エシカルバナナ・キャンペーンがスタート!フィリピンからゲストを招いてセミナー開催。
手軽な果物の代名詞ともいえるバナナ―。日本にやってくるバナナの約80%がフィリピンから届いています。
1982年に鶴見良行氏がその著作『バナナと日本人』によって、フィリピンのバナナプランテーションにおける農薬散布、不公正な契約、労働問題などを告発してから36年。残念ながら、それら問題の多くは現在に至るまで未解決のままです。そうした現状を改めて日本社会に広く知らせ、日本に輸入されるすべてのバナナが「エシカル(倫理的)なバナナ」 ―持続可能な農法で作られた地球にやさしいバナナ、生産から流通・小売りまでサプライチェーン上のすべての労働者の人権が守られているバナナ、食べる方も作る方も、ほかの誰かの人生を踏みつぶすことなく笑顔を広げられるバナナ― になることを目指すキャンペーン「エシカルバナナ・キャンペーン」をスタートしました。
そして7月末、フィリピンバナナの主要生産地であるミンダナオ島からゲスト2名が来日。バナナの生産現場で今も続いている農薬による環境汚染や健康被害の問題、大企業とバナナ農家との不公平な契約の問題について、バナナ農家に寄り添い活動を続けてきているお二人の話を聴くために、京都(28日)、東京(29日)、それぞれでセミナーを開催しました。
ミンダナオ島ダバオ市の水源保全を守る環境NGOで、多国籍企業による単一栽培に用いられる殺虫剤の使用、特に農薬の空中散布に反対してきているIDISの事務局長であるチンキー・ペリーニョゴリェさんからは、プランテーションで単一栽培されるバナナを害虫・カビ・病気から守るために散布される農薬(殺虫剤、殺菌剤)が地域住民に与えている健康被害についての訴えがありました。特に、企業が「効率性」を重視しておこなう空中散布によって、21世紀の今も、バナナだけでなく、通学中の子どもたちや人びとの暮らしの上に農薬が降り注いでいる、この事実は多くの参加者に衝撃を与えました。
また、社会的に弱い立場に置かれた人々の法的・技術的ニーズに対応することを目的に結成された司法による権利擁護団体IDEALSの法務コンサルタントで弁護士のアーヴィン・サガリノさからは、バナナ農家(なかでも、農地改革受益者として土地を得た農家)と大手アグリビジネスとの間の契約についての詳細な報告がされました。安いままで固定されている買取価格、適切な説明もなしに差し引かれる農薬・化学肥料・その他の資材代金、長期(10年~15年)契約のさらなる自動更新、企業側からの一方的な解約権など、驚くほどアンフェアな契約内容によって、大企業は巨額の利益を得ている一方で、バナナ農家たちはどんなに懸命に働いても貧困から抜け出すことができないのです。
IDEALSによるオンライン署名にご協力ください(日本語訳あり)
ミンダナオのバナナ農家を支えよう! 不公平なアグリビジネスとの契約を解除すべき!
2人からは「皆さんが大好きなバナナの生産現場で何が起こっているかを知らせるために、バナナ農家の声を代弁するために、今回日本に来てこのようにお話する機会を得られたことはとてもうれしいです。わたしたちは皆さんに『フィリピンのバナナを食べないで』と言いたいわけではありません。ただ、皆さんがバナナを食べる時には、その“甘い”バナナがどこから来ているのか、産地でどんな“苦い”できごとが起こっているのか、そのことに想いを馳せてみてほしいのです。そして、そうした状況を変えるように、行動を起こしてもらえたらうれしいです」というメッセージが伝えられました。
バランゴンバナナの民衆交易が始まって今年でちょうど30年になります。バランゴンバナナはフィリピンでは持続的な農業や地域経済、環境を作り出すことに寄与し、日本の消費者には安全・安心なバナナを提供するという、プランテーションバナナに代わるオルタナティブとして受け入れられています。
一方、現在流通している市販バナナに目を向けると、セミナーでの報告にあったように、その生産現場では労働者や生産者、住民の健康を脅かしたり、環境破壊を引き起こす生産方法や、アグリビジネス企業と生産者間の不公正な栽培契約、労働者に不利益な労働条件などがまだ一般的です。日本はフィリピンバナナの最大の消費国です。産地での実態を一般消費者に伝えて行かない限り、この構造を変えることはできません。そのため、ATJはAPLAや考えを同じくするNGOとともに「日本に入ってくるすべてのバナナがエシカル(倫理的な)バナナになることをめざす」キャンペーンに参加することにしました。キャンペーンを通じてATJは、市販バナナの問題点を伝え、さらに民衆交易バナナ、とりわけミンダナオからのバランゴンバナナの価値や役割をみなさんと一緒に考えていきたいと考えております。
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