繰り返されるガザ地区への攻撃、 その背景にあるパレスチナ問題とは fromパレスチナ

2021年8月24日

2021年5月10日、パレスチナ自治区ガザがイスラエル軍による空爆に見舞われた。21日、ガザ地区を実効支配するハマスとイスラエル政府の間で停戦合意が交わされたが、子ども66人を含む242人のガザ住民が犠牲となり、2000人近くが負傷したと国連人道問題調整事務所(OCHA)は発表している。
ガザ地区では2008〜09年、2014年とこれまでもイスラエル軍による大規模な軍事攻撃があり、多数の尊い人命が失われてきた。

東エルサレムの分離壁と入植地

パレスチナ問題の経緯

パレスチナ問題の発端は、19世紀末ロシアやヨーロッパ各地でユダヤ人が迫害されるなか、ユダヤ人国家建設を目ざす「シオニズム」まで遡り、「土地なき民に民なき土地を」というスローガンの下、ユダヤ人のパレスチナ移住が始まった。しかし、そこは元々パレスチナ人が暮らしていた土地だ。
第一次世界大戦後、英国による委任統治が始まると、ユダヤ系移民は一気に増え、パレスチナ人との対立が激化した。英国の三枚舌外交はその後のパレスチナ人とユダヤ系移民の対立に拍車をかけることになる。1947年に、パレスチナ問題は国連の手にゆだねられ、パレスチナの土地にアラブとユダヤの二つの国家を作るという「パレスチナ分割決議」が採択された。当時のパレスチナに新しく移住し、パレスチナの1割にも満たない土地に住んでいたユダヤ人が57%の土地を得るという内容で、アラブ人はこの分割案を拒否した。しかし、イスラエルは1948年に独立を宣言し、第1次中東戦争(1948~1949年)で圧倒的な軍事力に物を言わせてパレスチナの占領を拡大した。

パレスチナ領土の変遷

イスラエルによる占領政策

イスラエル建国の前後にかけて、約75万人のパレスチナ難民が生まれた。パレスチナ人の間では「ナクバ(大災厄)」と呼ばれ、土地を追われた多数のパレスチナ人は難民となってイスラエルや周辺諸国に流れ込んだ。その後難民は増え続け、70年以上が経った今日、500万人以上のパレスチナ難民は故郷に戻ることができていない。
イスラエルは1967年、第3次中東戦争により、さらにヨルダン川西岸地区やガザ地区を軍事占領した。国連安保理はイスラエル軍の撤退を求めたが、イスラエルはこれに応じず、1970年代以降、パレスチナの土地への入植を拡大し、パレスチナ人の土地は虫食い状態となり、さらに2002年からは入植地を守るという名目で分離壁の建設を開始、西岸地区とイスラエルの境界であるグリーンライン(1949年の停戦ライン)を超えてパレスチナ側に深く入り込み、人びとが自由に移動できないなど日常生活に大きな影響が出ている。

分離壁

「エルサレム問題」とは

エルサレムには、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3宗教の聖地がある。1947年の国連のパレスチナ分割決議ではエルサレムを国連の永久信託統治区とした。1948年にイスラエル建国が宣言され、第1次中東戦争後の停戦でエルサレムは分断され、西エルサレムをイスラエルが、東エルサレムはヨルダンが統治することになった。ヨルダンは、当時イスラエルによってパレスチナ人村落から追われた多くの難民たちを「東エルサレム住民」として受け入れた。
1967年、第3次中東戦争後にイスラエルは占領を拡大。一方的に停戦ラインを変更し、エルサレム旧市街を含む東エルサレムを占領する。1980年に一方的に併合し、エルサレムを「永遠の首都」として宣言した。ただし、欧州諸国や日本を含む国連加盟国のほとんどがイスラエルによる東エルサレムの併合を承認していない。

分離壁に描かれたアート

イスラエルによる分離壁建設によってパレスチナ自治区から切り離された東エルサレムに住むパレスチナ人は、イスラエル側からも排除され閉塞状態に置かれてきたが、今回さらに、東エルサレムのシェイク・ジャラ地区のパレスチナ人169人(ナクバで家を失い、難民となった家族)をイスラエル人入植者が実力行使で立ち退かせようとする暴挙が発生した。それに対するパレスチナ人の抗議活動はイスラム教の聖地、アルアクサ・モスクにおけるイスラエル治安部隊との衝突に発展し、それが引き金となって、今回のハマスによるロケット弾の発射とイスラエル軍によるガザ地区への空爆に至った。
今回のガザ攻撃について、停戦合意は結ばれたものの、根本的な問題の解決は何一つなされていないのだ。

※第一次世界大戦において、オスマン帝国と戦った英国は、シオニストを支援すれば欧米在住のユダヤ人から協力を得ることができると考え、「パレスチナにユダヤ国家建設を支持する」という書簡を送り(バルフォア宣言)、一方でオスマン帝国からの独立を目指していたアラブ人に対して、「アラブの独立支持を約束する」というバルフォア宣言とは矛盾する書簡を送っている(「フセイン・マクマホン協定」)。さらに同盟国であるフランスとは、戦争終結後はオスマン帝国の領土を分割するという協定(「サイクス・ピコ協定」)を結んだ。

黒岩竜太 (くろいわ ・りゅうた/ATJ)

 

「パレスチナの声を聴く」オンラインセミナー開催!

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【バナナニュース318号】野菜ボックスの宅配事業inバコロド

2021年8月20日

バランゴンバナナの輸出を担うオルタートレード・フィリピン社では、「the BOX」と称して有機野菜など生鮮食品の宅配事業を展開しています。

2021年7月現在、ネグロス島の州都バコロド市内に623人の登録消費者がいます(定期利用は453人ほど)。70人の生産者のうち、52人はバランゴンバナナやマスコバド糖の生産者です。

2013年に始まったthe BOX。新鮮なものを届けるための物流の改善、商品の品質向上、需給マッチの難しさなど開始当初から抱えている課題に加えて、オンライン注文・決済の要望、環境に配慮した包材を使ってほしい、肉(現在は鶏肉のみの取扱い)、干し魚を取り扱ってほしいなど、新たな課題も出てきています。

「新鮮な有機食材が手に入る」「玄関まで配達してくれるからありがたい」「最初は食の安全を考えて始めたけど、今では毎週の注文が習慣になり、家族の健康にもつながっている」など登録者からのうれしい声も届いているようです。

 

◇コロナ禍での宅配事情◇

感染拡大防止のため移動や出勤の制限があり、事務所自体を閉鎖しているところもあるため、以前は企業や銀行、政府機関などの職場への配達をしていましたが、そこでの登録者が減ってしまったとのことです。一方、買い物のための外出が敬遠され、個人の登録者が増えました。この辺りは日本の状況と同じようです。

日本の宅配事業にヒントを得て始まったフィリピン国内の生産者と消費者をつなぐ取り組み、これからも見守っていきたいと思います。

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セミナー案内:「パレスチナの声を聴く」連続オンラインセミナー

2021年8月11日

2021年5月、イスラエルによる11日間にわたる空爆により、パレスチナ・ガザ地区では256人が命を落とし、約2,000人が負傷しました。

爆撃の被害を受けた人々への物資の緊急配布時の様子

 なぜガザへの攻撃は繰り返されるのでしょうか。また、占領下のパレスチナの状況、現地NGOの活動とその根底にある思いを、直接NGOスタッフからじっくり聴かせてもらうセミナーを企画しました。
 私たち日本の市民に何ができるのかを考える機会としたいと思います。

被害を受けた温室(UAWC提供)

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《第1回》ガザ攻撃による被害と復興支援、そしてオリーブオイルの民衆交易 [終了しました]

日時:2021年9月1日(水)19時〜21時
スピーカー:ミラル・マフルーフ氏(パレスチナ農業復興委員会/アルリーフ社)
※アラビア語・日本語の逐次通訳あり
参加費:無料

オリーブの収穫作業

 5月のガザ攻撃による被害状況やその背景の説明、そしてパレスチナ農業復興委員会(PARC)によるガザ地区での緊急支援および復興支援活動について最新の報告をしていただきます。また、イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸地区では多くの農地がユダヤ人入植地や分離壁に囲まれ、農民たちは農地の破壊や没収、入植者の暴力に晒されています。そうした状況下でPARCと農民が進めているオリーブオイル生産とその民衆交易(フェアトレード)の意義についてもお話いただきます。
【共催】株式会社オルター・トレード・ジャパン、特定非営利活動法人APLA

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《第2回》パレスチナにおける食料主権を取り戻すために [終了しました]

日時:2021年9月28日(火)19時〜21時半
スピーカー:フアード・アブー・サイフ(パレスチナ農業開発センター)、ドゥアー・ザーイド(パレスチナ農業開発センター)、大澤みずほ(日本国際ボランティアセンター パレスチナ事業担当)
※アラビア語・日本語の逐次通訳あり
参加費:無料
【共催】株式会社オルター・トレード・ジャパン、特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター、特定非営利活動法人APLA

コロナ禍で苦しむ都市住民3000家族に野菜の苗を配布

[digg]  5月のガザ攻撃により、住宅のみならず農業部門にも甚大な被害が出たことが、パレスチナ農業開発センター(UAWC)が停戦後に実施した調査で明らかになりました。日本ではほとんど知られていないガザ地区の農業の現状と今後の復興計画をお話しいただきます。オリーブオイルの出荷団体でもあるUAWCは、イスラエルの占領下にあるパレスチナの小農の権利、土地、水、種子を守るための地道な活動を続けてきているNGOです。種子バンクや小規模農民への支援などの活動について報告してもらい、その根底にある食料主権の重要性について、学び考えます。

 

<登壇者プロフィール>

Fuad Abusaif/フアード・アブー・サイフ
パレスチナ農業開発センター(UAWC) ゼネラル・ディレクター

Fuad.png数多くの農業プログラムや農民グループを創設、牽引するリーダーであり、人権活動家。「パレスチナ・ローカル・シードバンク」の創設者の一人でもある。持続的でコミュニティに根ざした開発手法を用い、農民の資源に対する主権強化を通じて、パレスチナの農業の発展に貢献してきた。世界的な農民運動「ビア・カンペシーナ」の一員であるUAWCの代表として、同運動のアラブ地域・北アフリカ地域での活動の発展にも大きな役割を果たし、農民の声を国の政策レベルだけでなく、地域や国際的な場にも届けている。「持続可能な開発と農業・植物保護」の修士取得。

Do’a Zayed/ドゥアー・ザーイド
パレスチナ農業開発センター(UAWC) シードバンク・ディレクター

農学者。植物生産・保護部門で農業科学の学士号を取得。ヘブロン大学の「天然資源とその持続可能な管理」に関する修士課程を首席で卒業。「パレスチナ・ローカル・シードバンク」の創設に関わり、以後10年間にわたって運営を担っている。在来種の種子の生産や気候変動の緩和・適応に関し、パレスチナ内でコンサルタントとして活躍中。

 

大澤 みずほ/おおさわ みずほ
日本国際ボランティアセンター(JVC) パレスチナ事業担当

看護師として国内で救急医療に従事。青年海外協力隊(パラグアイ)を経て、 保健医療の分野に限定せず、より包括的な支援に携わりたいと思い、2018年にJVC入職。 2019年には約半年間エルサレムに駐在し、現在は東京担当。

 

 

 

■お申込みについて
  • 各回ともオンライン会議ツールZoomを利用して開催いたします。
  • どちらか1回のみの参加も可能です。
  • 各回とも参加費無料ですが、事前のお申込みが必要です。お申込みは下記専用フォームよりお願いいたします。

お申込みフォーム:https://ws.formzu.net/dist/S60055496/

 

■本セミナーに関するお問合わせ先

株式会社オルター・トレード・ジャパン広報室(担当:小林)
電話: 03-5273-8176/Email: pr@altertrade.co.jp

特定非営利活動法人APLA(担当:野川)
Email:info@apla.jp

【バナナニュース317号】風に弱いバナナ:台風シーズン到来

2021年8月6日

バナナは強風にとても弱い植物です。強風に遭うと、実をつけたバナナは倒れてしまい、実をつける前のバナナも葉が切れて光合成が十分に行えずに、その後になる実が生育不良となります。この場合は、次の脇芽の成長を待つことになり、収穫量の回復には数か月かかります。

4月の強風被害直後のダンテさんの畑①

沖縄や台湾もバナナの産地ですが、台風が上陸しやすい地域であるため、生産量が安定していません。一方、市販のフィリピン産のプランテーションバナナは、台風がほとんど上陸しないミンダナオ島で生産されています。
バランゴンバナナの交易は、ネグロス島の人びととの出会いから始まりましたが、台風の影響を受けやすい島であるため、現在ではミンダナオ島にも産地が広がっています。ただ、台風がフィリピンの東の海上を北上する際に、季節風が強化されるため、ミンダナオ島のバランゴン産地でも毎年局所的に強風が吹きます。
例えば、ミンダナオ島のレイクセブ町では、4月末以降に断続的に強風が吹いており、収穫量は5月上旬をピークに、現在は減少傾向に入っています。

 

◆レイクセブ町パロシエテ村のダンテさん

ダンテさん夫婦と子どもたち

「2008年からバランゴンを栽培しています。4月末に強風の被害があり、収穫量はピーク時に比べて6分の1ほどに減ってしまっています。バナナは強風に弱いことがネックです。
ただトウモロコシなど他の作物と比べると、栽培コストがかからないことが魅力で、最近新たに200株増やしました(合計で1,050株)。これからもバランゴンの栽培を続けていきたいです。」

ダンテさんの畑

4月の強風被害から3か月ほど経過したダンテさんの畑。新しい葉が出てきている。

4月の強風被害直後のダンテさんの畑② 葉が切れてしまっている。

4月の強風被害直後のダンテさんの畑③ 株ごと倒れてしまったバナナ

◆レイクセブ町ドゥエロッド村のピーターさん(27歳)

ピーターさん家族

「2010年からバランゴンを栽培しています。4月下旬の強風で、500株のうち200株が被害に遭いました。収穫量が戻るのは来年の1月くらいになると思います。
他の作物と比べて栽培コストがかからないことがバランゴンの魅力です。トウモロコシなどの他の作物を栽培したこともありますが、ちゃんと利益が出たのはバランゴンだけでした。今後もバランゴンを作り続けたいと思っています。」

ミンダナオ島のツピ町やネグロス島でも強風被害が発生しており、収穫量が減少する時期に入ってきています。

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ダヌさんの自信作!カカオキタカフェのココアドリンク「ICE COTU」

2021年8月3日

レシピを開発したダヌさん。自信作です!

カカオ産地のパートナー、カカオキタ社のカフェで働くダヌさんが考案したココアドリンクのレシピをご紹介します。

実際にインドネシア・パプア州にあるカカオキタカフェで提供されているメニューと同じレシピです。

 

<材料>
・ パプアのココアパウダー:10 g
・リキッドパームシュガー:30 g
・キャラメルシロップ:15 g
・牛乳:60 ml
・ 水:30 ml
・氷:70 g
・クラフトチョコレート(カカオ67%):適宜

<作り方>
①水を沸騰させて、ココアパウダーを加えよくかき混ぜる。
②①にパームシュガーとキャラメルシロップを加えとろみがつくまでよくかき混ぜる。
③②をグラスに注ぐ。
④牛乳をスチーマーにかけて泡立てる(ミルクフォームを作る)。
⑤氷を③に加えた後、ミルクフォームを液体の上にフワッとのせる感じで丁寧に盛り付ける。クラフトチョコレートを削ってミルクフォームの上に散らして完成!

現地仕様なので甘味がかなり強めです!お家でお試しの際は、甘さはお好みで調整してください。糖分(パームシュガーとキャラメルシロップ)をマスコバド糖の黒みつで代用可能です。その場合は、25gに置き換えてお試しください。また、牛乳はミルクフォームにせずそのまま使ってもおいしく作れます。

レシピで使っているパプアのココアパウダーは、APLASHOPでも販売中です♪

 

 

PtoP NEWS vol.45

2021年8月1日

PDFファイルダウンロードはこちらから→P to PNEWS vol.45