は落ちてしまいます。

【⑤ 乾燥】
発酵が終わった豆を天日乾燥。カラカラになるまで、良く乾燥させます。そうしないと、この後の保管中にカビ臭くなったりして、せっかくのここまでの努力が水泡に帰す可能性もあります。

今回は、各村の乾燥中・保管中の豆をひたすらクンクンと嗅いで回り、乾燥が不十分なものは乾燥し直すように徹底してお願いしてきました。

生産者にも一緒に嗅いでもらったところ、「あぁ確かに…」ということで、納得の様子。

赤く熟したコーヒーの実

赤く熟したコーヒーの実

こんな風にして、生産者は手間をかけて豆の一次加工をしています。とはいえ、十年ほど前までは赤い実の状態で売っていただけで、これらは全くやったことのなかった未知の作業。

そのため、ATTスタッフは、このようにして産地を回りながら、生産者と共に根気強く一次加工の品質向上に取り組んでいます。

生産者にとっては必要性が見えづらく、「正直めんどい」ところもあり、それが何のためになるのか腑に落ちるまでに時間がかかることもあるようです。それでも、品質の高い一次加工ができることはコーヒー農家自身にとっての強力な武器になると信じ、長い目で取り組んでいます。

養鶏プロジェクト

養鶏プロジェクト

またATTは、コーヒー豆の買い入れを通じた社会活動費の積み立てをしています。いくつかの村でその実績を見ましたが、どれもきちんと村からのニーズを話し合い、必要なものをできる範囲で作るという、身の丈に合った取り組みでした。

特に水資源が十分でない村も多いので、水タンクの設置を進める一方、敢えて水を使わないコーヒー豆の加工方法(果肉付きのまま乾燥させる方法で上手くいけば水洗式より豊かな味のコーヒー豆が得られる)を試験的に導入するなど、生産者の現状に合わせたより良い選択肢を考えてもいます。

主権回復(独立)から17年目を迎えた東ティモールは、人間に例えれば思春期そのもの。これからの人生に夢も希望も大いに抱いて良いお年頃ですし、実際に村には子どもたちがたくさんいます。

さらに美味しくなった東ティモールコーヒーを20年後に彼らと一緒に飲み交わすのを楽しみに、今できることを考えていきたいと思います。

若井俊宏(わかい・としひろ/ATJ)

【PtoP NEWS vol.24 ここが知りたい!コーヒー】コーヒーの種類

2018年10月24日

巷で売られているコーヒーには、「アラビカ100%」と表示された商品を多く目にします。アラビカは、コーヒーの中の品種の一つ。

コーヒーの品種は、大きく分けて、アラビカ、ロブスタ(カネフォラ)、リベリカの3種類に分類され、主にアラビカとロブスタが流通しています。

アラビカの実(左) と ロブスタの実(右)

アラビカの実(左) と ロブスタの実(右)

アラビカは、標高の高い地域(主に標高1000m~2000m)で栽培され、香味が優れているため高値で取引きされますが、病虫害に弱いので生産者の苦労は多い品種です。

一方、強い苦味とコクが特徴のロブスタは、標高の低い地域(主に標高300m~800m)で多く栽培される病虫害に強い品種です。

 

 

アラビカの生豆(左)とロブスタの生豆(右)

アラビカの生豆(左)とロブスタの生豆(右)

ちなみに、アラビカの中でもロブスタとの交配種も存在します。東ティモールで主流のアラビカ種「ハイブリット・デ・ティモール」は、アラビカとロブスタの自然交配で生まれた品種です。

オルター・トレード・ジャパン(ATJ)が輸入している東ティモールのコーヒーは、生まれながらにアラビカの香味豊かな味わいとしっかりとしたロブスタの苦みの両方が備わっています。

アラビカとロブスタを飲み比べる機会は少ないかもしれませんが、品種を意識して飲んでみると、一層コーヒーの奥深さを感じられるかもしれません。

コーヒーの実 (チェリー)

コーヒーの実 (チェリー)

コーヒーの品種に関して詳しくはこちら→https://altertrade.jp/wp/coffee/basics

ATJのコーヒーについてはこちら→https://altertrade.jp/wp/coffee

中村智一(なかむら・ともかず/ATJ)

スラウェシ島地震・津波被災者に、ATINAスタッフが支援物資を送りました。

2018年10月22日

インドネシア・スラウェシ島中央スラウェシ州で、9月28日に発生したマグニチュード7.5の地震とそれに伴う津波の影響で、多くの犠牲者が出ました。
同島南スラウェシ州ビンラン県周辺には、エコシュリンプの養殖池がありますが、オルタートレード・インドネシア社(以下ATINA)スタッフ、並びにエビ生産者の人的な被害はありませんでした。
その後、甚大な被害状況が明らかになったことを受けて、ATINAの職員及び工員は、10月3日より、義援金、インスタント食品、医薬品、毛布、テント、衣料品などを集め、スラバヤ市を通じて、被災地に届けることにしました。

 

義援金を集めるATINAスタッフ

義援金を集めるATINAスタッフ

工場の工員さんたちも衣料品を集めました。

工場の工員さんたちも衣料品を集めました。

集めた物資を荷造りするATINAスタッフ

集めた物資を荷造りするATINAスタッフ

子ども用の毛布がスタッフから提供されました。

子ども用の毛布がスタッフから提供されました。

 

被災地の一日も早い復興と現地の皆様のご健康を心からお祈り申し上げます。

【PtoP NEWS vol.28】ここが知りたい! カカオの品種

2018年10月18日

カカオの木は、大きく分けて次の3品種を源流として、風味や収量や病害虫耐性などの性質の異なる様々な派生種が世界各地で栽培されています。

・クリオロ種
最も原種に近く、中南米で有史以前から生育していたと言われています。

病害虫に弱く栽培が難しいために、現在はベネズエラ、メキシコなどでごく少量のみ生産されています。

苦味や渋みが少なくマイルドな風味でフレーバービーンズと呼ばれています。

・フォラステロ種
南米のアマゾン川、オリノコ川の源流域が原産です。

病害虫に強く成長が早いために西アフリカや東南アジアなど主な産地で栽培され、世界の生産量の80%以上を占めています。

渋味と苦味が強い味です。

・トリニタリオ種
カリブ海のトリニダード島で偶然に生まれたクリオロ種とフォラステロ種の特徴を引き継いだ交配種で、栽培が比較的容易で良質な風味を持っています。

インドネシア・パプア州の先住民族の人びとは、「カカオ・ベランダ(オランダ)」と呼ばれるカカオの木を大切に育てています。

オランダ統治下でフォラステロ種、クリオロ種、それらの自然交配種や派生種であるケラファト種など、多品種が植えられました。

後のインドネシア統治下で高収率のハイブリッド種への植え替えが進みましたが、オランダ時代に植えられ今でも生き残っている品種は病害虫に強く風味も良いとして今でも村々で引き継がれています。

義村浩司(よしむら・ひろし/ATJ)

【バナナニュース281号】若者が農業を学ぶ カネシゲファーム・ルーラルキャンパス

2018年10月5日

バランゴンバナナを輸入しているオルター・トレード・ジャパン(ATJ)の関連団体のAPLAは、バナナ産地フィリピンの農民技術交流活動などを実施しているNPO法人です。フィリピン・ネグロス島においては、養豚を軸とした有畜複合循環型農業を実践する農場であるカネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KF-RC)の運営をサポートしています。

カネシゲファームは、1986年の砂糖危機以来、ネグロスの人びとへの支援に尽力された故兼重正次氏(1995年逝去)にちなんで名づけられています。兼重氏は、日本とネグロスの民衆交易のスタートにも多大な貢献をされた方です。ネグロスの貧しい農民を支援するという彼の夢を、KF-RCが引き継ぐべく「カネシゲファーム」という名前が残っています。

KF-RCの目的は、「農民の収入を増やし、農業をより楽しいものにするために、農法や技術を紹介しながら、農地を発展させていくよう納得してもらうこと」であり、農業の新しい価値観を創りだすことと、具体的な農業技術の普及により地域の農民の自立を後押しすることにあります。

KF-RCには、循環型農業と適正技術の実践と普及(農場部門)、そしてルーラルキャンパス(農民学校)の役割があります。

 

循環型農業の適正技術の実践と普及(農場部門)

KF-RCでは、BMW技術(※1)を取り入れ、養豚、堆肥作り、耕作、生産を農場の中で完結させ、ごみが排出されない循環型農業を実践しています。まず、豚から排出された糞尿はバイオガスタンクに貯まり、ここで糞尿の発酵を進めます。これが液肥となり、畑への肥料となります。また、液肥は生物活性水(BMW技術)へと培養されてミネラル豊富な水が作られ、この水を豚や農場内にいる家畜が飲水として利用し、再び糞尿となって、バイオガスタンクに貯まります。

その他、バイオガスタンクからはメタンガスを活用したエネルギー創出や発電を実践していたり、ランポンプ(自動揚水器)(※2)を活用し、適正技術の導入と普及活動をしています。
※1 BMW技術:バクテリア(微生物)・ミネラル(造岩鉱物)・ウォーター(水)の略。バクテリアとミネラルの働きをうまく利用し、土と水が生成される生態系のシステムを人工的に再現する技術のこと。
※2 ランポンプ:傾斜を利用し、水を流すことで、外からのエネルギーに頼らず水を汲みあげられる自動揚水器。

 

ルーラルキャンパス(農民学校)

KF-RCには、ネグロス島内の若者を研修生として受け入れ、約半年間住み込みで循環型農業の実践を学ぶ研修制度があります。研修生としての受け入れ基準は、農業を生活の糧とすると決めている青年で、地域や関係する人たちの推薦があり、家族の理解もあること。2018年8月までに7期32人を受け入れ、3人が卒業後KF-RCのスタッフとなり、13人が地元で農業を続けています。そのうち、8人が自分の豚舎を作り、1名がカラバオ(水牛)を使って農業を継続しています。

KF-RCの卒業生サポート制度は、研修終了時に、各卒業生に豚舎を建設する材料費をAPLAが支援し、建設は研修生たちと家族、KF-RCのスタッフが協力して実施します。養豚を中心に有畜複合の循環型農業を実践することで、豚の売り上げに加えて、養豚から出る糞尿を活用した肥料を使って農業に励み、野菜の自給や余剰分は販売していくことを目指しています。

この制度を始めた初期は、豚舎が完成すると、卒業生は子豚4匹と3ヵ月分の餌代をローンで現物支給され、3ヵ月後に育った豚を販売してローンを返済し、残った金額が手取りとなる仕組みになっていました。しかし、子豚がうまく育たなかったり、豚が売れなかったり、卒業生の家族の状況や住んでいる地域によって有効性が異なり、現在では各卒業生に合ったサポートをその都度検討して実施しています。例えば、水がなくて養豚をするには厳しい地域で、かつ町から家までの道路事情が悪く豚の運搬が厳しい卒業生には、妊娠しているカラバオ(水牛)を渡し、子牛が生まれたらKF-RCへ返す仕組みを実施しました。卒業後、農業を始めるには初期投資がない若者たちにとって、農業を始めるための基盤づくりと続けていくためのモチベーションにつながるように、KF-RCにとっては卒業生のサポート制度は重要な位置づけとなっています。

卒業後も、定期的に連絡を取り合ったり、卒業生を訪問して農業をする上での相談に乗ったり、KF-RCでの行事や交流、研修に参加してもらい、研修後も卒業生へのサポートができるような体制を作っています。

卒業生には、バランゴンバナナの生産者もいます。卒業生で若手生産者の一人であるマイケル・リアネスさんについて、次回から数回にわたって紹介します。

商品一課   赤松 結希

カネシゲファーム・ルーラルキャンパスなど、APLAの活動をぜひ支えてください!

 

 

エシカルバナナ・キャンペーンがスタート!フィリピンからゲストを招いてセミナー開催。

2018年9月14日

 手軽な果物の代名詞ともいえるバナナ―。日本にやってくるバナナの約80%がフィリピンから届いています。

 1982年に鶴見良行氏がその著作『バナナと日本人』によって、フィリピンのバナナプランテーションにおける農薬散布、不公正な契約、労働問題などを告発してから36年。残念ながら、それら問題の多くは現在に至るまで未解決のままです。そうした現状を改めて日本社会に広く知らせ、日本に輸入されるすべてのバナナが「エシカル(倫理的)なバナナ」 ―持続可能な農法で作られた地球にやさしいバナナ、生産から流通・小売りまでサプライチェーン上のすべての労働者の人権が守られているバナナ、食べる方も作る方も、ほかの誰かの人生を踏みつぶすことなく笑顔を広げられるバナナ― になることを目指すキャンペーン「エシカルバナナ・キャンペーン」をスタートしました。

 そして7月末、フィリピンバナナの主要生産地であるミンダナオ島からゲスト2名が来日。バナナの生産現場で今も続いている農薬による環境汚染や健康被害の問題、大企業とバナナ農家との不公平な契約の問題について、バナナ農家に寄り添い活動を続けてきているお二人の話を聴くために、京都(28日)、東京(29日)、それぞれでセミナーを開催しました。

 

 

チンキー・ペリーニョゴリェさん

 ミンダナオ島ダバオ市の水源保全を守る環境NGOで、多国籍企業による単一栽培に用いられる殺虫剤の使用、特に農薬の空中散布に反対してきているIDISの事務局長であるチンキー・ペリーニョゴリェさんからは、プランテーションで単一栽培されるバナナを害虫・カビ・病気から守るために散布される農薬(殺虫剤、殺菌剤)が地域住民に与えている健康被害についての訴えがありました。特に、企業が「効率性」を重視しておこなう空中散布によって、21世紀の今も、バナナだけでなく、通学中の子どもたちや人びとの暮らしの上に農薬が降り注いでいる、この事実は多くの参加者に衝撃を与えました。

アーヴィン・サガリノさん

 また、社会的に弱い立場に置かれた人々の法的・技術的ニーズに対応することを目的に結成された司法による権利擁護団体IDEALSの法務コンサルタントで弁護士のアーヴィン・サガリノさからは、バナナ農家(なかでも、農地改革受益者として土地を得た農家)と大手アグリビジネスとの間の契約についての詳細な報告がされました。安いままで固定されている買取価格、適切な説明もなしに差し引かれる農薬・化学肥料・その他の資材代金、長期(10年~15年)契約のさらなる自動更新、企業側からの一方的な解約権など、驚くほどアンフェアな契約内容によって、大企業は巨額の利益を得ている一方で、バナナ農家たちはどんなに懸命に働いても貧困から抜け出すことができないのです。

 

IDEALSによるオンライン署名にご協力ください(日本語訳あり)

ミンダナオのバナナ農家を支えよう! 不公平なアグリビジネスとの契約を解除すべき!

 

 

 

 2人からは「皆さんが大好きなバナナの生産現場で何が起こっているかを知らせるために、バナナ農家の声を代弁するために、今回日本に来てこのようにお話する機会を得られたことはとてもうれしいです。わたしたちは皆さんに『フィリピンのバナナを食べないで』と言いたいわけではありません。ただ、皆さんがバナナを食べる時には、その“甘い”バナナがどこから来ているのか、産地でどんな“苦い”できごとが起こっているのか、そのことに想いを馳せてみてほしいのです。そして、そうした状況を変えるように、行動を起こしてもらえたらうれしいです」というメッセージが伝えられました。

 

 バランゴンバナナの民衆交易が始まって今年でちょうど30年になります。バランゴンバナナはフィリピンでは持続的な農業や地域経済、環境を作り出すことに寄与し、日本の消費者には安全・安心なバナナを提供するという、プランテーションバナナに代わるオルタナティブとして受け入れられています。

 一方、現在流通している市販バナナに目を向けると、セミナーでの報告にあったように、その生産現場では労働者や生産者、住民の健康を脅かしたり、環境破壊を引き起こす生産方法や、アグリビジネス企業と生産者間の不公正な栽培契約、労働者に不利益な労働条件などがまだ一般的です。日本はフィリピンバナナの最大の消費国です。産地での実態を一般消費者に伝えて行かない限り、この構造を変えることはできません。そのため、ATJはAPLAや考えを同じくするNGOとともに「日本に入ってくるすべてのバナナがエシカル(倫理的な)バナナになることをめざす」キャンペーンに参加することにしました。キャンペーンを通じてATJは、市販バナナの問題点を伝え、さらに民衆交易バナナ、とりわけミンダナオからのバランゴンバナナの価値や役割をみなさんと一緒に考えていきたいと考えております。

【パレスチナ】行政拘禁されていたファラージ氏が釈放されました!

2018年9月13日

釈放後のファラージ氏

昨年5月よりずっと行政拘禁(注)されていたパレスチナ農業開発センター(UAWC)職員のアブドゥル・ラザック・ファラージ氏が釈放されたという嬉しい報告が本人よりありました。

 

ファラージ氏は昨年5月24日未明、イスラエル軍により拘禁され、翌25日に4か月間の行政拘禁を言い渡されました。ATJはパレスチナのオリーブオイルの民衆交易を通じてUAWCと連帯している生協、産直団体との連名で、ファラージ氏の即時釈放と行政拘禁制度の即時廃止を求める嘆願書を在日イスラエル大使館などに提出しました。

UAWCファラージ氏の即時釈放を求める嘆願書を、駐日イスラエル大使に提出しました。

しかしながら、ファラージ氏の拘禁は、その後2度にわたって更新され、ようやく7月に釈放された訳です。以下、ファラージ氏からの報告です。

[box type=”shadow”]
皆さまのパレスチナの人びと及びUAWCに対する継続的なご支援に心より感謝申し上げます。とりわけ、私が過去14か月間、イスラエルの刑務所で行政拘禁されていた間に寄せられたご支援、連帯に御礼申し上げます。皆さまからのご支援は、長年続くイスラエル占領にもかかわらず、パレスチナ人、とくに行政拘禁者は世界中に真の友人がいることの証左です。私も釈放されてから3週間が経ち、今はUAWCの業務に戻っています。

ご存知の通り、行政拘禁はイスラエルにより1967年より継続され、何度も繰り返されています。それは恣意的な拘禁であり、国際法に反しています。

現在、3名の女性を含む約500名が、起訴や公正な裁判を経ずに、単に容疑のみで行政拘禁されています。そこで去る2月、行政拘禁者たちは、イスラエルの裁判所の判決をボイコットすることを決めました。行政拘禁の決定を審議すべきイスラエルの裁判所が、実際にはイスラエル諜報機関の勧告を支持しているだけというのがその理由です。

皆さまのパレスチナ人、とくに政治犯に対するご支援は、世界中で自由と正義の原則を求める人々の関与、献身を私たちに再確認させてくれました。

最後に改めてお礼を申し上げるとともに、解放されたパレスチナでお会いできることを楽しみにしています。

アブドゥル・ラザック・ファラージ [/box]

釈放を喜ぶ家族たちと

 

(注)無期限に更新できる軍令に基づいて起訴や裁判なしの拘禁を認めるもので、この制度を濫用しているイスラエル政府は人権団体から国際的に非難されている。

パプアからの便り Vol.05 発行/2018年7月25日

2018年8月21日

親愛なる皆さま

カカオ産地のインドネシア・パプア州では、3月から6月にかけてのカカオ収穫ピークが一段落しました。

お陰様で、今年の収穫状況は良く、KAKAO KITA(わたしたちのカカオ社、以下カカオキタ)と一緒に取り組んでいる村々からもたくさんのカカオ豆が集まりました。

 

森でのカカオ収穫風景(ブラップ村マルティン・タルコさんのカカオ)

森でのカカオ収穫風景(ブラップ村マルティン・タルコさんのカカオ)

これからカカオの小さな花が大きな実になるまで(約6ヵ月)、カカオの木を大切に手入れしていかなければなりません。

特にカカオの花は雨にあたると落ちてしまうことが多いので、花が咲く時期に雨の日が多いとカカオ生産者たちの顔が曇ります。

幸い今年はこの時期、南半球が冬の季節を迎えている影響なのか、雨が少なく比較的乾燥した気候です。たくさんの花が実を結びますように!と期待しています。

さて、今回はカカオキタの貯蓄プログラムについて少しお話させていただきます。

豆の買い付け時には、生産者と対話することも大切にしています(デッキーさん/左端 ブラップ村にて)

豆の買い付け時には、生産者と対話することも大切にしています(デッキーさん/左端 ブラップ村にて)

カカオキタはカカオの生産者(パプア先住民族)からカカオ豆を買付けている事業体で、生産者から消費者までそこに関わる人びととの「友情と連帯」を基盤とした切磋琢磨の学び合いを通じて、自然と共生するパプア先住民族の社会と文化を維持・発展させることを事業の目的としています。
このため、ただ単にカカオ豆を買付けることをしていません。何よりも生産者一人一人とのコミュニケーションを大事にし、地域全体が住民たちの力で少しづつ良い方向に向かっていくことに伴走していきたいと思っています。

 

【カカオを通じた取り組みの理解を深める】

説明会でデッキーさんの話は熱をおびます(ブラップ村)

説明会でデッキーさんの話は熱をおびます(ブラップ村)

カカオキタではカカオの買付をはじめる前に、対象の村で生産者を集めて説明会を開いています。

説明会では、「カカオキタは単にカカオ豆が欲しくて買付けているわけではない。」ということをまず強調します。
カカオ豆を通じて、遠く日本の人びとと繋がること、友達になること、お互いの違いを尊重し、その違いが力となって関係性が発展していくこと、などをカカオキタ代表のデッキーさんが情熱込めて語りかけます。

「わたしたちはカカオにパプア人の誇りと友情を託しているのだ。良いカカオ豆であるという誇り、そして食べる人を思い農薬や化学肥料を使わない安心・安全のカカオを届ける、という友情だ。」

デッキーさんの話に耳を傾ける人びとの目は輝き、何か新しいこと、素敵なこととして、パプアの人びとの胸に響いていると思います。今までは、現金を得るためだけだったカカオに、新しい意味ができました。

 

【貯蓄プログラム】

デッキーさんの話に聞き入る生産者(ムリス・ブサール村)

デッキーさんの話に聞き入る生産者(ムリス・ブサール村)

デッキーさんはカカオ事業をはじめる当初から、「パプア人は現金を手にしてもすぐに使って手元に残らない。これでは意味がない。

カカオを売って得たお金の一部を貯金するプログラムを平行して行うことが大事だ。」と言っていました。

貯蓄プログラムをはじめた2015年6月、プログラムの説明会で銀行に貯金するシステムは何やら良くわからないが、デッキーさんが言うように「子供の教育や家族が病気になった時に備えてお金を貯めるのは良いことだ」と思う人が、最初は17名程が口座開設しました。

カカオ買付時に生産者が託す貯金通帳、多い時は60名分くらいになります。

カカオ買付時に生産者が託す貯金通帳、多い時は60名分くらいになります。

その後口座開設者はどんどん増えて、2018年6月末時点で口座開設者は10カ村で240名になりました。

カカオキタ貯蓄プログラムとタイアップしているのは1990年代にパプアのNGOがバングラディシュのグラミン銀行から学んで設立した民衆信託銀行です。

小さな民に寄り添う民衆銀行は不備のある身分証明書でも口座開設OK、というところが有難いです。(村では有効な身分証明書を持っていない人も結構多いのです。)

生産者はカカオキタに豆を売るときに貯金したい額をカカオキタに預け、カカオキタが町の民衆銀行で代理で入金します。

 

貯金の目的の第一は、子どもの教育費です(クライスゥ村の子どもたち)

貯金の目的の第一は、子どもの教育費です(クライスゥ村の子どもたち)

カカオキタの買付では多くの人が通帳を手に豆を集荷所に持ってきます。

だいたい、5万ルピア、10万ルピア(日本円で約400円、800円)を貯金に回すという人が多いです。

収穫ピーク時は多くの生産者が貯金するので、カカオキタは豆と一緒にたくさんの通帳も持ち帰ります。

「わたしの貯金、いくらになった?」(カカオキタスタッフのヨセフさん/左、ブラップ村のルス・マンゴさん/右)

「わたしの貯金、いくらになった?」(カカオキタスタッフのヨセフさん/左、ブラップ村のルス・マンゴさん/右)

貯蓄プログラムをはじめてから3年目、貯蓄の習慣は生産者の間に根付いてきたようです。

デッキーさんが貯蓄プログラムを考えたその先には、実は、「将来生産者協同組合を立ち上げるときに、生産者自身が出資できる資金を準備すること」、がありました。

この組合を立ち上げる取り組みはまだもう少し先の話になりそうですが、その目標に向けて毎日の活動を大切にしながら着実に一歩づつ、頑張ります!!!

(報告:ATJ 津留歴子)

[box type=”shadow”]【この便りについて】
株式会社オルター・トレード・ジャパンが取り組むインドネシア・パプア州のカカオ民衆交易プロジェクトの、顔の見える関係だからこその産地の情報をお届けします。このカカオ民衆交易では、「パプア人の、パプア人による、パプア人のためのカカオ事業」を現地で推進すると同時に、カカオを作る人、チョコレートを食べる人が相互に学び合い、励まし合いながら人と自然にやさしいチョコレートを一緒に創造していくことを目指しています。
HP:https://altertrade.jp/wp/cacao[/box]

【バナナニュース280号】「甘そうで苦い」 高地栽培バナナの裏側

2018年8月21日

近年、スーパーの売り場でよく見かける「高地栽培バナナ」。自然な甘みを売りにしたプレミアムバナナとして、高めの値段で販売されています。高地栽培バナナのプランテーション(農園)は、日本で出回るバナナの80%以上を供給しているフィリピン、ミンダナオ島で、2000年代以降、続々と開発されました。

ATJは、その一つ、南コタバト州ティボリ町にある日系企業のプランテーションを視察しました。早朝、上空を軽飛行機が飛び回っています。バナナ栽培にもっともやっかいなシガトカ病を防ぐため、数種類の殺菌剤を散布しているのです。検査等で因果関係が証明されている訳ではありませんが、住民は空中散布による健康被害を訴えています。とくに、子どもに皮膚病や呼吸器系疾患の症状が出ています。自家消費用の野菜を作ることも、家畜を飼うことも難しくなり、飲料水も買わなければならなくなってしまったそうです。

高地栽培バナナのほとんどが日本向けです。住民たちは日本の消費者にこうした現実を知ってもらいたいと口々に話していました。

詳しくは報告書「フィリピン、ミンダナオと私たちの今を考える」をご覧ください。

 

 

 

 

 

 

フィリピン、ミンダナオと私たちの今を考える

 

 

よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
[Form id=”15″]

【PtoP NEWS vol.22 特集】パプア クラフトチョコレートの2年目~美味しいチョコレートを自分たちで作る!~from インドネシア・パプア州

2018年8月16日
チョコアイスのファンたち

チョコアイスのファンたち

パプアのカカオ生産者の「自分たちが育てたカカオから作ったチョコレートを食べたい!」という素朴な願いを実現したのが「パプア クラフトチョコレート」でした。

パプア産カカオ豆をジャワ島にある国立コーヒー・カカオ研究所のチョコレート工房で手作りチョコレートに仕上げ、それを日本とパプアで同時販売しました。

カカオ

カカオ

1950年代にパプアを統治していたオランダがカカオの苗木を先住民族に配布しカカオ栽培を始めて以来、カカオ栽培が続けられてきましたが、最終製品のチョコレートがカカオ生産者の元に届くことはありませんでした。

生産者は「カカオは現金収入になる」、という認識だけで半世紀以上カカオ栽培が続けられてきたのでした。

 

 

売るだけでは物足りない!

パプア クラフトチョコレート

パプア クラフトチョコレート

2017年1月からカカオキタ社の拠点であるパプア州ジャヤプラ県で「パプア クラフトチョコレート」の販売を開始するや、評判が口コミで広がり、月に100 ~200個が売れていくという状況が続きました。

積極的な販売活動を展開することが今後の大きな課題ですが、それでも地元の少し高級なスーパーマーケットや空港内のカフェ、観光地で有名な山岳部ワメナのホテルなどからの卸し注文が途絶えることはありません。
「パプア産のカカオから美味しいチョコレートができる」ということに自信を持ったカカオキタのスタッフは、ジャワ島で製造されたチョコレートを売るだけでは物足りなくなり、自分たちでもチョコレートが作れるはずだと考えるようになりました。

こうして始まったのが、原料生産地での一貫製造、森から収穫したカカオ豆を現地で最終製品のチョコレート菓子にしよう、という新たな挑戦です。

 

小さなお菓子工房が完成!

チョコアイスを作るジョン(左)とチャーレス(右)

チョコアイスを作るジョン(左)とチャーレス(右)

カカオキタのスタッフがチョコ菓子づくりの指導を受け、2017年9月には、アジア民衆基金(APF)から融資を受けて、小規模なチョコレート製造機械を事務所に設置し、板チョコレート、ブラウニー、チョコレートアイス作りを始めました。

 

お菓子づくりが楽しくてしょうがないジョン

お菓子づくりが楽しくてしょうがないジョン

本当に美味しいものができて、今までお菓子を作るなんて考えもしなかったスタッフのジョンを中心に楽しく作業に取り組んでいます。

一番人気はカカオマスを贅沢に練り込んだアイスクリーム。

こちらはジャヤプラ県の中心部にあるパプア農村発展財団(YPMD)事務所内の冷凍庫に在庫を置いて友人を中心に販売を始めたところ、やはり口コミで評判が広がり、毎日コンスタントに50個近くも売れています。

カカオを収穫する生産者

カカオを収穫する生産者

アイスクリームはジャワ島からの移住民が押し車で売りに来るのが今までの風景でした。

合成甘味料や着色料を使ったアイスの味しか知らなかった人びとは、本物のチョコレートアイスの美味しさに目を丸くしています。

値段は少し高めですが、それでも本物の美味しさを知ると安い方に戻ることはできないようです。

YPMD事務所に毎日売りに来ていたアイスクリーム屋さんの姿もいつしか見なくなりました。

 

 

自分たちで作ることで大きな変化が!

カカオ豆を発酵させる生産者

カカオ豆を発酵させる生産者

カカオ豆からお菓子の素材であるカカオマスを作り、それをアイスクリーム、ブラウニー、板チョコレートにする仕事が増えたことはカカオキタスタッフの仕事へのやりがいに大きな変化をもたらしました。

今までは村でカカオ豆を買付け、それを倉庫で発酵や乾燥をさせるだけでしたが、実際にその原料を食べものにすることで「原料の品質」と「最終製品の味」の関係が良くわかってきたのです。

 

「発酵が浅かったからチョコの風味がいまいちだな」などとブツブツ言いながら作っています。このことは村でカカオ豆を買付けるときに生産者にしっかり発酵させることの意味を力説することにもつながっています。

カカオキタのパティシエたち?!

カカオキタのパティシエたち?!

今は本当に小さな規模での製造ですが、カカオキタ代表のデッキーさんはこんなに楽しいことをカカオキタだけが独占するべきではない、という考えで、もう少し規模の大きなチョコレート工房を作って、多くの生産者がカカオ豆からチョコ菓子まで作れるようになる学びの場にしたいと計画しています。

 

津留歴子(つる・あきこ/ATJ)

【PtoP NEWS vol.17】ここが知りたい!  バナナ

2018年8月14日
フィリピンの市場のバナナ屋さん

フィリピンの市場のバナナ屋さん

日本人がよく食べる果物ランキングで1位のバナナ。スーパーや百貨店に行くと、さまざまなブランドのバナナが並んでいますが、品種はほとんど選ぶことができません。

フィリピンにあるいろいろな種類のバナナ

フィリピンにあるいろいろな種類のバナナ

今でこそラカタン(スポーツバナナとして売られている)やバナップルといった品種のバナナを見かけることも増えましたが、日本で販売されているほとんどのバナナはキャベンディッシュ。

しかし、バナナは世界で300品種以上あると言われており、フィリピンの市場などでは、色も形もさまざまなバナナが販売されています。

揚げバナナこと”バナナQ”

揚げバナナこと”バナナQ”

バナナには大きく分けると生食用と料理用があります。

生食用は、キャベンディッシュ以外にも、トゥルダン、ラカタン、赤いバナナのモラードなどがあります。ATJが輸入している”バランゴン”バナナも「バランゴン」という品種名なのです。

フィリピンで一般的に食べられている料理用バナナはサバという品種です。熟すと生で食べることができますが、通常は煮たり焼いたり揚げたりして食べます。

バナナの原産国に行くと、こうしたバナナを食べることができます。皆さんも機会があれば、ぜひお試しください!

黒岩竜太(くろいわりゅうた/ATJ)