投稿者: okubo
デキ―は星になった
2022年7月26日午前8時25分、カカオキタ社代表デキー・ルマロペンさんがパプア州ジャヤプラの病院で息を引き取りました。享年63歳。糖尿病から腎不全、透析、最期は肝硬変で20年近くに及ぶ闘病の末、すべての力を使い尽くしました。

デキーさんは1959年8月14日、パプア北海岸最西端ソロンで7人姉弟の長男と して生まれました。家が貧しかったので高校卒業後、地元の銀行に就職したもの の、結婚した姉が 「勉強が良くできた弟(デキー)は大学に行くべき」と資金援助を申し出て、ジャヤプラにある国立チェンデラワシ大学政治経済学部に入りました。
デキーさんが学生時代を過ごした1980年代、開発至上主義を標榜するスハルト政権はパプアの地で独立を求める先住民族を激しく弾圧しました。デキーさんも参加したパプア文化運動グループのリー ダーは虐殺されました。多くのパプア人が投獄、殺害されるという恐怖と屈辱にまみれた時代でした。この頃デキーさんは1984年ジャヤプラに設立された「パプア農村発展財団(YPMD)」に参加し、パプア各地の村々で清潔な水の確保に取り組み、共同の水場を得た村の女性たちから大変歓迎されました。
民衆交易と出会うまで
村落部での取り組みのなかでデキーさんは、パプア先住民族はインドネシア政府からの援助に依存する構造に組み込まれ、経済的自立を自ら切り開く潜在力を削がれていると思い始めました。これではインドネシアから分離独立を求めても、実態的にそれは空洞化した夢にすぎないと確信したのです。独立を訴えるデモなどで銃弾に倒れる多くのパプア人を目の当たりにして、「これ以上大切な命を犠牲にしてほしくない」という強い思いもあり、経済的自立で実質的独立を獲得する闘いに切り替えるべきだ、という考えをますます強めました。

YPMDは設立当初から海外の資金援助を受けていましたが、デキーさんはこうした援助に頼るというYPMDのありかたにも限界を感じていました。ドナーの意向にYPMDの方針が左右されるというジレンマに陥っていたのです。また2000年以降、パプアのNGOが外国から資金援助を受けるにはインドネシア政府 の承認が必要となり活動の自由が狭められました。
そんななかデキーさんが出会ったのが、民衆交易でした。生産地の人間と社会に関心を寄せる日本の消費者と関係を築くことがパプアの人びとには何よりの励みになる、と大きな期待を寄せました。そして、 YPMDとは別組織の会社「カカオキタ社」を立ち上げました。

村人に寄り添い続けたヒーロー
デキーさんはカカオ生産者に常々こう語りかけていました。「インドネシアのなかでパプア人はビジネスができないと見下されているけれど、そのわたしたちとカカオの交易をしようと言う日本の友人と出会いました。肌の色、文化慣習も異なる人びとですが、パプアの人間と自然を尊重してくれる友人です」「民衆交易は、取引ではありません。『自立』は届けられるプレゼントではありません。自分たちの力で道を切り開く、その プロセスの結果であり、友情と連帯に支えられたその先に共に自立していく未来がある。その時がきたら、その時こそパプアの旗を力 カオ畑の真ん中に立てよう!

デキーさんの葬儀には300名を超える参列者が集まりました。参列したカカオ生産者のひとりは「デキーさんは本当の意味でわたしたちのヒーローです。大学出のインテリでありながら、政府や大企業に属することなく、ずっとわたしたち村の人間に寄り添い、行動してくれました」と偲びました。
デキーさん自身は「やり残していることがまだたくさんあるのです。神さま、お願いですからまだ僕を連れて行かないでください」と死の直前まで生きる執念をみせつけました。
パプアでは宵の明星が先住民族アイデンティティー のひとつです。デキーさんは星となり、人びとの心のなかで輝きつづけるのです。

津留歴子(つる•あきこ/カカオキタ社)
マスコバド糖かりんとうリニューアル!
発売から四半世紀以上ご愛顧いただいていたマスコバド糖かりんとう。
より多くの皆さまの手に取っていただきたいという想いから、2022年12月にリニューアルしました!
ここが変わった!
- 生地からごまを省き、なたね油・こめ油の使用からこめ油100%になりました。
しっかりかための食感で、かめばかむほどマスコバド糖の味わいを楽しめます。
- 製造している中谷製菓は、大正8年創業の老舗かりんとうメーカーです。
くすっと笑える駄洒落好きな社長のかりんとうにかける熱い想いのもと丁寧に作られています。
- パッケージは、マスコバド糖の産地フィリピン・ネグロス島の抜けるような青い空と一面に広がるサトウキビ畑をイメージ。
幅広い世代に親しんでもらえるような可愛らしさのあるデザインに仕上げました。

このリニューアルに至るまで、食感や蜜のかけ具合、原材料の配合などを微調整し、何回も試作を重ねました。これまでの「マスコバド糖の優しい味わいやコクを楽しめるかりんとう」というコンセプトを保ちつつ、原材料がよりシンプルになった新しいかりんとうを是非お楽しみください。
藤山美穂(ふじやま・みほ/ATJ)
PtoP NEWS vol.53
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【バナナニュース333号】再びフィリピンに台風が上陸
2022年10月28日から30日にかけて台風22号(フィリピン名:パエン)がフィリピンに上陸しました。
この台風は昨年甚大な被害をもたらした台風22号(フィリピン名:オデット)ほど強力ではありませんでしたが、フィリピンの広範囲に影響を及ぼし、過去最高の日降水量を記録する地域や各地で洪水の被害も多くありました。
その一因として、フィリピンでは森林伐採された山々が多いため、鉄砲水や土砂崩れが起きやすい状況があることが指摘されています。

<バランゴンバナナの産地への被害>
前号のバナナニュースでは、昨年の台風オデットの被害から回復するネグロス島の様子をお伝えしました。今回もネグロス島は台風の被害に遭い、バナナへの影響がでています。天災とはいえ、復興に向けて頑張ってきた生産者たちの努力や収穫を待ちわびていた気持ちを思うと残念でなりません。
また、これまで台風の通り道ではなかったフィリピン南部にあるミンダナオ島の産地の一つ、レイクセブでも被害がありました。4日間にわたる大雨と強風により、標高が高い地域にあるバナナが影響を受けました。
両産地とも被害の影響は来年2月まで続き、3月以降は回復してくる見込みです。更なる天候被害が起きないよう祈るばかりです。
今回台風の影響があったものの、被害がなかった地域からのバナナの出荷量が多いため、皆様のお手元には通常通りバナナをお届けいたします。
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よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。
生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。
いちごのスムージー
グリーンスムージー
バランゴンバナナケーキ
食のギャラリー/塩「塩鍋」
食のギャラリー/エコシュリンプ「エビマヨ」
PtoP NEWS vol.52
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絶品エビマヨ
食のギャラリー/エコシュリンプ「ガーリックシュリンプ」
食のギャラリー/エコシュリンプ「エコシュリンプとブロッコリーのオリーブオイル炒め」
エコシュリンプでつくるガーリックシュリンプ
食のギャラリー/バランゴンバナナ朝食イメージ
エビのガーリックパン粉焼き
ハレの日
エビのポテトフライ
【バナナニュース332号】 台風の被害から復活!バランゴンバナナを食べてほしい!
<2022.11.11追記>
2022年10月28日~30日にかけて台風22号(フィリピン名:パエン)がフィリピンに上陸しました。この台風の影響により、再びネグロス島のバナナに被害が出ております。今回は人的被害や家屋倒壊などの報告は届いておりません。
地域によって異なりますが、ネグロス西州で約35%、ネグロス東州で約40%のバナナの出荷量が減少する見込みです。
その他、バランゴンバナナの地域としては、ミンダナオ島レイクセブでも被害が発生しました。両産地とも来年3月頃回復の予定です。今回台風の影響があったものの、被害がなかった地域からのバナナは日本に届いており、皆様のお手元には通常通りバナナをお届けいたします。
<台風の被害から復活>
バランゴンバナナの産地であるネグロス島やボホール島では、昨年12月に大型台風の被害を受けて出荷量が低迷していました。
ネグロス島では、日本を含め海外から届いた支援金で、生産者に鶏糞を配布し、買取や箱詰めをするスタッフたちも手伝ってバナナの栽培管理を強化し、復興に向けて頑張ってきました。今年12月頃に昨年並みの収量に回復予定だったところ、9月後半には出荷量が戻ってきました。





<応援ありがとう!バナナをたくさん食べてください!>
今年はバナナの生育に適した天候が続き、台風被害を受けていない産地のバナナも豊作です。そのためバナナが余る状態になり、生産者からの買取を控えて量を調整している状況です。

台風被害後、バナナが出荷できない時、日本からの支援や応援が届き、生産者たちのモチベーションがあがり、大きな励みになったとたくさんの御礼のメッセージが届きました。
生産者たちの感謝の気持ちがこもったバランゴンバナナを、ぜひたくさん食べてください!

\ バナナ、たくさん食べてね! /

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生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。
素材の魅力を身近に感じて~ゲランドの塩ってどんな塩?~

ATJでは、8月にウェブサイトをリニュ ーアルしました。産地や商品情報を分かりやすく伝えるのはもちろん、民衆交易ならではの生産者の顔が見える、ひと・モノ・コトがつながるイメージが形になったサイトです。
さらに、これまで十分にアピー ルしきれていなかった素材の魅力や使い方をもっと皆さんに伝えたい!という想いから「商品の特徴」というページを新設しました。生産者が大切に作ったものをどういう見せ方をしたらその魅力が伝わりやすいか、おいしそうに見えるだろうか•••、商品担当者との話し合いを重ね、写真も新たに撮影して、試行錯誤を経て出来上がりました。
なかでもゲランドの塩は、プロの料理人も愛用するその知名度の高さから、サイトでの閲覧数が最も多い商品です。たくさんの人に見てもらえる機会を得ている一方で、一番塩、粗塩、細粒塩•••など、複数種類の塩を取り扱っていることから(販売元のゲランド社ではもっとたくさんの種類が!)、「種類によってどこが違うの?」「どう使い分ければよいの?」といった質問をよくいただきます。塩って、そもそも塩味を付けることが主な役割ですし、種類があってもどう使い分ければよいかイマイチ分かりにくい調味料かと思います。そんな疑問を解消して、選んだり使ったりする際に参考になるページに仕上がったと自負しています。
もっと知りたいゲランドの塩
塩とひとくちにいっても、原材料と製法によって種類がわかれます。ゲランドの塩は太陽と風の力だけで海水を結晶させてつくった天日塩です。少しグレーがかった色味をしているのは、洗浄工程がなく、粘上質の土壌の成分やプランクトンに由来していると言われています。ゆっくりと結晶した塩は、とがりがなくまあるい味わいが特徴です。今回は一番塩と粗塩をご紹介します。

◇一番塩は、食べる直前に!
塩田の表面にふんわりと浮かんでくる塩の花だけを集めた希少な塩です。焼いたお肉やお刺身、天ぷらにふりかけるなど、つけ塩としてお使いください。食べる直前にかければ、一番塩の美味しさを舌の上で感じていただけます。



◇粗塩&乾燥粗塩
粒の大きい粗塩は、塩田で収穫後に1~2年寝かせて自然に水分を抜いた後、師にかけたもの。キャベツやニンジン、大根、ソーセージをゆっくり煮込むポトフに使うと野菜の旨みが違います。煮込み料理やスープの他に、肉や魚の塩漬けや下ごしらえ、パスタ梅干しなどの漬物にもお使いいただけます。

粗塩を温風乾燥させて使いやすくした乾燥粗塩は、ミルで挽いてお好みの粒の大きさに出来ます。旬の生野菜にパレスチナのオリーブオイルと一緒にかけると野菜の甘味が引き立ちます。


ちなみに、ゲランドの塩職人イチオシの塩は、一番塩とのこと。独特のスミレのような香りがパッと立つのだそうです。残念ながら私にはスミレを感じ取れる感性がありませんが、カツオのたたきに使うと燻された香りがググッと際立って、ポン酢で食べる時とはまた違った赤身の濃厚さが味わえます。それぞれにお気に入りの使い方を見つけて楽しんでいただけたら嬉しいです(※あっさりしているものより、脂ののっているカツオに使うのがおすすめです!)。
今回新しいサイトの制作に携わるなかで、改めてこの塩が自然を相手に職人の手によって作られているさまに触れ、農作物と同じようにいのちのあるものに感じられました。使う際や食べる際にそうしたことをふと思い出し、大事に味わえたりすることもおいしさのスパイスになると思います。皆さまにも作り手や産地のことを身近に感じてもらえる瞬間が増えるよう、人の温もりが伝わるATJらしい情報の発信やサイト作りに今後も励んでいきます。
大久保ふみ(おおくぼふみ/ATJ)
ゲランドの塩のページもぜひご覧ください!



