レポート

ゲランドの塩生産者グレゴリー・ピタールさん、 塩づくりについて語る~その2~

2016年2月3日
塩田で仕事をする塩職人グレゴリー・ピタール氏 ©Pascal FRANCOIS

塩田で仕事をする塩職人グレゴリー・ピタール氏 ©Pascal FRANCOIS

― 収穫について、何かコツはありますか?

一番塩の収穫

一番塩の収穫

「簡単そうに見えて難しいです!粗塩はラスと呼ばれる器具を使って収穫するのですが、塩田の土は粘土質で脆いので、底を傷つけないように、水だけに上手く波を立たせて、それを拾い取っていくような感じです(身振り手振りしながら)。ラスは池の中心まで届かせるために5mの長さがあり、先端は木でなくてはならないので、それを自在に操るには、熟練した腕が必要なのです!」
(塩づくりが大好きな様子がとても伝わってきました。テール・ド・セル(サリーヌ・ド・ゲランド社の経営する観光子会社)に行くと体験できますか?と聞いたところ、ダメ、とのことです。やはり大切な塩田は、気安く人には触れさせないという気概を感じました。)

― 収穫期以外は、どのような作業をされているのですか?

塩田のメンテナンス作業

塩田のメンテナンス作業

「主に塩田のメンテナンスです。堤防を修繕したり、干潮の時期に水を抜いて池の底に出来た堆積物を取り除いたり、池底の形を整え直したり、多くの作業を全て手作業で行います。準備が終わると、池底が乾燥してひび割れないように、また池に水を入れます。池に水を張っておくことで、嵐が来た際に塩田が痛まないようにすることもできるのです。とはいえ、水位には常に気を配り、収穫期に最適になるようにコントロールしています。」

― 昔から営まれている作業なだけに、一つ一つに重要な意味があることが良くわかります。今の生産者協同組合の様子と、現在の課題について教えて頂けますか?

塩田の復活作業風景

塩田の復活作業風景

「塩田はゲランド全域で恐らく2,000ha、オイエの数で12,000くらいではないかと思います。そのうち、約80%の9,000オイエ強が組合員のものです。組合員は200名以上いますが、収穫期には各々でアルバイトを雇います。その中で、私のように塩職人に興味を持ち、新規就業する次世代も出てきています。おかげで、10年前に比べて生産量も増えました。そのため、今の一つの課題として、一度放棄された塩田を復活させる取り組みを進めています。固くひび割れてしまった塩田の土をひっくり返し、また地ならしをして固め、という作業を組合員同士で協力して行います。大変なところでは、一つの池に数年がかりです。普段の塩田でも、引き入れた海水をためておくヴァジエールやコビエといった調整池は複数人での共有なのですが、このような組合員同士の連帯意識は、ゲランドの塩づくりに欠かせないものですね。」

― そんなゲランドの塩はなぜ美味しいのか、味の特徴について一言お願いします。
「ゲランド塩田の粘土質な土壌と、塩田に発生するプランクトンの作用が重要な役割を果たしています。そのような環境でじっくり結晶される塩は、シェフにも話を聞きますが、塩の持つアロマ(風味)が素材の味を引き立ててくれる効果が素晴らしいのです。例えば、我々の作る塩はチョコレートによく使われますが、それは塩が、カカオの特徴的な香りを際立たせてくれるからなのです。また全て自然の中で手作業で行うので、「やわらかい」塩となります。食材に馴染みやすく、肉であれば繊維まで染み込みます。大規模な工場生産の塩は塩味を付けるだけなのですが、ゲランドの塩は素材の味を広げてくれるのです。あ、でも一番の美味しさの秘訣は、生産者の熱意なんですよ!」

― やはり人が作り出す塩なのですね。では最後に、グレゴリーさんの夢をお聞かせ下さい。

「そうですね、妻と二人で65歳まで塩職人であり続けたいと思っています。あとは、娘が3人おり、もちろん彼女たちの将来は彼女たちが決めることですが、もしその中の誰かが私たちの塩田を継いでくれたら、それは本当にうれしいことですね。」

来社されたグレゴリー・ピタールさん

来社されたグレゴリー・ピタールさん

特に塩田の作業の話題になると、身振り手振りで本当に楽しそうに話をしてくれたグレゴリー氏。1000年を超える伝統を持つゲランドの塩は、現在、このような塩作りに魅了された職人たちの手で作り出されているのです。

事業部商品二課 若井俊宏

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