パレスチナの行政拘禁された人々のハンガーストライキに大きな動きがありました

2014年6月27日

アブドゥル・ラザック・ファラージ氏

海外メディアで、行政拘禁者のハンガーストライキが終了したとの報道が出ています。
この状況の確認をとるため、UAWCに連絡を入れたところ、
「6月24日にハンガーストライキは終了した模様」
「詳細に関しては、現在確認中」
「UAWCは、ファラージさんを始めとした行政拘禁された人々のハンガーストライキを国内、世界の人々が支援をして頂いたことに敬意を表している」
「まだ、行政拘禁制度を止めるためのキャンペーンは継続している」
との返答がありました。ファラージさんの状況については把握できていません。
現時点では、各メディアにより、報道される情報も違いがあるために、今後情報を確認しながら随時皆様に状況をお知らせいたします。

 

以下 6月25日付 ニューヨークタイムス(The International New York Times)の記事にこの間の動きについて書かれていますので抄訳してお伝え致します。

★6月24日、75人の被拘禁ハンスト者全員が、ストライキに参加したことに対する懲罰や罰金は科されないという約束を取り付けハンガーストライキを止めることを合意した。また、行政拘禁そのものに対する対話は引き続き行われる。
★イスラエル監獄局のスポークスマンは、「ハンガーストライキを行った75人は現在病院で、監獄に戻られる状態になるまでは、水とサプリメントを摂取している」と述べている。
★ネタニヤフ首相は、イスラエル監獄局や保安当局の努力によってハンストが止まったことに対し、賞賛の声。また、イスラエルは、今後のストライキを起こさないようにするために、新しい方策を考えていくことを付け加えた。
★被行政拘禁者とイスラエルとの対話を通してハンストは終了したが、双方共に折れなかった。
★イスラエルは、ハンスト者の中に死者が出ることで、囚人やそれを超えた規模での騒動が起きることを恐れている。

ファラージさん、行政拘禁された人々に対してアムネスティから緊急アクションの呼びかけ

2014年6月19日
ファラージ氏と拘禁者の釈放を要求するポスター

ファラージ氏と拘禁者の釈放を要求するポスター

6月13日に国際的な人権団体であるAmnesty International(アムネスティインターナショナル)から、ファラージさんをはじめとする行政拘禁されている人々のハンガーストライキによる健康状態の悪化に対して緊急行動を世界的に呼びかけています。アムネスティ日本でも6月18日WEBにこの情報が日本語で掲載されました。
イスラエル政府と、イスラエル監獄局、イスラエル大使館に対して、抗議の手紙を送る運動を呼びかけています。アムネスティ日本のWEBにも、抗議文の文案が掲載されており、その文案に宛先を付けて、送信者のサインを入れて、郵便、ファクシミリ、Eメールで送ることができます。
是非、アムネスティ日本、アムネスティインターナショナルの以下のWEBを参考にして頂き、抗議の手紙を送ってください。

*アムネスティ日本の緊急行動を呼びかけるサイト(日本語)

*Amnesty InternationalのURGENT ACTIONを呼びかけるサイト(英語)

父の願い (ファラージさんの息子の手記)

2014年6月17日

イスラエル政府により行政拘禁され、4月30日からその不当性を訴えるハンガーストライキに入ったパレスチナ農業開発センター(UAWC)ののアブドゥル・ラザック・ファラージさんの長男であるバジルさんが中東情勢を伝えるニュースサイトに寄稿した手記が、父であるファラージさん、そしてパレスチナの人たちが直面している状況について伝えています。
(原文はこちら→http://mondoweiss.net/2014/05/palestinian-resists-occupation.htmlこの中でファラージさんが自ら語る動画(英語・スペイン語字幕)も含まれます)。
抄訳した文章を是非お読みください。

 

 

[box type=”shadow”]バジル・アブドゥルラザック・ファラージ          

2014年5月28日

多くの人は「語らない方がいいストーリーもある」と言うでしょう。私はもうそれには同意できません。特に“語られることのない”ストーリーを思い出すだけで引き起こされる痛み、苦しみ、そして喪失感を感じる時は……。パレスチナのストーリーは、占領体制の中で、希望と想像をかき立てる武器でもあるのです。

私は、私の家族のストーリーの1つを皆さんと共有したいと思います。私自身が多くを学び、そして今も学び続けているこのストーリーは、特別なものでも唯一のものでもありません。パレスチナで数多く生まれ続けているストーリーの一つであり、そしてまた、パレスチナの民衆の甦る力とその広大な命への愛を思い起こさせるものなのです。

行政拘禁の最長拘禁期間は6か月です。その拘禁期限を迎える日まで、あと1か月、2週間、1週間……。あと1日、2時間、1時間。心配と不安のあまり私たち家族の胸の鼓動は激しくなるばかりです。待合室に集まった皆の胸にあるのは、不安そして何とか無事であってほしいという希望だけ。そして弁護士から告げられる言葉。「あなたの父親の拘留期間はあと6か月間延長された。これが行政拘禁ということだよ」

私たちは何も知らされないままに、不安の中で待つことの繰り返し。それが行政拘禁です。あと6か月、あと4か月。そしてまた6か月、あと4か月、3か月……やっと釈放を迎え、私たちは抱き合いながら涙を止めることができません。しかしまた、ある夜中に突然連れ去られ、私たちは再び不安のなかで父の戻りを待ちわびる日々が始まるのです。

私の父であるアブドゥル・ラザック・ファラージは、UAWCの財務担当をしています。しかし、現在51歳である父は、これまでの人生のうちで通算14年の月日をイスラエルの拘置所で過ごしたことになります。拘禁者は、弁護士や家族に会うことも許されていないのです。私たち家族は、なぜ父が拘禁されるのか、どこにどのような状態で拘禁されているのか知るすべすらありません。

現在わかっているのは、起訴も裁判もないままに拘禁されるという非人道的な行政拘禁に抗議して、他の行政拘禁者と共に父もハンガーストライキに入っているということです。父がハンストを行うのは、今回が初めてではありません。2012年には24日間のハンストに参加しました。その時には、父が国際赤十字を通してやっとのことで送ってくれた手紙をいつも肌身離さず持ち歩いていました。内容は、私たち家族のことを気遣う手紙でした。

度重なる拘禁にもかかわらず、私たち家族のこと、パレスチナの若い世代のこと、パレスチナの将来のことを常に考えてくれています。私自身を含むパレスチナの若者が、父と同じ道を歩まないようにと常に願ってくれています。パレスチナには、行政拘禁やハンストで身体が弱くなっても、揺るがない決意と強さをもって闘っている人々がいるのです。彼らは、パレスチナの人々が真に生き続けるために、すべてを賭けているのです。

私自身がそんな父と直接話をすることができた時間というのはとても限られていますが、周りの人からは「あなたの父親は意志が固く、決して屈しない」というようなことをたびたび耳にします。父は家に戻っても、私たちには、父の人生のことや拘禁中のことなどは、あまり多くを語らず、静かに家族との再会の時間を楽しんでいるかのようです。彼の沈黙は、愛と記憶や経験、情熱、家族のことなど、失われたストーリーを呼び戻しているかのようです。

私の母は、自分の夫が連れ去られるのを7回以上も見てきました。イスラエルの占領によって家が襲撃されるのを見てきました。彼女は、そうした状況の中でも、私たち兄弟のよりよい生活や夢がかなうことを願いながら、何年にもわたり私たちを育ててくれました。私たちの両親の愛、そして絶えることのない闘いと犠牲について語りつくすことはできません。また私たち家族の物語として封印しておきたいこともあります。私は真実の愛と生きるための闘いについて、私の家族から学んできたのです。

長引く占領によって私たちに「生きること」を諦めさせようとするイスラエルの試みむなしく、私たちは「生きること」をこよなく愛しています。私たちは決して諦めてはいません。なぜならば、私たちは生きるに値するからです。私たちは人間らしく希望をもって生きていきたいと願っているからです。
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【パレスチナ ハンスト情報】 家族も弁護士も面会が許されていません!(UAWCからの報告)

2014年6月13日
ファジャール氏と拘禁者の釈放を要求するポスター

ファラージ氏と拘禁者の釈放を
要求するポスター

6月11日現在も、ファラージ氏の家族は、面会を許されていません。

UAWCから、現在のハンガーストライキを行っている拘禁者(以下ハンスト拘禁者)の概況を以下の通り、皆さんにお知らせします。

80人近いハンスト拘禁者が、9つの民間の病院に収容されています。彼らは、定期的に恣意的な移動を強制されており、彼らの権利である弁護士による面会すら却下されています。それにより、イスラエル監獄局と今後交渉の可能性が残されるかもしれないのに。

Kaplan 病院の拘禁者からは、Addameer(パレスチナの人権擁護NGO)の弁護士に対し、「医者たちは、ハンスト拘禁者が意識を失った場合には強制的な栄養剤の投入 (Force-Feeding)を実施すると脅迫している」との報告があがってきています。医者たちが、「(ハンスト拘禁者を)縛り付けたうえで、同意をとらずに、鼻から食べ物を流し込む」と脅しをかけています。

パレスチナ人ハンスト拘禁者に対する強制的な栄養剤の投入を認める法案がイスラエル国会で議論されている最中に、こうした疑惑が浮上しています。このことは、パレスチナ人ハンスト拘禁者への拷問を制度化するという非常に危険な動きです。Force-Feedingは、国際法上も、世界医師会でも、憂慮されていることだからです。

ハンスト拘禁者の筋肉の状態は悪化しており、体脂肪はすっかり落ち、生命の危機にさらされていると警告されています。なかには、いつ心臓発作を起こすかわからないと医者に言われているハンスト拘禁者も出ています。また、胃腸内出血、吐血、極度の体重減少や心拍数の減少、血糖値の低下などによる意識不明となっている方もいます。

病院に移送されたハンスト拘禁者は、一日12時間は両手足をベッドに縛りつけられ、残りの12時間も片方の足を縛り付けられています。トイレに行くにも許可を取らなければならず、夜間はトイレの使用すら許可されていません。イスラエルの保健省からは、血流を保つために歩行などをするように奨励されているにもかかわらず、ハンスト拘禁者たちは一日中縛り付けられているために部屋のなかで歩くこともできない状況に置かれています。

病院及び拘置所内のクリニックの医療スタッフのひどい扱いについても証言があります。医者たちは、ハンスト拘禁者に投与するサプリメントの成分などを公表することを拒否しており、ハンスト拘禁者たちは、自らの意図に反してストライキを中断させられることにつながるサプリメントの投与を恐れています。ハンスト拘禁者の健康管理や、サプリメントやビタミン剤投与の助言をする役割の国際赤十字が不在なため、ハンスト拘禁者を放置してしまう状況を許してしまっています。

【パレスチナ ハンスト情報】 UAWCからの緊急アピールに対しATJより連帯メッセージを送りました

2014年6月13日

パレスチナのUAWCからの緊急アピールに対して、6月6日にATJでは連帯のメッセージをUAWCに送りました。

ATJからの連帯アピール抄訳

[box type=”shadow”]私たちは、10年間パレスチナのオリーブオイルを通して行っている、平和連帯の活動に誇りを持っています。緊急アピールで報告された、アブドゥル ラザック ファジャール氏に起こったことに関して非常にショックを受けました。
我々は、ファジャールさんを含む行政拘禁者のハンガーストライキの状況を懸念しています。我々はイスラエル政府の行っている非人道的な行政拘禁の制度を可能な限り早期に終わらせる必要があるという、あなた方のアピールに対して全面的に賛同します。
我々は、日本国内においても、この状況を出来る限り広める活動を行っていきます。
ATJはUAWCに連帯します。

2014年6月6日

株式会社オルター・トレード・ジャパン 代表取締役社長 上田誠

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UAWC カレッド代表からの返信

[box type=”shadow”]UAWCはATJの、ファラージ氏をはじめとしたハンガーストライキを行っている拘禁者の継続的な支援に対して深く感謝します。
ハンガーストライキを行っているこの戦いが勝利し、残忍な行政拘禁の制度が終了することを望んでいます。

UAWCは継続して、この状況に対しての情報をお送りします。この情報を日本の方々に継続してお伝え下さい。

2014年6月12日

UAWC 代表 カレッド ヒデミ

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パレスチナ行政拘禁者(UAWCのファラージ氏含む)ハンガーストライキ状況のご報告

2014年6月11日

ATJのパレスチナのオリーブオイルの生産者団体の一つである、UAWC(パレスチナ農業開発センター)*より、UAWCの財務担当をしているアブドゥル・ラザック・ファラージさんが、イスラエル政府により、不当に拘束(行政拘禁**)され、他の拘束された人々と一緒に4月30日からハンガーストライキに入り1ヶ月経過し厳しい健康状態にあることが緊急アピールとして届けられました。
UAWCからの緊急アピール(英語原本)   (日本語版)

アブドゥル・ラザック・ファラージ氏

*UAWC(Union of Agricultural Work Committees)は、1986年に創設されたNGOです。パレスチナ自治区の農民の権利、土地、水等を守り、彼らの農業を支援することに加え、雇用の創出や女性の社会進出にも力を入れています。ヨルダン川西岸地区・ガザ地区を含め、16ヶ所の事務所で、総勢106人が働いています。2005年より、ATJにオリーブオイルを出荷している。(数字は2010年時点)

**行政拘禁とは、起訴や裁判といった法的手続きもなく拘禁を認める措置のことです。拘禁の理由は一切明らかにされません。拘禁期間も最長6ヶ月となっていますが、無制限に更新ができます。イスラエルによる行政拘禁は、1967年の占領以降継続的に行われており、国際的に強い非難を受けているものです。

日本国内では、このことがほとんど報道されていませんが、国連、ワシントンポスト、APF通信社などにおいて国際的に発信されています。

今年4月24日に90人あまりのパレスチナ人の行政拘禁者が、イスラエル政府の行政拘禁に抗議するハンガーストライキを始めました。
2月25日にUAWCのファラージ氏が逮捕されました。(以前4月25日とお知らせしておりましたが、2月25日の間違いでした)
4月30日にファラージ氏もハンガーストライキに加わりました。
5月28日に、生命の危機が発生しているファラージ氏を含む40人が病院に移送されました。
6月4日にUAWCは抗議デモを組織し、200~250人が集結しました。
6月7日に潘基文(パンギムン)国連事務総長が憂慮の声明を発表しました。
パレスチナ自治区内でも、抗議のデモなど、抗議行動が行われています。

6月4日にパレスチナ・ラマラで行われたデモ行進

ATJでは、この状況をより広く知らせるために、WEB、Facebook、Twitterでの発信を行い、また関係団体にも情報を伝達して、より広くこの状況を伝えるための対応を行っています。
この問題について世界中の人々が関心をもち、憂慮しており、日本でも情報が拡散していることをUAWCに知らせることがパレスチナ現地の人々にとって状況を変える大きな力となります。
ATJでは日本での動きを随時UAWCに伝えていきます。

Facebook・Twitterでも随時情報をアップしますのでご覧ください。
Facebook  Twitter

パレスチナ オリーブオイル生産団体UAWCからの緊急声明

2014年6月5日

ATJのパレスチナのオリーブオイルの生産者団体の一つである、UAWC(パレスチナ農業開発センター)より、UAWCの財務担当をしているアブドゥル・ラザック・ファラージさんが、イスラエル政府により、不当に拘束(行政拘禁)され、他の拘束された人々と一緒にハンガーストライキに入り1ヶ月経過し厳しい健康状態にあります。UAWCから緊急声明が届きました。

今後の状況につきましては、随時WEB、FB等でご報告致します。

[box type=”shadow”]

2014年5月29日

緊急アピール

UAWCはパレスチナの行政拘禁者の命を救う輪に加わるよう呼びかけます。

2014年4月24日より行政拘禁者*が、制度の廃止を求めてイスラエルの刑務所でハンガー・ストライキを行っています。数十名の服役者が、行政拘禁者に連帯してストライキに加わっています。

イスラエルの刑務所当局は拘禁者の要求に耳を傾けることを拒否し、独房に移す、必要な健康管理を怠る、殴打するなど報復的な措置をとっています。

ストライキ参加者はハンガー・ストライキを終了することを拒否し、刑務所側が要求を無視し続けるなら、10日間ビタミン剤やサプリメントを摂取しない、水を飲むことさえも控えるという強い抗議の意思を貫こうとしています。

ストライキ参加者の多くが危機的な健康状態にあり、2014年5月28日、約40名が病院に運び込まれました。UAWCの管理運営・経理責任者のアブドゥル・ラザック・ファラージ氏もその一人です。

ファラージ氏は2014年2月25日**に逮捕され、6か月間の行政拘禁を言い渡されました。4月30日、ファラージ氏は 行政拘禁者による恣意的な逮捕と行政拘禁の方針に反対するハンガー・ストライキに加わりました。

ストライキ参加を表明した直後、ファラージ氏はアヤロン刑務所の基本的な基準を欠いた独房に移されました。そして、ファラージ氏は他の参加者と共に車イスに乗ってアヤロン刑務所からメール病院に移りました。ファラージ氏に対する不正義は1985年に始まりました。1985年から1991年までの6年間起訴され、さらに間隔を置いて5回、計8年間、行政拘禁のため刑務所に収容されました。

イスラエル軍は、彼を告訴することも、また彼が裁判に立つことを許すこともなく、情報を秘匿し、我々の同僚を無制限に行政拘禁しています。

UAWCは行政拘禁者、とりわけ、パレスチナ農民の権利擁護のために市民社会を牽引してきたアブドル・ラゼック・ファラージ氏の命を深く憂慮しています。

上記の状況を受けて、

1. UAWCは人権団体や国際的な連帯組織に対して、公正な裁判を受けるという基本的人権を侵害する行政拘禁の方針をイスラエル政府が取り下げるように働きかけることを呼びかけます。

2. UAWCは国際社会に対して、イスラエル当局が行政拘禁者を即時釈放し、命を守るよう圧力をかけることを呼びかけます。

パレスチナ農業開発センター(UAWC)

(*訳注:行政拘禁とは、無期限に更新できる軍令に基づいて起訴や裁判なしの拘禁を認めるもので、人権団体から国際的に非難されているもの)
(**逮捕日を4月25日と掲載しておりましたが、2月25日の間違いでした。お詫びして、訂正致します。)[/box]

オリーブの植樹=農地を守ること

2013年2月15日

1月20日、ヨルダン川西岸地区北部にあるアクラバ村において地元の60名の農民のほか、アクラバ村長、海外からのボランティアが参加し、約10ヘクタールの農地に予定通り2,000本ものオリーブの苗を植えました。

苗を準備する農民とボランティアこれは大地を守る会とATJによる「スマイルオリーブ基金」によるプログラムです。

当日の作業を記録したビデオが届きました。このビデオ(約6分)では植樹作業の様子のほかにアクラバ村の村長、生産者2名のメッセージが収録されています。荒野で育つオリーブ畑の風景、検問所や入植地なども映し出されています。

昨年11月、国連総会でパレスチナが「オブザーバー国家」として承認されました。しかし、その後状況は改善するどころか悪化しているとの生産者の一人のコメントが印象的です。もう一人の生産者は「年に数回は土地を耕し、肥料を与えることで、大切にオリーブを育てています。今年のオリーブの作柄は非常に良く、オイルの品質についてもぜひ期待していて下さい」と話しています。

オリーブは通常4-5年で実がつきます。困難な土地に植えられたこのオリーブの苗が、数年後に豊かに実が結ぶことを願っています。

 

*メッセージには英語の字幕が付いています。日本語抄訳を付けましたので参考にしてください。

【30秒】アクラバ村長・アイマン・バニ・ファデルさん
入植地の近くの農地にオリーブ苗を植樹することを支援してくださる大地を守る会、UAWC、ATJに感謝しています。アクラバ村はヨルダン渓谷までに至る広大な土地でオリーブやいちじく、野菜などを育ててきました。現在、入植者からの攻撃が激化しており、農地没収の危機に脅かされています。UAWCのような団体の支援によって土地に対する農民の意識が強まり、守っていけるよう願っています。

【2分15秒】 農民・ユーゼッフ・ダイリエさん
アクラバ村は周囲を10もの入植地に囲まれ、入植者からの攻撃に絶えずさらされています。オリーブ苗の配布や土地の開墾・再生を共に行うUAWCのプロジェクトは、土地を守ることに非常に重要な役割を果たしています。

【3分10秒】農民・シャヘル・バニ・マネさん
アクラバ村の農民を代表して感謝の気持ちを述べたい。入植者からの激しい圧力にさらされている彼らのような農民を守るため、地元の団体や国際的な団体が積極的に関わることが大切です。農地に行き来し、土地の開墾や手入れを行うことができるよう、農道を開いていくような支援も希望します。今年のオリーブの作柄は質、量ともによかったですよ。これもしっかり耕して土を肥沃にしてオリーブを大事に育ててきたからです。

【4分45秒】農民・ユーゼッフ・ダイリエさん
2012年11月、パレスチナは国連のオブザーバー国家として正式に認められました。しかし、それ以降も我々の状況は何ら変わっておらず、むしろ悪化しているくらいです。イスラエル軍によって守られている入植者たちからの攻撃はより一層激しくなり、パレスチナ自治政府に対してもイスラエルとの境界を認めさせ、一部を放棄させようとする圧力が強まっています。(以上、動画抄訳)

アクラバ村でオリーブの苗を植樹しました。

2013年2月1日

1月20日、UAWC(パレスチナ農業開発センター)が支援するアクラバ村のオリーブ生産者がオリーブの苗を植樹しました。

オリーブの苗を植える

(株)大地を守る会とATJは共同で、イスラエル人入植者によりオリーブの木を抜かれたり、焼かれたりしているオリーブ生産者を支援するため、苗木を提供する基金を昨年10月より始めましたが、この植樹はその基金を活用して行われました。

植樹活動について現地紙「Al Ayam」(英語ではDays、日本だと毎日新聞といった意味のよう)でも伝えられました。記事の中で次の内容が生産者のコメントとして紹介されました。

アクラバ村は周囲を10もの入植地に囲まれ、入植者からの攻撃に絶えずさらされています。この村で土地の開墾とオリーブの苗の配布を行うUAWCの活動は、農地を守ることに非常に重要な役割を果たしています。植樹活動には海外の支援団体関係者も参加しましたが、入植者からの激しい暴力に脅かされている村を守るためにも、海外からの積極的な監視活動、関与が必要です。農作業のため農地に行き来するため農道を整備することが今後の課題です。

 

※基金の目的やアクラバ村の背景はこちらをご覧ください。→オリーブ苗木を植樹してパレスチナ農民を応援します!


男性2名がオリーブの苗を持っている左下の写真の
部分が該当の記事です。

オリーブ苗木を植樹してパレスチナ農民を応援します!

2012年11月22日

イスラエル占領下でパレスチナの農民は常に農地没収や、イスラエル軍や入植者の破壊行動に脅かされています。先祖代々大切に育ててきたオリーブ畑も同様です。そこで10月より、パレスチナのオリーブオイルを取り扱ってくださっている(株)大地を守る会と共同で、オリーブの苗を植えて農地を守っていくために基金積立てを始めました。

パレスチナ地図、アクラバ村位置

パレスチナの地図、アクラバ村位置。クリックすると拡大します

今回の対象地域は、現地パートナーであるUAWC(パレスチナ農業開発センター)が支援活動を行っているアクラバ村。ヨルダン川西岸地区北部のナブルス行政区域に位置する人口10,000人弱のこの村は、1967年の第三次中東戦争以前は東側を流れるヨルダン川まで農地が広がっており、当時のヨルダン川西岸地区第二のコムギ産地として知られていました。

ところが、第三次中東戦争が起こり、面積の80%(約144,000ドゥナム=14,400ha)がイスラエル占領当局によって占領されました。これらの土地には、イスラエル入植地や軍事基地が作られ、現在、そのほとんどの場所は、行政権・軍事権をイスラエルが持つ「C地区」となっています。結果としてアクラバ村は、ヨルダン川西岸地区の中でも、最もイスラエルの支配地域に囲まれた地域の一つとなりました。

C地区では、パレスチナ人は、イスラエルの許可なしに建物を建てたり、井戸を掘ったりすることが禁じられています。もし何らかの建造物が許可なしに建てたと見做されれば、イスラエルから「取り壊し命令」を受け、軍が破壊しにやって来ます()。主要な幹線道路もイスラエルによって管理されているため、アクラバ村の人々は、残された20%の土地の中で、往来や水資源の利用が厳しく制限された環境下にさらされています。現在では、村人の半数以上が、貧困ラインを大きく下回る暮らしを余儀なくされていると言われています。

さらに、アクラバ村では、周囲に住むイスラエル入植者による嫌がらせもエスカレートしています。入植者が、村の大部分を占めるオリーブ畑を始めとした農地へやってきて、木を切り倒したり燃やしたりするという事件が、現在でも多発しています。これは単なる嫌がらせではなく、そこに住むパレスチナ人を追い出して自分たちの土地にするというのが目的です。

このようなアクラバ村の現状に対し、現地パートナー団体であるUAWCは2010年2月より支援活動を始めました。荒れた土地を修繕・開墾して使えるようにし、塀で囲うなどして、オリーブを植えられる環境作りを進め、準備された土地にオリーブの苗を植えていくことで、オリーブ農家の土地と生活を守る手助けを行っています。

しかし、2012年に彼らが植えたオリーブの本数は約750本。それに対し、同じ期間に2,500本近くのオリーブが抜かれており、その中には新しく植えたものも含まれます。このように植えても植えても抜かれる中、それでもオリーブを植え続けていくことは、パレスチナに生きる生産者の土地を守り、当たり前の暮らしを取り戻していくために、最も大切な運動の一つです。そして、そのオリーブのための基金を日本から届けることは、現地で抵抗し続けているパレスチナの人々を強く勇気付けるものであると同時に、植えられたオリーブそのものが我々の連帯の証となります。

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農地開墾はUAWCプログラムの一つ

農地開墾はUAWCプログラムの一つ
入植者によって切られたオリーブの木

入植者によって切られたオリーブの木
丘陵地では農道が必須。UAWCが支援して建設中の農道

丘陵地では農道が必須。UAWCが支援して建設中の農道

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第1回目の植樹は12月の予定です。まだ始まったばかりの取り組みですが、このアクラバ村を軸にして現地で暮らす人々の様子を伝えることで、少しでも多くの皆様に、パレスチナ自治区のことを知って頂ければ幸いです。

※基金(スマイルオリーブ基金)については大地を守る会ウェブサイトをご覧ください。 
URL:http://www.daichi.or.jp/info/press/2012/10/121-108.html


(注) OCHA=国連人道問題調整事務所のレポートによると、C地区はヨルダン川西岸地区のおよそ60%を占めており、2011年にイスラエルによって破壊された住居の90%以上は、C地区内にあったといいます。

日常の暮らしにある困難と希望-マルダ村オリーブ生産者

2011年12月20日

オリーブオイル生産者紹介

Falahさん一家

スパイシーでコクのある風味がやみつきになるパレスチナのオリーブオイル。そんな我々のささやかな幸せは、パレスチナ自治区で困難と闘いながらオリーブを育てている農家の皆様によってもたらされています。

そんな彼らの実態を日本の皆様に紹介するべく、現地パートナーであるUAWCがパレスチナで暮らすフツーのオリーブ農家の方々を訪問しました。今回は、美しい奥さんとカワイイ3人のお子様に囲まれて暮らす、Falah Ibdahさんご一家をご紹介します。

彼らの住むサルフィート郡マルダ村は、人口2,500人ほどの小さな村。多くの村人は、オリーブ栽培をはじめとした農業を営んでいます。マルダ村で育てられているオリーブは、古いものでは樹齢数百年とも言われる大木から、50年程度の若いものまで様々です。

樹齢40-50年のオリーブの木 樹齢数百年のオリーブの木

 

サルフィート県マルダ村

マルダ村はグリーンラインから東に17kmほどの場所にありますが、村の南部にはアリエル入植地が建設され、今では人口18,000人ともいわれる非常に大きなものとなっています。2004年には、その入植地を「守る」という名目で、グリーンラインを越えた分離壁の建設がイスラエルによって決められ、村と入植地の境界にあったオリーブの木が切り倒されたり、燃やされたりしたそうです(村の地図、燃やされた木の写真、入植地の風景)。このように土地が奪われ、行動が著しく制限されている状況に対し、UAWCの担当者は、「開かれた監獄である」と語っています。実際、同じパレスチナ自治区に住みながらも、オリーブ産地の村々を訪ねて回ることは、彼らにとっても簡単ではない、とのことでした。

アリエル入植地の入植者に燃やされた
オリーブの木
マルダ村の背後に広がるアリエル入植地

 

広がるオリーブの畑

そんな状況でもFalah Ibdahさんは、畑の耕起や収穫したオリーブの運搬に家畜を使い、収穫は手摘みで行うなど、昔ながらの方法を守りながら、懸命にオリーブを育てて生活をしています。オリーブには表年と裏年があり、2011年は収穫量が少ない裏年にあたりますが、マルダ村では平年並みの収穫量が期待できそうだということで、今から新モノへの期待が高まります。

オリーブオイルは、オリーブの果実を搾っただけのシンプルなもの。つまり、ほとんどオリーブそのものと言っても過言ではありません。それを考えると、我々が口にしているオリーブオイルは、日本では想像もつかない理不尽な環境で生きている人々のことを、本当に直接的に伝えてくれているものだということがわかります。Falah Ibdahさんが言う「我々は自由になるという希望を決して諦めない」、そんな彼らの心意気を、ぜひお手元におひとついかがですか!

日本支援に向けて集まった
マルダ村のオリーブオイル

【日本の皆様へ】
日本の人々は、時間に正確で規律を守る礼儀正しい人々だと聞いています。また、その勤勉さと高い技術力で第二次世界大戦後のどん底から世界一の経済大国への発展を成し遂げた、素晴らしい人々だと思います。その一方では、我々のように困難な状況下で生活している人間に対し、こちら側の立場でものを考え、手を差し伸べてくれる心温かい人々であると感じています。
我々マルダ村民は、3月に日本で起きた大震災のニュースを知り、非常に心を痛めました。また、同時に心から同情の意を表し、少しでも被災された方々の力になり、また日頃支えて下さっている恩返しをしたいと、UAWCを通してオリーブオイルを地元の市場で販売し、その売上を寄付致しました。少しでも皆様のお役に立てたなら、これほど嬉しいことはありません。
パレスチナの農民は、常に土地の不当な没収や道路の閉鎖、そしてそれに伴う経済状況の悪化に苦しんでいます。しかし、自由を勝ち取る、という希望を決して諦めてはいません。日本で被災された皆様も希望を忘れず、一日も早い復興が成されることを心より祈っています。

(事業部商品課 若井)