緊急報告「ガザへの攻撃のさなかにヨルダン川西岸地区エリアCで起こっていること」
オリーブオイルの出荷団体の一つ、パレスチナ農業開発センター(UAWC)から、現在のヨルダン川西岸地区の状況の報告が届きました。
現在、パレスチナ人、イスラエル人双方に多くの犠牲者が出ているガザ地区の深刻な状況はメディアでも連日、報道されています。しかし、パレスチナのオリーブオイルの生産者が暮らす西岸地区も入植者による暴力により、非常に緊迫した状況になっています。報告をご覧ください。
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2023年10月15日
ヨルダン川西岸地区のエリアCに住むパレスチナ人は、イスラエルがガザ地区への攻撃を続けるなか、イスラエル軍ならびに入植者による攻撃の激化により、深刻な危機に直面しています。これらの地域は、10月7日以降の戦争以前から常に標的とされ続けてきましたが、ヨルダン川西岸地区における暴力的な攻撃の震源地となっており、それにより、パレスチナ人コミュニティの存亡の危機が増長しています。
この悲惨な状況は、個別の事件が連続して発生しているのではなく、元々その土地に暮らしてきたパレスチナの人びとを一掃することを目的とした、入植者による暴力の組織的かつ残忍なキャンペーンの象徴的な出来事と言えます。
この1週間は、国連人道問題調整事務所(OCHA)が死傷者の記録を開始した2005年以来、ヨルダン川西岸地区で最も多くの死者が出た週となりました。この7日間で、イスラエル兵または入植者は、ヨルダン川西岸地区で少なくとも56人のパレスチナ人を殺害し、少なくとも1200人を負傷させました。殺された56人のうち、少なくとも13人は子どもでした。軍は400人以上を逮捕しています。イスラエルのイタマール・ベン・グヴィール国家安全保障相は、イスラエルの入植者民兵をさらに武装させるため、ヘルメットや防護服とともに10,000丁のアサルトライフル(突撃銃)を購入し、配布すると発表しました。
10月7日以来、少なくとも67件の入植者による攻撃(一部はイスラエル軍も関与)があり、死傷者や物的損害が発生しています。入植者による攻撃は1日平均8件に上り、今年に入ってから報告されていた1日平均3件に比べて大幅に増加しています。イスラエル兵と入植者は、自制することなく実弾を発射し、女性や子どもを含む民間人に危害を加え、殺害しています。憂慮すべきことに、こうした攻撃行為は、イスラエル軍や政府によって容認されているだけでなく、直接支援され、実行されることさえあります。イスラエル人入植者の攻撃は、特にエリアCにおいて、さらにエスカレートすることは確実です。
イスラエルは、明らかな恐怖心を生み出しています。軍の保護の下、入植者たちは大胆さを増し、特定のベドウィン(遊牧民族)コミュニティで見られるように、誘拐を試みることさえあります。入植者によるこうした暴力は、特に、すでに強制移住の危険にさらされているベドウィンやその他のパレスチナ人コミュニティに狙いを定めています。
10月12日、入植者たちは、ラマッラ近郊、南ヘブロン丘陵、ヨルダン渓谷の少なくとも3つのそのようなコミュニティを標的にし、家を離れて仕方なく退去するか、さもなくば耐え難い暴力と危険に直面しつづけるか、という事態をもたらしました。ワディ・シク、アラブ・アル=ムレイハット、アル・ハムラ、サムラのコミュニティでは、イスラエル人入植者や軍によって強制的に立ち退きさせられたという証言があります。こうした大胆な行為は、自分たちは免責されるという信念を持っていることを映し出しています。
ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人に対するイスラエルの攻撃激化は、これまでも大きな障害に直面しながらも、自分たちの土地に生活の糧を頼ってきた農民や農村コミュニティの人びとの生活に悲惨な打撃を与えています。
イスラエル軍はさらに、オリーブやグアバの重要な収穫時期の間、農民が自らの畑にアクセスすることを認めていません。パレスチナ人農民が畑にアクセスすることを組織的に防ぐイスラエル軍の動きは、農民から当面の収入源を奪うだけでなく、パレスチナ人コミュニティの長期的な食料安全保障をも脅かしています。これはパレスチナの食料主権、つまり尊厳をもって食料を入手し、生産し、消費する基本的な権利に対する露骨な攻撃です。これらの行為は、既存の抑圧的な制限を悪化させ、基本的人権の重大な侵害を映し出しています。
イスラエルはまた、重要なインフラを組織的に破壊しています。日常生活や生計手段確保に不可欠な道路や水路が標的とされ、使用不能にされています。このことは、エリアCのパレスチナ人コミュニティをさらに孤立させ、苦しみを悪化させ、食料や水といった基本的必需品を手にすることをさらに困難にしています。
国際社会は、こうしたあからさまな人権侵害が続いていることを目前にして、傍観すべきではありません。事態の緊急性は、エリアCのパレスチナ人コミュニティの安全と安心を確保し、加害者の非難されるべき行為に対する責任を追及するために、即時かつ断固とした行動を求めています。
事態の深刻さを明確に示すために、記録されている入植者による暴力事件を紹介します:
- 武装した入植者が軍の保護のもと、ヘブロン東部のトワニ村、ナブルスのブリン、ヤツマ、カバラン村の住民に発砲。
- ヘブロン東部地域での攻撃。マサファ・ヤタでの器物損壊、ジンバでの住宅や太陽電池の破壊など。
- ワジ・アスシクでの30家族の完全な強制移住と、分離壁抵抗運動スタッフへの武力攻撃。
- アル・ハムラ検問所に近いアイン・シブリ付近のベドウィンの集会に対する入植者の攻撃。
- ドマからブリンに至るナブルス南部の村々の農民は、オリーブ畑にアクセスするのに極度の危険に直面している。
- ヤタにて、入植者が至近距離からパレスチナ人を銃撃。
- イスラエル軍が、サルフィートのデア・イスティヤの農道と水道管を破壊。
- ブリン村のギバット・ロネン前哨地とブラチャ入植地付近のすべての農道が閉鎖された。
- トゥバスでは、入植者が2人の若者を誘拐しようとした。
- サルフィートのカラワット・バニ・ハッサン村でパレスチナ人がオリーブ畑へのアクセスを拒否されている。
- ラマッラの西では、イスラエル軍がアル・ジャニヤ村とラス・カルター村のすべての入り口を封鎖している。
- 分離壁の裏側に暮らすカルキリヤの農民は、移動制限のためにグアバを収穫できないと報告している。
- 先週、ファガラとマサファ・ヤタで入植者の攻撃により強制移住させられたパレスチナ人の住居2部屋、井戸、フェンス、複数の樹木がブルドーザーによって取り壊された。
私たちは国際社会に対し、ヨルダン川西岸地区におけるイスラエルによるパレスチナ人への暴力・暴行を停止し、パレスチナ人を保護するため、またパレスチナ人の土地へのアクセスを保護するため、即時かつ断固とした行動をとるよう要請します。 以上
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< パレスチナのオリーブオイルの生産者が暮らすエリアC >
これはヨルダン川西岸地区におけるパレスチナの領土を示した地図です。ヨルダン川西岸地区はエリアA、B、Cと呼ばれる3つの地区に分類されます。濃い緑色の部分がエリアAまたはBです。
エリアA(西岸地区の18%)にはラマッラ、ナブルスなどの大きい都市が含まれ、行政も治安もパレスチナ暫定自治政府が担います。エリアB(西岸地区の22%)では、行政はパレスチナ、治安はイスラエルが権限を持っています。一方、主に農村部に広がるエリアCは西岸地区の60%近くの面積を占めますが、行政も治安も完全にイスラエル占領当局のコントロール下にあります。このように西岸地区ではパレスチナ自治政府が管轄するエリアAとBは一部であり、イスラエル統治下にあるエリアCが半分以上を占めているのです。
オリーブ生産者のほとんどがこのエリアCに住んでいます。この地域には120を超える入植地と約100の前哨地(将来の入植地建設の拠点とするために、入植者が当局の許可を得ずに、勝手に土地を占領し、バラックを建て、農地を開拓している場所)が西岸地区全体に広がっています。パレスチナ人とイスラエル人が隣り合わせで暮らすこのエリアCで入植者による暴力事件が頻発しているのです。
・赤い点が入植地、黒字の点が前哨地
※図はいずれもパレスチナ農業復興委員会(PARC)提供
パレスチナでは10月から年に1回のオリーブの収穫が始まりますが、今年は畑に行くことも危険でままならない状況のようです。私たちはオリーブ生産者が暮らすエリアC地区の状況を今後も注視してまいります。
広報室 小林和夫
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