レポート

パレスチナ・ガザ地区の状況と、オリーブオイルの出荷団体であるPARCとUAWCの支援活動の報告

2014年12月8日

ATJ/APLAの呼びかけに対して、多くの個人及び団体の皆様から支援金を寄せていただきました。ありがとうございました。心から感謝申し上げます。2014年10月末日までにAPLAにご送金いただきましたガザ支援金は、以下の通り11月1週目に、第1回めの送金として、パレスチナのPARCとUAWCに以下のとおり送金致しました。第2回めの送金は年明けに行う予定です。

■ 8月4日~10月29日までの入金額:2,986,036 円
■ APLA経費(10%)
■ 送金額合計:2,687,432 円
※PARC(パレスチナ農業復興委員会):    1,343,716 円
※UAWC(パレスチナ農業開発センター):1,343,716 円

ガザ地図

ガザ地図

2014年7月6日に始まったイスラエル軍とガザ地区を統治するハマスとの間での応戦は、8月26日に暫定的に停戦が発効されて以降、概ね小康状態は保たれています。日本においては、ガザ地区の状況に関して報道される機会がめっきりと少なくなり、あたかも「停戦=ガザ地区が平和になった」というような印象を受けがちですが、実際には戦争によってインフラやライフラインが破壊されたガザ地区において、人々の暮らしは困窮を極めています。また、イスラエル政府による封鎖も継続し、物資の搬入が制限され、復興の遅れにつながっています。

APF総会での発表の様子

APF総会での発表の様子

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、この戦闘で18,000軒以上の家屋が破壊され、2014年10月15日時点で、10万人以上が未だに住むところを失ったままです。また、11月上旬にラマラで行われた「互恵のためのアジア民衆基金」第4回通常総会(以下APF総会)の場で、UAWCが現地の状況について発表したところによると、60万人以上が生活に必要十分な量の水を手にすることができておらず、25万人以上が緊急の食糧支援を要している状況です。さらに、少なくとも14万ドゥナム(1万4,000ヘクタール)に干ばつの恐れがあり、1万9,000軒の農家と3,600軒の漁師の家族が仕事を中断せざるを得ないなど、当たり前の暮らしが根こそぎ奪われている実態が報告されました。

パートナー団体であるPARC・UAWCは、ガザ地区にも事務所を構えており、今回の戦争では、ご家族を亡くされた職員もいます。このような状況下において、彼らは西岸地区内の自治体と協力するだけでなく、自分たちの給料を切り崩すことでも費用を捻出し、ガザ地区の人々への救援物資を届け続けています。同じくAPF総会で発表された、彼らの救援活動の内容を、簡単にご紹介致します。彼らは発表の中で、ガザ地区の人々を”our people”と呼びました。現在、ヨルダン川西岸地区とガザ地区は、物理的には接していませんが、やはり同じパレスチナに住む仲間としての連帯感を感じました。

[box type=”shadow”]<PARC>
・ 西岸地区のみならず、イスラエル内に住むパレスチナ人団体や組織のネットワークへも呼びかけて支援を募り、総額70万シュケル(約2,100万円相当)の基金を造成。イスラエル内に住むパレスチナ人は、ラマラへ来て以下のような救援物資を送る手伝いも行った。

給水タンク

給水タンク

・ 2,000個のフードバスケットを購入。
・ 水を貯蔵するタンクを購入。
・ 特に水が不足している地域に対し、井戸を持っている住民と契約を結び、水を配る。
・ ラマラ近郊のTurmusaia村の人々が集めた募金で購入したトラック13台分の水と様々な救援物資(食糧・衣類・オリーブ油・医療品等)を、ガザ地区へ送り届ける手配を行った。
・ 以前にも緊急救援で協力した経験のあるAl Thahreya村とは、彼らが用意したトラック数台分の救援物資(飲料水・食糧・衣類・おむつ等)の物流をPARCが担った。
・ 西岸地区北部のTubasでも、やはりTubasの住民が募金等を集めて準備したトラック4台分の救援物資(食糧・飲料水・おむつ・衣類・毛布や寝具等)を、ガザ地区へ迅速に届けられるように手配を行った。

仕立てたトラック

仕立てたトラック

これらの救援活動は、1,000名を超えるボランティアの力によって推進され、総勢7万人以上に物資が届けられました。西岸地区内はもちろん、イスラエルに居住しているパレスチナ人もボランティアに加わり、西岸地区において、ガザ支援のための募金キャンペーン活動から救援物資の梱包、そして出荷手配までを行いました。一方、ガザ地区内のボランティアは、届いた救援物資を遅滞なく支援を必要としている人々の下へ届ける、という役割を担いましたが、活動中に数名がイスラエル軍の攻撃によって命を落としたとのことです。

支援物資の積み込み

支援物資の積み込み

<UAWC>
詳細な説明はありませんでしたが、1万軒以上の農家及び漁師の家族に、フードバスケットを届けています。特にUAWCは、緊急救援以降のガザ地区における復興を視野に入れ、農業や漁業など、ガザ地区内の経済活動を安定的なものに回復していくための取り組みを、今後進めていく予定です。
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8月26日に停戦が発効されましたが、遅々としてガザ地区の復興への道筋は立てられておらず、またイスラエルの強硬な姿勢も激化の一途を辿っているように思われます。ガザ地区の封鎖はまだ全く解かれておらず、再建に向けて必要な物資の流入は厳しく制限される現状が続いています。さらに、認められた海域を少しでも外れそうになった漁民にはイスラエル海軍が容赦なく威嚇射撃を行うなど、人々の暮らし自体も、実質的には監視下・占領下に置かれている状態です。

しかしそのような中でも、私が現地に滞在している間にも、数年ぶりにガザ地区のキュウリが西岸地区に届けられたり、UAWCの事務所にガザ地区でイチゴを生産している協同組合の代表が訪れ、産品に貼るための”product of Palestine”と書かれたシールを持ってガザ地区へ帰って行くなど、本当に少しずつですが、明るい兆しも見え始めているように思われます。このような日々の営みや交流を続けることが、ガザ地区復興の一歩ずつの歩みなのだと感じました。

ATJでは、今後もPARCやUAWCのガザ地区での支援活動について報告をしていきます。

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