エコシュリンプ生産者イルルさんに、稚エビの放流について聞きました。
イルルさんのエビ養殖へのこだわり
インドネシアのエコシュリンプ生産者の1人であるイルルさんは、2013年10月に来日して、消費者との交流会に参加しました。そのときに、「エビの粗放養殖において6つのこだわりがある、それは<稚エビ><水><土><管理人><経営者><資金>だ」という話をしてくれました。父親から養殖池を継いだイルルさんは、シドアルジョ地域の若手の粗放養殖エビ生産者です。エビ養殖についての関心は半端ではありません。エビの粗放養殖をとても大切に考えています。
「まずは、元気な稚エビであることが肝心!水の流れに逆らって一生懸命泳いている稚エビが元気な証拠です」
3月のとある日、イルルさんは稚エビの放流のために、朝早く養殖池のひとつに出かけました。池の管理人さんやワーカーたちは、届いた稚エビの確認作業をし ていました。イルルさんは、「まずは、稚エビが元気であることを確認します」と、洗面器の水 をかき回し始めました。洗面器の中には、細長い小さな稚エビが入っています。エビには元来、遡上する性質がありますが、稚エビのころからその性質は備わっているのです。
「稚エビにとって養殖池の水の塩分濃度は敏感です。伝統的な手法であるイプアンを使います」
イルルさんは稚エビを放流するときに、イプアンと呼ばれる種苗池を使います。イプアンとは、養殖池の中に土手で囲いこんで塩分濃度の高い水を溜めた小さな池です。ブラックタイガーは海の沖合で産卵し、稚エビは沿岸の汽水地域に移動して育つ性質を持つため、稚エビの孵化場でも成長段階に応じて塩分濃度を下げていきます。そしてさらに塩分濃度の低い養殖池の汽水に慣らすためにイプアンが使われるのです。特に雨季など池の水の塩分濃度が低くなるときには、稚エビの放流時にイプアンを使うことで稚エビのストレスを緩和することになります。
「稚エビをまずイプアンに放して半日ほど後に、土手を少しずつ崩して稚エビを養殖池に放します。イプアンは、稚エビを塩分濃度の低い汽水に慣らすための手法として昔から使われてきたのです。」
塩分濃度は、海水と淡水の割合、そして降雨量によっても影響を受けます。
「エビの餌となるプランクトンが十分かどうかは、池の水の色で確かめます」
エビは水中のプランクトンなどを食べて成長します。稚エビが食べるのは植物性プランクトンです。その時期の養殖池の水の色が緑色であることに注意を払います。稚エビが大きくなるに従い動物性プランクトンを食べるようになります。その時期の池の水の色は茶色でなければなりません。こうしたことに、イルルさんは、池の管理人さんと共に、細心の注意を払います。
「池の土も、エビにとっては大切な要素です」
イルルさんは、池の<土>の状態も、エビの成長過程に重要と考えています。池底の土の臭いをクンクン嗅ぎはじめました。「アンモニアの臭いがする土だと、エビが育つ環境としてよくないんです。」
健康な土であるためには、池で薬剤を使わないことや池干しを十分に行うことが重要です。
稚エビを放流するときから、稚エビの状態、池の水の塩分濃度、エビの餌となるプランクトンの状態、池の土の状態まで、多くのポイントを確認しながら、小さな稚エビを養殖池に放流します。
稚エビの放流後も、イルルさんのエビの状態への気遣いが止むことはありません。1週間後に再び池を訪れたイルルさんは、池の中の稚エビを覗き込み、「大丈夫、ピョンピョンしている。」と嬉しそうです。放流した稚エビはおよそ3ヶ月で収獲できる大きさに育ちます。3月に放流された稚エビの収獲は6月、もうすぐです。
津留歴子(現地駐在)/取材、ATJ政策室/編集
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