【PtoP NEWS vol.14/2017.05 特集 遺伝子組み換え】母親に力を!子どもたちに健康を!~マムズ・アクロス・アメリカ創設者、ゼン・ハニーカットさんとの交流~
「マムズ・アクロス・アメリカ(MAA)」は、全米で遺伝子組み換え食品から子どもを守る運動を展開している市民団体です。ATJ/APLAスタッフは、2017年3月8日、国際女性デーにグリーンコープの招聘で来日した、創立者のゼン・ハニーカットさんからMAAの活動について話を聞き、交流する機会を得ました。
きっかけは子どものアレルギー
ゼンさんのお話は、なぜこういう運動を始めたか、から始まりました。
ゼンさんは3人の男の子の母親です。長男がアレルギー反応で生死をさまよったり、次男が突然、自閉症の症状を発症したり、という辛い経験から自身で調査を始めました。
そこでわかったのが、米国では子どもの6人に1人が学習障害、12人に1人が食物アレルギー、68人に1人が自閉症という事実でした。
さらに、加工食品の85%に遺伝子組み換え原料が使われ、遺伝子組み換え作物に使用される農薬も摂取していることです。
その遺伝子組み換え作物の80%は、除草剤耐性のものが占めます。栽培時に一緒に使われるのは、グリホサートを主成分とする除草剤です。グリホサートは有益な腸内細菌を破壊し、病原菌を促進したり、DNA突然変異を引き起こすおそれが指摘されています。また、世界保健機関(WHO)は、グリホサートを発がん性物質に指定しているそうです。
食べものの安全性の問題に眼覚めたゼンさんは、お母さんたちを組織し、2013年7月4日、米国の独立記念日に全米172か所で遺伝子組み換えの食品表示を求めるデモを実現します。そして、遺伝子組み換え食品を食べないようにした結果、ゼンさんの息子のアレルギーは大きく改善しました。
尿からグリホサートが検出
しかし、遺伝子組み換え推進派は科学的根拠がないと主張します。そこで、ゼンさんたちは信頼できる医師の協力を得て、全米規模で飲料水、尿、母乳のグリホサートの残留検査を実施します。尿からも非常に高い(ヨーロッパの環境保護団体による調査の最大値の4倍)グリホサートが検出されました。
有機食品に切り替えると、多くの子どもたちにアレルギーや自閉症の症状の改善が見られることがわかってきました。そういった体験がSNSなどを通じて母親から母親に伝えられていきました。
さらに、母乳からグリホサートが検出されると米国環境保護庁(EPA)にグリホサートの使用禁止を求めます。こうしたデータを集め、共有し、行動へという動きは今、世界に広がりつつあります。
ネグロスの母親との対話
ゼンさんはスカイプを通してバランゴンバナナやマスコバド糖の輸出事業を主に担ってきたオルタートレード・フィリピン社(ATPI)*の職員を中心とするネグロスの母親とも対話しました。
今後、ネグロスでも生産者と消費者が連携して健康を守る「リアル・フード(本物の食)」運動を進めていこうとしています。
その背景には、米国、日本と同じように食の安全性に対する不安、子どもの健康問題があります。元ATC職員のアルジェレンさんの長男は、4歳の時に自閉症と診断されてから、安全な食べものだけを食べさせようと決心し、小学校5年生の今、もはや自閉症ではないと医師から言われました。
同様にアレルギーで苦しんだ子どもを持つ母親であるゼンさんが、その経験を強いモチベーションにして遺伝子組み換え食品の危険性を広く伝えている熱意と行動力に心を動かされたと話します。
ゼンさんとの交流で刺激を受けたATPIの母親たちは、早速マムズ・アクロス・フィリピンを結成しました。
MAAの合言葉は「母親に力を、子どもたちに健康を」です。食品を買っているのは主に母親たち。「情報を共有し合おう。母親が力をつけて、有機食品が入手できる社会に変えよう。自分の子どもを守ることは社会の子どもを守ること。人びとは子どもをもっとも愛しているのは母親だと知っています。社会の中で母親の力を大きくすることが必須です」。ゼンさんは、母親たちが安全な食べ物を選択して消費するという行動によって、遺伝子組み換え食品のない社会を実現できると訴えました。
小林和夫(こばやし・かずお/ATJ)
*オルタートレード・フィリピン社(ATPI):オルター・トレード社(ATC)が再編され、国際交易だけでなくフィリピン国内小売事業も展開していくために、新たに設立された。
マムズ・アクロス・アメリカFacebook(英語)
http://www.momsacrossamerica.com/
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