エビのポテトフライ

2022年10月28日

【バナナニュース332号】 台風の被害から復活!バランゴンバナナを食べてほしい!

2022年10月28日

<2022.11.11追記>
2022年10月28日~30日にかけて台風22号(フィリピン名:パエン)がフィリピンに上陸しました。この台風の影響により、再びネグロス島のバナナに被害が出ております。今回は人的被害や家屋倒壊などの報告は届いておりません。
地域によって異なりますが、ネグロス西州で約35%、ネグロス東州で約40%のバナナの出荷量が減少する見込みです。
その他、バランゴンバナナの地域としては、ミンダナオ島レイクセブでも被害が発生しました。両産地とも来年3月頃回復の予定です。今回台風の影響があったものの、被害がなかった地域からのバナナは日本に届いており、皆様のお手元には通常通りバナナをお届けいたします。

<台風の被害から復活>
バランゴンバナナの産地であるネグロス島やボホール島では、昨年12月に大型台風の被害を受けて出荷量が低迷していました。
ネグロス島では、日本を含め海外から届いた支援金で、生産者に鶏糞を配布し、買取や箱詰めをするスタッフたちも手伝ってバナナの栽培管理を強化し、復興に向けて頑張ってきました。今年12月頃に昨年並みの収量に回復予定だったところ、9月後半には出荷量が戻ってきました。

応援ありがとう!バナナをたくさん食べてください
今年はバナナの生育に適した天候が続き、台風被害を受けていない産地のバナナも豊作です。そのためバナナが余る状態になり、生産者からの買取を控えて量を調整している状況です。

台風被害後、バナナが出荷できない時、日本からの支援や応援が届き、生産者たちのモチベーションがあがり、大きな励みになったとたくさんの御礼のメッセージが届きました。

生産者たちの感謝の気持ちがこもったバランゴンバナナを、ぜひたくさん食べてください!

\ バナナ、たくさん食べてね! /

————————————

よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。
生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。

素材の魅力を身近に感じて~ゲランドの塩ってどんな塩?~

2022年10月19日

ATJでは、8月にウェブサイトをリニュ ーアルしました。産地や商品情報を分かりやすく伝えるのはもちろん、民衆交易ならではの生産者の顔が見える、ひと・モノ・コトがつながるイメージが形になったサイトです。

さらに、これまで十分にアピー ルしきれていなかった素材の魅力や使い方をもっと皆さんに伝えたい!という想いから「商品の特徴」というページを新設しました。生産者が大切に作ったものをどういう見せ方をしたらその魅力が伝わりやすいか、おいしそうに見えるだろうか•••、商品担当者との話し合いを重ね、写真も新たに撮影して、試行錯誤を経て出来上がりました。

なかでもゲランドの塩は、プロの料理人も愛用するその知名度の高さから、サイトでの閲覧数が最も多い商品です。たくさんの人に見てもらえる機会を得ている一方で、一番塩、粗塩、細粒塩•••など、複数種類の塩を取り扱っていることから(販売元のゲランド社ではもっとたくさんの種類が!)、「種類によってどこが違うの?」「どう使い分ければよいの?」といった質問をよくいただきます。塩って、そもそも塩味を付けることが主な役割ですし、種類があってもどう使い分ければよいかイマイチ分かりにくい調味料かと思います。そんな疑問を解消して、選んだり使ったりする際に参考になるページに仕上がったと自負しています。

もっと知りたいゲランドの塩

塩とひとくちにいっても、原材料と製法によって種類がわかれます。ゲランドの塩は太陽と風の力だけで海水を結晶させてつくった天日塩です。少しグレーがかった色味をしているのは、洗浄工程がなく、粘上質の土壌の成分やプランクトンに由来していると言われています。ゆっくりと結晶した塩は、とがりがなくまあるい味わいが特徴です。今回は一番塩と粗塩をご紹介します。

◇一番塩は、食べる直前に!

塩田の表面にふんわりと浮かんでくる塩の花だけを集めた希少な塩です。焼いたお肉やお刺身、天ぷらにふりかけるなど、つけ塩としてお使いください。食べる直前にかければ、一番塩の美味しさを舌の上で感じていただけます。

◇粗塩&乾燥粗塩

粒の大きい粗塩は、塩田で収穫後に1~2年寝かせて自然に水分を抜いた後、師にかけたもの。キャベツやニンジン、大根、ソーセージをゆっくり煮込むポトフに使うと野菜の旨みが違います。煮込み料理やスープの他に、肉や魚の塩漬けや下ごしらえ、パスタ梅干しなどの漬物にもお使いいただけます。

粗塩を温風乾燥させて使いやすくした乾燥粗塩は、ミルで挽いてお好みの粒の大きさに出来ます。旬の生野菜にパレスチナのオリーブオイルと一緒にかけると野菜の甘味が引き立ちます。

ちなみに、ゲランドの塩職人イチオシの塩は、一番塩とのこと。独特のスミレのような香りがパッと立つのだそうです。残念ながら私にはスミレを感じ取れる感性がありませんが、カツオのたたきに使うと燻された香りがググッと際立って、ポン酢で食べる時とはまた違った赤身の濃厚さが味わえます。それぞれにお気に入りの使い方を見つけて楽しんでいただけたら嬉しいです(※あっさりしているものより、脂ののっているカツオに使うのがおすすめです!)。

今回新しいサイトの制作に携わるなかで、改めてこの塩が自然を相手に職人の手によって作られているさまに触れ、農作物と同じようにいのちのあるものに感じられました。使う際や食べる際にそうしたことをふと思い出し、大事に味わえたりすることもおいしさのスパイスになると思います。皆さまにも作り手や産地のことを身近に感じてもらえる瞬間が増えるよう、人の温もりが伝わるATJらしい情報の発信やサイト作りに今後も励んでいきます。

大久保ふみ(おおくぼふみ/ATJ)

ゲランドの塩のページもぜひご覧ください!

【バナナニュース331号】🍌ウェブサイトが新しくなりました🍌

2022年9月30日

バランゴンバナナを取扱う(株)オルター・トレード・ジャパンでは、ウェブサイトをリニューアルしました。
新しいウェブサイトでは、バランゴンバナナをはじめ、その他の民衆交易やフェアトレード商品の食べ方、使い方がたくさん紹介されています。

ぜひのぞいてみてください♪

食のギャラリー  ☛バランゴンバナナの特徴

バナナのレシピは、定番のバナナスムージーやスムージーボウルなどご紹介しています。
熟したバナナや余ったバナナは冷凍しておいて、牛乳とミキサーで混ぜてスムージーにどうぞ。熟したバランゴンバナナは砂糖やハチミツを入れなくても充分甘くておいしくいただけます。

バランゴンバナナのおすすめレシピ

1枚の写真から「日本では『カキ』パレスチナでは『カカ』」

2022年9月14日

日本の国果、柿。

「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」が詠まれた10月26日は柿の日。学名は、ズバリDiospyros kaki。

こんなにも日本と縁のある果物も、そうそうありません。が、パレスチナの古都ナブルスを徘徊していたら、新大久保駅前でトラック積みの桃を売るかの如く、山盛りになっている柿を路上販売するオジサンを発見。その後入ったレストランでも、デザートに柿。呼び方を聞いてみたら、「カカ」と言っていた。違う、それは「カキ」だ、と突っ込みを入れつつも、パレスチナの人は柿の美味しさを分かっていると知って、何だか一気に親近感が湧いたのでした。

若井俊宏(わかいとしひろ/ATJ)

1枚の写真から「サトウキビ畑の小さな休憩所」

2022年9月6日

マスコバド糖の故郷、フィリピン・ネグロス島。

原料となる、サトウキビの収穫は早朝から行われますが、朝からとても陽射しが強く、暑さが堪えます。しかも収穫された後のサトウキビ畑には、日を遮るものはありません。そんな中にぽつんと日陰を発見!よく見ると、サトウキビの柱に、サトウキビの葉っぱで作られた屋根。何とか大人二人が詰めて座って入れる位の小さなスペースですが、中は涼しく、とても快適でした。

生産者の知恵でできた即席の小さな休憩所。灼熱の太陽の下、生産者の疲れを癒す、つかの間のオアシスに違いありません。

中村智一(なかむら・ともかず/ATJ)

【バナナニュース330号】 世界的な経済危機がやってきて~バナナ生産者の状況~

2022年8月29日

現在、世界的な燃料高騰や食料価格などの上昇が続いていますが、フィリピンのバナナ生産者たちの生活にも大きな影響を与えています。今回は、ネグロス島とミンダナオ島の生産者に現在の暮らしぶりを聞いてみました。

◆エドアルド・カニエタンさん(ネグロス島東州)

2015年からバナナの出荷を始め、約1000本のバナナを育てていましたが、昨年の大型台風の影響で約8割のバナナが倒れてしまいました。台風前まではバランゴンバナナの収入は1回の出荷当たり1,000~1,600ペソでしたが、5月に出荷を再開した際の収入は600ペソ、7月には1,600ペソ分のバナナを出荷するまでに回復しました。

バナナが回復し始めた一方、世界的な経済危機がやってきました。これまでリッター当たり40ペソであった燃油が90ペソになり、配送コストが値上がりして町の市場へ農作物を売りに行けない時も出てきました。昨年はアボカドの販売で2,000ペソの収入がありましたが、今年は配送コストがかかるので収入は半減しています。日用品も、食用油がリッター当たり40ペソから44~50ペソへ、魚もキロ当たり230~250ペソで買えたのが280~320ペソへ値上がりしました。

田んぼを1.5ha持っており、収穫したお米の半分は自家消費用、半分は販売に回しています。肥料も1袋当たり900ペソから3,200ペソへ高騰してしまったので、肥料を少なくした結果、生産量も落ちてしまいました。その他、自家消費用に鶏やアヒルを育て、ヤギも販売用にと育てて何とか暮らしをやりくりしています。

バランゴンバナナは私の家族にとって大変貴重な定期収入になっていて、魚、砂糖、コーヒー、食用油、石鹸など日用品を購入する費用に充てています。畑の近くまで買い付けに来てくれるので、売上がほぼそのまま収入になります。

バランゴンバナナはこの不安定な経済状況において生き延びるための希望になっています。

◆ビエンベニード・トト・ベルマスさん(ミンダナオ島ツピ)

バランゴンバナナを出荷し始めてから15年が経ちます。最近バランゴンバナナの生産者組合の栽培指導員としても働くようになりました。600本のバランゴンバナナの株を育てており、月に約6,000ペソの収入があります。バランゴンバナナのほか、ランソーネス、マンゴスチン、ドリアン、ココナツ、バナナのサバ種などを栽培しています。

ここ最近、日用品や燃料が高騰したことにより、家計や農場経費の出費も慎重にしています。基本的な生活必需品のみ購入し、親族の集まりへの参加やモールへのショッピング、遠方への旅行は最小限にして、親戚や友達を家に招待するのも本当に必要な時だけになりました。

収入を増やすために、裏庭や畑の端に様々な野菜を植え、バナナのサバ種やカカオの苗を植え直しています。畑での仕事も見直しました。草刈り機を使用する代わりに、週末の朝早くにバナナの株の周りのみを手で草刈りしています。使用する鶏糞の量も予算に合わせて調整しました。これまで3か月ごとに撒いていましたが、6か月ごとにして労賃や配送コストの経費を減らすようにしています。

バランゴンバナナからの収入は月々の光熱費や鶏糞の購入、バナナの栽培作業を手伝ってくれる人への労賃に充てています。今回の危機があっても人生は続きます。そんな時は、より賢く、現実的にならなくてはと思っています。

※1ペソ=2.4円/8月12日のレートで換算

————————————

よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。
生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。

粗塩の収穫にこの道具あり!

2022年8月25日

これはただのトンポではなく、1,000年を超える歴史を持つゲランドの塩田で粗塩の収穫を任され続けてきた唯一無二の道具です。およそ5mという長さは、塩田の真ん中まで無理なく届くように設計されたもの。

先端にあるプレートは塩に触れるため木製でなくてはならず、十分な幅を持ち、その断面は作業性を考慮した絶妙な角度に仕立てられています。素材の進化により持ち手だけは木でなくグラスファイバー製でもOKとなったそうですが、そのしなりを活かして卓越したコントロールで収穫する技術と共に、ほぼオリジナルのままで今に伝えられています。

さて、その他にあまり用途がなさそうなこのトンポ、当然入手経路も限られてきます。しかし、今ではこの由緒正しいトンポを使うこと自体が 「ゲランドの塩」の生産条件の一つであると同時に、そもそもこれがないと塩田を保ちながら収穫すること自体できないわけで、これはまさにゲランドの塩の命綱。そのため生産者組合では、塩職人がトンポ難民にならないように在庫を確保し、いつでも供給できる体制を整えているのです。あ、トンポの名前は「ラス」といいます。

若井俊宏(わかい・としひろ/ATJ)

ゲランドの塩が作られる様子はこちらから。

みんなの力を合わせて乗り越える~台風オデットの被害を受けて~

2022年8月10日

2021年12月16日から17日にかけてフィリピンを通過した大型台風22号(フィリピン名:オデット)により、バランゴンバナナ及びマスコバド糖の原料となるサトウキビの生産者たちは大きな被害を受けました。オルタートレード・フィリピン社(ATPD*1社長のノルマ・ムガールさんに被害を受けたネグロス島の復興状況を聞いてみました。

生産者からバナナの回復状況を聞くノルマ・ ムガール社長(右)

サトウキビ畑の状況

台風が通過した時期は、サトウキビの収穫シーズンが半分過ぎた<らいの頃でした。本来、サトウキビは強風に強い作物と言われていますが、今回の台風ではたくさんの茎がなぎ倒されました。その影響で糖分含有量が減り、砂糖としての生産量が減ってしまうおそれがありましたが、台風後の天候がよく、サトウキビの回復がよかったため、心配したほどの影響はありませんでした。ただ、泥にまみれたり、強風で絡まりあったサトウキビを収穫するのは困難を要し、通常より収穫に時間や労力がかかりました。そのため、余計にかかった人手の労賃は、災害支援の募金から補填しました。

まずはバナナ畑の復興を

台風の通過によりネグロス島の生産者たちのバナナは、ほとんどなぎ倒されてしまいました。今回の台風は今までになく最悪だったと生産者が口々に言っていました。どれだけ民衆交易のバランゴンバナナが生産者たちの暮らしを支える基盤だったのかを痛感しました。まずはバランゴンバナナを復興させることが生産者たちにとって最優先です。

それを実現するために、生産者たちに肥料(鶏糞)を配布し、散布してもらうことにしました。これまで施肥は限られた地域でのみ実施してきましたが、今回は村の中の橋が壊れたり、道路状況が悪かったりするために肥料を運搬できない地域を除いて全産地に配布しました。今年は乾季にも雨が降り、バナナの成育にとって好条件だったことも手伝って、葉っぱが元気で実の成長が早くなり、施肥の効果を多くの生産者が認識しました。

元気に育って回復中のバナナ

結の精神で

一時的に仕事がなくなってしまったバナナの買付や運搬を担う現場スタッフ、バナナの箱詰めをするパッキングセンターで働くパッカーたちも、生産者の畑に出向いて一緒に作業を実施してもらうことにしました。フィリピンには「バヤニハン」という、共同体での助け合い、相互扶助の制度*2がありますが、それをバナナの復興においても意識的に実施したのです。現場スタッフには対価として日当を支払いました。

普段はパッキングセンターでバナナの箱詰めをするスタッフたちも畑で作業

現場スタッフの中には生産者である人もいますが、雇用されて働いている人も多くいます。これまでは単にバナナを買い付けたり運搬したりすることが主で、生産者のことについて知る機会がほとんどない人もいました。今回生産者たちの畑に行くことにより、バナナが作られる背景や生産者のことを知るきっかけになりました。生産者や畑のことを知ることで、それが自分たちの仕事とつながっているという意識を持ってほしいし、これからも その意識を高めていかなくてはなりません。

今回の台風被害は甚大だったものの、施肥や 「バヤニハン」の実践はバランゴンバナナの生産者や現場スタッフの意識改革を促したとも言えます。施肥の効果もあり、バナナの回復が 1~2ヵ月早まっており、9月頃から前年の平均出荷量程度に回復する予定です。

今回の台風からの復興は、日本の皆さんからのご支援がなければ、すべての被災地へ手を差し伸べることはできませんでした。日本からの応援によって生産者たちも復興に向けて、また歩みだすことができました。すべての関係者が感謝と希望、目的をもって懸命に前に進もうとしたこの復興事業は、民衆交易の歴史の中に刻み込まれることでしょう。

インタビュー・まとめ 吉澤真満子(よしざわ・まみこ/ATJ)

*1オルター トレード・フィリピン社:バランゴンバナナ、マスコバド糖の輸出を担っている。

*2日本の農村社会にある「結(ゆい)」に相当。

エコシュリンプとブロッコリーのオリーブオイル炒め

2022年8月8日

エコシュリンプのトルティーヤ

2022年8月7日

フライパンで簡単!パエリア

2022年8月7日

”プリプリ”エビの水ぎょうざ

2022年8月7日

塩豆腐

2022年8月2日

PtoP NEWS vol.51 

2022年8月1日

PDFファイルダウンロードはこちらから→P to PNEWS vol.51

【バナナニュース329号】コロナ禍の教育事情~その後の最新情報/2022年~

2022年8月1日

コロナ感染拡大が世界的に広がった後、フィリピンでは2020年10月から「遠隔教育システム(課題学習)」が実施されてきました。オンライン学習や学校から配布される課題を在宅で学習するという仕組みです。それが導入されてからもうすぐ2年が経過します。

2022年2月、教育省長官より、保健省が示した生徒・学校関係者が安全に過ごすための厳格な実施要項「学校安全評価(SSAT)」に合格した学校は対面授業を再開できることを発表しました。2021年11月~12月に実施された運用の試験期間中に、SSATに合格した学校リストを地方自治体が提出し、全国で6,686校が対面授業に向けて準備ができている状況でした。そのうち6,586校が公立学校、100校が私立学校でした。

一方、高等教育(大学、専門学校など)を監督する高等教育委員会(CHED)は、2020~21年には「フレキシブル・ラーニング(注1)」を実施していましたが、この方針を延長し、従来の教室で学習する対面方式に完全に戻ることはないという方針を出しています。もしまたパンデミックが来たときに、教育関係者を同じリスクにさらすようなことはしたくないという理由からです。 また、従来の対面式授業に戻ることは、オンライン用のテクノロジーの導入や教師の訓練、施設の改修などへの投資を無駄にすることになるとも言及しています。

【フィリピンの教育制度】
学校年度:6月~5月(4、5月は夏休みで長期休暇)
□ 小学校:幼稚園(5歳~)6年生(7年)
□ 中学校:7~10年生(4年)
□ 高校:11~12年(2年)
□ 高等教育:大学・専門学校など(高卒以降)

注1:時間や場所、聴講の有無などを選ばずに学習できる形態。必ずしもテクノロジーを駆使した手法に限らない。

生徒たちの心境と今

「遠隔教育システム(課題学習)」からようやく対面授業へと移行する運びになりましたが、移行期間であるがゆえに、学校によって状況は様々なようです。2021年9月にバナナニュースでご紹介した「コロナ禍での教育事情<都会編>」に登場したジェレミーアール君、ピート君、10月にご紹介した「コロナ禍での教育事情<農村編>」に登場したアナリザ&アイラ・ヴィリアメントさん姉妹ほか、合計5人の生徒たちに現在の様子を聞いてみました。

【都市・小学校の事例】

◆オルタートレード・フィリピン社スタッフ アーウィンさんの長男
ジェレミーアール君の場合(11歳)

自宅で学習中

ジェレミーアールくんの通うラ・サール大学付属小学校はネグロス西州バコロド市内にあります。2020年から2022年5月までオンライン授業が実施されてきました。2022年8月から2023年5月までは、「混合学習」が実施されることになり、週に2日間教室での対面授業、3日間オンライン授業が実施されることになりました。
「親にとっては、いくつかの教科において調査などのサポートをする必要があり、その時間をどう作るかが課題でした。オンライン授業に参加するためにパソコンを購入したり、インターネットの接続や電気系統の故障の時のためのバックアップ用の機材を準備したりと出費がかさみました。ただ、オンライン授業であれば子どもの感染リスクが減るのでその点は安心できました。

アイロンを手伝うジェレミーアール君

この間、息子も長期間にわたる自宅での学習の間に、どのように過ごすかを学んできました。運動をしたり、家事を手伝うなどです。私たち親も息子本人も、オンラインと対面との混合授業のあり方がよいと考えています。対面授業により先生と議論ができたり詳しく教えてもらうことができる一方、オンライン授業ではウイルスに感染するリスクを減らせるからです。投資した機材も活用できるし、昨今の燃料高騰で値上がりしている学校までの交通費も節約できます」と父親のアーウィンさんが話してくれました。

自転車で体を動かす時間を

【都市・中学校の事例】

◆オルタートレード・フィリピン社スタッフ ビクトリアさんの長男
ピート君の場合(14歳)

ピート君とお母さんのヴィクトリアさん

ピート君もネグロス西州バコロド市内にある私立学校セント・ジョセフ・スクール・ラ・サールに通っています。2022-2023年の学習年度は、新しく「同時併用クラス」と「課題学習」を選べる方式をとることになりました。夜間クラスに通う生徒は引き続き「課題学習」をすることも可能で、自宅でインターネットのアクセスがない生徒は教室での対面授業と「課題学習」の併用もできて、生徒が選択できるようになっています。
「同時併用クラス」とは、生徒たちを25人ずつの2グループに分けて、隔週で学校に登校するするという方式です。登校していない生徒たちは、同じ授業をオンラインで受けます。オンラインで参加している生徒たちは、教室での先生と生徒たちのやりとりを見聞きすることができ、教室とオンラインの生徒たちが同時にやりとりすることもできます。健康に問題を抱えている生徒など教室での授業に参加しない子は、オンラインで参加することもできます。

「同時併用クラス」の教室の様子

「2年も課題学習を自宅でしてきたので、学校での授業になれば先生から直接学べるし、やっとクラスメートと会うことができてうれしいです!」とピート君。お母さんのヴィクトリアさんは、「オンラインと教室での授業の併用により、徐々に通常の授業へと移ることができて満足しています。ウイルスへの感染の機会を軽減しつつ、先生から直接学ぶことの重要性や子どもの社会性を育むことができるからです。ただ今回の「同時併用クラス」により学費が4%値上がりし、コロナ禍の前に家庭教師に支払っていた費用より高くなります。我が家にとって息子の教育費は何より最優先なので、家計をどうやりくりできるか思案中です。片親である私にとって、教育を受けさせることが唯一子どもにできることだからです」と話します。

【農村・大学の事例】

◆サトウキビ生産者・ヴィリアメント一家
アナリザ(21歳)&アイラさん(20歳)姉妹

ヴィリアメント姉妹と両親

二人とも地元のラ・カルロータ市立大学へ通っています。学校までは、家から公共の交通機関を使い50分かかります。現在まで課題学習とオンライン授業が続いていて、学校での対面授業の再開についてはまだ通知がないとのこと。「課題学習だと充分理解できない内容があったり、インターネットの通信状態がよくないときは、学習がはかどりません。早く対面授業が再開してほしいです。より学習の理解を深めるために先生に教えてもらいたい。友だちと交流する機会も減り残念です」と二人は話します。ご両親はインターネットでの調査学習に頼りすぎていて充分学習内容の理解が進んでいないことを心配しています。「その分を私や妻が教えるというわけにもいきません…」と、父親のアルセーニョさん。

【農村・高等教育の事例】

◆バランゴンバナナ生産者(シライ市ランタワン) ドナ・ドーモさんの息子
マーク君の場合(18歳)

マーク君と家族。家族で営む商店の前で

ネグロス西州シライ市にあるランタワン高校へ通っています。学校は徒歩で20分ほどの場所にあります。2020年から自宅での課題学習が続いていましたが、2022年6月から教室での対面授業が再開しました。「課題学習は難しかったです。理解できない科目がありましたが、すぐに先生に聞けないもどかしさがありました。グーグルで調べたりもしましたが、僕の住んでいる地区はインターネットの電波が弱く、通信速度がとても遅いのです。インターネットの通信環境がいい場所を探し回るということをしていました」。お母さんのドナさんは「課題学習になったことで、新しい機械を購入したり、インターネットの通信費で出費がかさみました。村の中で小さな商店を開いていますが、収入はわずかです。そのため、肥育豚を育てて売ったお金を教育費に充てました」。

【農村・大学の事例】

◆バランゴンバナナ生産者(シライ市ランタワン) ルイサ・レゴドンさんの娘
ヴァネッサさんの場合(18歳)

ヴァネッサさん、学校にて

ネグロス西州タリサイ市にあるフィリピン・テクノロジー大学の3年生です。家から大学までは35km離れていて、コロナ禍以前は、公共交通機関(ジプニーとトライシクル)を使い、登校に約2時間かかっていました。そのため、彼女は大学近くに下宿して、週末に家に帰る生活を送っていました。コロナウイルスの感染が拡大してからは、2020~2021年の学校年度(2020年6月~21年5月)は課題学習で、2021年の途中からオンライン学習も始まりました。2022年6月からは学校での授業が再開されています。


課題学習だった時は、学校まで課題を取りに行かなくてはならず、その課題を決められた期日までに学校に提出しなくてはなりませんでした。コロナ禍で公共交通機関の運行が止まったり、地区ごとのロックダウンがあった関係で、課題の受け取りと受け渡しが難しくなり、バイクをレンタルして学校の行き来をしました。この影響で家計の出費がかさみました。「オンライン学習は課題学習よりずっとよかったです。分からないことなどを直接質問することができたからです。それでも対面授業が望ましいと考えていたので、再開してとてもうれしいです」とヴァネッサさんは話してくれました。
————————————-

よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。
生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。

フィリピン 台風オデット復興事業<中間報告>

2022年7月29日

昨年12月16日夜から17日にかけてフィリピン中部を直撃した台風22号(フィリピン名:オデット)により、ネグロス島のバナナとサトウキビ、多数の生産者や事業関係者の家屋が全半壊する甚大な被害が出ました。オルタートレード・フィリピン社(ATPI)とオルタートレード財団(ATPF)では、海外の関係団体からの支援をもとにバナナとサトウキビの生産復興及び生活支援事業を進めてきました。ATPI社長のノルマ・ムガール氏をはじめとするチームがネグロスのバナナとサトウキビの全産地を訪ね、モニタリングした事業の進捗状況や台風から半年たった産地の様子を報告します。

モニタリングチーム(前列右から3番目がノルマさん)

<海外パートナーから多大な支援>

復興事業は主に収入が確保されるまでの生産者や事業関係者の当面の生活支援、バナナとマスコバド糖の原料となるサトウキビの生産復興からなります。総事業予算は1,248万ペソ(約2,800万円)でした。

ATPI/ATPFからの支援呼びかけに応え、マスコバド糖を輸入しているヨーロッパのフェアトレード団体、日本・韓国でバナナやマスコバド糖を扱っている生協・産直団体、APLAから合計9,663,137ペソ(約2,170万円)もの募金が寄せられました。ATPIとATPFは支援金をもとに、生活支援事業及びバランゴンバナナとサトウキビの生産復興事業を中心に支援活動を進めてきました。

  • 生活支援事業

〇食料支援
当面の食料として合計1,605家族に対し、10キロのお米を提供しました。内訳はバナナ生産者838名、サトウキビ生産者543名、「the BOX」(野菜宅配事業)生産者11名、現場スタッフやパッカー、製糖工場職員など213名です。

〇屋根材配布
家屋が全半壊した生産者254名(現場スタッフ1名を含む)を対象に屋根材(トタン板)を配布しました。倒壊したボホール島のパッキングセンター、ネグロス東州カクハ村のバナナ集荷所再建のために資材も支援しました。また、台風被害を受けたサトウキビ生産組合が共同で運営する養鶏場や農場12件にも、資材が提供されました。

【バナナニュース324号】<大型台風 22 号・その後> 屋根材の配布を実施しました

  • バナナ、サトウキビ生産復興事業

台風ではネグロス島の90%以上のバナナが被害を受け、十分な供給が出来ない状況が続いています。そのため、ATPI/ATPFはその復興を最重要課題としてこの間、取り組んでまいりました。

例年3月から本格的な乾季に入るため、苗の確保や植付が不安視されていましたが、今年はラニーニャの影響もあって乾季でも降雨があり、脇芽がよく育ちました。生産者は自分の畑で育った脇芽を融通し合い、株として新たに植え付けました。植えた株や、茎や葉が傷ついたバナナの成長を早めるため、ATPI/ATPFでは鶏糞をバナナ生産者へ配布しました。第1回目として2月より配布を始め、現在までにネグロス西州で190,705キロ、ネグロス東州で220,961キロを配布しました。土壌が肥沃でないため、施肥の効果が十分に出なかった地域も一部ありましたが、多くの産地では施肥によって予想以上のスピードでバナナが成長し、9月頃から前年の平均出荷量程度に回復する予定です。

【バナナニュース325号】<大型台風22号・その後2>バナナの畑の回復と生産者

【バナナニュース328号】<大型台風22号・その後4>結でバナナ畑の復興を

バナナ株の植付作業(東州マンサグマヨン村)
鶏糞の施肥作業(東州ボナウォン村)
成長中のバナナ(東州ドマゲッティ市周辺産地)

サトウキビも強風によって倒伏する畑が目立ちましたが、台風に比較的強いサトウキビはその後、順調に回復しています。さらに成長を促進するため鶏糞の配布を予定しています。

<台風被災後の生活について>

出荷するバナナがないため一時的に収入が途絶えたバナナ生産者は、この間サトウキビ農園や水田、トウモロコシ畑で仕事をしたり、都市部の建設現場で働いたり、お手伝いさんや魚の行商など何かしらの仕事を得て糊口をしのいできたそうです。また、バナナ生産者同様、バナナの買付担当、運搬担当やパッカーなど現場で働くフィールドワーカーも仕事が減り、収入が激減しました。ATPIではそうした現場スタッフの生活支援の一環として、倒伏したバナナ畑の片付けや整地作業、株の植付、鶏糞の配送と施肥などの作業を週2-3日してもらい、対価として作業賃を支払いました。現場スタッフからは以下のメッセージが届いています。

【バナナニュース327号】日本からのメッセージを届けました

ATPI/ATPFでは今後もバナナとサトウキビ生産の生産向上に向けて、産地での鶏糞の配布を進めています。

塩豚

2022年7月20日

普段使いで楽しめる!〜担当者がおすすめするマスコバド糖の魅力〜

2022年7月13日

黒糖のコクのある風味と、すっと溶けるような丸くて優しい甘さ。一般的な黒糖のえぐみが全くなくて初めてマスコバド糖を口にしたときは、 「黒糖だけど黒糖じゃない、マスコバド糖というお砂糖なんだ」と驚きました。ATJの歴史のあるロングセラー商品であるマスコバド糖の担当になって約半年、改めてマスコバド糖の魅力をお伝えしたいと思います。

あらためて、マスコバド糖とは?

「マスコバド」というのはフィリピン・ ネグロス島の昔ながらの製糖法の呼び名です。
工程はいたっ てシンプル。収穫されたサトウキビを細かくカットして搾汁し、そのジュースから不純物を取り除きます。シロップ状になるまで煮詰めていき煮詰めたジュースを乾燥機で乾燥させます。

パッケージの内容も変わりました。

これまでは大きなステンレス製のシャベルを使って手作業でかき混ぜていましたが、これには労力と時間が必要でした。そのため、 2021年から乾燥機を導入しています。昔ながらのシンプルな製糖法にこだわりつつ、改善できるところは取り入れて、いまのマスコバド糖は作られています。

マスコバド糖は他のお砂糖とどう違うの?

マスコバド糖はお砂糖の中では黒糖に分類されます。消費者庁食品表示課の定義によると、「黒糖とは、さとうきびの搾り汁に中和、沈殿等による不純物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、糖みつ分 の分離等の加工を行わずに冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のもの」とあります。糖みつ分の分離などを行っていないため、精製されている白いお砂糖と違ってカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルが残っています。黒糖やマスコバド糖はこれらのミネラルを多く含んでいるため、白いお砂糖と比べて、甘みだけではなく味わい深くなります。

上白糖との比較(100gあたり)

一般的な黒糖と比較すると、マスコバド糖は独特のクセが無いため、 白いお砂糖のようにお使いいただけます。ただ、黒糖なので色は濃く仕上がります。その点は要注意ですが、「白いお砂糖は控えたいけど、黒糖は風味が強すぎる」•••といったときにマスコバド糖がおすすめです。

おすすめの使い方は?

マスコバド糖はクセが無いので、調味料としてとっても使いやすいと思います。ぜひ、普段使いのお砂糖として使っていただきたいです。

煮物やスープに加えるとコクを出してくれたり、保水効果があるのでパウンドケーキやブラウニーに使っていただくと、しっとりした仕上がりに なりおすすめです。後味がすっきりしているので、料理のジャンルは問いません。


•••とはいえ普段白いお砂糖を使っている方にとっては、いきなりマスコバド糖に切り替えるのはハードルが高いかもしれません。実は私がそうでした 。そんな私がまずやってみたのはマスコバド糖ホットミルクで す。温めた牛乳にマスコバド糖を入れるだけで、コクがあって優しい甘さの美味しい牛乳になるんです。冷たい牛乳で作るときには、マスコバド糖と水だけで作った「マスコバド糖黒みつ」がおすすめです。牛乳1杯 に対して、大さじ1杯(甘党の方は2杯くらい)で、まるでカフェオレのようなドリンクになります。いつもの牛乳が抜群に美味しくなって、ついつい2杯目、3杯目に突入することも•••。飲みすぎにはご注意ください。

「マスコバド糖は砂糖ではなく天然のうま味調味料だ」、これはATJ 顧問の吉田友則シェフの言葉ですが、使い始めてみるとまさにそうだ と実感します。料理中にちょっと物足りないなというときに加えるだけで、コクのある風味になります。ぜひ普段の生活に取り入れて、その魅力をお楽しみいただければ幸いです。

藤山美穂(ふじやま・みほ/ATJ)

バナナスムージー

2022年6月27日