【続報】フィリピンにおける新型コロナウイルス感染症の状況④
フィリピンにおける状況の続報です。(前回の報告はこちらをご覧ください)。
【感染者数が急増中】
7月末から連日のように4,000人前後の新規感染者の発表があります。8月10日は6,958人に達し、その約60%はマニラ首都圏での感染者です。8月11日時点で、累計の感染者は139,538人、死者数は2,312人にのぼっています。陽性率は10%を超えてきています。感染者の48.5%が20代および30代で、死者数の61.7%が60歳以上で占められています。現在の感染者の内、約91%が軽症、約7%が無症状という状況です。
参照元:国連(OCHA)の概況報告#48、フィリピン保健省の日報
グラフ参照元:日本:NHK特設サイト / フィリピン:Rapplerニュースサイト
グラフ元:フィリピン保健省
フィリピン政府は感染者数が増加傾向にある中で、6月以降のマニラ首都圏などでの経済・社会活動の規制の緩和を決めましたが、ドゥテルテ大統領は記者会見で、人口あたりの死亡者の少なさや(フィリピンの人口は2018年時点で約1億人)、感染者の多くが軽症であることを理由として挙げていました。
フィリピン政府は15日毎に地域ごとの規制レベルを発表しています。8月1日から15日については、マニラ首都圏は7月31日以前のレベルの継続であることが7月31日に発表されました。しかしその翌日に医療従事者が公開の嘆願書を政府に提出し、感染者数の増加を受けて医療システムが危機に瀕しており、このままでは負け戦となるため、対策を練りなおすための時間を確保するために、2週間のマニラ首都圏などでの規制レベル再強化を要請しました。これを受けて、ドゥテルテ大統領は8月4日から18日の期間について、マニラ首都圏周辺の規制をロックダウンに近いレベル(MECQ)に再び強化することを決定しました(例えば、バス・ジープニー・タクシーなどの公共交通機関は停止となります)。
参照:医療従事者の嘆願や7つの提言がまとめられた英語のニュースサイト(rappler)
ドゥテルテ大統領は8月10日の会見で、「感染拡大を抑制するために強化された規制レベルの期限を延長したい気持ちはあるが、政府にはもはや人々にお金を支給するための財源がない。」「みな自分自身で働いて生計をたてるしかない」と経済活動と感染防止の両立の難しさを述べています。
下表は規制レベルの変化を見やすくするために数値に置き換えたものです。(数字が大きいほど厳しい規制。フィリピンでは数値での表現はされていません)。
規制レベルに応じた規制内容がまとめられているサイト:ジェトロ(日本貿易振興機構)
4:ECQ(Enhanced Community Quarantine強化されたコミュニティ隔離措置)
3:MECQ(Modified Enhanced Community Quarantine修正を加えた強化されたコミュニティ隔離措置)
2:GCQ(General Community Quarantine一般的なコミュニティ隔離措置)
1:MGCQ(Modified General Community Quarantine修正を加えた一般的なコミュニティ隔離措置)
※カラバルソン地方の「1/2」は、地方内の行政地域によって規制レベルが異なっている(1の地域もあれば2の地域もある)ことを意味しています。
参照元:在フィリピン日本国大使館
【休校も続く】
フィリピンでは学校の休校も続いています。通常は4月・5月は夏休み(フィリピンでは3-5月が最も暑い季節)で6月から新学期が始まります。公立の学校は8月24日から再開とされていますが(私立は裁量が認められている)、ドゥテルテ大統領が対面での授業はワクチンが利用できるようになるまでは行わないという方針(公立も私立も)を打ち出しているため、リモート学習の準備がなされています。ネットにアクセスできない家庭の子供は、印刷された教材とラジオやテレビを使っての学習になるようです。準備不足を理由に、学校再開の延期を求める声が教員などからあがっているが、教育省は期日どおりに再開を目指していると報じられています。
参照元:英語のニュースサイト(rappler)
【バランゴン産地の感染状況】
下表は、主なバランゴン産地の感染者数をまとめています。絶対数は少ないものの、6月末時点に比べて増加している状況です。データ元:フィリピン保健省
・ネグロス西州の感染者のうち、73%がLSIs (Locally Stranded Individuals: 3月から5月のロックダウン時に旅行や仕事で地元を離れていた帰宅困難者)の感染確認で、次いで14%が海外から帰国した出稼ぎ労働者によるものです。
参照元:ネグロス西州のサイト
・ミンダナオ島のソクサージェン地方には、バランゴンバナナの産地が3つありますが、8月11日時点での累積の感染者数は、ツピ町で10人(人口約7万人/2015年)、レイクセブ町で8人(人口約9万人)、マキララ町で1人(人口約8万人)という状況です。
情報元:南コタバト州政府のサイト、コタバト州政府のFacebook
・ネグロス東州では、LSIsが運送業者の助手を装って域内に入ろうとする事例が発生したため、外部からの入域規制が8月7日から強化されました。この影響で、バナナの集荷のために西州から東州のマンティケル村に向かっていたATPIのトラックが検問所で入域を拒否されました。食品などの生活必需品を運ぶトラックは入域可能で必要書類も持参していましたが、集荷前のトラックには何も載せていなかったために偽装を疑われてしまったのです。そのためATPIは、急遽東州内でトラックを手配し、マンティケル村での集荷を行いました。(町から遠く離れた山奥にある村のため手配に苦労し、また費用も高くついてしまいました。)
また、東州のパッキングセンターで箱詰めされたバナナを輸出のために西州の港に運ぶために、通常はATPI所有の空のトラックが東州に取りに向かいますが、今週は東州内で販売するためのマスコバド糖(黒糖)を積むことで、検問所を通過することができています。
・ATPI事務所があるネグロス西州のバコロド市では感染拡大防止のため、8月1日から州外からバコロド市に入る際の制限を厳しくしています。この影響で、仮にATPIスタッフが東州で24時間以上滞在して仕事をした後に事務所があるバコロド市に入るためには、3日以内に発行されたPCR検査の陰性結果を提示する必要があります。
・バコロド市は、8月9日から3週連続で、日曜日に主要な3つの市場を閉鎖し、消毒を行うことを決めています。(動画:バコロド市のFacebookにアップされた消毒の様子)
・ミンダナオ島に駐在しているATPIスタッフも、コロナ禍の影響で家に戻れない日々が続いています。
ジェイソンさんはルソン島から単身赴任しており、本来であれば、3か月に一度、会社から休みをもらって家に帰ることができます。結婚式をあげる予定と、第一子の誕生に立ち会う予定がありましたが、移動制限があるため、どちらも実現しませんでした。
・ATPIは、現場で働くスタッフにフェイスシールドを支給しました。写真は北ルソンのスタッフの様子です。
なお、8月15日からは、公共交通機関(バス、ジープニー、タクシーなど)に乗る際は、フェイスシールドの着用が全国で義務化されます。
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