カテゴリー: レポート(バランゴンバナナ)
バランゴンバナナ
【バナナニュース282号】西ネグロス州パンダノン村マイケルさん ① ~農業研修で学んだことを実践しています~
ATJの関連団体であるNPO法人APLAは、フィリピン・ネグロス島で若手農民の研修農場(カネシゲファーム・ルーラルキャンパス、KF-RC)の運営を支援しています。
その卒業生でバランゴン生産者のマイケルさんを今回からシリーズで紹介します。
西ネグロス州パンダノン村のマイケル・リアネスさん(28歳)。バランゴンバナナやマスコバド糖用サトウキビ生産者でありながら、米・野菜・果物・家畜なども育てる複合循環型有機農業を実践し、さらには養殖池や家造りなどもしてしまう、まさに百姓です。
マイケルさんは、カネシゲファーム・ルーラルキャンパスの研修生として、2013年に約半年間、家畜を育てながら栄養分をまた土に戻す循環型の農業知識を深めました。現在は学んだことを地元で実践しながら、その知識や経験を地域に広めています。
生まれ持った才能を持ち、ネグロスの農民からも一目置かれる存在です。農業の知識が豊富なこともそうですが、考え方が柔軟で、今あるもので工夫してやりくりする能力がずば抜けています。
きっとみなさんもマイケルさんに一度会ったら、その能力と優しさと、そしてとびきりの笑顔にファンになってしまうこと間違いなしです。
マイケルさんの紹介、次回も是非お楽しみに!
NPO法人APLA スタッフ 寺田俊
APLAの活動の詳細はこちらから
カネシゲファーム・ルーラルキャンパスなど、APLAの活動をぜひ支えてください!
よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
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【バナナニュース281号】若者が農業を学ぶ カネシゲファーム・ルーラルキャンパス
バランゴンバナナを輸入しているオルター・トレード・ジャパン(ATJ)の関連団体のAPLAは、バナナ産地フィリピンの農民技術交流活動などを実施しているNPO法人です。フィリピン・ネグロス島においては、養豚を軸とした有畜複合循環型農業を実践する農場であるカネシゲファーム・ルーラルキャンパス(KF-RC)の運営をサポートしています。
カネシゲファームは、1986年の砂糖危機以来、ネグロスの人びとへの支援に尽力された故兼重正次氏(1995年逝去)にちなんで名づけられています。兼重氏は、日本とネグロスの民衆交易のスタートにも多大な貢献をされた方です。ネグロスの貧しい農民を支援するという彼の夢を、KF-RCが引き継ぐべく「カネシゲファーム」という名前が残っています。
KF-RCの目的は、「農民の収入を増やし、農業をより楽しいものにするために、農法や技術を紹介しながら、農地を発展させていくよう納得してもらうこと」であり、農業の新しい価値観を創りだすことと、具体的な農業技術の普及により地域の農民の自立を後押しすることにあります。
KF-RCには、循環型農業と適正技術の実践と普及(農場部門)、そしてルーラルキャンパス(農民学校)の役割があります。
循環型農業の適正技術の実践と普及(農場部門)
KF-RCでは、BMW技術(※1)を取り入れ、養豚、堆肥作り、耕作、生産を農場の中で完結させ、ごみが排出されない循環型農業を実践しています。まず、豚から排出された糞尿はバイオガスタンクに貯まり、ここで糞尿の発酵を進めます。これが液肥となり、畑への肥料となります。また、液肥は生物活性水(BMW技術)へと培養されてミネラル豊富な水が作られ、この水を豚や農場内にいる家畜が飲水として利用し、再び糞尿となって、バイオガスタンクに貯まります。
その他、バイオガスタンクからはメタンガスを活用したエネルギー創出や発電を実践していたり、ランポンプ(自動揚水器)(※2)を活用し、適正技術の導入と普及活動をしています。
※1 BMW技術:バクテリア(微生物)・ミネラル(造岩鉱物)・ウォーター(水)の略。バクテリアとミネラルの働きをうまく利用し、土と水が生成される生態系のシステムを人工的に再現する技術のこと。
※2 ランポンプ:傾斜を利用し、水を流すことで、外からのエネルギーに頼らず水を汲みあげられる自動揚水器。
ルーラルキャンパス(農民学校)
KF-RCには、ネグロス島内の若者を研修生として受け入れ、約半年間住み込みで循環型農業の実践を学ぶ研修制度があります。研修生としての受け入れ基準は、農業を生活の糧とすると決めている青年で、地域や関係する人たちの推薦があり、家族の理解もあること。2018年8月までに7期32人を受け入れ、3人が卒業後KF-RCのスタッフとなり、13人が地元で農業を続けています。そのうち、8人が自分の豚舎を作り、1名がカラバオ(水牛)を使って農業を継続しています。
KF-RCの卒業生サポート制度は、研修終了時に、各卒業生に豚舎を建設する材料費をAPLAが支援し、建設は研修生たちと家族、KF-RCのスタッフが協力して実施します。養豚を中心に有畜複合の循環型農業を実践することで、豚の売り上げに加えて、養豚から出る糞尿を活用した肥料を使って農業に励み、野菜の自給や余剰分は販売していくことを目指しています。
この制度を始めた初期は、豚舎が完成すると、卒業生は子豚4匹と3ヵ月分の餌代をローンで現物支給され、3ヵ月後に育った豚を販売してローンを返済し、残った金額が手取りとなる仕組みになっていました。しかし、子豚がうまく育たなかったり、豚が売れなかったり、卒業生の家族の状況や住んでいる地域によって有効性が異なり、現在では各卒業生に合ったサポートをその都度検討して実施しています。例えば、水がなくて養豚をするには厳しい地域で、かつ町から家までの道路事情が悪く豚の運搬が厳しい卒業生には、妊娠しているカラバオ(水牛)を渡し、子牛が生まれたらKF-RCへ返す仕組みを実施しました。卒業後、農業を始めるには初期投資がない若者たちにとって、農業を始めるための基盤づくりと続けていくためのモチベーションにつながるように、KF-RCにとっては卒業生のサポート制度は重要な位置づけとなっています。
卒業後も、定期的に連絡を取り合ったり、卒業生を訪問して農業をする上での相談に乗ったり、KF-RCでの行事や交流、研修に参加してもらい、研修後も卒業生へのサポートができるような体制を作っています。
卒業生には、バランゴンバナナの生産者もいます。卒業生で若手生産者の一人であるマイケル・リアネスさんについて、次回から数回にわたって紹介します。
商品一課 赤松 結希
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エシカルバナナ・キャンペーンがスタート!フィリピンからゲストを招いてセミナー開催。
手軽な果物の代名詞ともいえるバナナ―。日本にやってくるバナナの約80%がフィリピンから届いています。
1982年に鶴見良行氏がその著作『バナナと日本人』によって、フィリピンのバナナプランテーションにおける農薬散布、不公正な契約、労働問題などを告発してから36年。残念ながら、それら問題の多くは現在に至るまで未解決のままです。そうした現状を改めて日本社会に広く知らせ、日本に輸入されるすべてのバナナが「エシカル(倫理的)なバナナ」 ―持続可能な農法で作られた地球にやさしいバナナ、生産から流通・小売りまでサプライチェーン上のすべての労働者の人権が守られているバナナ、食べる方も作る方も、ほかの誰かの人生を踏みつぶすことなく笑顔を広げられるバナナ― になることを目指すキャンペーン「エシカルバナナ・キャンペーン」をスタートしました。
そして7月末、フィリピンバナナの主要生産地であるミンダナオ島からゲスト2名が来日。バナナの生産現場で今も続いている農薬による環境汚染や健康被害の問題、大企業とバナナ農家との不公平な契約の問題について、バナナ農家に寄り添い活動を続けてきているお二人の話を聴くために、京都(28日)、東京(29日)、それぞれでセミナーを開催しました。
ミンダナオ島ダバオ市の水源保全を守る環境NGOで、多国籍企業による単一栽培に用いられる殺虫剤の使用、特に農薬の空中散布に反対してきているIDISの事務局長であるチンキー・ペリーニョゴリェさんからは、プランテーションで単一栽培されるバナナを害虫・カビ・病気から守るために散布される農薬(殺虫剤、殺菌剤)が地域住民に与えている健康被害についての訴えがありました。特に、企業が「効率性」を重視しておこなう空中散布によって、21世紀の今も、バナナだけでなく、通学中の子どもたちや人びとの暮らしの上に農薬が降り注いでいる、この事実は多くの参加者に衝撃を与えました。
また、社会的に弱い立場に置かれた人々の法的・技術的ニーズに対応することを目的に結成された司法による権利擁護団体IDEALSの法務コンサルタントで弁護士のアーヴィン・サガリノさからは、バナナ農家(なかでも、農地改革受益者として土地を得た農家)と大手アグリビジネスとの間の契約についての詳細な報告がされました。安いままで固定されている買取価格、適切な説明もなしに差し引かれる農薬・化学肥料・その他の資材代金、長期(10年~15年)契約のさらなる自動更新、企業側からの一方的な解約権など、驚くほどアンフェアな契約内容によって、大企業は巨額の利益を得ている一方で、バナナ農家たちはどんなに懸命に働いても貧困から抜け出すことができないのです。
IDEALSによるオンライン署名にご協力ください(日本語訳あり)
ミンダナオのバナナ農家を支えよう! 不公平なアグリビジネスとの契約を解除すべき!
2人からは「皆さんが大好きなバナナの生産現場で何が起こっているかを知らせるために、バナナ農家の声を代弁するために、今回日本に来てこのようにお話する機会を得られたことはとてもうれしいです。わたしたちは皆さんに『フィリピンのバナナを食べないで』と言いたいわけではありません。ただ、皆さんがバナナを食べる時には、その“甘い”バナナがどこから来ているのか、産地でどんな“苦い”できごとが起こっているのか、そのことに想いを馳せてみてほしいのです。そして、そうした状況を変えるように、行動を起こしてもらえたらうれしいです」というメッセージが伝えられました。
バランゴンバナナの民衆交易が始まって今年でちょうど30年になります。バランゴンバナナはフィリピンでは持続的な農業や地域経済、環境を作り出すことに寄与し、日本の消費者には安全・安心なバナナを提供するという、プランテーションバナナに代わるオルタナティブとして受け入れられています。
一方、現在流通している市販バナナに目を向けると、セミナーでの報告にあったように、その生産現場では労働者や生産者、住民の健康を脅かしたり、環境破壊を引き起こす生産方法や、アグリビジネス企業と生産者間の不公正な栽培契約、労働者に不利益な労働条件などがまだ一般的です。日本はフィリピンバナナの最大の消費国です。産地での実態を一般消費者に伝えて行かない限り、この構造を変えることはできません。そのため、ATJはAPLAや考えを同じくするNGOとともに「日本に入ってくるすべてのバナナがエシカル(倫理的な)バナナになることをめざす」キャンペーンに参加することにしました。キャンペーンを通じてATJは、市販バナナの問題点を伝え、さらに民衆交易バナナ、とりわけミンダナオからのバランゴンバナナの価値や役割をみなさんと一緒に考えていきたいと考えております。
【バナナニュース280号】「甘そうで苦い」 高地栽培バナナの裏側
近年、スーパーの売り場でよく見かける「高地栽培バナナ」。自然な甘みを売りにしたプレミアムバナナとして、高めの値段で販売されています。高地栽培バナナのプランテーション(農園)は、日本で出回るバナナの80%以上を供給しているフィリピン、ミンダナオ島で、2000年代以降、続々と開発されました。
ATJは、その一つ、南コタバト州ティボリ町にある日系企業のプランテーションを視察しました。早朝、上空を軽飛行機が飛び回っています。バナナ栽培にもっともやっかいなシガトカ病を防ぐため、数種類の殺菌剤を散布しているのです。検査等で因果関係が証明されている訳ではありませんが、住民は空中散布による健康被害を訴えています。とくに、子どもに皮膚病や呼吸器系疾患の症状が出ています。自家消費用の野菜を作ることも、家畜を飼うことも難しくなり、飲料水も買わなければならなくなってしまったそうです。
高地栽培バナナのほとんどが日本向けです。住民たちは日本の消費者にこうした現実を知ってもらいたいと口々に話していました。
詳しくは報告書「フィリピン、ミンダナオと私たちの今を考える」をご覧ください。
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【PtoP NEWS vol.17】ここが知りたい! バナナ
日本人がよく食べる果物ランキングで1位のバナナ。スーパーや百貨店に行くと、さまざまなブランドのバナナが並んでいますが、品種はほとんど選ぶことができません。
今でこそラカタン(スポーツバナナとして売られている)やバナップルといった品種のバナナを見かけることも増えましたが、日本で販売されているほとんどのバナナはキャベンディッシュ。
しかし、バナナは世界で300品種以上あると言われており、フィリピンの市場などでは、色も形もさまざまなバナナが販売されています。
バナナには大きく分けると生食用と料理用があります。
生食用は、キャベンディッシュ以外にも、トゥルダン、ラカタン、赤いバナナのモラードなどがあります。ATJが輸入している”バランゴン”バナナも「バランゴン」という品種名なのです。
フィリピンで一般的に食べられている料理用バナナはサバという品種です。熟すと生で食べることができますが、通常は煮たり焼いたり揚げたりして食べます。
バナナの原産国に行くと、こうしたバナナを食べることができます。皆さんも機会があれば、ぜひお試しください!
黒岩竜太(くろいわりゅうた/ATJ)
【PtoP NEWS vol.20/2017.11】バランゴンバナナを洗浄・箱詰めしているパッカーの皆さん from フィリピン・ネグロス島
バランゴンバナナは収穫された後、パッキングセンター(以下:PC)で洗浄・箱詰されています。現在10ヵ所のPCがあり、1つのPCでは約10人のパッカーが作業をしています。
作業時間は産地によって異なります。たとえば、畑が比較的PCの近くにまとまっているミンダナオ島のツピやレイクセブでは、午前中から作業が始まり、夜には終わります。
畑が点在しているネグロス島などでは、集荷に時間がかかるため、PCでの作業は夕方から始まり、バナナの量が多いと作業が終わるのは翌朝になることもあります。
最初に熟度やサイズなど、バナナが出荷基準を満たしているかどうか確認をします。そして洗浄です。
バランゴンバナナは化学合成農薬を使用せずに育てているので、虫がついていることがあります。
そのため、丁寧に洗浄しなければならないのですが、細かいところは洗いづらく大変です。
パッカーの皆さんは口をそろえて「バナナとバナナの間を洗うのが難しい!」と言います。
洗浄後は、バナナの軸の形を整え、箱詰めするために指定の量になるよう計量をします。
房の大きさが異なるバナナを一定の重さに計量するのは難しく、慣れていないと、何度も房を入れかえて、重量を調整する必要があります。
経験を積んだパッカーは房の大きさで重さの見当がつくので、計量作業もスムーズに進みます。
最後は箱詰め。おそらくこれが一番経験の問われる作業です。多国籍企業のプランテーション・バナナは房の大きさが均一なので、毎回同じように箱入れをすることが可能ですが、バランゴンバナナはそうはいきません。
様々な大きさのバナナを箱詰めしていくのは、まさにパズル。房の大きさを見ながら入れる順番と場所を考えていかないと、全てのバナナを上手に箱詰めすることができません。
パッカーの皆さんには、そんな熟練した技術が必要なのです。PCでの作業は、毎週または隔週で2日程度なので、多くのパッカーは他の仕事もしています。ミンダナオ島のツピでは地域のキリスト教徒とムスリムが一緒に働いており、両者の平和的な関係性構築に貢献しているとも言われています。
このように、バランゴンバナナは生産者以外にも重要な役割を担う人たちがたくさんいます。パッキングセンターで働くパッカーたちは、まさに縁の下の力持ちです。
黒岩竜太(くろいわ・りゅうた/ATJ)
【バナナニュース279号】乾季を無事に乗り越えて、順調に生育中
ミンダナオ島ツピ町では現在130人の生産者がバランゴンバナナを栽培しています。生産者でもあり、ツピ町の生産者組合の事務局長も務めるエンピグさんからのメッセ―ジをお届けします。
ツピのバランゴン生産者、ノルマさんの畑を上空からドローンで撮影してみました。バランゴンバナナはココナツと混植されています。バランゴンは多少の日陰を好むので、ココナツとの相性が良いとされています。ココナツは3ケ月に1度の収穫、バランゴンは毎週あるいは2週に1度の収穫です。畑の周囲にはパイナップルのプランテーションが拡がっています。
ツピの生産者、ビクターさんがバランゴンバナナを収穫しています。
商品一課 松本 敦
読者アンケート
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報告書「フィリピン、ミンダナオと私たちの今を考える」
『バナナと日本人』(1982年、岩波新書)という本を知っていますか。特売商品の目玉となるほどに安価なフィリピンバナナが、農園労働者の安い賃金と大量の農薬によって支えられている実態を調査し、痛烈に批判したのが鶴見良行氏の著作です。それから30余年、フィリピンバナナの産地、ミンダナオ島のプランテーションの実態はどうなっているのでしょうか。
2015年11月、ASEAN域内の関税障壁が撤廃される動きの中で危機にさらされるフィリピンの農業労働者や農民、消費者が置かれた状況を分析し、それに対して小規模生産者と消費者がどのように対抗していけるか話し合うため、「ネグロス食料サミット」をATJは現地団体と共催しました。サミットでは環境破壊や労働者、住民の健康被害、劣悪な労働環境などバナナ・プランテーションがもたらす実態がミンダナオ代表から報告され、さらに、ミンダナオ産バナナの最大の消費国である日本の参加者に対して現地視察の要望が出されました。
産地からの声を受けて、2016年9月、ATJは研究者、生協関係者、フィリピン側のパートナーと一緒にミンダナオ島を視察する訪問団(ミンダナオ・ミッション)を組織しました。このときに注目したのが、高地栽培バナナです。近年、スーパーでもよく見かける自然な甘みを売りにしたプレミアムバナナです。訪問団はバランゴンバナナ産地(レイクセブ、マキララ)の近隣自治体に広がる2つの大規模な高地栽培バナナプランテーションを視察し、農業労働者や住民の声を聞きました。現場で見聞きしたことや、訪問後に収集した情報をもとに、バナナ・プランテーションの現状、とくに高地栽培における農薬の問題を中心に私たちが日常的に食べているフィリピンバナナの産地で何が起きているかまとめたのが本報告書です。
「甘いようで苦い」バナナの裏側のストーリーをぜひお読みください。
広報課 小林和夫
【バナナニュース278号】バランゴンバナナが豊作です! 夏は冷やしてどうぞ
過去数年、フィリピンのバランゴンバナナの産地は大型台風や季節風(強風)、干ばつに度々見舞われ、バナナの供給が不安定な状況が続きました。
そのため、産地では天候被害による減収を想定して苗の作付けを強化してきました。ミンダナオ島のツピの生産者のジョエルさん(写真)も昨年2,500株のバナナを新たに植えました。
「大きな天候被害もなく、バナナの収量は順調に伸びてます。昨年植えたバナナもこれからどんどん収穫を迎えるので、ぜひたくさん食べてください!」
十分熟したバナナは、冷蔵庫で保管すると長持ちして果肉もひんやりしまっておいしく召し上がれます。
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【スムージーの作り方】
(グラス3杯分)
・ バランゴンバナナは皮をむき、ラップに包んで冷凍しておく。
・ 凍らせたバナナを適当な大きさに切り、牛乳と一緒にミキサーに入れてスイッチオン。完成!
・ バナナ3本で牛乳250㏄が目安ですが、分量はお好みで調整して下さい。
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バランゴンバナナ、今年は豊作なんです!
今年は、生産者の顔もニコニコです!
その理由は、この数年毎年台風や季節風の影響で収穫間近のバランゴンバナナが無残にも倒されてきたのですが、昨年から天候被害も少なく、各地で、バランゴンバナナが豊作となっているためです。
さらに、ここ数年安定した供給ができていないことの対策として、ミンダナオ島の生産者に協力してもらい、春先の収穫を見込んで新たな作付けを行いました。
雨が降らないと根づきにくいなど、難しいことはありましたが生産者も丁寧な手入れ作業をしてくれました。
そのバナナが、少々収穫が遅れましたが、この夏に収穫のピークを迎えます。
天候の恵みと生産者の頑張りがつまったバランゴンバナナを、是非ご賞味ください!
存分に楽しみながら、生産者の応援をお願いします!
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\ スタッフおすすめ! /
バランゴンバナナとキウイのスムージー
【材料】 グラス3杯分
◎冷凍したバランゴン3本
◎牛乳200~250cc
◎キウイ1個
【作り方】
①バランゴンバナナとキウイ、牛乳をミキサーに入れてスイッチを入れる。
②ミキサーの音が静かになり、波の立ち方が穏やかになってきたら完成。
キウイ以外にもリンゴ、スイカ、プラム、ブルーベリーなどの果物、定番の小松菜やヨーグルトなどでも爽やかな夏向きのスムージーが出来上がります。
※分量は目安です。バナナの大きさや甘さ、一緒に入れる果物の量、水分で適宜調整してください。
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【PtoP NEWS vol.24/2018.03】バランゴンバナナ民衆交易の悩み事
このところ、バナナの需要が多い春に、ほぼ毎年天候被害などで思うようにバナナの収穫ができない出来ないことが続き、消費者の皆さんに十分にお届け出来ない状況が続きました。
そこで昨年(2017年)は、生産者と協力しながら、春に収穫できるようにバナナの苗を植え付ける時期を意識する、ということを試みました。
日本のバナナ全般の消費動向をみると、5~6月がピークで、最も売れない冬場はピーク時の80%くらいになります。バナナが増え、需要が落ちる冬期はバナナが売れずに余ってしまうという事態に昨今苦しんできました。
バナナは多年草で、植え付けから最初の収穫までは約1年かかり、その後はわき芽を生育させてまた半年~1年後に2回目の収穫と続いていきます。
日本側は最初の植え付け時期だけでも意識的に4月前後にしてほしいと考えていましたが、根付きやすい雨期(6~11月)に作付けするのが自然という意見もあり、なかなか実現してきませんでした。
今回現地側でも「日本からの提案を試してみよう」ということになったのですが、残念なことに苗の配布が遅れ、作付け時期が予定よりも遅くなってしまいました。そのために、次の春に収量が増えるかは微妙な感じですが、まずは産地でも作付け時期を意識してもらえたこと自体が一歩前進だと考えています。
実は色々な問題を抱えているバランゴン
また、品質問題も大きな悩みの一つです。日本での最終検品段階でネグロスの一部の産地やパナイ島のバランゴンバナナに、カビや腐れで廃棄になってしまうバナナが多発しています。
フィリピン各島での選別段階では問題ない(ように見える)のです。原因究明に取り組んでいますが、あちこちに散在する大勢の小規模生産者からバナナを集荷しているため、細かいトレースが難しく苦労しています。
バナナは収穫・箱詰め後にマニラまで運ばれ、再検品され、国際船に積み替えられて、日本に送り出されます。
価格についての課題もあります。最近のバランゴンへの需要は2010年度に比べると約2割減少しています。
販売量を回復させていくために価格の問題は避けて通れませんが、フィリピンからの出荷価格の上昇に伴い、日本での販売価格も上昇しています。
フィリピンでは毎年6%の経済成長が続き、物価も上昇しています。そのため生産者からの買い取り価格は上がる方向にはあります。
また、バランゴンの半分ほどは一般のバナナに比べて日本への輸送コストのかかる島からのもので、また物流コストのかかる中山間地の小規模生産者のバナナを集荷しています。
安全性(農薬不使用)と品種(バランゴン)だけを求めるのであれば、物流コストの安い地域で集中して栽培すればいいのですが、バランゴンバナナ民衆交易の目的は、単に利益を求めるものではなく、人びとの連帯による事業であって、その精神は今でもかわりません。品質改善(廃棄率減少)などのコストカットを続け、生産者・消費者が納得する価格を維持できるように努めていきます。
悩みや課題は尽きないけれど
課題山積ではありますが、うれしいニュースもありました。2017年4月、西ネグロス州の生産者のレニボイ・ソンブリアさんが州政府から、果樹の有機栽培部門の優れた農家として選ばれ、賞が贈られたのでした。
レニボイさんは、3年前に開かれたバランゴンバナナ関係者の集いにおいて、父親を早くに亡くし苦労したこと、かつて集荷所が遠かった時には、収穫したバランゴンを山や川を越えて運んでいたこと、バランゴンの収入で家族を養うことができていることを涙ながらに発表してくれました。地域のリーダー的な存在で、優しく落ち着いた印象だったので、人前で涙するのが意外で、思わずもらい泣きをしてしまいました。
レニボイさんの夢として、頻繁に修理する必要がないコンクリートの頑丈な家を建てること、3人の子ども全員が大学を卒業し、それぞれが良い生活を送れることを挙げていました。
生産者の顔を思い浮かべながら、バランゴン事業を取り巻くピンチをチャンスに変えるべく、今年もがんばります。
松本 敦(まつもと あつし/ATJ)
【バナナニュース277号】バランゴンバナナの舞台裏 ~数量編~
昨年の新しい取り組みとして、バナナの注文が最も多い4-6月に収穫を迎えられるように、バナナの苗を植え付ける時期を生産者に意識してもらう、ということを試みました。
背景として、バランゴンの収穫量の季節変動と、日本での消費の季節変動が合っていないという課題があります。
左図は、日本の一般的なバナナの消費動向です。4-6月にたくさんバナナが売れて、夏と冬は売れない傾向にあります。夏場はスイカなどの水分の多い果物に流れ、冬場はりんごやみかんのシーズンということがあります。バランゴンへの注文も似たような傾向にあります。
一方で、バランゴンバナナの収穫量は消費の波とは反対に、日本の春と秋に収量が減少し、夏と冬に増える傾向にあります。
2月前後は、季節風の影響で1年間で一番涼しい時期で強風も吹きやすく、また乾季で雨量も少ないため、結果として3-4月の収穫量(4-5月の販売分)が減少します。
そして減少からの回復が7-8月販売分にあたります。そのあと、大抵台風の影響を受けて日本の秋の販売分が減少し、その回復が冬場にあたってしまうのです。
日本で売り切れない場合は、生産者から買い付けをした後、輸出はせずにフィリピン国内で赤字で販売したり、生産者からの買付を見合わせたりして対応しています。
(酸味のあるバランゴンはフィリピン国内ではそこまで人気のある品種ではないため、フィリピンでの国内販売も容易ではありません)。
バナナは多年草です。植え付けから収穫まで約1年かかり、半年後以降に次のわき芽の収穫と続いていきます。
せめて最初の植え付け時期だけでも意識的に4月前後にしてほしいと日本側は考えてきましたが、根付きやすい雨季(6-11月)に作付けするのが自然という意見もあり、なかなか実現してきませんでした。
昨年、生産者の協力を得てようやく実現しましたが、あぁ・・・、苗の確保が遅れ、作付け時期が予定よりも遅くなり、バナナが売れない夏場に収穫が集中する可能性が出てきてしまっています!
もし夏場に頑張って販売していたら是非ご注文をよろしくお願いします!!
※ちなみに、スーパーで売られているバナナは、台風があまり来ない島(フィリピン南部のミンダナオ島)で、雨季・乾季の雨量の差が比較的少ない地域を中心に栽培されています。
事業部商品一課 松本 敦
読者アンケート
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【バナナニュース276号】バランゴンバナナの舞台裏 ~品質編2~
バランゴンバナナには様々な課題がありますが、その1つが品質改善です。収穫から日本への輸出まで多くの工程を経ているため、品質がどの段階で悪くなるのか把握するのも簡単ではありません(*)。
2月末から3月にかけて、バランゴンバナナの輸出をしているオルタートレード・フィリピン社(ATPI)から、レイ氏、アーウィン氏の2名が来日しました。
レイ氏はバランゴンバナナ事業全体の責任者であり、アーウィン氏は品質管理を担当しています。来日中には、バナナの袋詰めをしているリパック場も訪問し、品質状況を確認しました。
フィリピンでは問題ないと思っていた傷がその後広がり、日本で袋詰めする時点で販売用に適さず、廃棄になっている。それを一緒に見ることができたのは、とても良かったと感じています。
「今回、日本でバナナの状態を見て、品質の悪い産地でも、全部のバナナの品質が悪いわけではなく、中には品質のいいバナナもあることがわかりました。
おそらく、品質が悪くなる原因は、畑での管理、収穫から箱詰めまでの工程にあると思うので、フィリピンに戻ったら工程を見直します。」とアーウィン氏は品質を確認した後に言っていました。
品質確認後の打合せでは、品質を悪くしている可能性がある要因として、バナナを買付けてから洗浄・箱詰めを行うパッキング場まで運ぶ際のバナナの取り扱い、箱詰めの方法、箱詰めの際に使用している緩衝材の使い方などが挙げられました。
すぐに劇的に改善するのは難しいですが、考えられる原因に対処していきたいと考えています。
事業部商品一課 黒岩竜太
*バランゴンバナナが収穫から日本に届くまで工程に関しては、「バランゴンバナナが日本に届くまで」のシリーズをお読みください。
バランゴンバナナが日本に届くまで① ~バランゴンバナナ圃場の様子~
バランゴンバナナが日本に届くまで④ ~バナナの箱詰めから出荷~
バランゴンバナナが日本に届くまで⑤ ~日本輸入から追熟加工~
読者アンケート
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【バナナニュース275号】バランゴンバナナの舞台裏 ~品質編~
昼間は車でごった返しているフィリピンの首都マニラ。そこには静まり返った夜中に、黙々とバナナの検品をしていスタッフたちがいます。
オルタートレード・フィリピン社のマニラ事務所。ネグロス島などで収穫されたバランゴンバナナは、各島で箱詰めされた後、マニラに集約されます。
各島から集まってくるバナナの数は週に1,000箱以上(バナナは12㎏に箱詰めされて日本に輸入されます)になることが多く、豊作の時には2,000箱以上のバナナがマニラ事務所に集まります。
それだけの数のバナナを1箱ずつ検品するのは大変な作業ですが、マニラでの検品は、日本への輸出前の最後の砦となります。
また、国内船での到着時間と国際船への積込時間に間に合わせる必要があるので、時間との戦いでもあります。
プランテーションバナナと異なり、約3,000人近い生産者がそれぞれの地域で栽培しているバランゴンバナナは、圃場の事情も異なるので品質にバラつきがあり、検品するのも一苦労です。
「えっ、こんな小さな傷が日本では腐るのか!」
マニラで検品に立ち会っていると、そう感じることが多々あります。マニラの段階ではまだ小さくて目立たない傷。しかし、そのバナナが皆さんのお手元に届くのは、2~3週間後。約1週間の船旅をして、その後日本の倉庫で保管され、追熟加工されたバナナは、袋詰めの段階で最後の品質確認を受けます。日本に輸入したバランゴンバナナのうち10%はこの段階ではじかれています。
特に品質の悪い産地に関しては、日本での検品結果や品質の推移を共有しながら、バランゴンバナナの品質改善に取り組んでいます。皆さんに少しでも良いバナナをお届けできるよう、今後も頑張ります!
事業部商品一課 黒岩竜太
読者アンケート
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【バナナニュース274号】バランゴンバナナ生産者紹介 ~西ネグロス州パタグ村のレニボイさん~
西ネグロス州パタグ村のレニボイ・ソムブリアさん。1998年からバランゴンバナナをオルタートレード社に販売を始めました。
2012年からはネグロスのオルタートレードのスタッフとしても働いており、現在は地域開発担当として他の生産者のサポートを行っています。
「オルタートレード社にバナナを販売しようと思った理由は、定期的にバナナを取りに来てくれるので、町の市場まで自分で持っていく必要がなかったからです。
また、買付時に代金を支払ってくれるので、生産者にとって確かな定期的現金収入となります。バランゴンバナナからの収入は、私の収入全体の約3割を占めており、貴重な現金収入源です。」と話す、レニボイさん。
日常的には午前中はスタッフとしての仕事を行い、午後は自分のバナナの病害虫を予防するための袋掛け、枯葉の除去、除草などといった手入れ作業を行っています。
バナナ以外にもタロイモ、パパイヤ、ココナッツやカカオなども植えています。
またレニボイさんは、水牛の糞などを利用して堆肥を作り、バナナやパパイヤに使用しています。
「地域開発担当の仕事というのは、生産者協会の組織強化、担当地域でのバナナの作付け拡大、農業技術のサポートなど、多岐にわたります。
また、パタグ村だけでなく、近隣の村も担当しているので出かける必要もあります。
地域開発担当としての仕事と自分の畑での作業をいっしょに行っていくことはとても大変です。
スタッフの仕事が忙しくても、農家である以上、1日30分でも自分の畑での作業をするよう心掛けています。
しかしながら野菜づくりは、手入れに手間がかかるので植えていません」と話してくれました。
「バランゴンバナナを継続的に食べていただくことが、フィリピンの生産者のサポートに繋がっています。今後もバナナを通じた関係性が継続していくことを望んでいます。これからもバランゴンバナナをよろしくお願いします。」
事業部商品一課 黒岩竜太
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【バナナニュース273号】北ミンダナオのバランゴンバナナ生産者紹介 ~セルソ・ファベラさん~
ミンダナオ島クラベリア町のバランゴンバナナ生産者、セルソ・ファベラ(Celso J. Fabela)さん。
59歳で3人の子どもがいます。子どもは全員独立しており、2人は教師、1人は会社員として働いています。
ファベラさんがオルタートレード社にバランゴンバナナを初めて販売したのは2007年です。しかしその後、妻であるエルノア(Elnore)さんが病気になり、治療のためにお金が必要だったので、質として土地を預けて、お金を借りました。
ファベラさんはお金を借りている間は土地を使用することができず、その土地は6年間牧草地として使用されたため、バナナ栽培を続けることができませんでした。借金をしている間、ファベラさんは近隣の畑で働きながら、生計を立てていました。
子どもの協力もあり、2016年に借金を返済した後は、再びバランゴンバナナを植え、2017年からオルタートレード・フィリピン社(ATPI)に販売をしています。バナナの手入れをしっかり行っているので、ファベラさんは高い生産性を維持していると、クラベリア町を担当しているATPIスタッフのハイディさんは言います。また、バランゴンバナナ以外にも、主に自家消費用として野菜なども植えています。
「バランゴンバナナは私たち家族だけでなく、クラベリア町の他の生産者にとって、貴重な定期的な現金収入源です。」とファベラさんは言います。
また、バナナ栽培の難しさについて聞かれると、「台風や干ばつといった天候被害、病害被害はバナナ栽培にとって大きな課題です。台風による強風、干ばつによる水不足で株が弱ると、実をつけているバナナが倒れてしまうことがあります。病害対策に関しては、定期的に畑の見回りを行い、早期に病気に感染しているバナナを発見して対処することが重要です。」と説明してくれました。
事業部商品一課 黒岩竜太
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【バナナニュース272号】バランゴンバナナ産地に、台風による強風で被害がありました。
今年10月に日本に多大な被害をもたらした台風21号。フィリピン名では台風パオロ(Paolo)と呼ばれ、フィリピンに上陸はしませんでしたが、この台風による大雨と強風により10月中旬頃に一部のバランゴンバナナ産地に被害が出ました。
ミンダナオ島レイクセブでは、実をつけたバナナが強風で倒されたり、葉っぱが切れ切れになる被害が発生し、バナナの収量が約4割減少しました。
バランゴンバナナ産地全体としては、今年は例年に比べ強風被害が少なかったのですが、バナナにとって強風被害は大きな課題の1つです。
バナナはバショウ科バショウ属の多年草植物であり、高さ数メートルにまで育ちますが、木ではなく草です。木のように丈夫でないために、重い実をつけている時期に強風に煽られると重みを支えることができず、倒れやすくなります。竹などでバナナを支えることで倒れづらくする対応を取っている生産者もいますが、それでも倒れてしまうことがあります。
今回のレイクセブでも、順調に成育していた収穫間近のバナナが強風によって倒されてしまいました。レイクセブの生産者であるジョン・マドロンさんは、台風発生の前の週には約15株のバナナを収穫することができていました。しかし、強風で収穫前の大きくなったバナナが倒されてしまい、収量は大きく減少しました。
また、強風が吹くとバナナが倒されるだけでなく、葉っぱが切れる被害も発生します。葉っぱが細かく切れるとうまく光合成をすることができず、生育が遅くなる、実をつけても大きくならないなどといった影響が出てきます。そのため買付基準に満たないバナナとなる可能性が高くなるのです。
今回のこうした台風の影響は、2~3ヶ月続くことが予想されます。
ミンダナオ島レイクセブ以外でも台風パオロの被害を受けた産地があります。ネグロス島東州の山間部産地の一部では、土砂崩れで道路が遮断されたため、台風直後は一時的にバナナの集荷に行くことができなくなりました。また、川沿いの産地であるタンハイ市マタンガッド地域では川が氾濫し、バナナが流されてしまうといった被害がありました。生産者によると、川の水位が川岸よりも5m上がり、バナナが水で押し倒されてしまったそうです。
事業部商品一課 黒岩竜太
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【バナナニュース271号】バランゴンバナナ生産者紹介 ~東ネグロス州パロマーさん~
東ネグロス州ロウアカンダボン村のバランゴンバナナ生産者であるニコラス・パロマーさん。
バナナを生産するだけでなく、ロウアカンダボン村にあるバランゴンバナナ生産者協会であるカンダボン・バントリナオ・サルバション生産者協会(CBSFA)の事務局も務めており、地域の生産者のまとめ役です。
CBSFAは、他のネグロス島の生産者協会よりも活動的です。他の産地では、オルタートレードフィリピン社(ATPI)のスタッフが袋掛け等の栽培管理状況の確認を行っていますが、CBSFAでは自分たちで確認する仕組みを導入しています。将来的には、バランゴンバナナの集荷をATPIに頼らずに行えることを目指しています。
しかし、記録などを取ることに慣れていない生産者にとって、自分たちで集荷を行うことは簡単なことではありません。
ロウアカンダボン村のバランゴンバナナ生産者は、バナナの集荷を手伝いながら出荷基準を学んだり、会計や記録の取り方などを学びながら、少しずつ自分たちの目標に近づいています。
「バナナを栽培していく上で、病害は大きな課題の1つです。」とニコラスさんは言います。
化学合成農薬を使用せずに育てているバランゴンバナナにとって、病害対策で重要なのは、早い段階で病気のバナナを発見し、対処していくことです。
例えば、バンチートップ病(BBTV)と呼ばれるウィルス性の病気に感染してしまうと、株が萎縮し、成長が阻害されます。放っておくと他のバナナにも感染するので、ロウアカンダボン村では「バヤニハン」と呼ばれている所謂「結」を通じて、BBTVのバナナの早期発見・抜き取りに取り組んでいます。
「バランゴンバナナは農家である私にとっては、とても重要な作物です。定期的な現金収入源であるだけでなく、地域の生産者の関係強化にも繋がっています。
私たちの生産者協会は地方政府にも認識されるようになり、政府との協同プロジェクトなどにも取り組んでいます。今後も、バランゴンバナナを通じて、日本の皆さんと良好な関係を築いていくことを望んでいます。」
事業部商品一課 黒岩竜太
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【バナナニュース270号】今年はバランゴンバナナが豊作!
台風、干ばつ、強風被害、病害被害など、特にここ数年は様々な理由でバランゴンバナナの数量が不安定でした。
去年は、未曾有の大干ばつを経験し、バランゴンバナナだけでなく、フィリピン産のバナナが全体的に不作でした。
しかし、今年は天候に恵まれ、バランゴンバナナがたくさん収穫できています。
フィリピンでは12月~5月は乾季で、特に3月~5月は気温が最も高い時期です。雨が少ないとバナナの生育が遅くなり、買付基準に満たない小さなバナナも増える傾向にあります。
今年は例年の乾季に比べ適度の雨が降ったため、バナナの生育が良く、順調に育っています。また、今年はフィリピン付近を通過した台風が少なく、今のところ大きな強風・台風被害がありません。
バナナは、バショウ科バショウ属の多年草であり、高さ数メートルにまで育ちます。バナナは、木ではなく草なのです。生育具合にもよりますが、順調に育てば1株のバナナから100本以上の実をつけ、重さは60㎏以上になることがあります。
バナナは木のように丈夫でないため、強風に煽られると、株ごと折れてしまうことがあるのです。
今年はバナナの豊作が続いています。お手軽に食べられるバナナですが、ひと工夫加えれば、様々な楽しみ方があります。ぜひ、お試しください。
生食だけでない、いろいろなバナナの楽しみ方
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絶品バナナスムージー
【作り方】(グラス3杯分)
① バランゴンバナナは皮をむき、ラップに包んで冷凍しておく。
② 凍らせたバナナを適当な大きさに切り、牛乳と一緒にミキサーに入れてスイッチオン。完成!
③ バナナ3本で牛乳250㏄が目安ですが、分量はお好みで調整して下さい。季節の果物を加えると、違った味が楽しめます。[/box]
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バナナのベニエ ※ベニエは、フランスの揚げ菓子です。
【材料】
<生地>
・全卵 1個
・牛乳 180cc
・薄力粉 125g
・グラニュー糖 大さじ2
・バニラエッセンス 少々
・バランゴンバナナ 1~2本
・レモン汁 少々
【作り方】
① 生地の材料を全てボウルに入れハンドミキサーで3~4分攪拌し、バニラエッセンスを加えて室温でしばらく寝かす。
② バナナは3cmくらいに切り、レモン汁をかけておく。こうすることで甘さがしまる。
③ バナナを生地に絡めて170度に熱した油の中に入れて揚げる。仕上げにシナモンシュガーや粉糖をふり完成。[/box]
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バナナの春巻き
【作り方】
① バランゴンバナナを春巻きの皮で巻きやすい大きさに切る。基本は1/2の長さに切り、さらに縦二つに切る。
② 切ったバナナを春巻きの皮で(普通の春巻きを包むのと同じ要領で)包んでかりっと揚げればできあがり。
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簡単バナナアイス
【材料】(4人分)
・バランゴンバナナ(熟れたもの)・・・・4-6本(皮をむいて350g)
・生クリーム(乳脂肪分30%以上のもの)・・・150cc
・牛乳・・・150cc
【作り方】
① 生クリームをボウルの底に氷水を当てながら、泡立て器ですくうとぽったり落ち、すくったあとの角がおじぎをするくらいまで泡立てる。
② バナナと牛乳をミキサーにかける(バナナジュースをつくる要領で)。
③ ①と②を混ぜ、大きめの密閉容器にいれ、ふたをして冷凍庫へ。
④ 3時間後にスプーンで全体をかき混ぜ、さらに3時間冷やしたら完成
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事業部商品一課 黒岩竜太
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映画紹介『バナナの逆襲』
監督:フレドリック・ゲルテン、WG FILM スウェーデン [第1話 2011年・87分][第2話 2009年・87分] 予告編
映画 「バナナの逆襲」は、ジャーナリストでもあるスウェーデン人のフレドリック・ゲルテン監督の「Big Boys Gone Bananas! *(ゲルテン監督、訴えられる)」第1話)と「Bananas! *(敏腕?弁護士ドミンゲス、現る)」(第2話)の二作品で構成されている。第2話が2009年、第1話が2011年に製作されているので、時系列では、ドミンゲス弁護士がニカラグアのドール・フード・カンパニー(以下、ドール)[1]のバナナ農園で働く労働者が農薬被害にあったと同社を訴えたあと(第2話)、その記録映画を公開しようとしたところ、今度はゲルテン監督がドールに訴えられる(第1話)、という流れである。あえて順番を逆にしてあるのは、観客の探究心をあおるためか。
使用禁止された農薬とバナナ農園労働者
ともあれ、物語の発端は第2話。オープニングに、高級車に乗った人物の登場。その派手なキャラクターに一瞬イヤな予感がよぎらないでもない。この人物は、強烈な個性が光るドミンゲス弁護士。しかし予感に反し、ドミンゲス弁護士は、危険性を知りながらドールが使い続けた農薬DBCPにより健康を害した労働者の存在を知り、立ち上がる。
ニカラグアのバナナ農園の様子は、フィリピンにある多国籍企業の日本輸出向けバナナ農園とそっくりである。広大な土地にバナナだけが整然と栽培されている風景。防護服などを身につけずに農薬を噴霧する低賃金労働者。あたかもフィリピンを描いているような錯覚に陥る。
労働者は農薬による健康被害を訴える。しかし、公害健康被害の問題とよく似ていて、訴訟を勝ち取るほどの因果関係を証明することは難しい。そのなかで、これなら証明できるとドミンゲス弁護士らが絞り込んだのがDBCPによる無精子症の被害であった。結局、ロサンゼルスの法定で、原告12人のうち6人の被害について会社側の責任が認められたが、ドールは上訴し、2016年2月時点では決着はついていない[2]。驚いたことに、DBCPは、1979年に製造中止され、1980年にフィリピンで使用が禁止されたのにもかかわらず、1986年までフィリピンのバナナ農園で使われていたという[3]。2009年、私はバナナの取材でミンダナオ島のバナナ労働者にインタビューを実施したことがあったが、無精子症の恐ろしい話は語り継がれていた。
裁判の様子を記録映画にし、ロサンゼルス映画祭コンペティションで上映しようとしたところ、ドールが主催者に上映中止を要求し、監督を名誉毀損で訴えた。この過程を描いたのが第1話である。監督はドールの脅しに屈する主催者とドールの両方と闘うはめに。不屈の精神をもつことがうかがえる監督ではあるが、さすがに憔悴していく。そんな監督に一筋の光が差し込む。母国スウェーデンのブロガーが「上映できないのはおかしい」と発信。世論を動かし、国会議員が議事堂で上映した。その後、第1話は世界各国の映画祭で受賞する。
バナナを食べる責任として
『ハリーナ』の読者には説明するまでもないが、映画に描かれる多国籍企業のバナナ農園における農薬使用と労働者の健康被害の問題は、日本でも注目されたことがある。1982年に鶴見良行氏が『バナナと日本人:フィリピン農園と食卓のあいだ』(岩波書店)を出版し、多国籍企業と結びついた権力者、低賃金で雇用される生産者、生産者の農薬健康被害の実態を明らかにした。それから30年以上が過ぎた。しかし、フィリピンのバナナ労働者をめぐる環境はあまり変わっていない。
例えば、フィリピンでは、スミフル・ジャパンにバナナを輸出している現地法人スミフル・フィリピンによる空中農薬散布に反対する運動が起こっている。住民は空中農薬散布による健康被害を訴えているが、因果関係を証明することは難しい。一方、農薬は農園以外にも散布され、風に乗って飲み水に混入し、飛行機の騒音が学校の子どもたちの学習の妨げになっている。私自身、こうした状況を目の当たりにして、両スミフルに対応策を要求しているが、現地からの情報によると大きな改善は見られないという。ゲルテン監督の行動力に勇気をもらった今、消費者の責任としても、引き続き改善を要求していきたい。しかし、日本輸出向けバナナのフィリピンにおける空中農薬散布の問題について、日本に動いてくれる国会議員はいるのだろうか。スウェーデンの状況がうらやましいばかりである。
石井正子(立教大学異文化コミュニケーション学部)
*この記事はAPLA機関誌『ハリーナ』33号(20116年8月1日発行)より転載したものです。
『ハリーナ』バックナンバーはこちらからご覧いただけます(全文無料でお読みいただけます)。
[1] 日本の株式会社ドールとは資本関係はない。
[2] 毎日新聞(2016)「農民VS米大企業、映画にしたら訴えられた:「バナナの逆襲」フレドリック・ゲルテン監督に聞く」2016年2月29日。http://mainichi.jp/articles/20160229/dde/012/200/005000c(2016年6月9日参照)
[3] オルタートレード・ジャパン(2016)「アメリカで使用禁止の農薬をニカラグアで使い続けた企業の倫理的責任を問いたい:『バナナの逆襲』フレドリック・ゲルテン監督インタビュー」https://altertrade.jp/wp/archives/12135(2016年6月9日参照)