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バランゴンバナナ生産者交流会:ジェイムス・シモラさん(ミンダナオ島レイクセブの先住民族支援団体理事)の報告

バランゴンバナナ生産者交流会:ジェイムス・シモラさん(ミンダナオ島レイクセブの先住民族支援団体理事)の報告

ジェイムスさん(左)と先住民族酋長のアラスさん

ジェイムスさん(左)と先住民族酋長のアラスさん

私は元カトリック神父ですが、今は地域開発ワーカーとなって仕事をしています。神父として13年間、ミンダナオ島のマルベール大司教区に奉仕している間 に、スララ教区とレイクセブ教区の教会に赴任しました。神父として地域住民族とのかかわりを持つなかで、レイクセブの先住民族に深い愛情をもつようになりま した。彼らのおかれている現状に直面して、苦しい状況が楽になるように、そして彼らの希望がかなうようにと、支援活動をするようになりました。そうしてい るうちに教会を出て、地域で先住民とともに働くことを決めたのです。

先住民族ボイエットさんの庭先バランゴンバナナ

先住民族ボイエットさんと庭先バランゴンバナナ

先住民族の状況を何とか改善しようと深くかかわりながら、私たち支援グループは、地域開発プロジェクトの財源探しをしていました。そうした中で、2004年にバランゴンバナナ民衆交易がレイクセブで始まることになりました。タシマン村パロシエテ地域で、先住民族といっしょに“革新的な交易活動”に取り組むことになったのです。しかしながら、この“革新的なバランゴンバナナ交易”も、先住民族にとっては、まだこれまでのようなどこかの援助団体が差し出す“プロジェクト”でしかないのです。こうした考え方は、レイクセブに住む先住民族の一般的な考え方です。それはまた、地域開発プロジェクトとして持ち込んでくる援助団体の考え方でもあるのです。

「暮らしをよくするために何が必要か」と先住民族に尋ねれれば、彼らはきっと「もっとプロジェクトが欲しい」と答えるでしょう。森のなかで採集や

自分たちで栽培したトウモロコシです。

自分たちで栽培したトウモロコシです。

狩猟生活をやってきた先住民族たちは、そこにあるものを採集するだけ、ということをずっとやってきたのです。プロジェクトや援助物資は、彼らが森で取っていたイノシシやイモ類と、同じレベルのものでしかなかったのです。

2005年12月25日、クリスマスの日に、先住民族たちは初めてのバランゴンバナナの収穫を行いました。それは、先住民族たちにとって、この収穫がバランゴンバナナ交易の初めての実際上の経験であり、大変重要な出来事となりました。このことは、レイクセブの森に暮らしているほかの先住民族にも伝わっていきました。そしてまもなく、バランゴンバナナ生産・出荷活動はパロシエテ地域から他の地域へと広がっていったのです。

バランゴンバナナを生産して出荷するという活動は、多くの先住民族たちに定期的な収入源として認識されるようになりました。しかしながら、「認識した」と言ってもまだ、その日暮らしの現金を得るという価値感にとどまるという限界があります。バランゴンバナナからの収入は、食べ物や衣服、生活に必要なものを買ったり、子供たちの学用品などに使われています。しかしながら、子供たちの教育も、先住民族にとってはまだ日々のできごとにすぎないのです。先住民族たちは、なぜ子供たちに教育が必要なのかという考え方をまだ持てていないのです。

支援団体であるUAVFI(アッパー・アラー渓谷農事法人)とAVDFI(アラー渓谷財団)は、先住民族の人々が夢を持つことや、次世代の子供たちがよりよい暮らしができるような将来の目標を持つことを理解してもらえるように考えながら活動しています。

次世代の青年仲間です。

次世代の青年仲間です。

この活動は、独特な文化と考え方を持っている先住民族の人々にとっては、時間のかかる長い取り組みとなります。簡単に現金収入が得られる仕事を好む傾向があります。土地を耕して農業をするより、道路工事の労働者として働くほうがいいと思ってしまうのです。また、このような考え方は、彼らの土地を売ってしまうことにも繋がります。土地こそが、先住民族のコミュニティに食べ物を供給し、安定した収入をもたらすものだという価値感や考え方を、先住民族が持てた時には「時すでに遅し」となってしまうことになるかもしれないのです。気づいた時には、先住民族が暮らす土地はもう残っていないかもしれません。

フィリピン国内からの移民や、投資家やアグリビジネス企業などが、強引に先住民族の土地を買収しようとしているのです。この状況を止めないと、レイクセブのエコシステムまでもが破壊されてしまいます。バランゴンバナナ民衆交易によって、レイクセブでは、バナナの栽培が増えています。2004年にパロシエテ地域の30家族で始めたバランゴンバナナの生産・出荷は、2012年には600人の生産者にまで広がりました。

バランゴンバナナ民衆交易は、安定した収入につながるので、さらに多くの先住民族が関心をもつようになりました。レイクセブ市長は、自分が治めるレイクセブ市からコンテナでバナナが出ていくのを見ると、自分自身もバランゴンバナナを植えてみようかとも考え始めました。レイクセブ市長もまた、先住民であるチボリ族の一人です。

パッキングセンターでは、先住民族もいっしょに仕事をしています。

パッキングセンターでは、先住民族もいっしょに仕事をしています。

バランゴンバナナ民衆交易が続いていくということは、私たちの団体UAVFIが先住民族のためにやろうとしていることが、持続していくことにつながります。それは、先住民族の先祖代々の土地を守ることを保証してくれることでもあるのです。

日本の多くの皆さんが、バランゴンバナナ民衆交易を継続的に支えてくださり、パートナーであってくださることに心から感謝申し上げます。

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