ラオス・コーヒー生産者との再会
3 年ぶりにラオスコーヒー産地、南部ボラベン高原へコーヒー収穫期に訪問してきました。コロナ禍は、ATJ のモットーである「顔と顔の見える関係」作りが困難となった苦しい時期でしたが、ようやく生産者の方々と「久しぶりだね、元気だった?」「コロナ禍は大丈夫だった?」などと話しながら、再会を果たすことができました。
ノンルワン村のジョンさんは、訪問した時はなぜか少し不機嫌そうでしたが、同じ時間を一緒に過ごして、ラオスの代表的なお酒であるラオラオ(米焼酎)を酌み交わすうちに、「コロナ禍だったことは分かっていたけれど、もう来てくれなくなって、これまでの友情も終わってしまったのではないかと、とても悲しく思っていた…」と打ち明けてくれました。そんな様子から、再会を心から喜んでくれているように窺えて、私もとても嬉しい気持ちになりました。
実際に、新型コロナウイルスが感染拡大してから、コーヒー豆を買い付けなくなったり、ラオス国内でコーヒー産業育成のための事業を止めてしまったりした会社・団体があることを知りました。一方でATJは、毎年買い続けることを基本方針としており、これまでそれを守り続けています。そうすることで、生産者にとっては安定した売り先が確保され、家計の見通しが立ち、将来の生活設計ができるようになりました。あらためて、毎年買い続けることが、生産者にとって大切であることを感じさせられました。
進むキープ安、物価の高騰、コーヒー市場価格の上昇
ラオスに入国してまず驚いたのが、現地通貨キープ(kip)を両替した際、その安さが著しく進んでいたことでした。円安の進んでいる日本円に対しても、ラオスキープが3年前と比べて1.5倍以上も安くなっていました(キープ安は現在でも進んでいます)。ラオスは物資の多くを輸入に頼っていることもあり、このキープ安の影響で、ガソリンを含む物価が著しく高騰し、コーヒー生産者のみならずラオス全体の経済が非常に厳しい状況であることが容易に想像されました。一方で、コーヒー豆の市場価格は、2021年後半から続くコーヒー国際相場の高騰を受け、ラオス国内でも値上がりしたため、コーヒー豆を高く売れる状況は、生産者にとってはせめてもの救いでした。また、買付業者は、隣国のタイやベトナムをはじめ、フランス、中国、デンマーク、韓国といった国々にも広がり、むしろコロナ禍の前よりも買付競争は激しくなっている印象で、こちらも生産者にとって好ましい状況に感じられました。
ただ、プードムクワン村のドゥアンさんにお話を伺ってみたところ、物価高騰の影響で、生活費だけではなくコーヒー生産においても、コーヒーの運搬などにかかる燃料費、コーヒーの収穫・加工を手伝ってくれる親戚への賄いのための食費などの生産コストもかさんでおり、たしかにコーヒーは高価格で売れるものの、その利益として生産者の手元に残る金額は変わらないとのことでした。こうした経費はコーヒーを売った収入が入ってくる前に用意する必要があるので、資金が足りず、人手を十分に集められないためにコーヒー収穫量を抑えなくてはいけない状況になってしまっているとのことでした。
次世代の育成に向けて
ATJ が JCFC(ジャイ*コーヒー生産者協同組合)と出会ってコーヒーの民衆交易を始めてから15年近くが経ち、生産者はその子どもたちへ、JCFCの事務局は若いメンバーへ、少しずつ世代交代が進んでいることも感じられました。
これに伴って、美味しいコーヒーづくりの技術や知恵を次世代に伝えていくことも今後の課題となっていくでしょう。世代交代しても、顔と顔の見える関係を深めていき、これからもずっと買い続けられるよう、心を込めて取り組んでいきます。ラオスコーヒーをぜひお楽しみください!!
*ジャイ…ラオス語で「心」という意味
名和 尚毅(なわ・なおき/ラオス産地担当)
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