オリーブ苗木を植樹してパレスチナ農民を応援します!

2012年11月22日

イスラエル占領下でパレスチナの農民は常に農地没収や、イスラエル軍や入植者の破壊行動に脅かされています。先祖代々大切に育ててきたオリーブ畑も同様です。そこで10月より、パレスチナのオリーブオイルを取り扱ってくださっている(株)大地を守る会と共同で、オリーブの苗を植えて農地を守っていくために基金積立てを始めました。

パレスチナ地図、アクラバ村位置

パレスチナの地図、アクラバ村位置。クリックすると拡大します

今回の対象地域は、現地パートナーであるUAWC(パレスチナ農業開発センター)が支援活動を行っているアクラバ村。ヨルダン川西岸地区北部のナブルス行政区域に位置する人口10,000人弱のこの村は、1967年の第三次中東戦争以前は東側を流れるヨルダン川まで農地が広がっており、当時のヨルダン川西岸地区第二のコムギ産地として知られていました。

ところが、第三次中東戦争が起こり、面積の80%(約144,000ドゥナム=14,400ha)がイスラエル占領当局によって占領されました。これらの土地には、イスラエル入植地や軍事基地が作られ、現在、そのほとんどの場所は、行政権・軍事権をイスラエルが持つ「C地区」となっています。結果としてアクラバ村は、ヨルダン川西岸地区の中でも、最もイスラエルの支配地域に囲まれた地域の一つとなりました。

C地区では、パレスチナ人は、イスラエルの許可なしに建物を建てたり、井戸を掘ったりすることが禁じられています。もし何らかの建造物が許可なしに建てたと見做されれば、イスラエルから「取り壊し命令」を受け、軍が破壊しにやって来ます()。主要な幹線道路もイスラエルによって管理されているため、アクラバ村の人々は、残された20%の土地の中で、往来や水資源の利用が厳しく制限された環境下にさらされています。現在では、村人の半数以上が、貧困ラインを大きく下回る暮らしを余儀なくされていると言われています。

さらに、アクラバ村では、周囲に住むイスラエル入植者による嫌がらせもエスカレートしています。入植者が、村の大部分を占めるオリーブ畑を始めとした農地へやってきて、木を切り倒したり燃やしたりするという事件が、現在でも多発しています。これは単なる嫌がらせではなく、そこに住むパレスチナ人を追い出して自分たちの土地にするというのが目的です。

このようなアクラバ村の現状に対し、現地パートナー団体であるUAWCは2010年2月より支援活動を始めました。荒れた土地を修繕・開墾して使えるようにし、塀で囲うなどして、オリーブを植えられる環境作りを進め、準備された土地にオリーブの苗を植えていくことで、オリーブ農家の土地と生活を守る手助けを行っています。

しかし、2012年に彼らが植えたオリーブの本数は約750本。それに対し、同じ期間に2,500本近くのオリーブが抜かれており、その中には新しく植えたものも含まれます。このように植えても植えても抜かれる中、それでもオリーブを植え続けていくことは、パレスチナに生きる生産者の土地を守り、当たり前の暮らしを取り戻していくために、最も大切な運動の一つです。そして、そのオリーブのための基金を日本から届けることは、現地で抵抗し続けているパレスチナの人々を強く勇気付けるものであると同時に、植えられたオリーブそのものが我々の連帯の証となります。

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農地開墾はUAWCプログラムの一つ

農地開墾はUAWCプログラムの一つ
入植者によって切られたオリーブの木

入植者によって切られたオリーブの木
丘陵地では農道が必須。UAWCが支援して建設中の農道

丘陵地では農道が必須。UAWCが支援して建設中の農道

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第1回目の植樹は12月の予定です。まだ始まったばかりの取り組みですが、このアクラバ村を軸にして現地で暮らす人々の様子を伝えることで、少しでも多くの皆様に、パレスチナ自治区のことを知って頂ければ幸いです。

※基金(スマイルオリーブ基金)については大地を守る会ウェブサイトをご覧ください。 
URL:http://www.daichi.or.jp/info/press/2012/10/121-108.html


(注) OCHA=国連人道問題調整事務所のレポートによると、C地区はヨルダン川西岸地区のおよそ60%を占めており、2011年にイスラエルによって破壊された住居の90%以上は、C地区内にあったといいます。

日常の暮らしにある困難と希望-マルダ村オリーブ生産者

2011年12月20日

オリーブオイル生産者紹介

Falahさん一家

スパイシーでコクのある風味がやみつきになるパレスチナのオリーブオイル。そんな我々のささやかな幸せは、パレスチナ自治区で困難と闘いながらオリーブを育てている農家の皆様によってもたらされています。

そんな彼らの実態を日本の皆様に紹介するべく、現地パートナーであるUAWCがパレスチナで暮らすフツーのオリーブ農家の方々を訪問しました。今回は、美しい奥さんとカワイイ3人のお子様に囲まれて暮らす、Falah Ibdahさんご一家をご紹介します。

彼らの住むサルフィート郡マルダ村は、人口2,500人ほどの小さな村。多くの村人は、オリーブ栽培をはじめとした農業を営んでいます。マルダ村で育てられているオリーブは、古いものでは樹齢数百年とも言われる大木から、50年程度の若いものまで様々です。

樹齢40-50年のオリーブの木 樹齢数百年のオリーブの木

 

サルフィート県マルダ村

マルダ村はグリーンラインから東に17kmほどの場所にありますが、村の南部にはアリエル入植地が建設され、今では人口18,000人ともいわれる非常に大きなものとなっています。2004年には、その入植地を「守る」という名目で、グリーンラインを越えた分離壁の建設がイスラエルによって決められ、村と入植地の境界にあったオリーブの木が切り倒されたり、燃やされたりしたそうです(村の地図、燃やされた木の写真、入植地の風景)。このように土地が奪われ、行動が著しく制限されている状況に対し、UAWCの担当者は、「開かれた監獄である」と語っています。実際、同じパレスチナ自治区に住みながらも、オリーブ産地の村々を訪ねて回ることは、彼らにとっても簡単ではない、とのことでした。

アリエル入植地の入植者に燃やされた
オリーブの木
マルダ村の背後に広がるアリエル入植地

 

広がるオリーブの畑

そんな状況でもFalah Ibdahさんは、畑の耕起や収穫したオリーブの運搬に家畜を使い、収穫は手摘みで行うなど、昔ながらの方法を守りながら、懸命にオリーブを育てて生活をしています。オリーブには表年と裏年があり、2011年は収穫量が少ない裏年にあたりますが、マルダ村では平年並みの収穫量が期待できそうだということで、今から新モノへの期待が高まります。

オリーブオイルは、オリーブの果実を搾っただけのシンプルなもの。つまり、ほとんどオリーブそのものと言っても過言ではありません。それを考えると、我々が口にしているオリーブオイルは、日本では想像もつかない理不尽な環境で生きている人々のことを、本当に直接的に伝えてくれているものだということがわかります。Falah Ibdahさんが言う「我々は自由になるという希望を決して諦めない」、そんな彼らの心意気を、ぜひお手元におひとついかがですか!

日本支援に向けて集まった
マルダ村のオリーブオイル

【日本の皆様へ】
日本の人々は、時間に正確で規律を守る礼儀正しい人々だと聞いています。また、その勤勉さと高い技術力で第二次世界大戦後のどん底から世界一の経済大国への発展を成し遂げた、素晴らしい人々だと思います。その一方では、我々のように困難な状況下で生活している人間に対し、こちら側の立場でものを考え、手を差し伸べてくれる心温かい人々であると感じています。
我々マルダ村民は、3月に日本で起きた大震災のニュースを知り、非常に心を痛めました。また、同時に心から同情の意を表し、少しでも被災された方々の力になり、また日頃支えて下さっている恩返しをしたいと、UAWCを通してオリーブオイルを地元の市場で販売し、その売上を寄付致しました。少しでも皆様のお役に立てたなら、これほど嬉しいことはありません。
パレスチナの農民は、常に土地の不当な没収や道路の閉鎖、そしてそれに伴う経済状況の悪化に苦しんでいます。しかし、自由を勝ち取る、という希望を決して諦めてはいません。日本で被災された皆様も希望を忘れず、一日も早い復興が成されることを心より祈っています。

(事業部商品課 若井)