レポート

パレスチナ西岸地区・ガザ地区の現状に関する報告

2025年8月4日

オリーブオイル出荷団体の一つ、パレスチナ農業開発センター(UAWC)より、パレスチナ西岸地区及びガザ地区における7月現在の現状報告が届きました。

【西岸地区の状況】

植民地拡大、分断、および組織的な抑圧

2025年現在、占領下の西岸地域は、イスラエルの入植型植民地拡大と制度化されたアパルトヘイトの強化されたキャンペーンに直面し続けています。これには、入植地の急速な拡大、土地の接収、強制移住、入植者による暴力、及びパレスチナ人の移動と経済活動に対する体系的な制限が含まれます。これらの行為は、占領国の民間人を被占領地に移転することを禁止する第4ジュネーブ条約を含む国際法に明白に違反しています。また、人権を保護し、人種差別を禁止する国際法規範にも反しています。

イスラエルの監視団体と国連機関が発表したデータによると、2025年上半期だけで、イスラエル当局は1万4,000戸を超える新たな入植者住宅建設を承認しました。入植地建設は、パレスチナ人の土地と資源に対するイスラエルの永久的な支配を強化し続けています。2025年1月以降、西岸地区で少なくとも580のパレスチナ人施設が破壊され、そのうちエリアCの遊牧民コミュニティ全体が破壊され、950人以上が避難を余儀なくされましたその大半は子どもです。

入植地のアウトポスト(前哨基地、イスラエル政府非公認の入植地)、軍事射撃区域、入植者専用バイパス道路、分離壁によって、現在100万ドナム(約1,000㎢)を超える土地が事実上併合されています。イスラエル軍は、パレスチナ人の農地や水源へのアクセスを禁止する閉鎖軍事区域を継続的に施行し、地域の生計をさらに破壊しています。

入植者の暴力は劇的に激化し、2025年1月から7月までの間に1,250件を超える攻撃が記録されました。これは2024年同期比で60%の増加です。これらの攻撃は、イスラエル兵士の保護下または直接的な支援を受けて行われ、人への攻撃、作物への放火、家畜の殺傷、財産の強奪などが含まれます。

パレスチナ人の移動は、655を超える固定化した検問所路上の障害物、軍事ゲート、入植者による道路封鎖により、ますます制限されています。これにより、西岸地区は孤立した地域に寸断されています。これらの制限は、パレスチナ人の移動の自由の権利を侵害するだけでなく、医療サービス、教育、市場、農地へのアクセスを制限しています。

社会経済状況はさらに悪化しています。西岸地区の失業率は2025年半ばまでに27%に達し、若年層と農村地域ではさらに高い水準が報告されています。農業生産は土地の接収、入植者の威嚇、軍事制限により深刻に制約されており、パレスチナコミュニティ全体で食料不安が深刻化しています。

2025年に最も懸念される動向の一つは、E1入植地計画の復活と進展です。この計画は、違法なマアレ・アドミム入植地と占領下の東エルサレムの間にある12平方キロメートルの土地に、3,412戸の入植地住宅を建設するものです。イスラエル民間行政の高位計画委員会は、2025年8月6日にこの計画を審議する予定です。この計画が実施されれば、E1は西岸地区を物理的に分断し、北と南を分離し、東エルサレムを周辺のパレスチナ人コミュニティから孤立させることになります。

この計画は、特にラマッラ、ベツレヘム、東エルサレム近郊に残った開けた地域において、パレスチナ人の重要な農業地域、放牧地、水資源へのアクセス路を直接脅かします。放牧を営む家族の強制移住を加速し、農地へのアクセスを制限し、分断と排除を特徴とするアパルトヘイトのインフラをさらに固定することになってしまいます。

イスラエルの入植地政策は国際法に反して継続されています。これはパレスチナ領土の分断を深化させ、連続したパレスチナ国家の実現可能性をむしばみ、農村部と農業で生計を立てる暮らしを解体するプロセスを加速させています。この体系的な抑圧は、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、およびパレスチナ領土における人権状況に関する国連特別報告者を含む多くの機関によって、1973年のアパルトヘイト犯罪の抑圧と処罰に関する国際条約」に違反するアパルトヘイト体制を構成するものとして広く認識されています

【ガザ地区の状況】

ジェノサイド、飢饉、そして武器となった援助

2023年10月以降、ガザ地区は大量殺戮、強制移住、飢餓を戦争の武器として体系的に使用するジェノサイド(集団虐殺)攻撃に直面しています。これは国際人道法の重大な違反であり、ジェノサイド条約第2条が禁止した「人口の全部または一部を破壊する意図をもって、生活条件を押し付ける」というジェノサイドの要件を満たしています。

ガザ人口の85%以上(190万人)が避難を余儀なくされています。イスラエル軍は意図的に農場、パン屋、市場、漁港、水道施設を破壊し、ガザの地域自給システムを機能不全に陥らせ、食料主権を抹消しています。

総合的食料安全保障レベル分類(IPC)2025年7月報告によると:

  • ガザの人口の100%が危機レベル(フェーズ3)の飢餓またはそれ以上の状況に直面しています;
  • 47万人が飢饉状態(フェーズ5)にあり、110万人が緊急事態(フェーズ4)にあります;
  • 飢饉は援助が最も制限されている北部と中央部で最も深刻です。

ガザ人道財団(GHF)は軍事化された援助と死のインフラ

2025年5月、イスラエルは「ガザ人道財団(GHF)」を設立し、中立的な援助機関として偽って宣伝しました。実際には、GHFは占領当局の機関であり、支配、分断、非人間化を目的としています。GHFは、正当な人道支援の手段を、軍事化され、依存関係を強要する国際人道法に違反したシステムに置き換えたものです。

GHFの配給場所が死を招く拠点となっています。7月中旬までに、これらの拠点周辺で少なくとも13,805人のパレスチナ人が殺され、5,252人が負傷しました。イスラエルの有力紙、ハアレツの調査によると、イスラエル軍兵士は援助物資車両の近くで民間人に対して発砲するよう命じられていました。これはローマ規程(第8条)に定める戦争犯罪に該当し、国際人道法第55条(人道援助の妨害禁止)の違反に当たります。

国連人道問題調整事務所(OCHA)は、パレスチナ人が食料を求める時に、飢餓か射殺かの選択を迫られていると警告しました。この援助モデルは、生命、尊厳、安全の権利を侵害しています。

人道支援体制の弱体化

GHFは、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の解体と既存の援助システムを阻害するキャンペーンと共に発足しました。支援物資を積んだ車両は恣意的な遅延、超えてはならない一線、直接的な軍事的妨害に直面しており、特に飢餓が最も深刻な地域で顕著です。これらの措置は、飢餓を戦争手段として禁止しているジュネーブ条約第1追加議定書第54条に違反しています。

パレスチナ人はGHFを断固として拒否しています。UAWCを含む160を超える団体は、人道支援がコミュニティの自治や尊厳を奪うべきではないと確認しています。食料は慈善ではなく、主権、文化、抵抗です。

ATJでは、パレスチナの平和を求める他団体とともに「パレスチナ国家承認を求める実行委員会」に加わり、日本政府に対してパレスチナの国家承認を求めるオンライン署名を集めています。
ぜひご協力お願いいたします。

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