2021年6月1日

【バナナニュース315号】コロナ禍での生産者の暮らし ~ミンダナオ島~ その②

 コロナ禍の影響について、今回はミンダナオ島南コタバト州ツピ町の若い生産者に話を聞きました。現地パートナーのATPIスタッフのアーウィンさんが、今年5月にインタビューを行いました。
※前回のインタビュー【バナナニュース314号】コロナ禍での生産者の暮らし~ミンダナオ島~もよろしければご覧ください。

タタさん

■レイモンド・ハトランさん
(36歳、愛称:タタ)

 タタさんは、奥さんと7歳と10歳の息子2人の4人家族です。以前はマニラでドライバーとして働いていましたが、2年前に生まれ故郷のツピ町に戻り、畑を借りてバランゴンバナナの栽培(400株)を始めました。多くの親戚がバランゴン栽培に取り組んでいたためです。

 彼にとってコロナの影響は甚大で、働き口が減ったために収入が大きく減少してしまいました。副業だった日雇いドライバー(トラックの運転手やレジャーに行く人々の代行運転)の仕事がなくなり、また昨年は建設プロジェクトが中断されたために、石工や大工の仕事を見つけることも困難になりました。

枯葉の除去をするタタさん

 奥さんは宝くじの販売員をしていましたが、その仕事も今年の1月まで中断されていました。バランゴンバナナの収穫量が増えて、少しでも生活の足しになればと思っています。

 子どもの教育についても心配だと言います。コロナが発生して以降、フィリピンの学校では対面授業が再開されておらず、自宅での学習が続いています。彼も奥さんも高校までは卒業していますが、それでも小学生の息子たちに十分に教えられていないと感じているそうです。コロナが早く収束し、仕事も学校も以前の状態に戻ることを願っています。

 

 

バスケスさん

■マイケル・バスケスさん(23歳)

 「パートナーと同棲しており、2歳になる娘がいます。建設現場で作業員として働いており、それがメインの収入源です。月に5,000~7,000ペソ(約1.4万円)の収入があります。バランゴンバナナは1,200株植えており、2週間に1度の収穫で、2,000ペソ(約4,800円)の収入になります。

 昨年はコロナの影響で建設プロジェクトが中断され、再開後も働く人数が制限されているため、収入が減ってしまっています。昨年のロックダウン時は仕事がなく、家でじっとしていました。バスケットボールが趣味でしたが、コロナ以降は楽しむことができていません。

 一方、ロックダウンの時期は家族と一緒に過ごせる時間が増えたので、家族の距離が縮まりました。衛生面や食事についても意識するようになりました。以前は食事にはあまり気を使っておらず、麺類などのすぐに作れるもので済ませていました。今は免疫力を高めることを意識して、栄養価の高い野菜(葉物や有機の野菜など)を食べるようにしています。地方行政が出す規制についても注意を払うようになりました。機会があればワクチン接種を受けたいと思っています。」

(注:フィリピンではコロナ対策として、テレビで専門家が免疫力を高めるために栄養価の高いもの(葉物野菜、モリンガ、果物など)を食べることを呼びかけているそうです。)

 

【フィリピンでのコロナの状況】

 フィリピンでは、今年3月以降にコロナの第2波に見舞われ、6月中旬時点では1日6千人ほどの新規感染者が出ています。

データ元:Our World in Data

 印刷版のバナナニュースでは、「バランゴンバナナの産地は地方にあり、都市部のような感染拡大は起きていません」と記載しましたが、6月に入り、都市部に遅れる形で地方でも感染拡大が起きています。

 6月16日以降はマニラなどの都市部の規制が4段階中の上から3番目(GCQ)に緩和された一方で、地方における規制が強化されました。バランゴンの産地では、東ネグロス州などが上から2番目に厳しい規制(MECQ)の対象地域になっています。特に東ネグロス州の州都のドマゲッティ市はマニラ首都圏以外の地域の中で最も深刻な状況とされています。現時点では、バランゴンバナナの集荷作業には影響は出ていません。

 なお、今回のインタビューが行われたツピ町は、上から2番目の規制対象の州にあります。

 フィリピンのワクチンの接種状況についてはOur World in Dataのデータによると、6月22日時点で、ワクチンを1回以上接種した人は人口比の6.2%であり、同時期の日本の接種率(19%)の3分の1ほどです。

フィリピン政府は6月上旬時点で1.13億回分のワクチンを発注しており(人口は2019年の統計で1.08億人)、内訳は、中国のシノバック社が2,600万回分、ロシアのスプートニクV社が1,000万回分、モデルナ社が2,000万回分、アストラゼネカ社が1,700万回分、ファイザー社が4,000万回分です。そのうち、6月14日までに1,260万回分のワクチンが到着しています。

 また、フィリピン政府は、国民がメーカーをえり好みし接種が遅れる事態を避けるために、接種対象者に直前までメーカー名を告知しないよう地方自治体に指示を出しています。

 

※ワクチンについての情報は下記のニュースから引用しています。

Nikkei Asia

Jetro

日本経済新聞

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パレスチナ・ガザ地区救援カンパのお願い

2021年5月26日

東エルサレムにあるシェイク・ジャラ地区におけるパレスチナ人居住者の強制立ち退き命令、そして、イスラム教徒にとって最も神聖な月(ラマダン)に聖地アルアクサー・モスクで起きた衝突をきっかけに、イスラエル政府とガザ地区を実行支配するハマスの間で大規模な戦闘が発生しました。

UNRWAが運営支援する学校に避難している家族の様子(PARC提供)

とりわけイスラエル軍によるガザ爆撃は5月10日から停戦となる21日まで続き、国連報告によると、ガザ地区では子ども66人を含む242人が犠牲となり、負傷者は1,948人にのぼりました。この間の住宅地への爆撃で15,700もの住居が破壊されました。そのため、停戦時には国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営支援する学校に約71,000人、親戚の家に約35,000人が避難していました。

生活に必要なものがほとんどない状況が続いています(PARC提供)

こうした事態を受けて、パレスチナのオリーブオイルの2つの出荷団体、パレスチナ農業復興委員会(PARC)及びパレスチナ農業開発センター(UAWC)では、爆撃によって家が壊された家族に対する緊急救援を開始しました。

弊社と姉妹団体のAPLAでは、パレスチナの人々に心からの連帯を込めて、両団体の活動を支援するため募金を呼びかけます。

何卒できる限りのご協力をお願い申し上げます。

UNRWAが運営支援する学校に避難している家族の様子(PARC提供)

 

救援活動について

  • 家から着の身着のままで避難したので、多くの避難民が食料や日常生活に必要なものを何も持ち出せませんでした。PARCはオリーブオイルや調味料、主食の一つであるクスクス、粉ミルクなどを詰めた食料セットを配布します。UAWCは食料セットに加えて毛布やおむつの配布も予定しています。
  • 食料は主にヨルダン川西岸地区の小規模農家や農業協同組合から購入し、ガザ地区に運搬します。
  • PARC、UAWCは独自に救援活動を行いますが、支援区域や支援者が重ならないように適時、情報交換しながら活動を進めます。物資配布はガザ地区職員の他、ボランティア、関係する青年、女性団体などの協力を得て行います。
  • 家を破壊された人びとの住居再建、大きな被害を受けた農地や農業施設の復興も大きな課題です。現地の状況に合わせて必要な支援を行っていきます。

 

募金方法

募金の受付の窓口は姉妹団体であるNPO法人APLAとなります。

■郵便振替
00190-3-447725 特定非営利活動法人APLA
※通信欄に必ず「ガザ救援」と明記ください。

■銀行振込み/クレジットカード決済
寄付フォーム からご寄付いただけます。「支援の種類」で「今回のみ」、「寄付の使途」で「81.ガザ救援」をお選びいただき、必要事項をご記入ください。

  • 領収書の発行は省略させて頂きます。領収書が必要な場合はAPLA事務局までご連絡下さい。
  • 募金総額の一部(上限10%)を事務経費のために使用させていただきますこと予めご了承ください。

パレスチナが燃えている~ガザ情勢~

2021年5月20日

メディアでも報道されておりますように、ガザ地区では5月10日よりイスラエル軍による爆撃が続き、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、5月19日現在、子ども63名を含む219名が犠牲となりました。

パレスチナのオリーブオイルの出荷団体、パレスチナ農業復興委員会(PARC)及びパレスチナ農業開発センター(UAWC)に関係者の安否を問い合わせたところ、PARCのフェアトレード事業会社であるアルリーフの職員、Nayef Al Neseroneさんの娘のパートナーであるMohammed Abu Ayeshさん(28歳)が爆撃で亡くなられたそうです。ATJが扱うオリーブオイルの産地であるヨルダン川西岸地区でも緊張が高まっており、イスラエル入植者によるオリーブ生産者に対する嫌がらせが発生している模様です。

2,200人以上の犠牲者を出した2014年の戦争以降、最大規模となった今回の爆撃がなぜ起きたのか、その背景についてはPARCからのアピール「パレスチナが燃えている~占領に終止符を、パレスチナに解放を」をご覧ください。

イスラエル政府、ハマス双方ともに攻撃を止める姿勢が見られない中、日々犠牲者が増えていく事態を受けて、5月17日、国内でもパレスチナに関わる4つのNGOが外務省に対して一刻も早い停戦に向けた外交的努力を求める声明を提出しました。ATJも呼び掛けを受けて、賛同団体として名前を連ねました(5月20日時点で15の団体が賛同しています)。

JVC – 【日本のNGO団体の声明】イスラエルおよびガザに一刻も早い停戦を – 声明/提言書など

壁に囲まれ逃げることもできない中で爆撃にさらされ、恐怖に脅えるガザの人たちが安心できる日が1日も早くくるように願っています。

 

 

【バナナニュース313号】天候不順とコロナ禍の影響 ~ネグロス島~

2021年4月23日

 フィリピンのネグロス島では、1~2月は北東からの季節風が吹き、毎年低温(と言っても最高気温は30度近くにはなります)と強風被害により収穫量が減少する時期にあたります。今年はそこにラニーニャ現象*が重なり、乾季(12~5月)にも関わらず1~2月に雨が降り続きました。その結果、普段この時期には広がらない葉の病気(シガトカ病)の被害が出て、収穫量が減少しました。3月上旬にバナナの生育状況などを3人の生産者にインタビューしました。

 

◆東ネグロス州カンラオン市に住むフローラ・デトマルさん

フローラさんと夫のフェリペさん

カンラオン市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 2016年からオルタートレード社にバランゴンバナナの出荷を始めました。市場とは違って定期的に決まった価格で買い取ってくれることに魅力を感じたためです。

 1月から3月の彼女のバナナの収穫量は12月までと比べて半減してしまいました。例年この時期は強い北風が吹き収穫量が減少する時期なのですが、それに加えて今年は乾季にも関わらず雨が降り続き、葉の病気が広がったことが要因です。

フローラさんの夫のフェリペさん

 コロナ禍により暮らしぶりも変わりました。移動制限によって、行きたいときに隣村や町に行けなかったり、副収入の稼ぎ口も減ってしまいました。移動制限が最も厳しかった時期は、外出のための許可証を携えて町に日用品を買いに出かけました。現在は収入が減っているので、町での買い物は暮らしに必要な最低限の日用品に留めています。

自宅学習をする次女のジーングレースさん。観光に関わる仕事に就くのが夢。

 子どもの教育も影響を受けています。長男はマニラで働いており、一緒に暮らす長女はすでに結婚しています が、次女はまだ就学中です。 フィリピンの学校では1年以上対面での授業が中断されており、住んでいる地域のネット環境が悪くオンライン授業も選べないため、遠隔用に準備された教材を使っての自宅学習が続いています。

※印刷版での子どもたちの情報が間違っていたため訂正します。

 

フローラさんの自宅

 コロナ禍の不安の中でバランゴンの収穫量も減り、最近あまり楽しいことはないですが、1歳の孫の面倒を見たり、空いた時間にテレビや映画を見て気分転換をしています。天候も良くなってきているので、4月の収穫分からバランゴンの収穫量の回復を期待しています。

 

 

◆東ネグロス州サンタカタリーナ市マンサグマヨン村のサミーさん

マンサグマヨン村のサミー・サラさん

サンタカタリーナ市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 「昨年の10-12月の収穫量に比べると、1-3月は半分くらいに減りました。シガトカ病に加えて、バンチートップウィルス病(注:アブラムシが媒介する病気で感染した株は収穫が見込めなくなる)の影響です。今は、ウィルス病に感染した株の抜き取りと植え替え作業をしており、またオルタートレード社(ATPI)が支給してくれる鶏糞の到着を待っているところです。雨に合わせて鶏糞をまく予定でいます。ちなみに、私の畑は乾季に吹く北東からの季節風の強風被害は受けづらい立地ですが、雨季に吹く南西からの季節風の影響は受けます。

 私が住む村では、季節風の影響で2-3月の収穫量が減少するのはバランゴンに限ったことではなく、他の品種のバナナも似たように減少しています。

 2-3月にバランゴンの収穫量の減少を抑えるため、私の場合は株の植え替えと施肥が必要と思っています。古い株は植えてから20年くらい経過しており、土も痩せてしまっているのためです。

 バランゴンを栽培していて一番心配していることは気候変動です。昔は午前11時頃までは畑で作業ができる気温でしたが、今は朝7時の時点でとても暑くなっています。気候が変化してしまっていることを農家として実感しており、最近バランゴンの収穫量が減少している一因にもなっています。
 
 コロナ禍の影響ですが、畑仕事には影響はありませんが、移動制限が厳しいので、町に買い物に行くことがめっきりなくなりました。」

 

◆西ネグロス州サンカルロス市コドコド村のエディーさん

コドコド村のエディーさん

 

サンカルロス市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「バランゴンの収穫量は、去年の末に比べると半減してしまっています。例年この時期は季節風の影響で収穫量が減少しますが、今年は1-2月に雨が降り続いたことで葉の病気であるシガトカ病が広がり、さらに収穫量が減少しました。感染した葉を切り落とす努力をしましたが症状がひどかったので、基準の太さに達しないバナナが多く不合格品が多くでました。収穫量の回復は5月くらいになりそうですが、オルタートレード社から支給される鶏糞を3月中に施用できれば回復が早まるかもしれません。いまは、健康な葉が増えてきているので、このまま順調であれば、いいバナナが収穫できそうです。」

-いつも収穫量が減少する2-3月(注:日本では3-4月のお届け分)に収穫量を維持するアイデアは何かありますか?

 「アミハン(北東からの季節風)の影響を受けにくい畑にバランゴンを植えて、施肥もしっかりすることだと思います。」

-現在の暮らしは?

 「コロナ禍の影響は、農業をする上では大きな影響は受けていませんが、移動制限が厳しいので、町などの行きたい場所に気軽に行けなくなっているのが大きな変化です。現在バナナからの収入が減っていますが、畑で作物の世話をすることを日々楽しんでいます。心配事としては、雨季(6-11月)が来たときにシガトカ病がまた蔓延しないかということと、台風被害です。天候についてはいつも心配の種です。」

 

 なお、コロナの影響ですが、フィリピンは4月上旬の段階で、連日1万人前後の新規陽性者が報告されており、2度目の大きな波を迎えています(人口は2019年時点で1.08億人)。感染者の多くがマニラ周辺の地域であり、バランゴンバナナの産地がある地域では感染者が急増する状態にはなっておらず、ほとんどの産地が最も低い規制レベルの地域に属しています。4月上旬時点では、バナナの出荷作業に大きな影響は出ていません。

*太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象。日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられています。 出典:気象庁

2021年4月12日

【バナナニュース314号】コロナ禍での生産者の暮らし ~ミンダナオ島~

 フィリピンでは、今年3月以降にコロナの第2波に見舞われ、マニラなどの都市部を中心に新規感染者が急増し、4月には1日1万人を超えました。5月中旬時点では1日6千人ほどに減少しています。バランゴンバナナの産地は地方にあり、都市部のような感染拡大は起きていませんが、それでも生産者の暮らしに影響が出ています。

データ元:Our World in Data

 

 左の写真は、今年5月のネグロス島バコロド市内のジープニー(乗り合いバス)車内の様子です。

 プラスチックのシートで間仕切りすることが全国的に義務付けられているとのことです。

 一般的なジープニーは定員18名ですが、現在許されている定員は13名です。

下の写真はコロナ前のジープニーの様子です。

 

 

 

<生産者へのインタビュー>

 現地パートナーのATPIスタッフのアーウィンさんが、今年5月にミンダナオ島南コタバト州ツピ町でインタビューを行いました。

バラソさんのバランゴンバナナの畑にて

■アルバート・バラソさん(65歳)

 バラソさんは、2014年にココナッツと混植する作物を探していました。畑に近づくことのある孫のことを思うと農薬を使う作物は植えたくないと考え、バランゴンを選びました。

-バラソさんにコロナ禍の暮らしを聞きました。

 「コロナ禍以前は家族と一緒に町に出かけ、ウィンドウショッピングやコーヒーを飲むのが寛ぎの時間でした。親戚にも定期的に会っていました。そうした絆を深める機会がコロナ禍でめっきり減ってしまいました。マスクとフェイスシールドの着用が煩わしいので、今は町には出ずに、自宅と畑で時間を過ごしています。少し退屈です。

仮に家族が感染して亡くなるようなことがあった場合に、火葬されてしまうことも受け入れがたく、戸惑いを覚えます。(※フィリピン人の9割以上がキリスト教を信仰しており、キリスト教では土葬が基本。)

バラソさんの畑:ココナツとバランゴンの混植(2017年撮影)

孫の教育についても心配です。1年以上対面での授業がなく、自宅学習用の教材を使って親が教師役になることが求められています。子どもの学力を伸ばす機会が制限されています。

畑と同じ敷地にあるバラソさんの家

海外での出稼ぎの仕事も減ってしまいました。以前は娘(ひとり親)がクルーズ船で働いており、仕送りもしてくれていましたが、現在は家に戻っており、家計も厳しくなっています。(※フィリピンの海外出稼ぎ労働者は2019年時点で約220万人に上っていました。)

私たちの町でワクチン接種が行きわたり、コロナが収束し、早く元の生活に戻ることを願っています。」

 

 

 

 

エナテさん(左)とインタビューをしたアーウィンさん

■マメルト・エナテさん(83歳)

 ツピ町からのバランゴンバナナの出荷が始まったのは約20年前ですが、エナテさんはその初期からのメンバーの一人です。7人の子どもを育てあげ、現在は21人の孫がいます。現在バランゴンを140株栽培しており、もう少し増やす計画を持っています。

 「コロナ禍での移動制限が厳しかったときは感染しないように、農作業用にたてた小屋で過ごしていました。コロナ前はバナナの出荷のある日は、バナナと一緒にパッキングセンターまで行き、近くの市場で買い物をすることが日課であり楽しみでした。現在は外出を控え、家で過ごしています。マスクとフェイスシールドの着用が面倒なので、市場にも行っていません。

最近1回目のワクチン接種を受けました。友人からはワクチン接種に対して否定的なことも言われましたが、高齢で免疫が低下しており感染が心配だったので打ちました。無料で受けることができるので友人たちもワクチン接種を受けたらいいと思います。

早く以前のような暮らしに戻りたいです。コロナ禍が早く終息し、余生を穏やかに過ごしたいと思っています。」

 

次号【バナナニュース315号】コロナ禍での生産者の暮らし~ミンダナオ島~ その②では、若い世代の生産者へのインタビュー記事を掲載しています。

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東ティモール豪雨災害緊急支援活動へのご協力のお願い

2021年4月12日

 姉妹団体APLAが、これまでに様々な活動を一緒に実施してきた現地NGOPermatil(パーマティル)は、互恵のためのアジア民衆基金(APF)*社員であるKSI、人権NGOHAKと共同して、ディリ市内と近郊の被災者に対する救援物資の配布を始めました。APLAではこの緊急支援活動に対して支援金を送ることにし、募金を開始しました。

 すでにディリ市内・ディリ近郊の被災者への物資の配布が始まっており、食料品(米、食用油、塩、卵、即席麺など)や生活必需品(石けん、食器類、ビニールシートなど)など、被災1家族あたり約50米ドル(5500円)が必要との情報が届いておりますので、より多くの被災者に配布できるように、ご協力をお願いいたします。

ご寄付の方法などについて詳しくは、以下のAPLAウェブサイトをご覧ください。

東ティモール豪雨災害支援にご協力お願いします

皆さまからのご支援・ご協力をお願いいたします。

 

*民衆交易事業の総合的な発展と途上国の人びとの経済的自立のため、民衆交易に関わる団体が中心となって設立した低利で基金を融資する法人

コーヒー産地東ティモールで発生した大規模洪水につきまして ≪第2報≫

2021年4月9日

ディリ市内に事務所を構える弊社現地法人オルター・トレード・ティモール社(ATT)や姉妹団体APLAの関係先は幸いにも洪水の被害を受けることはありませんでしたが、スタッフの中には自宅が浸水してしまい家財道具や日用品に大きな被害を受けている人が複数いる状況です。

また、停電で連絡がつかなかったエルメラ県在住のATTスタッフとも7日の時点で連絡がつきました。雨が止んだため7日・8日と県内のコーヒー生産者グループの安否確認のために各地域をまわったところ、今回の豪雨で深刻な被害を受けた生産者グループはいないとのこと。関係者一同ほっとしています。

4月7日付の国連の報告は、今回の豪雨災害によって死亡が確認された方は29人に増え、依然として13人が行方不明であると伝えています。被害が一番大きい首都のディリでは、18の避難所が開設され、約10,000人(2,375世帯)が避難しているほかに、女性や子どもを多数含む多くの市民がインフォーマルな避難場所に身を寄せていることも報告されています(注)。

元気な姿を見せてくれた エルメラのコーヒー生産者

被害が大きかったディリに親族や知人がいるコーヒー生産者も多く、COVID-19によるロックダウンと豪雨による道路の寸断で訪問することもできずに心配しているという声が多く聞こえてきます。また、強い雨風によりコミュニティへの水路が破壊されるなどの小さな被害は様々なところで出ているようで、地域の中で助け合いながら修繕が進められているそうです。

竹を使ってコミュニティに水を引いており、風雨で破壊されてしまったので修繕が必要

注:Timor-Leste: Floods UN Resident Coordinator’s Office (RCO) Flash Update No. 2 (As of 7 April 2021)

コーヒー産地東ティモールで発生した大規模洪水につきまして≪第1報≫

2021年4月6日

 2021年4月4日(日)未明からの豪雨の影響で、東ティモールの首都ディリで大規模な洪水が発生し、市内の広範囲が浸水による被害を受けました。

オルター・トレード・ティモール社のスタッフ撮影

 東ティモール政府の発表によれば、4月5日(月)15時時点で27名の死亡が確認されており、行方不明者も複数出ているとのことです。また、ディリ以外の広範な地域でも豪雨の被害が確認されているため、犠牲者の数は今後も増えていくことが予想されます。また、ディリ市内では洪水によって住む場所を失った7,000人〜8,000人の住民が市内12カ所の避難所で寝泊まりを余儀なくされているようです。

オルター・トレード・ティモール社のスタッフ撮影

 なお、ディリ在住のオルター・トレード・ティモール社(ATT)のスタッフおよびAPLAの現地スタッフの無事は確認できましたが、コーヒー産地エルメラ県の生産者や関係者の安否は現在も確認中です。
 現地からの情報によると、豪雨による土砂崩れによってディリとエルメラを結ぶ道路が寸断されており、停電や通信回線への影響も出ていることから、エルメラにいる関係者との連絡が困難な状況が続いています。

 ATJとAPLAは、現地駐在職員をおかない形で東ティモール人スタッフが中心になって事業・活動を進めてきています。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、担当者が東ティモールに渡航できない状況がすでに1年以上続いているなかでの、今回の大規模災害発生となってしまいましたが、引き続き現地スタッフと協力して情報を収集し、コーヒー生産者および関係者の状況の把握に努めてまいります。

PtoP NEWS vol.43

2021年4月1日

PDFファイルダウンロードはこちらから→P to PNEWS vol.43

【バナナニュース312号】~福島の子どもたちに届けよう~ APLA(あぷら)のバナナ募金

2021年3月22日


  (株)オルター・トレード・ジャパンの関連団体である特定非営利活動法人APLA(あぷら)では、2011年3月の原発事故発生以降、「福島の子どもたちに届けよう・バナナ募金」として多くの方からご支援いただき、民衆交易のバランゴンバナナを福島県内17ヵ所の保育園・幼稚園に送り続けています。
先生方は子どもたちのために、届いたバナナを色々なデザートに使ってくださっています。

  コロナ禍以前には、毎年APLAのスタッフが各施設を訪問し、変わりゆく福島の現状に耳を傾けるとともに、子どもたちにバナナやフィリピンのことについて伝え、時にはバナナ生産者が訪問するなどの交流を継続してきました。

〇お届け先訪問時のレポート:バナナ募金お届け先の園を訪問し、交流しました。

  今はそういった活動がままならない状況ですが、保育園や幼稚園からは、子どもたちが描いてくれた絵が届きます。それらの絵はAPLAを介してフィリピンに届けられ、バナナ生産者たちを笑顔にしています。

〇絵を届けた際のレポート:バナナ募金送り先からいただいたお便りをフィリピンの生産者にお届けしました!

福島敬香保育園より届いた子どもたちの絵(2021年2月)

 

*APLAからのメッセージ*

これからもバナナ募金の取り組みは継続してまいります。
皆様からのご支援・ご協力をお願いいたします。

\ バナナ募金について詳しくはこちらからご覧ください。/

 


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2021年3月12日

【バナナニュース313号】天候不順とコロナ禍の影響 ~ネグロス島~

 フィリピンのネグロス島では、1~2月は北東からの季節風が吹き、毎年低温(と言っても最高気温は30度近くにはなります)と強風被害により収穫量が減少する時期にあたります。今年はそこにラニーニャ現象*が重なり、乾季(12~5月)にも関わらず1~2月に雨が降り続きました。その結果、普段この時期には広がらない葉の病気(シガトカ病)の被害が出て、収穫量が減少しました。3月上旬にバナナの生育状況などを3人の生産者にインタビューしました。

 

◆東ネグロス州カンラオン市に住むフローラ・デトマルさん

フローラさんと夫のフェリペさん

カンラオン市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 2016年からオルタートレード社にバランゴンバナナの出荷を始めました。市場とは違って定期的に決まった価格で買い取ってくれることに魅力を感じたためです。

 1月から3月の彼女のバナナの収穫量は12月までと比べて半減してしまいました。例年この時期は強い北風が吹き収穫量が減少する時期なのですが、それに加えて今年は乾季にも関わらず雨が降り続き、葉の病気が広がったことが要因です。

フローラさんの夫のフェリペさん

 コロナ禍により暮らしぶりも変わりました。移動制限によって、行きたいときに隣村や町に行けなかったり、副収入の稼ぎ口も減ってしまいました。移動制限が最も厳しかった時期は、外出のための許可証を携えて町に日用品を買いに出かけました。現在は収入が減っているので、町での買い物は暮らしに必要な最低限の日用品に留めています。

 子どもの教育も影響を受けています。長女はマニラで働いており、一緒に暮らす次女はすでに結婚していますが、長男はまだ就学中です。フィリピンの学校では1年以上対面での授業が中断されており、住んでいる地域のネット環境が悪くオンライン授業も選べないため、遠隔用に準備された教材を使っての自宅学習が続いています。

フローラさんの自宅

 コロナ禍の不安の中でバランゴンの収穫量も減り、最近あまり楽しいことはないですが、1歳の孫の面倒を見たり、空いた時間にテレビや映画を見て気分転換をしています。天候も良くなってきているので、4月の収穫分からバランゴンの収穫量の回復を期待しています。

 

 

◆東ネグロス州サンタカタリーナ市マンサグマヨン村のサミーさん

マンサグマヨン村のサミー・サラさん

サンタカタリーナ市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 「昨年の10-12月の収穫量に比べると、1-3月は半分くらいに減りました。シガトカ病に加えて、バンチートップウィルス病(注:アブラムシが媒介する病気で感染した株は収穫が見込めなくなる)の影響です。今は、ウィルス病に感染した株の抜き取りと植え替え作業をしており、またオルタートレード社(ATPI)が支給してくれる鶏糞の到着を待っているところです。雨に合わせて鶏糞をまく予定でいます。ちなみに、私の畑は乾季に吹く北東からの季節風の強風被害は受けづらい立地ですが、雨季に吹く南西からの季節風の影響は受けます。

 私が住む村では、季節風の影響で2-3月の収穫量が減少するのはバランゴンに限ったことではなく、他の品種のバナナも似たように減少しています。

 2-3月にバランゴンの収穫量の減少を抑えるため、私の場合は株の植え替えと施肥が必要と思っています。古い株は植えてから20年くらい経過しており、土も痩せてしまっているのためです。

 バランゴンを栽培していて一番心配していることは気候変動です。昔は午前11時頃までは畑で作業ができる気温でしたが、今は朝7時の時点でとても暑くなっています。気候が変化してしまっていることを農家として実感しており、最近バランゴンの収穫量が減少している一因にもなっています。

 コロナ禍の影響ですが、畑仕事には影響はありませんが、移動制限が厳しいので、町に買い物に行くことがめっきりなくなりました。」

 

◆西ネグロス州サンカルロス市コドコド村のエディーさん

コドコド村のエディーさん

 

サンカルロス市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「バランゴンの収穫量は、去年の末に比べると半減してしまっています。例年この時期は季節風の影響で収穫量が減少しますが、今年は1-2月に雨が降り続いたことで葉の病気であるシガトカ病が広がり、さらに収穫量が減少しました。感染した葉を切り落とす努力をしましたが症状がひどかったので、基準の太さに達しないバナナが多く不合格品が多くでました。収穫量の回復は5月くらいになりそうですが、オルタートレード社から支給される鶏糞を3月中に施用できれば回復が早まるかもしれません。いまは、健康な葉が増えてきているので、このまま順調であれば、いいバナナが収穫できそうです。」

 -いつも収穫量が減少する2-3月(注:日本では3-4月のお届け分)に収穫量を維持するアイデアは何かありますか?

 「アミハン(北東からの季節風)の影響を受けにくい畑にバランゴンを植えて、施肥もしっかりすることだと思います。」

 -現在の暮らしは?

 「コロナ禍の影響は、農業をする上では大きな影響は受けていませんが、移動制限が厳しいので、町などの行きたい場所に気軽に行けなくなっているのが大きな変化です。現在バナナからの収入が減っていますが、畑で作物の世話をすることを日々楽しんでいます。心配事としては、雨季(6-11月)が来たときにシガトカ病がまた蔓延しないかということと、台風被害です。天候についてはいつも心配の種です。」

 

 なお、コロナの影響ですが、フィリピンは4月上旬の段階で、連日1万人前後の新規陽性者が報告されており、2度目の大きな波を迎えています(人口は2019年時点で1.08億人)。感染者の多くがマニラ周辺の地域であり、バランゴンバナナの産地がある地域では感染者が急増する状態にはなっておらず、ほとんどの産地が最も低い規制レベルの地域に属しています。4月上旬時点では、バナナの出荷作業に大きな影響は出ていません。

*太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象。日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられています。 出典:気象庁

【バナナニュース311号】バナナの部位

2021年3月9日

バランゴンバナナの産地のひとつ、フィリピン・ネグロス島。島の西半分を占める西ネグロス州の言葉、イロンゴ語でバナナの部位の呼び名を教えてもらいました。

バランゴンバナナの産地情報については、こちらからご覧いただけます。

※この記事は、過去の『こどもバランゴン新聞』より転載いたしました。

 

 

 

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2021年2月22日

【バナナニュース312号】~福島の子どもたちに届けよう~ APLA(あぷら)のバナナ募金


 (株)オルター・トレード・ジャパンの関連団体である特定非営利活動法人APLA(あぷら)では、2011年3月の原発事故発生以降、「福島の子どもたちに届けよう・バナナ募金」として多くの方からご支援いただき、民衆交易のバランゴンバナナを福島県内17ヵ所の保育園・幼稚園に送り続けています。
先生方は子どもたちのために、届いたバナナを色々なデザートに使ってくださっています。

 コロナ禍以前には、毎年APLAのスタッフが各施設を訪問し、変わりゆく福島の現状に耳を傾けるとともに、子どもたちにバナナやフィリピンのことについて伝え、時にはバナナ生産者が訪問するなどの交流を継続してきました。

〇お届け先訪問時のレポート:バナナ募金お届け先の園を訪問し、交流しました。

 今はそういった活動がままならない状況ですが、保育園や幼稚園からは、子どもたちが描いてくれた絵が届きます。それらの絵はAPLAを介してフィリピンに届けられ、バナナ生産者たちを笑顔にしています。

〇絵を届けた際のレポート:バナナ募金送り先からいただいたお便りをフィリピンの生産者にお届けしました!

福島敬香保育園より届いた子どもたちの絵(2021年2月)

 

*APLAからのメッセージ*

これからもバナナ募金の取り組みは継続してまいります。
皆様からのご支援・ご協力をお願いいたします。

\ バナナ募金について詳しくはこちらからご覧ください。/

 


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PtoP NEWS vol.42

2021年2月1日

PDFファイルダウンロードはこちらから→P to P NEWS vol.42

【バナナニュース310号】書籍のご紹介:『甘いバナナの苦い現実』(石井正子編著)

2021年1月27日

 バナナ出荷作業の労働条件の改善を求めると、組合事務所で2度火事が起こり、仲間が発砲事件で命を落とす。バナナ園の周辺では原因不明の発熱、咳、腹痛などを訴える人が少なくない。農薬の飛散から住民を守るためにバナナ園周囲に幅30mの緩衝地帯の設置が義務付けられているが、わずかな企業しかその義務を果たしておらず、行政も指導をしない。日本の店頭に並ぶバナナの8割を生産しているフィリピンにおいて実際に起きている理不尽な出来事が、この本には書かれています。

 

 今から32年前にバランゴンバナナの交易が始まりましたが、一つのきっかけとなったのが、『バナナと日本人』という本でした。不公正な労働条件や、農薬との関連が疑われる呼吸器系疾患や皮膚炎を訴える労働者が多いことに触れながら、バナナを食べる私たちだけが安全であればいいのかという問いが投げかけられました。「つましく生きようとする日本の市民が、食物を作っている人びとの苦しみに対して多少とも思いをはせるのが、消費者としてのまっとうなあり方ではあるまいか」と。

 

 産地の人びとの苦しみは改善されているのかという問題意識で書かれた本書では、南ダバオ州ダバオ市の空中散布禁止条例が最高裁で違憲であると判断された経緯も記されています。飛散する農薬により家畜が死んでしまうという家畜業界の陳情によってブキドノン州では空中散布禁止条例が制定された一方で、近隣住民がそれを求めたダバオ市では違憲とされました。「ブキドノン州は貴重な家畜がいて幸いでした。ダバオには、人間しかいません」という、条例を支持した人の言葉が悲しく響きます。
 バナナにまつわる苦しみが現在も続いているという現実。自分の身内が同じ苦しみを味わっていたら、改善策を講じるために協力するだろうし、手を差し伸べるだろうけれど、そうした思いが働かないのは、日本とフィリピンの地理的な距離だけでなく、私たちが知らなさすぎることにあるように思います。まずは知ることから。受け身ではなく主体的に考えて暮らすきっかけを与えてくれる本です。

 

▼関連記事はこちらからご覧いただけます。
【PtoP NEWS vol.11/2017.2 特集】バナナ・プランテーションの現場から ~フィリピン・ミンダナオ島現地訪問で見えたもの~
報告書「フィリピン、ミンダナオと私たちの今を考える」

▼書籍はこちらからご購入いただけます。
APLA SHOP

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【バナナニュース308号】モンディア・インボックさん:困難を乗り越える農民の物語②

2020年12月1日

マキララでの出荷再開後の収穫の様子

 昨年10月にブハイ村のあるマキララ町を大地震が襲いました。マキララ町では2万世帯以上が被災し、多くの家屋が倒壊しました。

 ブハイ村では斜面にあったバランゴンの畑のいくつかは地滑りで失われました。インボックさんの家も流されました。出荷団体のドンボスコ財団は、事務所倒壊などの甚大な被害に遭いながらも、地震の2週間後にはバランゴンの集荷を再開しました。誰もが大惨事に動揺する中でも、人々が生きていくためには収入が必要という判断からでした。バランゴンは人びとが立ち直るのを助け、トラウマの中でも自分たちの土地や農場に戻る勇気を与えました。

マキララでの出荷再開後のパッキングセンターの風景

 今年のコロナ禍でのロックダウンは、先住民族タガバワのコミュニティにさらなる苦しみをもたらしました。商人は地域を横断することができず、ココナツ、ゴム、切り花(アンスリウム)は市場を失いました。一方で、(物流の許可を得た)バランゴンの出荷は継続されたため、バランゴンの回復力は再び人々を驚かせました。危機の際にはバランゴンは食料にもなるため、ブハイ村ではバランゴンの栽培に関心を示す人が増えています。

 インボックさんは今もなお健在です。バランゴンからの収入は、家族の日常生活に必要なものを賄ってくれています。彼は豊かになったわけではありませんが、コツコツ貯めたお金で、バナナをパッキングセンターに運ぶバイクを購入しました。1年前には政府の援助を得て、ブハイ村の農民がバナナをパッキングセンターに運ぶための中古トラックも取得しました。彼は自らの先住民族コミュニティだけでなく、ブハイ村の入植者やイスラム教徒(先住民族マラナオ)にもインスピレーションを与えるモデルとなっています。人々のために夢を見ることをやめず、67歳になってもエネルギーとポジティブさに満ち溢れています。

 なお、地震から1年が経過した現在も、インボックさん達のコミュニティは仮設テントの避難所暮らしが続いてます。もともとの居住地は政府のリスク評価により、居住禁止区域に指定されてしまったためです。

避難所①

 ブハイ村には、2000年に大手のバナナプランテーションが進出し高地栽培バナナの栽培が開始されました。村の人からの聞き取り(2016年)では、農薬散布は早朝にブームスプレー(トラックの後ろに積んだタンクから圧力をかけて道路から農園に農薬を撒く方法)で行われ、風向きによってはきつい臭いの農薬が家まで飛散し、日中もずっととどまっているように感じられるそうです。(ちなみに、バランゴンバナナの圃場はプランテーションから離れた奥地にあります)。

避難所②

 現在の避難所もプランテーションに隣接しており、農薬に曝されるリスクに悩まされています。また、政府が進めるブハイ村コミュニティの移転計画にも問題がありました。再定住地の候補地がプランテーションに四方を囲まれた土地であり、健康リスクが懸念されることです。また、ブハイ村で家を失った先住民族はインボックさん達タガバワの他に、イスラム教徒のマラナオの人たちもいました。(どちらのコミュニティにもバランゴンバナナ生産者がいます)。

タガバワ避難所にパイプ支援

 政府の計画では、2つの先住民族コミュニティが近い地域に移転するものですが、タガバワの従来の暮らし方である養豚や犬を飼うことは、マラナオ(イスラム教徒)の人たちにとっては大きな禁忌事項であり、お互いを尊重した暮らしが継続できるかの懸念がありました。

 そのため現在は、政府の計画に頼る方法ではなく、日本などからの義援金を使って、元来先住民族が暮らしていた土地を購入し、そこに再定住することを目指しています。(マラナオの人たちも親族の土地への移住など、政府が準備する移転地以外の選択肢があります。)

被災者支援の現状は、マキララ地震 復興支援 中間報告をご参照ください。

 

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PtoP NEWS vol.41

2020年12月1日

PDFファイルダウンロードはこちらから→P to PNEWS vol.41

【バナナニュース307号】モンディア・インボックさん:困難を乗り越える農民の物語①

2020年10月28日

 モンディア・インボックさんは、コタバト州マキララ町ブハイ村に住む先住民族バゴボ・タガバワの120を超える世帯のリーダーです。彼は1953年3月15日にブハイ村で生まれました。数時間歩いて小学校に通いなんとか卒業しましたが、生活が非常に苦しかったため、高等教育を受けることはできず、大家族のために両親の農業を手伝うことになりました。

 ブハイ村は、町までのアクセスが悪い場所で、自分たちの生産物(当時は主にコーヒー)を自らの手で運ぶか、余裕のある人は馬の背に載せて運ばなければなりませんでした。

 23歳の時に結婚し、12人の子どもを授かりましたが、貧困のため、子どもたちのうち7人は1~2歳で亡くなりました。死因ははしかや赤痢などでした。今日では遠隔地の村々にまで届く保健サービスがありますが、当時は何もありませんでした。彼は5人の子どもたちを学校に通わせようと最善を尽くしました。ほとんどの子どもたちは高校に進学し、そのうちの一人は大学3年生になりましたが、兄弟が事故に遭った後、家族のために出費が多すぎたため、それ以上教育を受けさせることはできませんでした。

 経験を積んだインボックさんはやがて部族のリーダーに選ばれました。ブハイ村の農業組合の代表も務めていますが、そのことがきっかけで、バランゴンを出荷するプログラムを知ることになりました。彼は、15歳の時に父親が植えたバランゴンバナナを覚えていて、特別な世話をしていなくても丈夫な実をつけているため、2015年に他のバゴボ・タガバワの人々と一緒にプログラムに参加しました。

 ブハイ村は標高が高く気温が低い地域のため、育苗はうまくいかずに苦労しましたが、株分けの方法で少しずつ作付け数を増やしていきました。そんな折、かつてない大地震がブハイ村を襲いました。2019年10月のことです。

 

■マキララでの地震被害

 ミンダナオ島コタバト州を震源とするマグニチュード6を超える地震が2019年10月16日(M6.3)、29日(M6.6)、31日(M6.5)と連続で発生しました。特に、10月31日に発生した地震の震源地は、バランゴンバナナの産地の一つであるマキララ町に近く、マキララでは土砂崩れが発生し、多くの建物にも被害が出ました。そのため、バランゴンバナナ生産者も含む多くの住民は幹線道路沿いや役場などで避難生活をすることになり、町は一時期ゴーストタウン化しました。詳細については、こちらで報告しています。

 

 左の写真は震災前の2018年にインボックさんを訪ね、家の中でコーヒーを頂いたときのものです。とても質素なお家でした。この家は、地震によって半壊してしまいました。近くの家も同様で、中には地滑りとともに崩落してしまった家もあり、地震の後に現場を見たドンボスコ(マキララからバランゴンの出荷を担う団体)のベッツィーさんは「足が震えた」そうです。

 2018年当時は、インボックさんは12ヘクタールの土地を持っていて、そのうち2.5ヘクタールで1,200株のバランゴンを育てていました。他にタイガーグラス(箒の原料)、アバカ(丈夫な繊維が取れる)、ドリアン、マラン(果物)などを栽培しているとのことでした。バランゴンの畑は地滑りで半分ほどが失われました。

地震で発生した地滑りの様子①

地震で発生した地滑りの様子②

 

急こう配にあるリッキーさんの畑

 インボックさんの畑は家からとても遠いとのことで、当時訪問することはできませんでしたが、近くに住むリッキーさんの畑を見ることができました。
急斜面にバランゴンがゴムやサヨーテ(ハヤトウリ)と共に植えられていました。この畑も地震で大きな被害に遭いました。

リッキーさん

 現在発生しているラニーニャ現象のため雨量が多い状態が続き、地盤が緩んでおり、地滑りは今でも断続的に発生しているそうです。

 マキララ地域からのバランゴンバナナの出荷量は震災前の半分程度まで減少した状態が現在まで続いていますが、ブハイ村を含めてバランゴンバナナの栽培に関心を示す人が増えている状況です。(次号へ続く)

 

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バランゴンバナナ産地 ミンダナオ島・マキララ地震 復興支援 中間報告

2020年10月21日

~復興とコロナ禍における被災地域の状況~

 2019年10月、ミンダナオ島マキララ町のバランゴンバナナの産地で、マグニチュード6規模の地震が数回発生しました。生産者を含む住民、コミュニティ、そしてバランゴンの出荷責任団体のドンボスコも、地崩れ、インフラや建物の崩壊など、甚大な被害を受けました。

日本の消費者からも支援が寄せられ、復興支援活動が続いています。ドンボスコ財団からの中間報告です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 2019年10月に発生した地震は、ドンボスコ財団、そしてバランゴン生産者のコミュニティに甚大な被害をもたらしました。パートナーたちからの支援がなければ、耐え難い苦痛から立ち直ることは困難でした。

 この大災害の時期に、民衆交易という言葉は、ドンボスコ財団やバランゴン生産者のコミュニティーにとって、より深い意味を持つようになりました。フィリピンのオルタートレード・フィリピン社(ATPI)、日本のATJやAPLA、韓国のPT Coop、ドゥレ生協などのアジアのパートナーたちを通じたみなさんからの支援は、民衆交易を通じた関係が、単なるモノの交易を超えており、地理的、社会的および文化的な隔たりをも越えるものであるということを示しました。援助を受ける側の私たちは民衆交易の深い意味を感じます。人間性の共有がそこにあります。この気づきは、信仰の有無に関わらず、聖なるものとの出会いの経験に似ています。

 

  • 救援活動と被災からの再建と復興

 初期の救援活動では、当面の食料と避難所を準備しました。大地震で自宅の崩壊を目撃し、人々の心は非常に傷つきました。また、避難所での食料と水の不足が、それに追い討ちをかけました。食料や衣料などの必需品を他人の親切に依存しなくてはならない難民になるということは、人間性を奪われるような経験でもありました。食料パック、防水シート、サンダル、水、寝るときに使う断熱パッドの配布など初期の物的支援は容易でした。次の段階では、医療と心理社会的なサポートが必要で、私たちは、関係する代替医療・統合医療従事者のネットワークからトラウマ治療を実施しました。

 しかし、最も重要で重い課題は、長期的な視点や戦略的方向性が必要な再建と復興です。私たちは、必要な再建と復興を3つの段階に分けました。

1.ライフラインの復興と被災者目線の避難所の設置
2.人々の生計手段の復興:バランゴンの畑は避難中に手つかずの状態で荒れてしまっています(余震や地滑りとコロナ感染拡大によるロックダウンの影響による)。
3.コミュニティの変革

この災害は、持続可能で気候変動に強い農業コミュニティに向けて人々の意識と状況の変革を促す非常に良いきっかけとなりました。

 

  • バタサン村の状況

<避難所と移転>

 私たちのコミュニティの拠点であるバタサン村では、環境天然資源省(DENR)下の鉱山地球科学局(MGB)によって住居のあった場所が高危険地域と宣言されました。そのため、家を完全に失った先住民族を中心とした55家族の一時的(5年)な移転先として、ドンボスコ財団のバランゴンの圃場の一部を提供しました。また、地震で破壊された古い家から回収したり、修道会からの寄贈で不足している軽量の建材も提供しました。従来の土地に家を再建しても安全と認定された家族や、自分たちで新たな土地を入手して家を新築する家族にも、壁や木材など一部の建築材料を提供しています。

2020年1月訪問時

2020年7月現在ではきれいに花も飾られている

<食料安全保障のためのサバイバル菜園>

 私たちの考える復興というのは、単に基本的な住まいを整備するということだけではありません。食料安全保障を考慮し、すべての世帯に対し、移住先として提供された土地に野菜や芋類を栽培するスペースを確保するように伝えました。そこに植えるための種のセットや、葉物や芋類の苗を配布し、さらに有機農業や適正技術に関する研修なども実施しました。

 当初はこれらをここに住むための前提条件としていたのですが、今では住民自身が有機農業の考え方を気に入り、自ら野菜栽培に勤しんでいます。自家消費以上のものができた人は、毎週水曜の市に出したり、近所の人と作物の交換をしたりしています。

家庭菜園とサバイバル菜園ができて喜ぶ女性たち

 これは、村の他のグループの羨望、挑戦、新たな発想、そしてモデルにもなっています。コロナ感染拡大のパンデミックの最中、食料(特に米)不足の恐れもあるため、ドンボスコ財団の働きかけで、根菜や野菜を各家庭で栽培する「サバイバル菜園」の推進も村の政策に組み込まれました。村の676世帯はグループに編成され、各家庭での農園とは別に、空いている区画や、地主から借りた土地で共有の「サバイバル菜園」で食料を生産しています。現在、バタサン村の人口のほぼ100%が野菜畑などを持っています。

グループで栽培するサバイバル菜園

ほかにも、ドンボスコ財団では500本の様々な果樹の苗を57世帯に配布しました。

<水源確保>

 以前、バタサン村にはキダパワン水道局の水源とは別に、6つの湧き水による水源がありました。しかし、これらも損傷、もしくは水源が移動していくつかの泉は完全に干上がってしまいました。一番大きな湧き水は、地震の影響でドンボスコ財団のゴム農場内に移りました。水流は強いものの、地震から8ヶ月経っても水は濁ったままです。村の大部分の世帯に供給する水を確保するために、温泉近くの水源から引くためにパイプや付属品を提供しました。いまだに続く余震による地滑りで危険なため、またコロナ感染拡大によるロックダウンの影響などもあり作業はまだ終わっていません。

新しく建設されているドンボスコ財団の事務所。建材は木材や竹が中心。

  • ブハイ村の状況

<救援活動>

 ブハイ村のイスラム教徒のコミュニティの中には、家畜や所持品を守るため地震直後に村に残った人々がいました。村の外から車で乗り込み、避難所に持っていくことのできない家電製品などを盗み出す略奪者がいたためです。鉱山地球科学局(MGB)によって設置された「立ち入り禁止」の看板を横目に、ブハイ村に残った人々を訪れました。医師を伴って怪我の手当てをし、医薬品や米、その他の食料を持参しました。彼らからは地震・地滑りで被害を受けた湧水の補修のためのパイプの要望を受け、ATJと一緒に訪問した際に持参し、水道はすぐに修復できました。

また、避難所に移った先住民族とイスラム教徒のマラナオ族も訪問し、医療ミッションを実施しているグループを紹介しました。

 

<移転地での復興>

 ブハイ村では移転場所のための土地が不足しています。移転先として適した土地は、入植者(ビサヤ人)が所有しており、当然のことながら政府への土地売却に同意しないか、高額の売値を提示しています。 インボク首長率いる先住民族コミュニティが現在いる避難場所の土地は、1ヘクタールあたり100万ペソ(約215万円)で、3ヘクタールが売りに出ています。政府は、地震により住居を失った先住民族のバゴボタガバワ族やイスラム教徒のマラナオ族、ビサヤ人の再定住地としてこの3ヘクタールの買い上げの交渉と処理を進めています。この土地への移転は、MGBによって検査され、国家住宅局(NHA)によって承認されています。

 

<移転先で抱える課題>

 土地購入のプロセスが完了すると、土地は小区画に分割され、各家族に基本的な設備を備えた家が無料で提供されます。比較的平坦なため地滑りの可能性は低くなる一方、別の観点での安全性の問題があります。四方が慣行栽培のバナナプランテーションで囲まれており、それらのプランテーションで大量に投与される農薬による毒性の問題です。女性と小さな子どもたちにとっては、これらの毒性に曝されることは、将来爆発するおそれがある時限爆弾を抱えているようなものです。この健康リスクは深刻です。

 また、インボク首長のコミュニティは、先住民族のための専用の土地か、もしくは少なくともイスラム教徒のマラナオ族コミュニティからは離れた場所に移住することを望んでいます。彼らが従来の暮らし方である養豚や犬を飼うことを継続することは、イスラム教徒のコミュニティにとっては大きな禁忌事項だからです。これも、潜在的な時限爆弾と言えます。

バナナプランテーションに囲まれている避難所

<代替案>

 私たちはインボク首長に元来先住民族が暮らしてきた地域内での移転について提案しています。その土地は所有権がないため、NHAからの「無償の家」の提供は受けられません。しかし、いくら無償の家があっても、長期にわたって有毒な農薬に曝される危険がなくなることはありません。今の時代を生きる彼ら、そして彼らの孫や子孫の世代にもわたる健康を考えて、政府からの無償提供の家は諦めることにしました。第一、政府から提供される家というのは、持続可能な原則に基づく適切な設計のものではありません。家同士が近接しており、裏庭で家畜を飼うことができません。

 地方自治体およびNHAによる家屋建設の条件は土地の所有権があることが前提条件であるため、居住権を認められているだけの先祖伝来の土地は対象になりません。したがって、唯一の選択肢は、先祖伝来の土地の中で、リスクがゼロないしは低い土地区画を購入することです。

先祖元来の土地の中に位置する移転先。後方(矢印上)には厳重に保護されている手つかずの森。手前(矢印下)がバナナ栽培をする3ヘクタールの土地。

インボク首長。彼の部族の再定住先が先祖元来の土地で、横に森から流れるきれいな水と小川があることを喜び、移住を心待ちにしている。部族の仲間たちも農薬が飛散してくる避難所からの引っ越しを心から喜んでいる。

 幸いなことに、移住者が所有する先祖伝来の土地内にある3ヘクタールのバナナ農場の使用権が、15万ペソ(約32万円)で売りに出されています。またそれに隣接する3ヘクタールのアバカ農場の使用権も15万ペソで売りに出されています。飲料水や養魚池、農業用に使用できる水もあります。この土地には、再定住先のない家族や、今までの土地では危険性が高く家を再建できない80家族以上の先住民族の家族が移転して、家を建て、裏庭で畑を作ったり、家畜を飼育したりし、共同の養殖池などを作る予定です。コミュニティとして自分たちの事務所、教会、ホールなどの建設もできます。

 彼らはすでに先祖伝来の土地内に移住することに同意しており、ドンボスコ財団は、日本からの支援金をこの土地の使用権の購入費用と建設資材の購入にあてました。

 この土地での家の建設に関しては町にも届け出ており、MGBによる調査の依頼、さらには所有権がなく使用権のみの土地でもNHAや町の支援を受けることができるかどうかを確認する予定です。

  • コミュニティ開発と変革

 ドンボスコ財団では、バランゴンの生産に留まらず彼らと一緒に活動するために、トレーニングとコミュニティ活動のための場所づくりを目指しています。リプロダクティブ・ヘルス、公衆衛生、そしてもちろん農業生態学や環境教育など、他の多くのライフスキルについて学べるきっかけを作り、アポ山を守る民となれるようにしたいと考えています。

 
 先に述べたように、地震とコロナ感染拡大のパンデミックによる損害は大きいものですが、同時によい機会をもたらしました。コロナ禍で他の作物(コプラ、ゴム、切り花など)の取引が停止しているにもかかわらず、バランゴンの出荷は続き、多くの人が、その持続可能性と強さを認識しました。一般的な商品取引とは違う民衆交易の安定性が浮き彫りになりました。

 当面の課題は、家屋や生活空間の復興ですが、アグロエコロジーや複合的で多様な有機農業システムの中にどうバランゴン生産を組み込んでいくかも課題です。バランゴン栽培に取り組む生産者が増えるということは、持続可能で環境に配慮した社会的責任のある生活を送る人が増えるということでもあります。苗が不足する中で、農民は自分たちの既存のバランゴンから苗を分けて生産の拡大に取り組んでいます。ブハイ村では、バランゴン栽培への関心が急激に高まっているため、ドンボスコ財団では新たにバランゴン栽培を始めたいという人へも苗を配布し、バランゴンの民衆交易の仲間に加わってもらっています。このことにより、地震とこの激しいパンデミックからの復興及び再建は、長期に渡って持続可能であり、より包括的なゴールを持ったものとなります。

 

 ATJやAPLAを通した日本のみなさんからの支援金とPT Coopとドゥレ生協を通した韓国の消費者からの支援金に支えられて生産されたバナナが出荷されるとき、再びアジアのパートナーとの循環の輪がつながるでしょう。言葉は関係の本質を捉えるには十分ではありません。生産現場であるコミュニティでは感謝の気持ちで溢れています。心の底から「Thank you」、「Salamat(現地語で「ありがとう」)」、「ありがとうございます」。日本ありがとう!韓国ありがとう!アジアのパートナーたちの皆さん、ありがとう!

 

レシピ:ほくほく野菜とエコシュリンプのオリーブオイルグリル

2020年10月13日

秋に美味しい、ほくほくのかぼちゃとさつまいもなどの秋の野菜と、エコシュリンプをたっぷりのオリーブオイルでマリネしてグリルしました。

エコシュリンプとソーセージの旨み、野菜の甘みが楽しめて、しかも調理もとっても簡単。
大人もこどもも楽しめる一品です。

<材料>
・エコシュリンプむきみ:200g
・ カボチャ:1/4カット
・ サツマイモ:小1本
・ ニンジン:1/3本
・ブロッコリ:適量
・ ぶなしめじ:1/2株
・ソーセージ:5本(今回はレモンとバジルの入ったソーセージ使用)
・ パレスチナのオリーブオイル:適量
・ ゲランドの塩 細粒塩:少々
・ 胡椒:少々

<作り方>
① エコシュリンプを解凍する。
② カボチャ、サツマイモ、ニンジンは一口大にカットする。ブロッコリーも食べやすい大きさにカット。ぶなしめじもバラしておく。
③ カボチャ、サツマイモ、ニンジン、ぶなしめじを電子レンジで5-10分蒸す。(野菜の大きさに合わせて時間を調整してください。)
④ 解凍したエコシュリンプに、パレスチナオリーブオイルとゲランドの塩をまぶしてマリネする。
⑤ ③で蒸した野菜をボールにいれて、たっぷりめのオリーブオリル、塩をかけて軽く混ぜる。(あまりぐちゃぐちゃ混ぜるとかぼちゃがくずれるので注意してください。)
⑥ 耐熱皿に③と④、そして一口大にカットしたソーセージをバランスよく盛り付ける。
⑦ 200℃に温めておいたオーブンで、25分ぐらいグリルする。
⑧ エコシュリンプに火が通ったら出来上がり。

★お好みで、チーズやパン粉を上から散らすと香ばしさもアップします。