2021年9月5日

【バナナニュース320号】コロナ禍での教育事情<農村編>

[digg] フィリピン教育省は、2020年第3四半期より国内すべての公立・私立学校に「遠隔教育システム」を導入しました。物理的な教室での対面授業がなくても、生徒が知って身につけ、理解しなければならない可能な限りの必須授業、概念、知識や技能を網羅する内容となっています。それに伴い、生徒たちは在宅学習やオンライン学習で教育を受けています。

[digg] 前号と今号では、バランゴンバナナやマスコバド糖の生産地であるネグロス島の都会と農村での教育事情をご紹介しています。

[digg] 前回の“都会編”に続き、今回は、“農村編”として、ラ・カステリアーナ市マンサラナオ地区の公立学校に通うサトウキビ農家2家族の事例です。パンデミックの時代に学校教育を続けるために、自分たちや子どもたちが直面している心情や困難について語ってくれました。

 

◆サトウキビ生産者・ヴィラメント一家の事例

アナリザさん(20歳、大学2年生)、アイラさん(19歳、高校3年生)、ニコルさん(11歳、小学6年生)、ニカさん(9歳、小学4年生)

ニコルさん(11歳、小学6年生)、ニカさん(9歳、小学4年生)

[digg] 教育省が全国の学校に遠隔教育システムを導入後、公立学校でも在宅学習が始まり、ヴィラメント一家の子どもたちも、毎週月曜日に配布される教材を元に学習し、金曜日に宿題を提出する流れで勉強しています。

[digg] 「分からないことがあれば両親や姉たちに聞くこともありますが、ほぼ自分たちで学習しています。自分たちの知識だけでは内容を充分理解することが難しいです」と小学生の二人は言います。

 

ヴィラメント一家

[digg] スマートフォンを使用して答えをインターネットで検索することもありますが、通信状況が不安定でつながらないときもあり、宿題が完成せず提出が遅れることもあるとのことです。先生とのやりとりもグループチャットで実施されるため、インターネットへのアクセスは必須です。

[digg] アナリザさんやアイラさんのように高等教育になるとグループワークや調査を伴う課題が出ることもあり、その課題を進めるのに難しさを感じていると話してくれました。

 

◆サトウキビ生産者・グレゴリオ一家の事例

ジョナリンさん(18歳、高校2年生)、マエジョリーさん(11歳、6年生)、ジョヴェリンさん(10.歳、小学5年生)、ジョナサンさん(9歳、小学4年生)、ジョベルトさん(6歳、小学1年生)

[digg] コロナ禍になってから在宅学習が始まっています。毎週月曜日、先生が教材を家に届けに来てくれて、金曜日に宿題を提出する流れで学習をしています。

ジョナリンさん(18歳、高校2年生)

小学生の子どもたち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[digg] グレゴリオさん一家は、インターネット接続のための環境を整えたり、パソコンや携帯を準備することができません。そのため、分からないことがあったら母親のエレナさん頼みとなっているそうです。

グレゴリオさん夫妻

[digg] 兄弟の中でも上の子が下の子を教えることもありますが、それでも分からない場合は、子どもたちの不明点はそのままに放置されてしまっています。

[digg] 先生とは教材を届けてくれる時に会うことはできますが、クラス全員分の教材を自宅まで配っていることから、あいさつ程度の話しかできないそうです。

 

 

[digg] 在宅学習が始まってから、インターネットが使える環境であるか、親が面倒をみたり教えられる度合いにより学びの質が違っているようです。親も答えが分からない場合は、インターネットで調べたり一緒になって勉強するなど、以前にはなかった対応が求められています。在宅学習になってから友達にも会うこともできていませんが、子どもたちはパンデミックだからしかたがないと理解している状況が続いています。

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2021年7月1日

【バナナニュース317号】風に弱いバナナ:台風シーズン到来

バナナは強風にとても弱い植物です。強風に遭うと、実をつけたバナナは倒れてしまい、実をつける前のバナナも葉が切れて光合成が十分に行えずに、その後になる実が生育不良となります。この場合は、次の脇芽の成長を待つことになり、収穫量の回復には数か月かかります。

4月の強風被害直後のダンテさんの畑①

沖縄や台湾もバナナの産地ですが、台風が上陸しやすい地域であるため、生産量が安定していません。一方、市販のフィリピン産のプランテーションバナナは、台風がほとんど上陸しないミンダナオ島で生産されています。
バランゴンバナナの交易は、ネグロス島の人びととの出会いから始まりましたが、台風の影響を受けやすい島であるため、現在ではミンダナオ島にも産地が広がっています。ただ、台風がフィリピンの東の海上を北上する際に、季節風が強化されるため、ミンダナオ島のバランゴン産地でも毎年局所的に強風が吹きます。
例えば、ミンダナオ島のレイクセブ町では、4月末以降に断続的に強風が吹いており、収穫量は5月上旬をピークに、現在は減少傾向に入っています。

 

◆レイクセブ町パロシエテ村のダンテさん

ダンテさん夫婦と子どもたち

「2008年からバランゴンを栽培しています。4月末に強風の被害があり、収穫量はピーク時に比べて6分の1ほどに減ってしまっています。バナナは強風に弱いことがネックです。
ただトウモロコシなど他の作物と比べると、栽培コストがかからないことが魅力で、最近新たに200株増やしました(合計で1,050株)。これからもバランゴンの栽培を続けていきたいです。」

ダンテさんの畑

4月の強風被害から3か月ほど経過したダンテさんの畑。新しい葉が出てきている。

4月の強風被害直後のダンテさんの畑② 葉が切れてしまっている。

4月の強風被害直後のダンテさんの畑③ 株ごと倒れてしまったバナナ

◆レイクセブ町ドゥエロッド村のピーターさん(27歳)

ピーターさん家族

「2010年からバランゴンを栽培しています。4月下旬の強風で、500株のうち200株が被害に遭いました。収穫量が戻るのは来年の1月くらいになると思います。
他の作物と比べて栽培コストがかからないことがバランゴンの魅力です。トウモロコシなどの他の作物を栽培したこともありますが、ちゃんと利益が出たのはバランゴンだけでした。今後もバランゴンを作り続けたいと思っています。」

 

 

 

ミンダナオ島のツピ町やネグロス島でも強風被害が発生しており、収穫量が減少する時期に入ってきています。

 

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2021年6月10日

【バナナニュース316号】バランゴンバナナのひんやり黒糖寒天

黒糖の甘みの中にバナナの酸味と触感がアクセントに。
ひんやりツルっと食べられるので、夏のおやつに最適です。
簡単に作れるのでぜひチャレンジしてみてください。

🍌ひんやり黒糖寒天の作り方🍌

<材料> 8×16cmのパウンド型1個分

・マスコバド糖(なければ黒糖):130g
・粉寒天:4g
・水:500ml
・バランゴンバナナ:1本

 

 

<作り方>
① 水と粉寒天を鍋に入れ、火を入れて混ぜる。沸騰してきたら、かき混ぜながら2分煮る。
② ①を火からおろし、マスコバド糖を加えてよく混ぜる。
③ バナナを縦4等分にし、約1cm角になるように切る(ダイスカット)。
④ 型の底に冷水をあてて、粗熱の取れた②のうち1/4程度を型に入れる。少し固まってきたらバナナを散らして乗せる。これを繰り返して、3層くらいに分けると、全体にバナナが散らばった状態で固められる。最後に残りの1/4を上にかける。
⑤ 冷蔵庫に入れて冷やし固める。1時間程度でできあがり。

 

マスコバド糖とは
バランゴンバナナの産地のひとつであるネグロス島のサトウキビで作られた黒砂糖。サトウキビを搾って煮詰めて乾燥させただけのシンプルな製法で作られています。黒砂糖の独特のえぐみがなく、しつこくない甘さが特徴。このレシピでは、お砂糖のおいしさも一緒に味わえます。

 


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2021年6月1日

【バナナニュース315号】コロナ禍での生産者の暮らし ~ミンダナオ島~ その②

 コロナ禍の影響について、今回はミンダナオ島南コタバト州ツピ町の若い生産者に話を聞きました。現地パートナーのATPIスタッフのアーウィンさんが、今年5月にインタビューを行いました。
※前回のインタビュー【バナナニュース314号】コロナ禍での生産者の暮らし~ミンダナオ島~もよろしければご覧ください。

タタさん

■レイモンド・ハトランさん
(36歳、愛称:タタ)

 タタさんは、奥さんと7歳と10歳の息子2人の4人家族です。以前はマニラでドライバーとして働いていましたが、2年前に生まれ故郷のツピ町に戻り、畑を借りてバランゴンバナナの栽培(400株)を始めました。多くの親戚がバランゴン栽培に取り組んでいたためです。

 彼にとってコロナの影響は甚大で、働き口が減ったために収入が大きく減少してしまいました。副業だった日雇いドライバー(トラックの運転手やレジャーに行く人々の代行運転)の仕事がなくなり、また昨年は建設プロジェクトが中断されたために、石工や大工の仕事を見つけることも困難になりました。

枯葉の除去をするタタさん

 奥さんは宝くじの販売員をしていましたが、その仕事も今年の1月まで中断されていました。バランゴンバナナの収穫量が増えて、少しでも生活の足しになればと思っています。

 子どもの教育についても心配だと言います。コロナが発生して以降、フィリピンの学校では対面授業が再開されておらず、自宅での学習が続いています。彼も奥さんも高校までは卒業していますが、それでも小学生の息子たちに十分に教えられていないと感じているそうです。コロナが早く収束し、仕事も学校も以前の状態に戻ることを願っています。

 

 

バスケスさん

■マイケル・バスケスさん(23歳)

 「パートナーと同棲しており、2歳になる娘がいます。建設現場で作業員として働いており、それがメインの収入源です。月に5,000~7,000ペソ(約1.4万円)の収入があります。バランゴンバナナは1,200株植えており、2週間に1度の収穫で、2,000ペソ(約4,800円)の収入になります。

 昨年はコロナの影響で建設プロジェクトが中断され、再開後も働く人数が制限されているため、収入が減ってしまっています。昨年のロックダウン時は仕事がなく、家でじっとしていました。バスケットボールが趣味でしたが、コロナ以降は楽しむことができていません。

 一方、ロックダウンの時期は家族と一緒に過ごせる時間が増えたので、家族の距離が縮まりました。衛生面や食事についても意識するようになりました。以前は食事にはあまり気を使っておらず、麺類などのすぐに作れるもので済ませていました。今は免疫力を高めることを意識して、栄養価の高い野菜(葉物や有機の野菜など)を食べるようにしています。地方行政が出す規制についても注意を払うようになりました。機会があればワクチン接種を受けたいと思っています。」

(注:フィリピンではコロナ対策として、テレビで専門家が免疫力を高めるために栄養価の高いもの(葉物野菜、モリンガ、果物など)を食べることを呼びかけているそうです。)

 

【フィリピンでのコロナの状況】

 フィリピンでは、今年3月以降にコロナの第2波に見舞われ、6月中旬時点では1日6千人ほどの新規感染者が出ています。

データ元:Our World in Data

 印刷版のバナナニュースでは、「バランゴンバナナの産地は地方にあり、都市部のような感染拡大は起きていません」と記載しましたが、6月に入り、都市部に遅れる形で地方でも感染拡大が起きています。

 6月16日以降はマニラなどの都市部の規制が4段階中の上から3番目(GCQ)に緩和された一方で、地方における規制が強化されました。バランゴンの産地では、東ネグロス州などが上から2番目に厳しい規制(MECQ)の対象地域になっています。特に東ネグロス州の州都のドマゲッティ市はマニラ首都圏以外の地域の中で最も深刻な状況とされています。現時点では、バランゴンバナナの集荷作業には影響は出ていません。

 なお、今回のインタビューが行われたツピ町は、上から2番目の規制対象の州にあります。

 フィリピンのワクチンの接種状況についてはOur World in Dataのデータによると、6月22日時点で、ワクチンを1回以上接種した人は人口比の6.2%であり、同時期の日本の接種率(19%)の3分の1ほどです。

フィリピン政府は6月上旬時点で1.13億回分のワクチンを発注しており(人口は2019年の統計で1.08億人)、内訳は、中国のシノバック社が2,600万回分、ロシアのスプートニクV社が1,000万回分、モデルナ社が2,000万回分、アストラゼネカ社が1,700万回分、ファイザー社が4,000万回分です。そのうち、6月14日までに1,260万回分のワクチンが到着しています。

 また、フィリピン政府は、国民がメーカーをえり好みし接種が遅れる事態を避けるために、接種対象者に直前までメーカー名を告知しないよう地方自治体に指示を出しています。

 

※ワクチンについての情報は下記のニュースから引用しています。

Nikkei Asia

Jetro

日本経済新聞

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2021年4月12日

【バナナニュース314号】コロナ禍での生産者の暮らし ~ミンダナオ島~

 フィリピンでは、今年3月以降にコロナの第2波に見舞われ、マニラなどの都市部を中心に新規感染者が急増し、4月には1日1万人を超えました。5月中旬時点では1日6千人ほどに減少しています。バランゴンバナナの産地は地方にあり、都市部のような感染拡大は起きていませんが、それでも生産者の暮らしに影響が出ています。

データ元:Our World in Data

 

 左の写真は、今年5月のネグロス島バコロド市内のジープニー(乗り合いバス)車内の様子です。

 プラスチックのシートで間仕切りすることが全国的に義務付けられているとのことです。

 一般的なジープニーは定員18名ですが、現在許されている定員は13名です。

下の写真はコロナ前のジープニーの様子です。

 

 

 

<生産者へのインタビュー>

 現地パートナーのATPIスタッフのアーウィンさんが、今年5月にミンダナオ島南コタバト州ツピ町でインタビューを行いました。

バラソさんのバランゴンバナナの畑にて

■アルバート・バラソさん(65歳)

 バラソさんは、2014年にココナッツと混植する作物を探していました。畑に近づくことのある孫のことを思うと農薬を使う作物は植えたくないと考え、バランゴンを選びました。

-バラソさんにコロナ禍の暮らしを聞きました。

 「コロナ禍以前は家族と一緒に町に出かけ、ウィンドウショッピングやコーヒーを飲むのが寛ぎの時間でした。親戚にも定期的に会っていました。そうした絆を深める機会がコロナ禍でめっきり減ってしまいました。マスクとフェイスシールドの着用が煩わしいので、今は町には出ずに、自宅と畑で時間を過ごしています。少し退屈です。

仮に家族が感染して亡くなるようなことがあった場合に、火葬されてしまうことも受け入れがたく、戸惑いを覚えます。(※フィリピン人の9割以上がキリスト教を信仰しており、キリスト教では土葬が基本。)

バラソさんの畑:ココナツとバランゴンの混植(2017年撮影)

孫の教育についても心配です。1年以上対面での授業がなく、自宅学習用の教材を使って親が教師役になることが求められています。子どもの学力を伸ばす機会が制限されています。

畑と同じ敷地にあるバラソさんの家

海外での出稼ぎの仕事も減ってしまいました。以前は娘(ひとり親)がクルーズ船で働いており、仕送りもしてくれていましたが、現在は家に戻っており、家計も厳しくなっています。(※フィリピンの海外出稼ぎ労働者は2019年時点で約220万人に上っていました。)

私たちの町でワクチン接種が行きわたり、コロナが収束し、早く元の生活に戻ることを願っています。」

 

 

 

 

エナテさん(左)とインタビューをしたアーウィンさん

■マメルト・エナテさん(83歳)

 ツピ町からのバランゴンバナナの出荷が始まったのは約20年前ですが、エナテさんはその初期からのメンバーの一人です。7人の子どもを育てあげ、現在は21人の孫がいます。現在バランゴンを140株栽培しており、もう少し増やす計画を持っています。

 「コロナ禍での移動制限が厳しかったときは感染しないように、農作業用にたてた小屋で過ごしていました。コロナ前はバナナの出荷のある日は、バナナと一緒にパッキングセンターまで行き、近くの市場で買い物をすることが日課であり楽しみでした。現在は外出を控え、家で過ごしています。マスクとフェイスシールドの着用が面倒なので、市場にも行っていません。

最近1回目のワクチン接種を受けました。友人からはワクチン接種に対して否定的なことも言われましたが、高齢で免疫が低下しており感染が心配だったので打ちました。無料で受けることができるので友人たちもワクチン接種を受けたらいいと思います。

早く以前のような暮らしに戻りたいです。コロナ禍が早く終息し、余生を穏やかに過ごしたいと思っています。」

 

次号【バナナニュース315号】コロナ禍での生産者の暮らし~ミンダナオ島~ その②では、若い世代の生産者へのインタビュー記事を掲載しています。

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2021年3月12日

【バナナニュース313号】天候不順とコロナ禍の影響 ~ネグロス島~

 フィリピンのネグロス島では、1~2月は北東からの季節風が吹き、毎年低温(と言っても最高気温は30度近くにはなります)と強風被害により収穫量が減少する時期にあたります。今年はそこにラニーニャ現象*が重なり、乾季(12~5月)にも関わらず1~2月に雨が降り続きました。その結果、普段この時期には広がらない葉の病気(シガトカ病)の被害が出て、収穫量が減少しました。3月上旬にバナナの生育状況などを3人の生産者にインタビューしました。

 

◆東ネグロス州カンラオン市に住むフローラ・デトマルさん

フローラさんと夫のフェリペさん

カンラオン市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 2016年からオルタートレード社にバランゴンバナナの出荷を始めました。市場とは違って定期的に決まった価格で買い取ってくれることに魅力を感じたためです。

 1月から3月の彼女のバナナの収穫量は12月までと比べて半減してしまいました。例年この時期は強い北風が吹き収穫量が減少する時期なのですが、それに加えて今年は乾季にも関わらず雨が降り続き、葉の病気が広がったことが要因です。

フローラさんの夫のフェリペさん

 コロナ禍により暮らしぶりも変わりました。移動制限によって、行きたいときに隣村や町に行けなかったり、副収入の稼ぎ口も減ってしまいました。移動制限が最も厳しかった時期は、外出のための許可証を携えて町に日用品を買いに出かけました。現在は収入が減っているので、町での買い物は暮らしに必要な最低限の日用品に留めています。

 子どもの教育も影響を受けています。長女はマニラで働いており、一緒に暮らす次女はすでに結婚していますが、長男はまだ就学中です。フィリピンの学校では1年以上対面での授業が中断されており、住んでいる地域のネット環境が悪くオンライン授業も選べないため、遠隔用に準備された教材を使っての自宅学習が続いています。

フローラさんの自宅

 コロナ禍の不安の中でバランゴンの収穫量も減り、最近あまり楽しいことはないですが、1歳の孫の面倒を見たり、空いた時間にテレビや映画を見て気分転換をしています。天候も良くなってきているので、4月の収穫分からバランゴンの収穫量の回復を期待しています。

 

 

◆東ネグロス州サンタカタリーナ市マンサグマヨン村のサミーさん

マンサグマヨン村のサミー・サラさん

サンタカタリーナ市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 「昨年の10-12月の収穫量に比べると、1-3月は半分くらいに減りました。シガトカ病に加えて、バンチートップウィルス病(注:アブラムシが媒介する病気で感染した株は収穫が見込めなくなる)の影響です。今は、ウィルス病に感染した株の抜き取りと植え替え作業をしており、またオルタートレード社(ATPI)が支給してくれる鶏糞の到着を待っているところです。雨に合わせて鶏糞をまく予定でいます。ちなみに、私の畑は乾季に吹く北東からの季節風の強風被害は受けづらい立地ですが、雨季に吹く南西からの季節風の影響は受けます。

 私が住む村では、季節風の影響で2-3月の収穫量が減少するのはバランゴンに限ったことではなく、他の品種のバナナも似たように減少しています。

 2-3月にバランゴンの収穫量の減少を抑えるため、私の場合は株の植え替えと施肥が必要と思っています。古い株は植えてから20年くらい経過しており、土も痩せてしまっているのためです。

 バランゴンを栽培していて一番心配していることは気候変動です。昔は午前11時頃までは畑で作業ができる気温でしたが、今は朝7時の時点でとても暑くなっています。気候が変化してしまっていることを農家として実感しており、最近バランゴンの収穫量が減少している一因にもなっています。

 コロナ禍の影響ですが、畑仕事には影響はありませんが、移動制限が厳しいので、町に買い物に行くことがめっきりなくなりました。」

 

◆西ネグロス州サンカルロス市コドコド村のエディーさん

コドコド村のエディーさん

 

サンカルロス市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「バランゴンの収穫量は、去年の末に比べると半減してしまっています。例年この時期は季節風の影響で収穫量が減少しますが、今年は1-2月に雨が降り続いたことで葉の病気であるシガトカ病が広がり、さらに収穫量が減少しました。感染した葉を切り落とす努力をしましたが症状がひどかったので、基準の太さに達しないバナナが多く不合格品が多くでました。収穫量の回復は5月くらいになりそうですが、オルタートレード社から支給される鶏糞を3月中に施用できれば回復が早まるかもしれません。いまは、健康な葉が増えてきているので、このまま順調であれば、いいバナナが収穫できそうです。」

 -いつも収穫量が減少する2-3月(注:日本では3-4月のお届け分)に収穫量を維持するアイデアは何かありますか?

 「アミハン(北東からの季節風)の影響を受けにくい畑にバランゴンを植えて、施肥もしっかりすることだと思います。」

 -現在の暮らしは?

 「コロナ禍の影響は、農業をする上では大きな影響は受けていませんが、移動制限が厳しいので、町などの行きたい場所に気軽に行けなくなっているのが大きな変化です。現在バナナからの収入が減っていますが、畑で作物の世話をすることを日々楽しんでいます。心配事としては、雨季(6-11月)が来たときにシガトカ病がまた蔓延しないかということと、台風被害です。天候についてはいつも心配の種です。」

 

 なお、コロナの影響ですが、フィリピンは4月上旬の段階で、連日1万人前後の新規陽性者が報告されており、2度目の大きな波を迎えています(人口は2019年時点で1.08億人)。感染者の多くがマニラ周辺の地域であり、バランゴンバナナの産地がある地域では感染者が急増する状態にはなっておらず、ほとんどの産地が最も低い規制レベルの地域に属しています。4月上旬時点では、バナナの出荷作業に大きな影響は出ていません。

*太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象。日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられています。 出典:気象庁

2021年2月22日

【バナナニュース312号】~福島の子どもたちに届けよう~ APLA(あぷら)のバナナ募金


 (株)オルター・トレード・ジャパンの関連団体である特定非営利活動法人APLA(あぷら)では、2011年3月の原発事故発生以降、「福島の子どもたちに届けよう・バナナ募金」として多くの方からご支援いただき、民衆交易のバランゴンバナナを福島県内17ヵ所の保育園・幼稚園に送り続けています。
先生方は子どもたちのために、届いたバナナを色々なデザートに使ってくださっています。

 コロナ禍以前には、毎年APLAのスタッフが各施設を訪問し、変わりゆく福島の現状に耳を傾けるとともに、子どもたちにバナナやフィリピンのことについて伝え、時にはバナナ生産者が訪問するなどの交流を継続してきました。

〇お届け先訪問時のレポート:バナナ募金お届け先の園を訪問し、交流しました。

 今はそういった活動がままならない状況ですが、保育園や幼稚園からは、子どもたちが描いてくれた絵が届きます。それらの絵はAPLAを介してフィリピンに届けられ、バナナ生産者たちを笑顔にしています。

〇絵を届けた際のレポート:バナナ募金送り先からいただいたお便りをフィリピンの生産者にお届けしました!

福島敬香保育園より届いた子どもたちの絵(2021年2月)

 

*APLAからのメッセージ*

これからもバナナ募金の取り組みは継続してまいります。
皆様からのご支援・ご協力をお願いいたします。

\ バナナ募金について詳しくはこちらからご覧ください。/

 


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2020年10月1日

【バナナニュース308号】モンディア・インボックさん:困難を乗り越える農民の物語②

マキララでの出荷再開後の収穫の様子

 昨年10月にブハイ村のあるマキララ町を大地震が襲いました。マキララ町では2万世帯以上が被災し、多くの家屋が倒壊しました。

 ブハイ村では斜面にあったバランゴンの畑のいくつかは地滑りで失われました。インボックさんの家も流されました。出荷団体のドンボスコ財団は、事務所倒壊などの甚大な被害に遭いながらも、地震の2週間後にはバランゴンの集荷を再開しました。誰もが大惨事に動揺する中でも、人々が生きていくためには収入が必要という判断からでした。バランゴンは人びとが立ち直るのを助け、トラウマの中でも自分たちの土地や農場に戻る勇気を与えました。

マキララでの出荷再開後のパッキングセンターの風景

 今年のコロナ禍でのロックダウンは、先住民族タガバワのコミュニティにさらなる苦しみをもたらしました。商人は地域を横断することができず、ココナツ、ゴム、切り花(アンスリウム)は市場を失いました。一方で、(物流の許可を得た)バランゴンの出荷は継続されたため、バランゴンの回復力は再び人々を驚かせました。危機の際にはバランゴンは食料にもなるため、ブハイ村ではバランゴンの栽培に関心を示す人が増えています。

 インボックさんは今もなお健在です。バランゴンからの収入は、家族の日常生活に必要なものを賄ってくれています。彼は豊かになったわけではありませんが、コツコツ貯めたお金で、バナナをパッキングセンターに運ぶバイクを購入しました。1年前には政府の援助を得て、ブハイ村の農民がバナナをパッキングセンターに運ぶための中古トラックも取得しました。彼は自らの先住民族コミュニティだけでなく、ブハイ村の入植者やイスラム教徒(先住民族マラナオ)にもインスピレーションを与えるモデルとなっています。人々のために夢を見ることをやめず、67歳になってもエネルギーとポジティブさに満ち溢れています。

 なお、地震から1年が経過した現在も、インボックさん達のコミュニティは仮設テントの避難所暮らしが続いてます。もともとの居住地は政府のリスク評価により、居住禁止区域に指定されてしまったためです。

避難所①

 ブハイ村には、2000年に大手のバナナプランテーションが進出し高地栽培バナナの栽培が開始されました。村の人からの聞き取り(2016年)では、農薬散布は早朝にブームスプレー(トラックの後ろに積んだタンクから圧力をかけて道路から農園に農薬を撒く方法)で行われ、風向きによってはきつい臭いの農薬が家まで飛散し、日中もずっととどまっているように感じられるそうです。(ちなみに、バランゴンバナナの圃場はプランテーションから離れた奥地にあります)。

避難所②

 現在の避難所もプランテーションに隣接しており、農薬に曝されるリスクに悩まされています。また、政府が進めるブハイ村コミュニティの移転計画にも問題がありました。再定住地の候補地がプランテーションに四方を囲まれた土地であり、健康リスクが懸念されることです。また、ブハイ村で家を失った先住民族はインボックさん達タガバワの他に、イスラム教徒のマラナオの人たちもいました。(どちらのコミュニティにもバランゴンバナナ生産者がいます)。

タガバワ避難所にパイプ支援

 政府の計画では、2つの先住民族コミュニティが近い地域に移転するものですが、タガバワの従来の暮らし方である養豚や犬を飼うことは、マラナオ(イスラム教徒)の人たちにとっては大きな禁忌事項であり、お互いを尊重した暮らしが継続できるかの懸念がありました。

 そのため現在は、政府の計画に頼る方法ではなく、日本などからの義援金を使って、元来先住民族が暮らしていた土地を購入し、そこに再定住することを目指しています。(マラナオの人たちも親族の土地への移住など、政府が準備する移転地以外の選択肢があります。)

被災者支援の現状は、マキララ地震 復興支援 中間報告をご参照ください。

 

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2020年9月1日

【バナナニュース307号】モンディア・インボックさん:困難を乗り越える農民の物語①

 モンディア・インボックさんは、コタバト州マキララ町ブハイ村に住む先住民族バゴボ・タガバワの120を超える世帯のリーダーです。彼は1953年3月15日にブハイ村で生まれました。数時間歩いて小学校に通いなんとか卒業しましたが、生活が非常に苦しかったため、高等教育を受けることはできず、大家族のために両親の農業を手伝うことになりました。

 ブハイ村は、町までのアクセスが悪い場所で、自分たちの生産物(当時は主にコーヒー)を自らの手で運ぶか、余裕のある人は馬の背に載せて運ばなければなりませんでした。

 23歳の時に結婚し、12人の子どもを授かりましたが、貧困のため、子どもたちのうち7人は1~2歳で亡くなりました。死因ははしかや赤痢などでした。今日では遠隔地の村々にまで届く保健サービスがありますが、当時は何もありませんでした。彼は5人の子どもたちを学校に通わせようと最善を尽くしました。ほとんどの子どもたちは高校に進学し、そのうちの一人は大学3年生になりましたが、兄弟が事故に遭った後、家族のために出費が多すぎたため、それ以上教育を受けさせることはできませんでした。

 経験を積んだインボックさんはやがて部族のリーダーに選ばれました。ブハイ村の農業組合の代表も務めていますが、そのことがきっかけで、バランゴンを出荷するプログラムを知ることになりました。彼は、15歳の時に父親が植えたバランゴンバナナを覚えていて、特別な世話をしていなくても丈夫な実をつけているため、2015年に他のバゴボ・タガバワの人々と一緒にプログラムに参加しました。

 ブハイ村は標高が高く気温が低い地域のため、育苗はうまくいかずに苦労しましたが、株分けの方法で少しずつ作付け数を増やしていきました。そんな折、かつてない大地震がブハイ村を襲いました。2019年10月のことです。

 

■マキララでの地震被害

 ミンダナオ島コタバト州を震源とするマグニチュード6を超える地震が2019年10月16日(M6.3)、29日(M6.6)、31日(M6.5)と連続で発生しました。特に、10月31日に発生した地震の震源地は、バランゴンバナナの産地の一つであるマキララ町に近く、マキララでは土砂崩れが発生し、多くの建物にも被害が出ました。そのため、バランゴンバナナ生産者も含む多くの住民は幹線道路沿いや役場などで避難生活をすることになり、町は一時期ゴーストタウン化しました。詳細については、こちらで報告しています。

 

 左の写真は震災前の2018年にインボックさんを訪ね、家の中でコーヒーを頂いたときのものです。とても質素なお家でした。この家は、地震によって半壊してしまいました。近くの家も同様で、中には地滑りとともに崩落してしまった家もあり、地震の後に現場を見たドンボスコ(マキララからバランゴンの出荷を担う団体)のベッツィーさんは「足が震えた」そうです。

 2018年当時は、インボックさんは12ヘクタールの土地を持っていて、そのうち2.5ヘクタールで1,200株のバランゴンを育てていました。他にタイガーグラス(箒の原料)、アバカ(丈夫な繊維が取れる)、ドリアン、マラン(果物)などを栽培しているとのことでした。バランゴンの畑は地滑りで半分ほどが失われました。

地震で発生した地滑りの様子①

地震で発生した地滑りの様子②

 

急こう配にあるリッキーさんの畑

 インボックさんの畑は家からとても遠いとのことで、当時訪問することはできませんでしたが、近くに住むリッキーさんの畑を見ることができました。
急斜面にバランゴンがゴムやサヨーテ(ハヤトウリ)と共に植えられていました。この畑も地震で大きな被害に遭いました。

リッキーさん

 現在発生しているラニーニャ現象のため雨量が多い状態が続き、地盤が緩んでおり、地滑りは今でも断続的に発生しているそうです。

 マキララ地域からのバランゴンバナナの出荷量は震災前の半分程度まで減少した状態が現在まで続いていますが、ブハイ村を含めてバランゴンバナナの栽培に関心を示す人が増えている状況です。(次号へ続く)

 

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2020年8月18日

【バナナニュース306号】ミンダナオ島・マキララ地震 復興支援 中間報告

2019年10月、ミンダナオ島マキララ町のバランゴンバナナの産地で、マグニチュード6規模の地震が数回発生しました。生産者を含む住民、コミュニティ、そしてバランゴンの出荷責任団体のドンボスコも、地崩れ、インフラや建物の崩壊など、甚大な被害を受けました。

日本の消費者からも支援が寄せられ、復興支援活動が続いています。ドンボスコ財団からの中間報告です。

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バランゴンバナナを通じた消費者や関係者の皆さんからのご支援は、民衆交易が単なるモノの交易を越えて、地理的、社会的および文化的な隔たりをも超えるものであると実感しています。援助を受ける側の私たちとして、民衆交易の深い意味を感じています。

地震直後、緊急救援として食料と避難所の準備をしました。大地震で自宅の崩壊を目撃した人びとの心は非常に傷つきました。また、避難所での食料と水の不足が追い打ちをかけました。食料など生活必需品を他人の親切に依存しなくてはならない難民になるということは、人間性を奪われるような経験でもありました。

また、精神的なショックを受けた被災者のために、医療従事者の協力を得て、トラウマからの回復サポートなどを実施しました。

日本からの支援金も使って再建された住居

そして最も重要なのは、長期的な視点での人びとの生活の再建と復興です。ライフラインの復旧、生計手段の確保、コミュニティづくりなどに取り組んでいます。ドンボスコ財団では、この大きな災害を、社会の在り方を見直し持続可能なコミュニティを作っていくための、ひとつのきっかけとしてとらえています。

復興というのは、単に住居を提供することだけではなく、家を再建するための資材を提供し、食べ物を確保するために野菜や芋類などの苗を配布し、さらに有機農業や適正技術に関する研修なども実施しました。

当初は、仮設住宅に入る条件であった「野菜作り」でしたが、今では住民自身が有機農業の考え方を気に入り、自ら野菜栽培に勤しんでいます。自家消費以上のものができた人は、毎週水曜日に開催される地域の市に出したり、近所の人と物々交換をしたりしています。

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新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中、ドンボスコ財団の働きかけで、村の復興政策にも自家消費用の作物栽培が位置付けられました。現在、バタサン村の人口のほぼ100%が野菜づくりをしています。ドンボスコ財団は、さまざまな果樹の苗500本を57世帯に配布しました。

 

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2020年7月1日

【バナナニュース305号】ミンダナオ島・南コタバト州のバランゴンバナナ生産者 パーフェクトさん・ノルマさん夫妻

 パーフェクト・クルスさん(68歳)と妻のノルマ・クルスさん(69歳)は、ミンダナオ島の南コタバト州でバランゴンの栽培をしています。二人ともすでに定年退職をしていて、現在は農業に時間を費やしています。夫妻には一人娘のジャミニ・アン・クルスさん(34歳)がいます。

 バナナ生産者になる前の1969年から約13年間、パーフェクトさんはフィリピンの自動車業界で見習いからサービス研修センターの責任者になるまで働いていました。彼はまた、サウジアラビアで20年間、5つの会社の下で様々な職種で働いていました。そして2010年に退職し、フィリピンに戻ってきました。

 南コタバト州にある全国灌漑協会で働いていたノルマさんは、パーフェクトさんよりも早く退職しました。2010年、彼女は南コタバト州ツピ町にあるツピバランゴン生産者協会、現在のTUBAGA生産者協同組合のメンバーになり、700株からバナナの栽培を始めました。

ATPIスタッフ(右)とバナナの苗を確認

 2013年、パーフェクトさんもTUBAGAのメンバーになり、彼らはバランゴン農園を拡大することにしました。パーフェクトさんは1500株を植え、ノルマさんはさらに700株を植えました。それ以来、夫妻は協同組合の活動やプログラムに積極的に参加してきました。2015年、ノルマさんはTUBAGAの理事会の一員になりました。彼女は現在、副理事長を務めています。

 

農場で働く皆さんと談笑するパーフェクトさん (右から2人目)

 パーフェクトさんは7年間バランゴンを栽培しています。彼はほとんどの時間を農場の管理に費やしています。品質の良い安全なバランゴンを生産するために、草刈り、袋がけ、タグ付け、施肥などの作業を常にタイムリーに行い、農場の管理を非常に手際よく行っています。農場で働く皆と一緒に、不要な葉を落としたり、草刈り、剪定などの農作業も行っています。収穫の際には、収穫するバランゴンが適切な成熟度であることを常に確認しています。

休憩時のおやつを準備するノルマさん

 一方ノルマさんは、ほとんどの時間を家で過ごし、裏庭の畑や鶏、ペットの世話をしています。彼女は自家製の肥料を使って野菜や花を育てています。家事に追われながらも、農場を訪問してバランゴンの生産性向上のための提案をしたり、TUBAGAの理事会にも熱心に参加しています。

 
 
 バランゴンを育てることは、彼らにとって簡単なことではありませんでした。7年間、多くの浮き沈みを経験してきました。2016年に遡ると、約7ヶ月間の長い干ばつを経験しました。農作物の生産量が激減し、回復に長い時間がかかりました。2016年以降、3月から6月にかけてと乾季が長引いており、バランゴンが発育不全になり、小さな房しかできなくなっています。本来ならば、雨季になるとバランゴンの成長は回復するものなのですが、残念ながら近年はバランゴンが倒れる原因となる強風が増えています。2018年に、彼らのバランゴン農園は強風で壊滅的な被害を受けました。

 それにもかかわらず、パーフェクトさんとノルマさんは、バランゴン栽培を粘り強く続け、災害や病気で傷んだバランゴンの株を継続的に植え替えています。過去2年間に生じた生産量の減少とバランゴン収入の減少は、現在は緩やかに回復しています。

 ところが、2020年7月22日に再びツピ町の広範囲で激しい雨を伴う強風が吹き、多くのバランゴンが倒れてしまいました。

 年金給付を受けていますが、定期的な収入源としてバランゴンを重視しています。ココナツも栽培していますが、3ヶ月ごとにしか収穫することができません。一方バランゴンは週ベースで収入があり、農作業員の労賃や他のニーズに支払うために使用されています。バランゴン交易で重要なのは、環境に優しい農業を通じて安全でオーガニックな食品を提供する生産者コミュニティの一員であることです。彼らは農業にたずさわることに誇りを持っています。ストレスの発散方法としても、適度な農作業をすることにしています。

綺麗に手入れされたクルス夫妻のバナナ畑

 

 パーフェクトさんとノルマさんは、持続的なバランゴン交易を期待しています。「今回の新型コロナウイルスの感染拡大で収入が非常に少なくなっている中、日本の消費者の皆さんが変わらず買い続けてくださっていることに感謝しています」とパーフェクトさんは語ってくれました。

 

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