レポート

資源管理型漁業をテーマに交流-|日本の漁協がエコシュリンプ産地を訪問

2012年4月2日

北海道でホタテの養殖や、エビやサケなどの出荷や加工などを行っている野付漁業協同組合と、北海道漁業協同組合連合会、パルシステム連合会が組織する「海を守るふーどの森づくり野付植樹協議会」が、2012年3月20日~26日までインドネシアのエコシュリンプ産地を訪れ、資源管理型漁業をテーマに視察・交流会が行われました。

【3月21日】スラバヤから近いパスルアン県の沿岸住民であったムカリムさんは、家を侵食から守るために1986年から15年間ひとりでマングローブを植え続けました。やがてカニや魚が戻ってくるとコミュニティの人々も植林活動に参加してくれるようになりました。今では全長817m、105haに及ぶマングローブ林となり、沿岸地域は地元の人々にとって豊かな漁場となっています。この交流訪問にはATINA(オルター・トレード・インドネシア)職員やエコシュリンプ生産者も同行し、地元の人々とマングローブと漁獲高の関係について意見交換を行いました。

パスルアンのマングローブ マングローブの苗木を手にするムカリムさん

【3月22日】2日目に開催されたシンポジウムには、エコシュリンプ生産者、ATINA職員、環境NGOや政府の水産局からも参加がありました。ATINAからは、エコシュリンプの生産から加工までの行程の説明、若手生産者のイルル氏からは、自分たちが実践している「粗放養殖」について、そして今直面している問題として環境汚染と生産性について報告がありました。ECOTON(環境NGO)からは、スラバヤを流れるブランタス川の環境保全活動について報告がありました。日本側からの発表は、「野付植樹協議会」からは、消費者や川上の酪農農家と協力して植樹活動を継続した結果、豊かな川の水が戻り漁獲高もあがって後継者には困っていないという魅力的な報告がありました。(消費者団体である生協といっしょに植樹を始めて10年になりますが、その前に浜の母さんたちが漁獲量が落ちていくことに気づき、その原因としてたどりついたのが牧草地開発のために山の木が切られ、さらに牛の糞尿による汚染の問題だったそうです。そこで、豊かな水を戻すために、浜の女性たちが中心となって植林活動が始まったのだそうです。)そして、沖縄の恩納村でのサンゴ植樹とモズク生産の取り組み、最後に「安さのみを求めた消費は環境を破壊し生産システムを破壊することにつながりやすい。分断の経済から協同の経済へ、そして一握りの人に集積される富に対して民衆の経済づくり、すなわち協同組合づくりが重要である」というパルシステム生協連合会の考え方が紹介されました。エコシュリンプ生産者たちも真剣に耳を傾けていました。

【3月23日】舟で川を下りながらエコシュリンプの粗放養殖池を訪問しました。エビの成長行程、池の仕組み、粗放養殖についてATINA担当者から現場で学んだ後は、手づかみ収獲体験をしました。エコシュリンプは元気に勢いよく逃げますので、つかみ取るのはなかなか容易ではありません。実験池で獲れたてのエコシュリンプづくしの昼食をいただいた後は、参加者全員でパスルアンから入手したマングローブ苗の植樹を行いました。 【3月24日】まとめの会では、今回の出会いから有効な交流を続けてお互いにもっと状況をよくしていきましょう、と確認し合いました。

エビ生産者代表のイルルさん マングローブの苗木を手にするムカリムさん

(交流事業推進室 幕田)

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