月: 2016年9月
バナナニュース258号:バランゴンバナナ産地紹介 ~西ネグロス州~
ネグロス島の西半分を占める西ネグロス州の人々は、イロンゴ語を話します。バランゴンバナナを輸出しているオルタートレード社(ATC)の本社は、西ネグロス州の州都バコロドにあります。西ネグロス州の主要な産業は砂糖産業(サトウキビ栽培、製糖、精製)であり、大規模なサトウキビプランテーションが多く見受けられます。2015年は、バランゴンバナナの出荷数量全体の約7.9%を占めている産地です。
バランゴンバナナの生産者の多くは零細農家であり、バランゴンバナナから得た現金収入は、日用品(食品・衣服・石鹸など)の購入費用や子供の学校までの交通費などに活用されています。ATCが2014年に行った調査では、他の産地に比べ総収入におけるバランゴンバナナの収入の割合は小さく、バランゴンバナナからの現金収入が全体の約8%です。
西ネグロス州のバランゴンバナナ産地はオルタートレード社(ATC)が管理をしており、生産者の暮らしの向上、持続可能な地域作りを目指し、生産者の組織化及び組織強化、バナナ栽培のサポート、持続可能な農業に向けたサポートなどを行っています。
西ネグロス州の産地の1つであるパンダノン村では、2006年に生産者協会(PIBFA)を設立し、バランゴンバナナ栽培に取り組んでいます。現在22名の生産者がおり、その内16名の生産者がバランゴンバナナだけでなくサトウキビも栽培し、マスコバド糖製糖工場(ATMC)に販売しています。2015年には、サトウキビの有機及びフェアトレード認証を取得しています。
バランゴンバナナ生産者は、①自分たちの家族、地域の人々の生活の向上、②有機農業の技術の向上を目指しています。また、しっかりとした組織を持つことで、政府や他の組織とも関係を持つことができ、様々なサービス、助成を受けることができています。
パンダノン村の生産者からのメッセージ:
エレゼル・マガパンさん
「バランゴンバナナからは定期的に現金収入を得ることができ、年に1回のサトウキビ収穫までの貴重な現金収入源です。また、他の作物の買取り価格は供給が多いと安くなりますが、バランゴンバナナは価格が一定なので、期待通りの現金収入を得ることができます。日用品購入の現金収入を得るために、今後もバランゴンバナナを植え続けます。」
ロヘリオ・トラベリアさん
「バランゴンバナナから得た現金収入は、日用品の購入に充てています。バランゴンバナナ栽培の難しい点は、しっかりと手入れをしても、台風や干ばつといった自然災害で、期待していた収量を得ることができない時があることです。また、バンチートップ病が広がると大変です。現在はバランゴンバナナの出荷数量が少ないですが、日本の消費者が産地を訪問して下さることを嬉しく思っています。」
ドローレス・セラルボさん
「バランゴンバナナを通じて、日本の消費者と良い関係を築けています。日本の消費者が産地を訪問して下さることが、私たちの誇りです。」
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セミナー「農薬、プランテーションと私たち」報告
現在、アジア各地で日本向けの農産物に危険な農薬が使われ、その農薬を使って作られた農産物は日本にも輸入されています。使われている農薬には日本企業が作ったものも少なくありません。
バナナ・プランテーションはその1つで、日本市場向けにプランテーションがフィリピン・ミンダナオでは作られて、そこでさまざまな危険を持つ農薬が使われています。
オルター・トレード・ジャパンでは農薬を使わずに栽培されたバナナを育てるフィリピンの生産者から日本の生協などの消費者に届ける民衆交易を30年近くにわたっておこなってきています。しかし一方で、日本で消費される大部分のバナナを生産しているミンダナオ島では、大規模なバナナ・プランテーションが操業を続けており、多国籍アグリビジネスを通じて、日本のスーパーに出荷されています。
こうしたプランテーションでは農業労働者や住民への健康被害、環境被害、劣悪な労働条件などの問題がたびたび指摘されていますが、抜本的な改善はみられません。多くの人たちが知らない間に、これらのプランテーションはさらに拡大を続けており、自立を求める農民の生存の脅威ともなっています。
この問題を考えるために、アジアでの農薬規制に長く関わってこられた田坂興亜氏を講師に招き、2016年8月1日に学習会を開催しました。
田坂氏は国際農薬監視行動ネットワーク(PAN)の日本代表として、日本やアジアでの農薬規制に長く活躍されています。
農薬の歴史から、農薬がいかに人類の生存の脅威となっているか、この農薬に頼る農業に代わるオルタナティブについて語っていただきました。
日本向けのバナナ・プランテーションでいかに危険な農薬が使われているか、世界的に懸念の高まっている内分泌撹乱物質は日本ではほとんど報道されなくなっており、政府も対応しようとしておらず、さらに新しい農薬、ネオニコチノイドに関して、世界で規制が進んでいるにも関わらず、日本では規制が逆に緩められるなど、日本での対応のおかしさが浮き彫りとなりました。
その学習会のまとめを16ページの冊子としました。無料でダウンロードいただけます。少しでも日本やアジアでの農薬の被害が減らせるよう、どうぞご活用くださいますようお願いいたします。
セミナー「農薬、プランテーションと私たち」まとめ
ダウンロード(PDF 16ページ、2.6MB)
田坂さんは10月1日に開かれるフィリピン・ミンダナオと私たちの今を考える 『バナナと日本人』で描かれた問題は現在、どうなっているか? ミンダナオ訪問団報告会でも現地からの報告をされる予定です。こちらもぜひご注目ください!
フィリピン・ミンダナオと私たちの今を考える 『バナナと日本人』で描かれた問題は現在、どうなっているか? ミンダナオ訪問団報告
スーパーにならぶバナナのほとんどはフィリピン・ミンダナオのプランテーションで作られています。鶴見良行さんが『バナナと日本人』(岩波新書)でプランテーションでの農薬散布や過酷な労働条件を告発されてから30年あまりがたちましたが、今のプランテーションはどうなっているのでしょうか? 9月初頭に現地を訪れた訪問団がその生々しい実態を報告します。