カテゴリー: バナナニュース
バランゴンバナナ
【バナナニュース320号】コロナ禍での教育事情<農村編>
フィリピン教育省は、2020年第3四半期より国内すべての公立・私立学校に「遠隔教育システム」を導入しました。物理的な教室での対面授業がなくても、生徒が知って身につけ、理解しなければならない可能な限りの必須授業、概念、知識や技能を網羅する内容となっています。それに伴い、生徒たちは在宅学習やオンライン学習で教育を受けています。
前号と今号では、バランゴンバナナやマスコバド糖の生産地であるネグロス島の都会と農村での教育事情をご紹介しています。
前回の“都会編”に続き、今回は、“農村編”として、ラ・カステリアーナ市マンサラナオ地区の公立学校に通うサトウキビ農家2家族の事例です。パンデミックの時代に学校教育を続けるために、自分たちや子どもたちが直面している心情や困難について語ってくれました。
◆サトウキビ生産者・ヴィラメント一家の事例
アナリザさん(20歳、大学2年生)、アイラさん(19歳、高校3年生)、ニコルさん(11歳、小学6年生)、ニカさん(9歳、小学4年生)
教育省が全国の学校に遠隔教育システムを導入後、公立学校でも在宅学習が始まり、ヴィラメント一家の子どもたちも、毎週月曜日に配布される教材を元に学習し、金曜日に宿題を提出する流れで勉強しています。
「分からないことがあれば両親や姉たちに聞くこともありますが、ほぼ自分たちで学習しています。自分たちの知識だけでは内容を充分理解することが難しいです」と小学生の二人は言います。
スマートフォンを使用して答えをインターネットで検索することもありますが、通信状況が不安定でつながらないときもあり、宿題が完成せず提出が遅れることもあるとのことです。先生とのやりとりもグループチャットで実施されるため、インターネットへのアクセスは必須です。
アナリザさんやアイラさんのように高等教育になるとグループワークや調査を伴う課題が出ることもあり、その課題を進めるのに難しさを感じていると話してくれました。
◆サトウキビ生産者・グレゴリオ一家の事例
ジョナリンさん(18歳、高校2年生)、マエジョリーさん(11歳、6年生)、ジョヴェリンさん(10.歳、小学5年生)、ジョナサンさん(9歳、小学4年生)、ジョベルトさん(6歳、小学1年生)
コロナ禍になってから在宅学習が始まっています。毎週月曜日、先生が教材を家に届けに来てくれて、金曜日に宿題を提出する流れで学習をしています。
グレゴリオさん一家は、インターネット接続のための環境を整えたり、パソコンや携帯を準備することができません。そのため、分からないことがあったら母親のエレナさん頼みとなっているそうです。
兄弟の中でも上の子が下の子を教えることもありますが、それでも分からない場合は、子どもたちの不明点はそのままに放置されてしまっています。
先生とは教材を届けてくれる時に会うことはできますが、クラス全員分の教材を自宅まで配っていることから、あいさつ程度の話しかできないそうです。
在宅学習が始まってから、インターネットが使える環境であるか、親が面倒をみたり教えられる度合いにより学びの質が違っているようです。親も答えが分からない場合は、インターネットで調べたり一緒になって勉強するなど、以前にはなかった対応が求められています。在宅学習になってから友達にも会うこともできていませんが、子どもたちはパンデミックだからしかたがないと理解している状況が続いています。
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生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。
【バナナニュース319号】コロナ禍の教育事情<都会編>
フィリピン教育省は、2020年第3四半期より「遠隔教育システム」を導入しました。物理的な教室での対面授業がなくても、生徒が知って身につけ、理解しなければならない可能な限りの必須授業、概念、知識や技能を網羅する内容となっています。
それに伴い、生徒たちは在宅学習やオンライン学習で教育を受けています。「遠隔教育システム」はフィリピンすべての公立・私立学校で実施されています。
今号と次号では、バランゴンバナナやマスコバド糖の生産地であるネグロス島の都会と村での教育事情をご紹介します。都会では通信環境が比較的整っているので、私立学校などではオンライン授業も実施されています。
今回は、“都会編”として、バコロド市(ネグロス西州州都)の私立学校のオンライン学習と在宅学習の様子をお届けします。バナナや砂糖の出荷団体であるオルタートレード・フィリピン社の子育て中のスタッフ2名の事例です。パンデミックの時代に学校教育を続けるために、自分たちや子どもたちが直面している心情や困難について語ってくれました。
◆オンライン学習 【私立学校の事例】
オルタートレード・フィリピン社スタッフ アーウィンさんの長男
ジェレミーアール君の場合
ラ・サール大学付属校の遠隔教育は、SHIFTED(School-Home Integration for Technology Enhanced Education/学校-自宅を統合したテクノロジー強化型教育)と呼ばれています。 1年目の期間は2020年8月~2021年5月、2年目の期間は2021年8月~2022年5月です。
遠隔教育の内容
SHIFTEDでは、CANVASプラットフォーム(eラーニングプラットフォーム)を使用して、デスクトップやノートパソコン、スマートフォンやタブレットを使ったバーチャル授業を実施しています。
授業のスケジュールは学年によって異なりますが、ジェレミーアール君の場合、午前中の授業は8~12時、午後の授業は13~15時となっています。 学校は月曜から木曜までで、金曜は体を動かしたり、その他の課外活動をしたりする「自分の時間」と定められています。
授業は2部構成で、午前中は「オンライン授業」で、すべての学生がログイン/参加することが義務付けられています。 各学生にはユーザー名とパスコードが割り当てられ、各科目には会議用のリンクが用意されています。 そこで先生が授業を行い、生徒たちはバーチャルに交流します。 授業中はカメラをオンにしておく必要があり、1科目あたりの授業時間は通常30~45分です。 午後、生徒は課題に取り組みますが、ログインやオンラインにする必要はありません。 ただ、先生は生徒の質問や説明に答えるために、常にオンラインで待機します。 試験や小テストは、午前・午後いずれの授業のパターンでも実施されています。午後の授業の場合、学生にはテストを完了するための制限時間が与えられます。
実際にオンライン授業を経験してみて
「インターネットの接続が非常に悪いと授業が中断され、生徒たちはよく先生に『補講』をお願いしています。また、バコロド市では特に雨季に頻繁に発生する停電に備えて、予備のスマートフォンやノートパソコンが必要で、その費用がかさみます」とアーウィンさんは言います。
生徒の理解力や学習能力は限られているので、保護者が積極的に関与して、子どもが教科を完全に理解できるようにサポートする必要がありますが、アーウィンさんと母親のジョアンさんは共働きで、しかもジョアンさんは海外出稼ぎ労働者であるため、子どもを支えていくのが難しいときもあります。
「ジェレミーの学習の遅れを補うために、教えたり、調べ物をしたり、課題を手伝ったりすることは、私たち親にとっても大きな調整が必要です。 私たちは子どもをサポートするために特別な努力をしなければなりません。 学校の授業料、雑費、書籍などの費用はこれまでと同じですが、これからはオンライン学習に必要な費用を追加する必要もあります。 スマートフォンの購入、バッテリーとインバーター付きの太陽光発電、デスクトップの定期的なメンテナンス、個別指導のための家庭教師代、そして子どもの学校での学習を指導・支援するための十分な時間が必要です」とアーウィンさんは付け加えています。
◆在宅学習 【私立学校の事例】
オルタートレード・フィリピン社スタッフ ビクトリアさんの長男
ピート君の場合
セント・ジョセフ・スクール・ラ・サールは、DARE(Digital, Adaptable, Responsive Education)と呼ばれる代替学習システムを導入しました。 昨年7年生にピート君が編入した際に、ヴィクトリアさんは、オンライン学習の要件を満たす準備ができていなかったため、代わりに在宅学習をすることにしました。 学校側がオンライン学習・在宅学習のどちらでも質の高い教育を提供してくれると信じているからです。 ピート君は以前、バゴ市の公立学校で学んでいましたが、昨年、家族の永住権がバコロド市に移ったのを機に、私立学校に転校しました。
遠隔教育になってから
「息子にとっても、片親である私にとっても、非常にチャレンジングなことです。 私は働くシングルマザーですが、毎週金曜日に学校に行って、1週間の間に完成した課題を返却し、次週の新しい課題を手に入れなければなりません。 そのため金曜日は出社時刻に間に合わずよく遅刻をしてしまいます。 息子は最初、勉強すべき教材の多さと、指導してくれる先生がいないことにショックを受けていました。 1つの教科につき、教科書、プリント、学習教材、答案用紙があります。 彼は9教科を履修していますが、全てを学習することは彼に大きなストレスを与えています」とビクトリアさん。
ビクトリアさんは、息子の勉強を指導できない罪悪感を感じていますが、生活のために働かなければならないので仕方がありません。彼女はピート君に、このような困難を経験することで、責任感のある人間になれると励まし、教育が非常に重要であることを常に伝えていると言います。 ピート君は昨年度、すべての科目に合格しましたが、成績は平均的なものでした。
2年目も在宅学習を選択
今年度、ピート君は8年生になり、在宅学習に慣れてきたことと、1日のうちで自由になる時間があることから、在宅学習を続けたいと希望しました。ビクトリアさんは、オンライン学習に移行させ、クラスメートとの交流を図りたいと考えていましたが、自分がよしとする学習方法を押し付けることはせず、今後もピート君の選択をサポートしていきたいということです。
今年度、学校では在宅学習用の課題の印刷を中止しました。 その日の学習教材は、ビデオ、パワーポイント、ワードなどの形式で、保護者が学校のフェイスブック・ページから毎週アクセスして取得するようになりました。 これは、膨大な量の教材を読む意欲のない生徒がいるなかで、生徒が授業をよりよく理解するために学校が採用している方法の一つです。 ただし、ビクトリアさんは、引き続き毎週金曜日に学校に行って答案用紙を提出し、その週の新しい答案用紙をもらう必要があります。
「私も息子も、遠隔教育の難しさにどうにか適応し、少しずつ対処しています。 学校がいつも私たちの心配事を聞いてくれて、生徒のためになる方法を探してくれていることに感謝しています。 息子が勉強だけでなく、良い人間に育ってくれることをいつも祈っています。 一人親であることは簡単なことではありません。毎日が挑戦です」とビクトリアさんは話してくれました。
【バナナニュース318号】野菜ボックスの宅配事業inバコロド
バランゴンバナナの輸出を担うオルタートレード・フィリピン社では、「the BOX」と称して有機野菜など生鮮食品の宅配事業を展開しています。
2021年7月現在、ネグロス島の州都バコロド市内に623人の登録消費者がいます(定期利用は453人ほど)。70人の生産者のうち、52人はバランゴンバナナやマスコバド糖の生産者です。
2013年に始まったthe BOX。新鮮なものを届けるための物流の改善、商品の品質向上、需給マッチの難しさなど開始当初から抱えている課題に加えて、オンライン注文・決済の要望、環境に配慮した包材を使ってほしい、肉(現在は鶏肉のみの取扱い)、干し魚を取り扱ってほしいなど、新たな課題も出てきています。
「新鮮な有機食材が手に入る」「玄関まで配達してくれるからありがたい」「最初は食の安全を考えて始めたけど、今では毎週の注文が習慣になり、家族の健康にもつながっている」など登録者からのうれしい声も届いているようです。
◇コロナ禍での宅配事情◇
感染拡大防止のため移動や出勤の制限があり、事務所自体を閉鎖しているところもあるため、以前は企業や銀行、政府機関などの職場への配達をしていましたが、そこでの登録者が減ってしまったとのことです。一方、買い物のための外出が敬遠され、個人の登録者が増えました。この辺りは日本の状況と同じようです。
日本の宅配事業にヒントを得て始まったフィリピン国内の生産者と消費者をつなぐ取り組み、これからも見守っていきたいと思います。
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【バナナニュース317号】風に弱いバナナ:台風シーズン到来
バナナは強風にとても弱い植物です。強風に遭うと、実をつけたバナナは倒れてしまい、実をつける前のバナナも葉が切れて光合成が十分に行えずに、その後になる実が生育不良となります。この場合は、次の脇芽の成長を待つことになり、収穫量の回復には数か月かかります。
沖縄や台湾もバナナの産地ですが、台風が上陸しやすい地域であるため、生産量が安定していません。一方、市販のフィリピン産のプランテーションバナナは、台風がほとんど上陸しないミンダナオ島で生産されています。
バランゴンバナナの交易は、ネグロス島の人びととの出会いから始まりましたが、台風の影響を受けやすい島であるため、現在ではミンダナオ島にも産地が広がっています。ただ、台風がフィリピンの東の海上を北上する際に、季節風が強化されるため、ミンダナオ島のバランゴン産地でも毎年局所的に強風が吹きます。
例えば、ミンダナオ島のレイクセブ町では、4月末以降に断続的に強風が吹いており、収穫量は5月上旬をピークに、現在は減少傾向に入っています。
◆レイクセブ町パロシエテ村のダンテさん
「2008年からバランゴンを栽培しています。4月末に強風の被害があり、収穫量はピーク時に比べて6分の1ほどに減ってしまっています。バナナは強風に弱いことがネックです。
ただトウモロコシなど他の作物と比べると、栽培コストがかからないことが魅力で、最近新たに200株増やしました(合計で1,050株)。これからもバランゴンの栽培を続けていきたいです。」
◆レイクセブ町ドゥエロッド村のピーターさん(27歳)
「2010年からバランゴンを栽培しています。4月下旬の強風で、500株のうち200株が被害に遭いました。収穫量が戻るのは来年の1月くらいになると思います。
他の作物と比べて栽培コストがかからないことがバランゴンの魅力です。トウモロコシなどの他の作物を栽培したこともありますが、ちゃんと利益が出たのはバランゴンだけでした。今後もバランゴンを作り続けたいと思っています。」
ミンダナオ島のツピ町やネグロス島でも強風被害が発生しており、収穫量が減少する時期に入ってきています。
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【バナナニュース316号】バランゴンバナナのひんやり黒糖寒天
黒糖の甘みの中にバナナの酸味と触感がアクセントに。
ひんやりツルっと食べられるので、夏のおやつに最適です。
簡単に作れるのでぜひチャレンジしてみてください♪
<材料> 8×16cmのパウンド型1個分
・マスコバド糖(なければ黒糖):130g
・粉寒天:4g
・水:500ml
・バランゴンバナナ:1本
<作り方>
① 水と粉寒天を鍋に入れ、火を入れて混ぜる。沸騰してきたら、かき混ぜながら2分煮る。
② ①を火からおろし、マスコバド糖を加えてよく混ぜる。
③ バナナを縦4等分にし、約1cm角になるように切る(ダイスカット)。
④ 型の底に冷水をあてて、粗熱の取れた②のうち1/4程度を型に入れる。少し固まってきたらバナナを散らして乗せる。これを繰り返して、3層くらいに分けると、全体にバナナが散らばった状態で固められる。最後に残りの1/4を上にかける。
⑤ 冷蔵庫に入れて冷やし固める。1時間程度でできあがり。
※マスコバド糖とは
バランゴンバナナの産地のひとつであるネグロス島のサトウキビで作られた黒砂糖。サトウキビを搾って煮詰めて乾燥させただけのシンプルな製法で作られています。黒砂糖の独特のえぐみがなく、しつこくない甘さが特徴。このレシピでは、お砂糖のおいしさも一緒に味わえます。
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【バナナニュース315号】コロナ禍での生産者の暮らし ~ミンダナオ島~ その②
コロナ禍の影響について、今回はミンダナオ島南コタバト州ツピ町の若い生産者に話を聞きました。現地パートナーのATPIスタッフのアーウィンさんが、今年5月にインタビューを行いました。
※前回のインタビュー【バナナニュース314号】コロナ禍での生産者の暮らし~ミンダナオ島~もよろしければご覧ください。
■レイモンド・ハトランさん
(36歳、愛称:タタ)
タタさんは、奥さんと7歳と10歳の息子2人の4人家族です。以前はマニラでドライバーとして働いていましたが、2年前に生まれ故郷のツピ町に戻り、畑を借りてバランゴンバナナの栽培(400株)を始めました。多くの親戚がバランゴン栽培に取り組んでいたためです。
彼にとってコロナの影響は甚大で、働き口が減ったために収入が大きく減少してしまいました。副業だった日雇いドライバー(トラックの運転手やレジャーに行く人々の代行運転)の仕事がなくなり、また昨年は建設プロジェクトが中断されたために、石工や大工の仕事を見つけることも困難になりました。
奥さんは宝くじの販売員をしていましたが、その仕事も今年の1月まで中断されていました。バランゴンバナナの収穫量が増えて、少しでも生活の足しになればと思っています。
子どもの教育についても心配だと言います。コロナが発生して以降、フィリピンの学校では対面授業が再開されておらず、自宅での学習が続いています。彼も奥さんも高校までは卒業していますが、それでも小学生の息子たちに十分に教えられていないと感じているそうです。コロナが早く収束し、仕事も学校も以前の状態に戻ることを願っています。
■マイケル・バスケスさん(23歳)
「パートナーと同棲しており、2歳になる娘がいます。建設現場で作業員として働いており、それがメインの収入源です。月に5,000~7,000ペソ(約1.4万円)の収入があります。バランゴンバナナは1,200株植えており、2週間に1度の収穫で、2,000ペソ(約4,800円)の収入になります。
昨年はコロナの影響で建設プロジェクトが中断され、再開後も働く人数が制限されているため、収入が減ってしまっています。昨年のロックダウン時は仕事がなく、家でじっとしていました。バスケットボールが趣味でしたが、コロナ以降は楽しむことができていません。
一方、ロックダウンの時期は家族と一緒に過ごせる時間が増えたので、家族の距離が縮まりました。衛生面や食事についても意識するようになりました。以前は食事にはあまり気を使っておらず、麺類などのすぐに作れるもので済ませていました。今は免疫力を高めることを意識して、栄養価の高い野菜(葉物や有機の野菜など)を食べるようにしています。地方行政が出す規制についても注意を払うようになりました。機会があればワクチン接種を受けたいと思っています。」
(注:フィリピンではコロナ対策として、テレビで専門家が免疫力を高めるために栄養価の高いもの(葉物野菜、モリンガ、果物など)を食べることを呼びかけているそうです。)
【フィリピンでのコロナの状況】
フィリピンでは、今年3月以降にコロナの第2波に見舞われ、6月中旬時点では1日6千人ほどの新規感染者が出ています。
データ元:Our World in Data
印刷版のバナナニュースでは、「バランゴンバナナの産地は地方にあり、都市部のような感染拡大は起きていません」と記載しましたが、6月に入り、都市部に遅れる形で地方でも感染拡大が起きています。
6月16日以降はマニラなどの都市部の規制が4段階中の上から3番目(GCQ)に緩和された一方で、地方における規制が強化されました。バランゴンの産地では、東ネグロス州などが上から2番目に厳しい規制(MECQ)の対象地域になっています。特に東ネグロス州の州都のドマゲッティ市はマニラ首都圏以外の地域の中で最も深刻な状況とされています。現時点では、バランゴンバナナの集荷作業には影響は出ていません。
なお、今回のインタビューが行われたツピ町は、上から2番目の規制対象の州にあります。
フィリピンのワクチンの接種状況についてはOur World in Dataのデータによると、6月22日時点で、ワクチンを1回以上接種した人は人口比の6.2%であり、同時期の日本の接種率(19%)の3分の1ほどです。
フィリピン政府は6月上旬時点で1.13億回分のワクチンを発注しており(人口は2019年の統計で1.08億人)、内訳は、中国のシノバック社が2,600万回分、ロシアのスプートニクV社が1,000万回分、モデルナ社が2,000万回分、アストラゼネカ社が1,700万回分、ファイザー社が4,000万回分です。そのうち、6月14日までに1,260万回分のワクチンが到着しています。
また、フィリピン政府は、国民がメーカーをえり好みし接種が遅れる事態を避けるために、接種対象者に直前までメーカー名を告知しないよう地方自治体に指示を出しています。
※ワクチンについての情報は下記のニュースから引用しています。
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【バナナニュース314号】コロナ禍での生産者の暮らし ~ミンダナオ島~
フィリピンでは、今年3月以降にコロナの第2波に見舞われ、マニラなどの都市部を中心に新規感染者が急増し、4月には1日1万人を超えました。5月中旬時点では1日6千人ほどに減少しています。バランゴンバナナの産地は地方にあり、都市部のような感染拡大は起きていませんが、それでも生産者の暮らしに影響が出ています。
データ元:Our World in Data
左の写真は、今年5月のネグロス島バコロド市内のジープニー(乗り合いバス)車内の様子です。
プラスチックのシートで間仕切りすることが全国的に義務付けられているとのことです。
一般的なジープニーは定員18名ですが、現在許されている定員は13名です。
下の写真はコロナ前のジープニーの様子です。
<生産者へのインタビュー>
現地パートナーのATPIスタッフのアーウィンさんが、今年5月にミンダナオ島南コタバト州ツピ町でインタビューを行いました。
■アルバート・バラソさん(65歳)
バラソさんは、2014年にココナッツと混植する作物を探していました。畑に近づくことのある孫のことを思うと農薬を使う作物は植えたくないと考え、バランゴンを選びました。
-バラソさんにコロナ禍の暮らしを聞きました。
「コロナ禍以前は家族と一緒に町に出かけ、ウィンドウショッピングやコーヒーを飲むのが寛ぎの時間でした。親戚にも定期的に会っていました。そうした絆を深める機会がコロナ禍でめっきり減ってしまいました。マスクとフェイスシールドの着用が煩わしいので、今は町には出ずに、自宅と畑で時間を過ごしています。少し退屈です。
仮に家族が感染して亡くなるようなことがあった場合に、火葬されてしまうことも受け入れがたく、戸惑いを覚えます。(※フィリピン人の9割以上がキリスト教を信仰しており、キリスト教では土葬が基本。)
孫の教育についても心配です。1年以上対面での授業がなく、自宅学習用の教材を使って親が教師役になることが求められています。子どもの学力を伸ばす機会が制限されています。
海外での出稼ぎの仕事も減ってしまいました。以前は娘(ひとり親)がクルーズ船で働いており、仕送りもしてくれていましたが、現在は家に戻っており、家計も厳しくなっています。(※フィリピンの海外出稼ぎ労働者は2019年時点で約220万人に上っていました。)
私たちの町でワクチン接種が行きわたり、コロナが収束し、早く元の生活に戻ることを願っています。」
■マメルト・エナテさん(83歳)
ツピ町からのバランゴンバナナの出荷が始まったのは約20年前ですが、エナテさんはその初期からのメンバーの一人です。7人の子どもを育てあげ、現在は21人の孫がいます。現在バランゴンを140株栽培しており、もう少し増やす計画を持っています。
「コロナ禍での移動制限が厳しかったときは感染しないように、農作業用にたてた小屋で過ごしていました。コロナ前はバナナの出荷のある日は、バナナと一緒にパッキングセンターまで行き、近くの市場で買い物をすることが日課であり楽しみでした。現在は外出を控え、家で過ごしています。マスクとフェイスシールドの着用が面倒なので、市場にも行っていません。
最近1回目のワクチン接種を受けました。友人からはワクチン接種に対して否定的なことも言われましたが、高齢で免疫が低下しており感染が心配だったので打ちました。無料で受けることができるので友人たちもワクチン接種を受けたらいいと思います。
早く以前のような暮らしに戻りたいです。コロナ禍が早く終息し、余生を穏やかに過ごしたいと思っています。」
次号【バナナニュース315号】コロナ禍での生産者の暮らし~ミンダナオ島~ その②では、若い世代の生産者へのインタビュー記事を掲載しています。
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【バナナニュース313号】天候不順とコロナ禍の影響 ~ネグロス島~
フィリピンのネグロス島では、1~2月は北東からの季節風が吹き、毎年低温(と言っても最高気温は30度近くにはなります)と強風被害により収穫量が減少する時期にあたります。今年はそこにラニーニャ現象*が重なり、乾季(12~5月)にも関わらず1~2月に雨が降り続きました。その結果、普段この時期には広がらない葉の病気(シガトカ病)の被害が出て、収穫量が減少しました。3月上旬にバナナの生育状況などを3人の生産者にインタビューしました。
◆東ネグロス州カンラオン市に住むフローラ・デトマルさん

フローラさんと夫のフェリペさん

カンラオン市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia
2016年からオルタートレード社にバランゴンバナナの出荷を始めました。市場とは違って定期的に決まった価格で買い取ってくれることに魅力を感じたためです。
1月から3月の彼女のバナナの収穫量は12月までと比べて半減してしまいました。例年この時期は強い北風が吹き収穫量が減少する時期なのですが、それに加えて今年は乾季にも関わらず雨が降り続き、葉の病気が広がったことが要因です。

フローラさんの夫のフェリペさん
コロナ禍により暮らしぶりも変わりました。移動制限によって、行きたいときに隣村や町に行けなかったり、副収入の稼ぎ口も減ってしまいました。移動制限が最も厳しかった時期は、外出のための許可証を携えて町に日用品を買いに出かけました。現在は収入が減っているので、町での買い物は暮らしに必要な最低限の日用品に留めています。

自宅学習をする次女のジーングレースさん。観光に関わる仕事に就くのが夢。
子どもの教育も影響を受けています。長男はマニラで働いており、一緒に暮らす長女はすでに結婚しています が、次女はまだ就学中です。 フィリピンの学校では1年以上対面での授業が中断されており、住んでいる地域のネット環境が悪くオンライン授業も選べないため、遠隔用に準備された教材を使っての自宅学習が続いています。
※印刷版での子どもたちの情報が間違っていたため訂正します。

フローラさんの自宅
コロナ禍の不安の中でバランゴンの収穫量も減り、最近あまり楽しいことはないですが、1歳の孫の面倒を見たり、空いた時間にテレビや映画を見て気分転換をしています。天候も良くなってきているので、4月の収穫分からバランゴンの収穫量の回復を期待しています。
◆東ネグロス州サンタカタリーナ市マンサグマヨン村のサミーさん

マンサグマヨン村のサミー・サラさん

サンタカタリーナ市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia
「昨年の10-12月の収穫量に比べると、1-3月は半分くらいに減りました。シガトカ病に加えて、バンチートップウィルス病(注:アブラムシが媒介する病気で感染した株は収穫が見込めなくなる)の影響です。今は、ウィルス病に感染した株の抜き取りと植え替え作業をしており、またオルタートレード社(ATPI)が支給してくれる鶏糞の到着を待っているところです。雨に合わせて鶏糞をまく予定でいます。ちなみに、私の畑は乾季に吹く北東からの季節風の強風被害は受けづらい立地ですが、雨季に吹く南西からの季節風の影響は受けます。
私が住む村では、季節風の影響で2-3月の収穫量が減少するのはバランゴンに限ったことではなく、他の品種のバナナも似たように減少しています。
2-3月にバランゴンの収穫量の減少を抑えるため、私の場合は株の植え替えと施肥が必要と思っています。古い株は植えてから20年くらい経過しており、土も痩せてしまっているのためです。
バランゴンを栽培していて一番心配していることは気候変動です。昔は午前11時頃までは畑で作業ができる気温でしたが、今は朝7時の時点でとても暑くなっています。気候が変化してしまっていることを農家として実感しており、最近バランゴンの収穫量が減少している一因にもなっています。
コロナ禍の影響ですが、畑仕事には影響はありませんが、移動制限が厳しいので、町に買い物に行くことがめっきりなくなりました。」
◆西ネグロス州サンカルロス市コドコド村のエディーさん

コドコド村のエディーさん

サンカルロス市 出典:Mike Gonzalez (TheCoffee) – Wikipedia
「バランゴンの収穫量は、去年の末に比べると半減してしまっています。例年この時期は季節風の影響で収穫量が減少しますが、今年は1-2月に雨が降り続いたことで葉の病気であるシガトカ病が広がり、さらに収穫量が減少しました。感染した葉を切り落とす努力をしましたが症状がひどかったので、基準の太さに達しないバナナが多く不合格品が多くでました。収穫量の回復は5月くらいになりそうですが、オルタートレード社から支給される鶏糞を3月中に施用できれば回復が早まるかもしれません。いまは、健康な葉が増えてきているので、このまま順調であれば、いいバナナが収穫できそうです。」
-いつも収穫量が減少する2-3月(注:日本では3-4月のお届け分)に収穫量を維持するアイデアは何かありますか?
「アミハン(北東からの季節風)の影響を受けにくい畑にバランゴンを植えて、施肥もしっかりすることだと思います。」
-現在の暮らしは?
「コロナ禍の影響は、農業をする上では大きな影響は受けていませんが、移動制限が厳しいので、町などの行きたい場所に気軽に行けなくなっているのが大きな変化です。現在バナナからの収入が減っていますが、畑で作物の世話をすることを日々楽しんでいます。心配事としては、雨季(6-11月)が来たときにシガトカ病がまた蔓延しないかということと、台風被害です。天候についてはいつも心配の種です。」
なお、コロナの影響ですが、フィリピンは4月上旬の段階で、連日1万人前後の新規陽性者が報告されており、2度目の大きな波を迎えています(人口は2019年時点で1.08億人)。感染者の多くがマニラ周辺の地域であり、バランゴンバナナの産地がある地域では感染者が急増する状態にはなっておらず、ほとんどの産地が最も低い規制レベルの地域に属しています。4月上旬時点では、バナナの出荷作業に大きな影響は出ていません。
*太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象。日本を含め世界中の異常な天候の要因となり得ると考えられています。 出典:気象庁
【バナナニュース312号】~福島の子どもたちに届けよう~ APLA(あぷら)のバナナ募金
(株)オルター・トレード・ジャパンの関連団体である特定非営利活動法人APLA(あぷら)では、2011年3月の原発事故発生以降、「福島の子どもたちに届けよう・バナナ募金」として多くの方からご支援いただき、民衆交易のバランゴンバナナを福島県内17ヵ所の保育園・幼稚園に送り続けています。
先生方は子どもたちのために、届いたバナナを色々なデザートに使ってくださっています。
コロナ禍以前には、毎年APLAのスタッフが各施設を訪問し、変わりゆく福島の現状に耳を傾けるとともに、子どもたちにバナナやフィリピンのことについて伝え、時にはバナナ生産者が訪問するなどの交流を継続してきました。
〇お届け先訪問時のレポート:バナナ募金お届け先の園を訪問し、交流しました。
今はそういった活動がままならない状況ですが、保育園や幼稚園からは、子どもたちが描いてくれた絵が届きます。それらの絵はAPLAを介してフィリピンに届けられ、バナナ生産者たちを笑顔にしています。
〇絵を届けた際のレポート:バナナ募金送り先からいただいたお便りをフィリピンの生産者にお届けしました!
*APLAからのメッセージ*
これからもバナナ募金の取り組みは継続してまいります。
皆様からのご支援・ご協力をお願いいたします。
\ バナナ募金について詳しくはこちらからご覧ください。/
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【バナナニュース311号】バナナの部位
バランゴンバナナの産地のひとつ、フィリピン・ネグロス島。島の西半分を占める西ネグロス州の言葉、イロンゴ語でバナナの部位の呼び名を教えてもらいました。
バランゴンバナナの産地情報については、こちらからご覧いただけます。
※この記事は、過去の『こどもバランゴン新聞』より転載いたしました。
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なお、すべての質問項目に関してご回答は任意です。
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【バナナニュース310号】書籍のご紹介:『甘いバナナの苦い現実』(石井正子編著)
バナナ出荷作業の労働条件の改善を求めると、組合事務所で2度火事が起こり、仲間が発砲事件で命を落とす。バナナ園の周辺では原因不明の発熱、咳、腹痛などを訴える人が少なくない。農薬の飛散から住民を守るためにバナナ園周囲に幅30mの緩衝地帯の設置が義務付けられているが、わずかな企業しかその義務を果たしておらず、行政も指導をしない。日本の店頭に並ぶバナナの8割を生産しているフィリピンにおいて実際に起きている理不尽な出来事が、この本には書かれています。
今から32年前にバランゴンバナナの交易が始まりましたが、一つのきっかけとなったのが、『バナナと日本人』という本でした。不公正な労働条件や、農薬との関連が疑われる呼吸器系疾患や皮膚炎を訴える労働者が多いことに触れながら、バナナを食べる私たちだけが安全であればいいのかという問いが投げかけられました。「つましく生きようとする日本の市民が、食物を作っている人びとの苦しみに対して多少とも思いをはせるのが、消費者としてのまっとうなあり方ではあるまいか」と。
産地の人びとの苦しみは改善されているのかという問題意識で書かれた本書では、南ダバオ州ダバオ市の空中散布禁止条例が最高裁で違憲であると判断された経緯も記されています。飛散する農薬により家畜が死んでしまうという家畜業界の陳情によってブキドノン州では空中散布禁止条例が制定された一方で、近隣住民がそれを求めたダバオ市では違憲とされました。「ブキドノン州は貴重な家畜がいて幸いでした。ダバオには、人間しかいません」という、条例を支持した人の言葉が悲しく響きます。
バナナにまつわる苦しみが現在も続いているという現実。自分の身内が同じ苦しみを味わっていたら、改善策を講じるために協力するだろうし、手を差し伸べるだろうけれど、そうした思いが働かないのは、日本とフィリピンの地理的な距離だけでなく、私たちが知らなさすぎることにあるように思います。まずは知ることから。受け身ではなく主体的に考えて暮らすきっかけを与えてくれる本です。
▼関連記事はこちらからご覧いただけます。
●【PtoP NEWS vol.11/2017.2 特集】バナナ・プランテーションの現場から ~フィリピン・ミンダナオ島現地訪問で見えたもの~
●報告書「フィリピン、ミンダナオと私たちの今を考える」
▼書籍はこちらからご購入いただけます。
APLA SHOP
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【バナナニュース308号】モンディア・インボックさん:困難を乗り越える農民の物語②

マキララでの出荷再開後の収穫の様子
昨年10月にブハイ村のあるマキララ町を大地震が襲いました。マキララ町では2万世帯以上が被災し、多くの家屋が倒壊しました。
ブハイ村では斜面にあったバランゴンの畑のいくつかは地滑りで失われました。インボックさんの家も流されました。出荷団体のドンボスコ財団は、事務所倒壊などの甚大な被害に遭いながらも、地震の2週間後にはバランゴンの集荷を再開しました。誰もが大惨事に動揺する中でも、人々が生きていくためには収入が必要という判断からでした。バランゴンは人びとが立ち直るのを助け、トラウマの中でも自分たちの土地や農場に戻る勇気を与えました。

マキララでの出荷再開後のパッキングセンターの風景
今年のコロナ禍でのロックダウンは、先住民族タガバワのコミュニティにさらなる苦しみをもたらしました。商人は地域を横断することができず、ココナツ、ゴム、切り花(アンスリウム)は市場を失いました。一方で、(物流の許可を得た)バランゴンの出荷は継続されたため、バランゴンの回復力は再び人々を驚かせました。危機の際にはバランゴンは食料にもなるため、ブハイ村ではバランゴンの栽培に関心を示す人が増えています。
インボックさんは今もなお健在です。バランゴンからの収入は、家族の日常生活に必要なものを賄ってくれています。彼は豊かになったわけではありませんが、コツコツ貯めたお金で、バナナをパッキングセンターに運ぶバイクを購入しました。1年前には政府の援助を得て、ブハイ村の農民がバナナをパッキングセンターに運ぶための中古トラックも取得しました。彼は自らの先住民族コミュニティだけでなく、ブハイ村の入植者やイスラム教徒(先住民族マラナオ)にもインスピレーションを与えるモデルとなっています。人々のために夢を見ることをやめず、67歳になってもエネルギーとポジティブさに満ち溢れています。
なお、地震から1年が経過した現在も、インボックさん達のコミュニティは仮設テントの避難所暮らしが続いてます。もともとの居住地は政府のリスク評価により、居住禁止区域に指定されてしまったためです。

避難所①
ブハイ村には、2000年に大手のバナナプランテーションが進出し高地栽培バナナの栽培が開始されました。村の人からの聞き取り(2016年)では、農薬散布は早朝にブームスプレー(トラックの後ろに積んだタンクから圧力をかけて道路から農園に農薬を撒く方法)で行われ、風向きによってはきつい臭いの農薬が家まで飛散し、日中もずっととどまっているように感じられるそうです。(ちなみに、バランゴンバナナの圃場はプランテーションから離れた奥地にあります)。

避難所②
現在の避難所もプランテーションに隣接しており、農薬に曝されるリスクに悩まされています。また、政府が進めるブハイ村コミュニティの移転計画にも問題がありました。再定住地の候補地がプランテーションに四方を囲まれた土地であり、健康リスクが懸念されることです。また、ブハイ村で家を失った先住民族はインボックさん達タガバワの他に、イスラム教徒のマラナオの人たちもいました。(どちらのコミュニティにもバランゴンバナナ生産者がいます)。

タガバワ避難所にパイプ支援
政府の計画では、2つの先住民族コミュニティが近い地域に移転するものですが、タガバワの従来の暮らし方である養豚や犬を飼うことは、マラナオ(イスラム教徒)の人たちにとっては大きな禁忌事項であり、お互いを尊重した暮らしが継続できるかの懸念がありました。
そのため現在は、政府の計画に頼る方法ではなく、日本などからの義援金を使って、元来先住民族が暮らしていた土地を購入し、そこに再定住することを目指しています。(マラナオの人たちも親族の土地への移住など、政府が準備する移転地以外の選択肢があります。)
被災者支援の現状は、マキララ地震 復興支援 中間報告をご参照ください。
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【バナナニュース307号】モンディア・インボックさん:困難を乗り越える農民の物語①
モンディア・インボックさんは、コタバト州マキララ町ブハイ村に住む先住民族バゴボ・タガバワの120を超える世帯のリーダーです。彼は1953年3月15日にブハイ村で生まれました。数時間歩いて小学校に通いなんとか卒業しましたが、生活が非常に苦しかったため、高等教育を受けることはできず、大家族のために両親の農業を手伝うことになりました。
ブハイ村は、町までのアクセスが悪い場所で、自分たちの生産物(当時は主にコーヒー)を自らの手で運ぶか、余裕のある人は馬の背に載せて運ばなければなりませんでした。
23歳の時に結婚し、12人の子どもを授かりましたが、貧困のため、子どもたちのうち7人は1~2歳で亡くなりました。死因ははしかや赤痢などでした。今日では遠隔地の村々にまで届く保健サービスがありますが、当時は何もありませんでした。彼は5人の子どもたちを学校に通わせようと最善を尽くしました。ほとんどの子どもたちは高校に進学し、そのうちの一人は大学3年生になりましたが、兄弟が事故に遭った後、家族のために出費が多すぎたため、それ以上教育を受けさせることはできませんでした。
経験を積んだインボックさんはやがて部族のリーダーに選ばれました。ブハイ村の農業組合の代表も務めていますが、そのことがきっかけで、バランゴンを出荷するプログラムを知ることになりました。彼は、15歳の時に父親が植えたバランゴンバナナを覚えていて、特別な世話をしていなくても丈夫な実をつけているため、2015年に他のバゴボ・タガバワの人々と一緒にプログラムに参加しました。
ブハイ村は標高が高く気温が低い地域のため、育苗はうまくいかずに苦労しましたが、株分けの方法で少しずつ作付け数を増やしていきました。そんな折、かつてない大地震がブハイ村を襲いました。2019年10月のことです。
■マキララでの地震被害
ミンダナオ島コタバト州を震源とするマグニチュード6を超える地震が2019年10月16日(M6.3)、29日(M6.6)、31日(M6.5)と連続で発生しました。特に、10月31日に発生した地震の震源地は、バランゴンバナナの産地の一つであるマキララ町に近く、マキララでは土砂崩れが発生し、多くの建物にも被害が出ました。そのため、バランゴンバナナ生産者も含む多くの住民は幹線道路沿いや役場などで避難生活をすることになり、町は一時期ゴーストタウン化しました。詳細については、こちらで報告しています。
左の写真は震災前の2018年にインボックさんを訪ね、家の中でコーヒーを頂いたときのものです。とても質素なお家でした。この家は、地震によって半壊してしまいました。近くの家も同様で、中には地滑りとともに崩落してしまった家もあり、地震の後に現場を見たドンボスコ(マキララからバランゴンの出荷を担う団体)のベッツィーさんは「足が震えた」そうです。
2018年当時は、インボックさんは12ヘクタールの土地を持っていて、そのうち2.5ヘクタールで1,200株のバランゴンを育てていました。他にタイガーグラス(箒の原料)、アバカ(丈夫な繊維が取れる)、ドリアン、マラン(果物)などを栽培しているとのことでした。バランゴンの畑は地滑りで半分ほどが失われました。

地震で発生した地滑りの様子①

地震で発生した地滑りの様子②

急こう配にあるリッキーさんの畑
インボックさんの畑は家からとても遠いとのことで、当時訪問することはできませんでしたが、近くに住むリッキーさんの畑を見ることができました。
急斜面にバランゴンがゴムやサヨーテ(ハヤトウリ)と共に植えられていました。この畑も地震で大きな被害に遭いました。

リッキーさん
現在発生しているラニーニャ現象のため雨量が多い状態が続き、地盤が緩んでおり、地滑りは今でも断続的に発生しているそうです。
マキララ地域からのバランゴンバナナの出荷量は震災前の半分程度まで減少した状態が現在まで続いていますが、ブハイ村を含めてバランゴンバナナの栽培に関心を示す人が増えている状況です。(次号へ続く)
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【バナナニュース305号】ミンダナオ島・南コタバト州のバランゴンバナナ生産者 パーフェクトさん・ノルマさん夫妻
パーフェクト・クルスさん(68歳)と妻のノルマ・クルスさん(69歳)は、ミンダナオ島の南コタバト州でバランゴンの栽培をしています。二人ともすでに定年退職をしていて、現在は農業に時間を費やしています。夫妻には一人娘のジャミニ・アン・クルスさん(34歳)がいます。
バナナ生産者になる前の1969年から約13年間、パーフェクトさんはフィリピンの自動車業界で見習いからサービス研修センターの責任者になるまで働いていました。彼はまた、サウジアラビアで20年間、5つの会社の下で様々な職種で働いていました。そして2010年に退職し、フィリピンに戻ってきました。
南コタバト州にある全国灌漑協会で働いていたノルマさんは、パーフェクトさんよりも早く退職しました。2010年、彼女は南コタバト州ツピ町にあるツピバランゴン生産者協会、現在のTUBAGA生産者協同組合のメンバーになり、700株からバナナの栽培を始めました。

ATPIスタッフ(右)とバナナの苗を確認
2013年、パーフェクトさんもTUBAGAのメンバーになり、彼らはバランゴン農園を拡大することにしました。パーフェクトさんは1500株を植え、ノルマさんはさらに700株を植えました。それ以来、夫妻は協同組合の活動やプログラムに積極的に参加してきました。2015年、ノルマさんはTUBAGAの理事会の一員になりました。彼女は現在、副理事長を務めています。

農場で働く皆さんと談笑するパーフェクトさん (右から2人目)
パーフェクトさんは7年間バランゴンを栽培しています。彼はほとんどの時間を農場の管理に費やしています。品質の良い安全なバランゴンを生産するために、草刈り、袋がけ、タグ付け、施肥などの作業を常にタイムリーに行い、農場の管理を非常に手際よく行っています。農場で働く皆と一緒に、不要な葉を落としたり、草刈り、剪定などの農作業も行っています。収穫の際には、収穫するバランゴンが適切な成熟度であることを常に確認しています。

休憩時のおやつを準備するノルマさん
一方ノルマさんは、ほとんどの時間を家で過ごし、裏庭の畑や鶏、ペットの世話をしています。彼女は自家製の肥料を使って野菜や花を育てています。家事に追われながらも、農場を訪問してバランゴンの生産性向上のための提案をしたり、TUBAGAの理事会にも熱心に参加しています。
バランゴンを育てることは、彼らにとって簡単なことではありませんでした。7年間、多くの浮き沈みを経験してきました。2016年に遡ると、約7ヶ月間の長い干ばつを経験しました。農作物の生産量が激減し、回復に長い時間がかかりました。2016年以降、3月から6月にかけてと乾季が長引いており、バランゴンが発育不全になり、小さな房しかできなくなっています。本来ならば、雨季になるとバランゴンの成長は回復するものなのですが、残念ながら近年はバランゴンが倒れる原因となる強風が増えています。2018年に、彼らのバランゴン農園は強風で壊滅的な被害を受けました。
それにもかかわらず、パーフェクトさんとノルマさんは、バランゴン栽培を粘り強く続け、災害や病気で傷んだバランゴンの株を継続的に植え替えています。過去2年間に生じた生産量の減少とバランゴン収入の減少は、現在は緩やかに回復しています。
ところが、2020年7月22日に再びツピ町の広範囲で激しい雨を伴う強風が吹き、多くのバランゴンが倒れてしまいました。
年金給付を受けていますが、定期的な収入源としてバランゴンを重視しています。ココナツも栽培していますが、3ヶ月ごとにしか収穫することができません。一方バランゴンは週ベースで収入があり、農作業員の労賃や他のニーズに支払うために使用されています。バランゴン交易で重要なのは、環境に優しい農業を通じて安全でオーガニックな食品を提供する生産者コミュニティの一員であることです。彼らは農業にたずさわることに誇りを持っています。ストレスの発散方法としても、適度な農作業をすることにしています。

綺麗に手入れされたクルス夫妻のバナナ畑
パーフェクトさんとノルマさんは、持続的なバランゴン交易を期待しています。「今回の新型コロナウイルスの感染拡大で収入が非常に少なくなっている中、日本の消費者の皆さんが変わらず買い続けてくださっていることに感謝しています」とパーフェクトさんは語ってくれました。
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【続報】フィリピンにおける新型コロナウイルス感染症の状況④
フィリピンにおける状況の続報です。(前回の報告はこちらをご覧ください)。
【感染者数が急増中】
7月末から連日のように4,000人前後の新規感染者の発表があります。8月10日は6,958人に達し、その約60%はマニラ首都圏での感染者です。8月11日時点で、累計の感染者は139,538人、死者数は2,312人にのぼっています。陽性率は10%を超えてきています。感染者の48.5%が20代および30代で、死者数の61.7%が60歳以上で占められています。現在の感染者の内、約91%が軽症、約7%が無症状という状況です。
参照元:国連(OCHA)の概況報告#48、フィリピン保健省の日報
グラフ参照元:日本:NHK特設サイト / フィリピン:Rapplerニュースサイト
グラフ元:フィリピン保健省
フィリピン政府は感染者数が増加傾向にある中で、6月以降のマニラ首都圏などでの経済・社会活動の規制の緩和を決めましたが、ドゥテルテ大統領は記者会見で、人口あたりの死亡者の少なさや(フィリピンの人口は2018年時点で約1億人)、感染者の多くが軽症であることを理由として挙げていました。
フィリピン政府は15日毎に地域ごとの規制レベルを発表しています。8月1日から15日については、マニラ首都圏は7月31日以前のレベルの継続であることが7月31日に発表されました。しかしその翌日に医療従事者が公開の嘆願書を政府に提出し、感染者数の増加を受けて医療システムが危機に瀕しており、このままでは負け戦となるため、対策を練りなおすための時間を確保するために、2週間のマニラ首都圏などでの規制レベル再強化を要請しました。これを受けて、ドゥテルテ大統領は8月4日から18日の期間について、マニラ首都圏周辺の規制をロックダウンに近いレベル(MECQ)に再び強化することを決定しました(例えば、バス・ジープニー・タクシーなどの公共交通機関は停止となります)。
参照:医療従事者の嘆願や7つの提言がまとめられた英語のニュースサイト(rappler)
ドゥテルテ大統領は8月10日の会見で、「感染拡大を抑制するために強化された規制レベルの期限を延長したい気持ちはあるが、政府にはもはや人々にお金を支給するための財源がない。」「みな自分自身で働いて生計をたてるしかない」と経済活動と感染防止の両立の難しさを述べています。
下表は規制レベルの変化を見やすくするために数値に置き換えたものです。(数字が大きいほど厳しい規制。フィリピンでは数値での表現はされていません)。
規制レベルに応じた規制内容がまとめられているサイト:ジェトロ(日本貿易振興機構)
4:ECQ(Enhanced Community Quarantine強化されたコミュニティ隔離措置)
3:MECQ(Modified Enhanced Community Quarantine修正を加えた強化されたコミュニティ隔離措置)
2:GCQ(General Community Quarantine一般的なコミュニティ隔離措置)
1:MGCQ(Modified General Community Quarantine修正を加えた一般的なコミュニティ隔離措置)
※カラバルソン地方の「1/2」は、地方内の行政地域によって規制レベルが異なっている(1の地域もあれば2の地域もある)ことを意味しています。
参照元:在フィリピン日本国大使館
【休校も続く】
フィリピンでは学校の休校も続いています。通常は4月・5月は夏休み(フィリピンでは3-5月が最も暑い季節)で6月から新学期が始まります。公立の学校は8月24日から再開とされていますが(私立は裁量が認められている)、ドゥテルテ大統領が対面での授業はワクチンが利用できるようになるまでは行わないという方針(公立も私立も)を打ち出しているため、リモート学習の準備がなされています。ネットにアクセスできない家庭の子供は、印刷された教材とラジオやテレビを使っての学習になるようです。準備不足を理由に、学校再開の延期を求める声が教員などからあがっているが、教育省は期日どおりに再開を目指していると報じられています。
参照元:英語のニュースサイト(rappler)
【バランゴン産地の感染状況】
下表は、主なバランゴン産地の感染者数をまとめています。絶対数は少ないものの、6月末時点に比べて増加している状況です。データ元:フィリピン保健省
・ネグロス西州の感染者のうち、73%がLSIs (Locally Stranded Individuals: 3月から5月のロックダウン時に旅行や仕事で地元を離れていた帰宅困難者)の感染確認で、次いで14%が海外から帰国した出稼ぎ労働者によるものです。
参照元:ネグロス西州のサイト
・ミンダナオ島のソクサージェン地方には、バランゴンバナナの産地が3つありますが、8月11日時点での累積の感染者数は、ツピ町で10人(人口約7万人/2015年)、レイクセブ町で8人(人口約9万人)、マキララ町で1人(人口約8万人)という状況です。
情報元:南コタバト州政府のサイト、コタバト州政府のFacebook
・ネグロス東州では、LSIsが運送業者の助手を装って域内に入ろうとする事例が発生したため、外部からの入域規制が8月7日から強化されました。この影響で、バナナの集荷のために西州から東州のマンティケル村に向かっていたATPIのトラックが検問所で入域を拒否されました。食品などの生活必需品を運ぶトラックは入域可能で必要書類も持参していましたが、集荷前のトラックには何も載せていなかったために偽装を疑われてしまったのです。そのためATPIは、急遽東州内でトラックを手配し、マンティケル村での集荷を行いました。(町から遠く離れた山奥にある村のため手配に苦労し、また費用も高くついてしまいました。)
また、東州のパッキングセンターで箱詰めされたバナナを輸出のために西州の港に運ぶために、通常はATPI所有の空のトラックが東州に取りに向かいますが、今週は東州内で販売するためのマスコバド糖(黒糖)を積むことで、検問所を通過することができています。
・ATPI事務所があるネグロス西州のバコロド市では感染拡大防止のため、8月1日から州外からバコロド市に入る際の制限を厳しくしています。この影響で、仮にATPIスタッフが東州で24時間以上滞在して仕事をした後に事務所があるバコロド市に入るためには、3日以内に発行されたPCR検査の陰性結果を提示する必要があります。
・バコロド市は、8月9日から3週連続で、日曜日に主要な3つの市場を閉鎖し、消毒を行うことを決めています。(動画:バコロド市のFacebookにアップされた消毒の様子)

ダバオ(ミンダナオ島)で最終検品中のジェイソンさん
・ミンダナオ島に駐在しているATPIスタッフも、コロナ禍の影響で家に戻れない日々が続いています。
ジェイソンさんはルソン島から単身赴任しており、本来であれば、3か月に一度、会社から休みをもらって家に帰ることができます。結婚式をあげる予定と、第一子の誕生に立ち会う予定がありましたが、移動制限があるため、どちらも実現しませんでした。
・ATPIは、現場で働くスタッフにフェイスシールドを支給しました。写真は北ルソンのスタッフの様子です。
なお、8月15日からは、公共交通機関(バス、ジープニー、タクシーなど)に乗る際は、フェイスシールドの着用が全国で義務化されます。
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【バナナニュース304号】チャレンジ精神旺盛なレネボイさん ~西ネグロス州・シライ市パタグ地域のバランゴン生産者~
バナナ民衆交易に出会って、夢叶う!

イチゴが実をつけました。甘いです!
レネボイ・ソンブリアさんは1969年生まれ、父親はトルダンなどローカルなバナナを地元の市場に出荷する農民でしたが、レネボイさんが19歳のときに亡くなりました。レネボイさんは学校に行くことも諦め、父親の農業を継いで家族の面倒を見るようになりました。地元にたくさんあったバランゴンバナナを市場に出荷していましたが、「安いバナナ」だったと言います。
95年ごろに、知人に紹介されてオルタートレードにバランゴンバナナを出荷するようになりました。バランゴンバナナからの収入が安定するなかで、「学ぶことは大切」という信念を持ち続けていたレネボイさんは、24歳になってから高校で学び、30歳で大学を卒業しました。レネボイさんが自分で稼いで実現した夢ですが、バナナ民衆交易に出会えたことにとても感謝しています。
なんでもやってみる探究心!

堆肥や液肥づくりの実験
レネボイさんは、シライ市周辺では一番多くバランゴンバナナを出荷しています。
畑には果樹や防風林の役割も兼ねた木々が植え込まれ、多様な作物を混植する畑づくりや、有機物を利用した堆肥や液肥をつくってみるのが楽しいと言います。「バナナの圃場がある地域は2月~4月は長期的な乾季になるのですが、灌漑設備もないのです。対策として圃場に木々を植えて保水力をつけています」「単作は土壌によくないので多様な作物栽培が大切なんです」などと、周囲の気候風土のことをよく観察して適切な対策を考えています。

苗づくり
セミナーなどで何かを学ぶと、オルタートレードのスタッフと議論しながら、自分でいろいろやってみる、上手くいったら地域の仲間たちに教えるという行動派のレネボイさんは、オルタートレードの地域づくり担当スタッフに起用され活躍しています。
農業とオルタートレード・スタッフの二足の草鞋で大忙しですが、スタッフとしての収入を家族のために使えるので、バランゴンバナナからの収入は農業資材や実験に必要なものに充てることができると喜んでいます。しかし、レネボイさんとて1日24時間しかありません。今は手のかかる野菜づくりはできないと、果樹栽培に重点を置いています。
また、地域のNGOが支援するイチゴ栽培プロジェクトにも参加しています。有機栽培までは求められていないのですが、レネボイさんは独自で有機栽培をめざして取り組んでいます。夢は、レタスやキャベツなど付加価値のある野菜の有機栽培に成功して地域に広げることです。「バコロド市のレストランで有機栽培野菜の買い付けを検討しているらしい。地域の農民グループとして有機認証をつけた野菜を出荷してみたい。」と、夢の実現へのロードマップはかなり見えてきたようです。
学校が休みでもないのに息子さんがちょいちょいレネボイさんの畑に通ってきます。「学校より農業がおもしろい」と話しているそうですが、学ぶことは大切だと考えているレネボイさん、そして自分が苦労した経験から、父親としては「農業が好きなのは嬉しいけれども、勉強はして欲しい…」と複雑な心境だと苦笑いしています。
※バランゴンバナナは、オルター・トレード・ジャパン(ATJ)が、日本に輸入して、株主生協・団体や共同購入グループ、自然食品店などにお届けしています。
・個人の方はこちらからもご注文いただけます。
・バランゴンバナナ詳細はこちら。
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【続報】フィリピンにおける新型コロナウイルス感染症の状況③
フィリピンにおける状況の続報です(前回の報告はこちらをご覧ください)。
※8/14更新:新しい続報はこちらをご覧ください。
【全体状況】
6月以降、フィリピンの新規感染者数は増加傾向にあります。要因としてフィリピン保健省は、PCR検査数の増加(現在の検査能力は1日1.6万件)や、セブ市における感染拡大をあげています。6/16から6/24の期間において、マニラでの陽性率が7.2%に対してセブでは32.8%に達しているとのことです。その他の要因として、新規感染者数の発表方法の変更(詳細は文末の参考2で説明)も挙げられています。
参照元:
・日本:NHK特設サイト
・フィリピン:Our world in Data
【バランゴンの産地がある地域の感染者数】
バランゴンバナナの産地では、感染者数は少ない数字で推移しています。例えばネグロス西州では、感染者数が5月に比べると10倍になっていますが、これは主にマニラやセブから戻ってきた人たちです。
現地での買付や輸出を担っているATPIによると、バランゴンバナナ生産者やスタッフに感染者は出ていないとのことです。
参照元:フィリピン保健省
地域ごとの規制レベルは段階的に引き下げられています。下表は規制レベルの変化を見やすくするために数値に置き換えたものです。(数字が大きいほど厳しい規制。フィリピンでは数値での表現はされていません)。「4」がいわゆるロックダウンの状況で、セブ市のみが現在「4」です。
【規制レベルの推移】4:ECQ(Enhanced Community Quarantine強化されたコミュニティ隔離措置)
3:MECQ(Modified Enhanced Community Quarantine修正を加えた強化されたコミュニティ隔離措置)
2:GCQ(General Community Quarantine一般的なコミュニティ隔離措置)
1:MGCQ(Modified General Community Quarantine修正を加えた一般的なコミュニティ隔離措置)
参照元:在フィリピン日本国大使館
フィリピン政府は5月末に、感染者数が増加傾向にある中で、6月以降のマニラ首都圏などでの規制の緩和を決めましたが、ドゥテルテ大統領は記者会見で、人口あたりの死亡者の少なさや(フィリピンの人口は2018年時点で約1億人)、感染者の多くが軽症であることを理由として挙げていました。
バランゴンの産地はすべて、現段階で存在している規制レベルの中で、規制の一番低い地域に属しています。ただ、ネグロス東州の自治体(市町村)の中には独自に厳しい規制を継続している地域があり(西州に隣接しているカンラオン市)、東州の一部のバナナについては、遠いルートで西州の港までバナナを運ぶ状況が続いています(通常3-4時間で運べるところが6時間かかっています)。

ATPI・ATPF社内の様子:バナナ事業責任者のレイさんの誕生日を祝う一コマ(7月2日)
バコロド市がロックダウン下にあったときはATPI/ATPFは縮小した勤務体制でしたが、現在は通常の出社体制に戻っています。マスクの着用やソーシャルディスタンス、出社時の検温などが実施されているとのことです。
ネグロスではバランゴン産地のある地方の村に行くことは可能になってはいるものの、まだ以前のように容易に訪問できる状況にはないとのことです。特に、東ネグロス州の規制は厳しく、ATPI事務所がある西ネグロス州から入る際には、商用目的の移動であることの証明書に加えて健康診断書の提示が必須であり、また胸部X線の診断書の提示も求められるそうです。(健康診断書(一般的な検診内容)の有効期限は1週間、X線は1度のみ受ければ可)。北ルソンのバナナをトラックでマニラに運ぶ際やミンダナオ島の各産地からトラックでダバオにバナナを運ぶ際には、X線の結果を求められることはないそうです。
ネグロスの東州と西州を結ぶ長距離バスはまだ運行されていません。ミンダナオ島の長距離バスも同様とのことです。
また、フィリピン国内での島間の移動は依然として禁止されているため、ATPIスタッフがミンダナオ島などの産地に出張することはまだ出来ない状況です。(※7月から一部の国内線フライトの運航が再開されているようですが、まだ不安定な状況にあるようです)。

東ネグロスのパッキングセンターの様子(5月上旬)
規制の緩和を受けて、現在出荷が止まっているバランゴンの産地はありません。パッキング作業も通常どおり行われています。

東ネグロス州ボナウォン村の集荷所の様子(5月上旬)①

東ネグロス州ボナウォン村の集荷所の様子(5月上旬)②
参考1)フィリピン政府のデータを元に国連人道問題調整事務所(OCHA)がまとめている6月30日発表の概況報告
- 37,514人の感染者のうち、10,233人が回復している。
- 感染者の6%が軽症である。
- 1,266人の死者のうち、70歳以上が7%、60~69歳が29.8%、50~59歳が17.9%を占めている。
- 96%の病院の病床は余裕がある状況である一方、セブ市の病床がひっ迫した状況にある。
- 海外から帰還した出稼ぎ労働者や、ロックダウン時に旅行や仕事で地元を離れていた帰宅困難者の感染確認が目立っている。
5月28日以降の政府発表から、過去に行われた検査で未整理で集計されていなかった分が追加されています。そのため、5月28日以降は、freshな陽性結果(検査結果が出て3日以内のもの)とlateな陽性結果(検査結果が出てから4日以上経過したもの)がそれぞれ発表され、その合算値が一日の新規感染者数となっています。(5月末時点で6,800件の未整理の陽性データがあり、重複を削除する作業などを行ったうえで、lateな陽性結果として日々公表されています)。6月前半は、lateな陽性結果が過半数を占めていましたが、後半はfreshな陽性結果が増加しており、マニラとセブを中心に感染拡大が続いている状況がうかがえます。
参照元:
・Our world in Data
・ABS-CBN Newsのグラフ
参考3)フィリピンの陽性率の推移グラフ参照元:フィリピン保健省
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【バナナニュース303号】バランゴンバナナを作り続けて29年 ~ランタワン地域の生産者サムエルさん~
ネグロス西州・シライ市ランタワン地域のサムエル・シオテさん(48歳)は、若いころから農業が好きで、地元の学校を卒業すると、20歳で迷うことなく父親の農業を継いだと言います。サムエルさんは5人兄弟で、兄と弟の2人は近所の若者がそうであるように村の外に出て仕事に就きました。妹は結婚して家を出ました。母親はすでに亡くなり、現在は77 歳の父親と同居しています。近所に住む末の弟が畑の仕事を手伝っています。サムエルさんは独身ですが、甥や姪にお小遣いをあげたりして助けているそうです。
バナナも最初はいろいろな種類のバナナを栽培してシライ市の市場に出荷していましたが、1990年にオルタートレードへの出荷のためにバランゴンバナナを500本植えて、翌年から出荷を開始しました。1000本~3000本まで増やしたこともありましたが、バンチートップ病(バナナの病害)や台風、干ばつなどの被害を受けて、今は700本くらいに減っています。

バナナの手入れ作業をするレネボイさん
「それでもこの地域では自分が一番多い!・・・でも隣村のレネボイには負ける!」と、寡黙で多くを語らないサムエルさんですが、このときばかりは茶目っ気がのぞいてにんまり。レネボイさんはサムエルさんの友人で、バナナの植え方や堆肥づくりなどさまざまな実験を楽しんでいる農民です。
サムエルさんは父親から農地3ヘクタールを継ぎ、サトウキビ、トウモロコシ、サツマイモ、ココナッツなどを作っています。バナナは、風向きや水はけなどを考えて川沿いの土手に植えていると言います。サトウキビは年一回の収穫、農産物は価格が変動するなかで、バランゴンバナナは一年を通じて定期的な収入が見込めるので、農業で生計をたてていくには必要だと感じています。病害の問題でバランゴンバナナの収穫が危ぶまれたときには、途絶えさせないようにと必死で対策に取り組みました。
バランゴンを始めてからはセミナーに参加する機会もあり、農民仲間もできました。立派に育ったバナナを見るのが嬉しいと話しながら、「化学合成農薬や化学肥料を使わずにつくったバナナだよ!この農法ではバナナも健康に育つんだよ」と、自分が育てたバランゴンバナナに誇りを持っています。
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【バナナニュース302号】バランゴンバナナを作り続けて26年 ~ダクダオ地域の生産者エディさん~
ネグロス西州・シライ市のダクダオ地域で暮らすエディ・パレンシアさん(69歳)は、バランゴンバナナ栽培を26年間続けています。
エディさんは、当時この地域のほとんどの若者がそうであったように、ハイスクールを卒業すると同時に地元を離れて職を得ました。マニラで建設の仕事に就いた後、船乗り(料理人)となってクルーズ船にも乗り世界を航海しました。33歳を過ぎた頃、ドルでかなり良い収入がありながらも故郷に戻り農業を始めました。父親のロレンソ・パレンシアさんは有機農法を推奨する農民でバランゴンバナナも栽培していました。「有機農法は、持続的に作物をつくれるような環境を守れるし、仕事をする我々も、できた作物を食べる人にとっても安全なんだ」と、子どもたちに話していました。
エディさんが、高額の収入を捨てて農業を選んだのは、「建設の仕事も船の仕事も契約が切れると失職してしまう。農業は自分が続けていく限り、有機農業ならなおさら持続可能だ」と考えているからです。
エディさんがバランゴンバナナを始めたのは、ちょうどこの地域でバランゴンバナナ出荷がピークとなった1993年頃で、400本を作付しました。その後4年で2000本まで増やしましたが、バンチートップ病害で300本まで減ってしまいました。ココナッツなどを出荷しつつ、集中的な病害バナナの抜き取りと植え替え作戦に参加するなど試行錯誤しながら、何とか栽培を継続してきました。2019年7~8月に相次いだ台風の影響でほぼ全滅状態になってしまいましたが、すぐに300本のバランゴンバナナを植えました。
実は、弟のジュンさんもバランゴンバナナ生産者です。地元の学校を卒業してネグロス島内にある製糖工場で職を得ましたが、地元に戻って農業を始めたのです。ジュンさんは「バナナも他の作物も、喜んで食べてくれる人のためにつくれることが嬉しい」と言って、農業を楽しんでいるようです。
パレンシア兄弟は、バランゴンバナナ民衆交易のように、定期的に安定価格で買い取られる仕組みは、農業でやっていくためには大切なことで、地域からなくしてはならないと考え、仲間たちにもバランゴンバナナを続けていくことを呼びかけています。
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【続報】フィリピンにおける新型コロナウイルス感染症の状況②
フィリピンにおける状況の続報です(前回の報告はこちらをご覧ください)。
※7/6更新:新しい続報はこちらをご覧ください。
感染者数は下表のように、約3週間で倍増しています。
◆フィリピンの感染状況
4月14日時点 | 5月7日時点 | |||
感染者数 | 死者数 | 感染者数 | 死者数 | |
フィリピン全体 | 5,223 | 291 | 10,343 | 685 |
マニラ首都圏 | 3,621 | 191 | 6,709 | 492 |
カラバルソン地方(マニラの南側) | 781 | 61 | 1,251 | 84 |
ダバオ地方 | 95 | 15 | 162 | 21 |
主なバランゴンバナナ産地 | ||||
ネグロス島バコロド市 (ATPI事務所がある市) |
7 | 1 | 11 | 3 |
ネグロス西州 | 1 | 0 | 6 | 0 |
ネグロス東州 | 4 | 2 | 4 | 2 |
カガヤンバレー地方 (産地:北ルソン) |
15 | 1 | 35 | 1 |
ソクサージェン地方 (産地:ツピ・レイクセブ・マキララ) |
16 | 1 | 16 | 1 |
北ミンダナオ地方 (産地:北ミンダナオ) |
12 | 3 | 17 | 5 |
データ元:
- フィリピン保健省のCOVID-19のWebサイト
- バコロド市Facebook
(バコロド市はネグロス西州に位置しているが、西州とは行政区が異なる) - ネグロス西州のWebサイト
- ネグロス東州のFacebook
フィリピン政府のデータを元に国連人道問題調整事務所(OCHA)がまとめている資料※1によると、5月5日時点で検査機関から集約されたPCR検査の対象人数は約12.6万人で陽性率は約10%です。(陽性者は約1.3万人と上表の政府公式発表の数値と異なりますが、検査機関からのデータを精査した上で公式発表となるようです。)
陽性者の86%は軽症であり、感染者数が2倍になる日数は、以前の3日間から、5日間へと緩やかになっているとのことです。
ちなみに、ネグロス西州の陽性率は1.6%(376人中6人)、東州は0.6%(681人中4人)という状況です(各州のWebサイトにある情報)。ATPIによると、ネグロスではバランゴン生産者やスタッフに感染者は出ていないとのことです。
バランゴン産地は規制緩和
マニラ首都圏では依然として厳しい状況が続いており、3月17日から始まったロックダウン(ECQ:Enhanced Community Quarantine:強化されたコミュニティ隔離措置)が二度にわたり延長され5月15日まで継続することが決まっています。5月3日から5日にかけて、マニラ港も含まれるトンド地域(感染者数が多い地域)で48時間の「厳しいロックダウン措置(Hard Lockdown)」がとられました。この48時間の間に1,451人分の抗体検査が行われ、109人に抗体反応があり、現在その人たちへのPCR検査が行われています。
一方、感染者数が少ない地域は5月1日から規制が緩和され、ECQからGCQ(一般的なコミュニティ隔離措置:General Community Quarantine)に移行しています。
バランゴンバナナの産地がある地域は全てGCQに移行しています。ただ、ネグロス東州の自治体(市町村)の中には独自にECQ体制を継続している地域もあります。またATPI事務所があるバコロド市は、市長の判断でロックダウン(ECQ)が5月15日まで継続することになっており、ATPIでは縮小した勤務体制が続いています。
5月から規制が緩和されたことを受けて、最後まで出荷が止まっていた北ミンダナオとボホール島の出荷が先週無事に再開されました。北ミンダナオは、州知事の判断により他地域よりロックダウン(ECQ)の規制が厳しかった地域(Bukidnon州)に属しており、大手のバナナプランテーションの輸出にも支障が出ていると現地でニュースになっていました。
GCQにおける規制内容
「GCQ下の地域では、5月1日以降は労働者の外出が許可されるが、若者や高齢者、健康リスクの高い人は引き続き外出禁止とするとした。また、モールの営業については、21歳から59歳のみの入場許可、入場人数の制限、マスク着用アルコール消毒の義務付けの上、生活必需品販売店など余暇関連の店舗以外を対象に厳しい条件を付した上で、モールの営業再開を行うとした。」
引用元:日本貿易振興機構(ジェトロ)
ネグロス西州で発令されたGCQについての規制(Executive order No.20-23, 2020)は、例えば下記のようになっています。
- GCQ期間は5月1日から5月15日
- 農業、漁業、病院、小売業などは100%の事業操業可能
- 生活必需品以外の製造業、床屋、修理業などは50%の事業再開可能
- 学校、レジャー施設、観光業、ジム、スポーツ・宗教等の大規模イベントは禁止継続
- ECQでは停止だったジプニー(乗合バス)は半分の搭乗率での運行(席は1人分空席をあけて座る必要あり)。トライシクルの乗客は1人のみ。
- 州の境の厳しい移動制限は継続。
ATPIスタッフによると、ECQ下においては西州域内の自治体(市町村)をまたぐ移動が非常に厳しく制限されバナナの運搬に大変苦労したが、GCQ下では許可証なしで比較的自由に移動できるようになっているとのことです。ただ、自治体によっては厳しい規制を継続しているところもあるとのことです(特に東州の自治体)。
ジプニー(乗合バス)の運行は許可されていますが、搭乗率を低く抑える必要があるため利益が出ないためか、まだあまり走っていないとのことです。西州と東州をまたぐ移動は依然として厳しく規制されており、西州と東州の間を結ぶバスもまだ動いていません。
物流面での不安定さは継続
前回報告したマニラ港の混雑(コンテナヤードにコンテナがあふれたために発生)は改善されていますが、マニラ港を出入りする船の遅れは継続しており、物流面で不安定さは継続しています。
世界的にクルーズ船の乗組員の帰国が課題となっていますが、乗組員の中にはフィリピン人も多くいます。現在マニラ港にはフィリピン人乗組員の帰国のために多数のクルーズ船が停泊しており、貨物船の航行に支障が出てきています。この関係で、フィリピン国内の船に大きな遅れが発生しています。
ネグロスのバナナは、船を使ってルソン島のマニラ港かミンダナオ島のダバオ港に運んでいますが、マニラ-ネグロス-ミンダナオをつなぐ航路の船がマニラで足止めをくらいました。今後しばらくは運航スケジュールが乱れる見込みで、フィリピンから日本へ出発する船に間に合わない可能性があります。その場合は1週間後の船に載せて日本へ出発となり、品質面が心配されます。
予断を許さない状況がしばらく続く見込みです。
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