緊急アピール「ガザ地区に希望を 募金キャンペーン」

2023年11月6日

アルリーフ社

パレスチナのガザ地区では現在、イスラエル占領軍による大規模な大量虐殺、民族浄化が行われています。大惨事は10月7日に始まり、イスラエル軍の爆撃と空爆の激しさは急速に増しており、ガザ地区全域に大規模な破壊を引き起こしています。水、電気、食料、燃料、そして基本的な生活必需品の深刻な不足を緩和するために必要な人道的・医療的援助を遮断するというイスラエル占領軍の決定により、ガザ地区の住民は、死に直面し、人道的危機に苦しんでいます。ガザ地区はすでに17年間、イスラエルによる完全封鎖状態にあり、戦争が宣言されて以来、この包囲は非常に厳しくなっています。

現在進行中の大量虐殺によって、10月22日時点で1,756人の子どもを含む4,473人以上のパレスチナ市民が犠牲になりました。さらに、15,400人以上のパレスチナ人が負傷しています。

大量虐殺が始まって以来、イスラエルの戦闘機は14,200戸の住居が入る5,500棟の建物を完全に破壊しました。さらに、約133,000戸の住居が部分的に損壊し、内10,127戸が居住不能となりました。イスラエル占領軍は、医療施設、学校、モスク、教会、道路、パン屋、水汲み場、海水淡水化プラントなどを標的にし、近隣地域全体を一掃し、さまざまな都市、村、難民キャンプなど多数の地域が灰燼に帰しました。そのため、何十万人ものガザ地区の人びとが家を失いました。

占領軍はガザ地区全域で多数の虐殺を行っていますが、最大かつ最も残忍なものはパレスチナ市民約1,000人(そのほとんどが子ども)が命を落とした10月17日のバプテスト病院爆撃です。この虐殺によって医師、看護師、ジャーナリスト、救急隊員、民間防衛の救助隊員、子ども、赤ん坊、幼児、胎児、10代の若者、成人女性・男性がなくなりました。また、取り壊された建物の瓦礫の下に閉じ込められたパレスチナ人の行方不明者は約1,400人で、そのうち700人は子どもでした。さらに約140万人のガザ地区の人びとが、止むことのないイスラエル軍の砲撃によって家を追われ、現在、学校や病院、教会に避難しています。イスラエルの占領下で行われている戦争犯罪は、戦時下における民間人を保護する人道法と国際法に違反しています。

イスラエル占領軍がパレスチナ人に対して行っている悲惨な残虐行為の結果として、ガザ地区は、封鎖が解除され次第、すぐに援助と支援が必要な切迫した状況にあります。そのため、アル・リーフは、国境封鎖が解除され次第、救援物資をガザ地区に送るための資金を集めています。これまでのところ、ガザ地区とエジプトを結ぶラファ検問所は10月21日、2週間ぶりに開通し、トラック20台分の救援物資が届けられただけです。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)と赤新月社による継続的な調整の結果、イスラエル占領軍は20台のトラックがガザ地区に入ることを許可しましたが、燃料の搬入は許可していません。

予定されている活動

〇支援物資の提供

  • 食料と水
  • 医薬品と健康用品
  • 清掃・衛生用品
  • 建設資材

〇復旧事業

  • 水道施設
  • 農地や農業施設、灌漑施設

支援活動の開始時期

イスラエルの包囲が解かれ次第、支援物資をガザ地区に届けます。支援物資の配布は、ガザ地区の市民社会機関やPARCガザ地区支部と協力して行います。

キャンペーンの目的

ガザ地区では現在、イスラエルの爆撃により貧困、大規模な破壊、住居の喪失、食料や水、基本的な生活必需品の不足が生じており、その状況に対応するため本キャンペーンを実施します。

緊急アピール「ガザ地区とヨルダン川西岸地区エリアCの人道支援と復興 、現在進行中のジェノサイドと民族浄化から、ガザとエリアCの住民を救うために」

2023年11月6日

パレスチナ農業開発センター(UAWC)

正義と自由を信じる世界のパートナーの皆さんへ

最近の戦争の惨禍によって、ガザは打ちのめされ、傷つき、人道的大惨事の瀬戸際に立たされています。このメッセージを書いている今、全住民が圧倒的な損失、痛み、破壊と闘っています。猛攻撃から2週間以上が経過し、現状は恐るべきものとなっています。7,000人以上の命が失われ、20,000人以上の負傷者が出ています。何千もの家屋が廃墟と化し、道路や必要不可欠な基本サービス(パン屋さえ含む)を含むインフラは消滅しました。ガザは、電気もなく、水の供給も乏しく、食料の備蓄も減少し、通信インフラも限られ、暗闇に陥っています。

ガザの壊滅的被害の様子
  • 死者7,000人以上、負傷者20,000人以上。
  • 人口への影響:犠牲者の65%は女性と子どもである。
  • インフラ被害:何千もの住宅が瓦礫と化し、必要不可欠な公共インフラが著しく損なわれている。
  • 残念なことに、この数字は時を追うごとに急速に悪化している。

イスラエルの攻撃は、基本的なコミュニティ・インフラだけでなく、生計手段の核心をも標的にしています。住民の生命線であるガザ地区の農業セクターの大部分が脅威にさらされています。何千人もの農民が、自分の畑や農地へのアクセスを妨げられています。ガザ地区の現在のニーズを満たすのに欠かせない1万トン以上の果物や2万5,000トン以上の野菜が人びとの手に届かない状況です。飢えが市民に対する武器として使われていることは明らかです。

ガザ市在住でUAWCのスタッフでもあるバシールは、ひっきりなしの爆撃のためにガザ地区南部に避難しました。彼は子どもたちに必要なものを与えるのに苦労しています。例えば、清潔な水を手に入れることができず、限られた汚染された水を使っています。水を節約するため、トイレに行くのは1日1回に制限しています。パレスチナの主食であるパンがないため、米で代用し、パンを欲しがる子どもたちをなだめようとしています。食料が不足しているため、バシールは1日1食を用意するのがやっとなのです。基本的なニーズに加えて、彼はこう付け加えました。「私たちは夜、いつミサイルが落ちてくるかと恐れながら空を見つめて過ごしています。夜の暗闇は、いつ死が訪れるかわからないと私たちを恐怖に陥れるのです」

人類のために、この大量虐殺はやめなければいけません。戦争犯罪人は責任を問われなければならないし、この長期にわたる占領は終わらせる必要があります。他のすべての人間と同じように、ガザの人びとは尊厳と自由と平和のある生活を切望しています。

ヨルダン川西岸地区エリアCの憂慮すべき状況

ヨルダン川西岸地区では、多くの人びとが見過ごしているもうひとつの大惨事が起きています。イスラエル人入植者と軍は、ヨルダン川西岸の各地、特に「エリアC」(一番薄い水色の部分がエリアC、入植地やイスラエル軍演習地が集中している)に分類される地域で、破壊的な攻撃を仕掛けています。ガザに対する残忍な攻撃に乗じて、入植者たちはエリアCで民族浄化作戦を実施しています。

現代企画室『占領ノート』編集班/遠山なぎ/パレスチナ情報センター

現在までに、この地域全体で約90人のパレスチナ人が死亡し、1,100人以上が負傷しました。さらに、100世帯以上がエリアCの家と土地から強制的に立ち退きさせられました。入植者たちは家屋、テント、家畜小屋を破壊し、燃やし、財産を略奪しています。数日前にサイル村で起きた事件では、入植者が家畜農家を襲い、住民を家から追い出し、その後占拠し、約300頭の家畜を盗みました。

現在、エリアCの土地が白昼堂々と奪われています。エリアCはヨルダン川西岸地区全体の60%以上を占め、30万人以上のパレスチナ人が住んでいます。

アフメドはヘブロン地区東サイル南部に住む農民です。10月9日、アフメドと彼の家族は入植者に棒や石で殴られ、発砲されるといった残忍な攻撃を受けました。彼らの家は、周囲の4軒の家とともに焼き払われました。悲惨なことに、アハメドの主な収入源である200頭の羊は盗まれ、彼の農場は壊滅的な打撃を受けました。

襲撃事件後、アハメドは家族8人とともにサイル村の親戚の家に一時的に身を寄せています。現在、彼らは生活に必要な十分な食料、水、医薬品の深刻な不足に直面しています。

ガザ地区とヨルダン川西岸地区エリアCに住む避難家族の重要なニーズに対する緊急支援の要請

この悲惨な時だからこそ、ガザと共に立ち上がりましょう !あなたの寄付は、家を再建し、農場を復興させ、そして幾多の困難に耐えてきた人びとに希望をもたらすことができます。国際社会が団結し、ガザの人びとが当たり前の生活を送れるようにしましょう。

以下の緊急支援を実施するため、この緊急アピールで迅速な支援を提供してくださるようお願いいたします:

  1. ガザとヨルダン川西岸エリアCの被災・避難家族への食料と水の提供。
  2. ガザの家族が冬を過ごすためのテントと衣類の提供。これから寒くなりますが、避難民は破壊・爆撃された家に衣類を残してきたため、ほとんど衣類を持っていません。対象者は数千人にものぼります。
  3. 破壊されてしまった、ガザの住民に食料を供給してきた数百にのぼる農地や施設の復興。
  4. 農作物の灌漑や散水を速やかに再開するために、ガザでの水の供給と水源の復旧、特に爆撃によって破壊された泉の復旧。
  5. ヨルダン川西岸エリアCの住民に対し、土地を差し押さえられたケースを追及するための法的支援。
  6. ヨルダン川西岸エリアCの避難民への住居やテントの提供。
  7. ヨルダン川西岸エリアCの避難民への住宅資材と必需品の提供。
  8. ガザとヨルダン川西岸エリアCの家族への乳児用ミルクと様々な必需品の提供。
  9. ガザとヨルダン川西岸エリアCに住む女性のニーズへの対応。

緊急の資金調達が必要です:ガザ地区とヨルダン川西岸地区エリアCに住む5,000家族に対する100万ユーロの支援計画の内訳

人道危機が悪化する状況の中で、UAWCは迅速な現状調査を実施し、およそ5,000世帯の弱い立場にある農民のために緊急介入する必要があることを明らかにしました。このうち、推定4,000世帯がガザ地区に、さらに1,000世帯がヨルダン川西岸地区、特にエリアCに居住しています。これらの影響を受けているコミュニティが直面している苦難を軽減するために、私たちは包括的な介入とこの地に暮らす人びとがしっかりと暮らせる支援メカニズムを促進するのに総額100万ユーロ(約1億5,000万円)が不可欠であると予測しています。

このアピールに記された事実と数字は暫定的なものであり、残念ながら増え続けています。UAWCは現在まで活動を続けている地域をはじめとし、多大な損失を被った農民たちを支援します。残念ながら、すでに何人かは悲惨にも爆撃で命を落とし、数百ドナム(1ドナムは約1反)の土地が壊滅的な打撃を受けています。治安情勢を考えると、正確な数字を特定したり、物的損失を評価したりすることは不可能です。

ひとつひとつの思い、ひとつひとつのユーロ、ひとつひとつの分かち合い、ひとつひとつの祈りが大切であり、変化をもたらすことができるのです!

あなたの思いやり、支援、連帯、そして行動に感謝します!

一刻も早い停戦を - 2023年10月ハマス、イスラエル武力衝突

2023年10月20日

イスラエルとパレスチナ・ガザ地区において10月7日に始まったガザ側からのロケット弾と、イスラエル側からのミサイルの応酬は未だ止むことがなく、双方の市民に多数の死傷者が出る事態となっています。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、現地時間の10月18日時点でイスラエルでは死者1,300名、負傷者4,562名(イスラエル政府の発表)、ガザ地区では死者3,478名、負傷者12,500名(ガザ保健省の発表)にのぼっています。ガザ地区では食料、水、電気、燃料、医薬品が不足し、人口の半分近くの100万人が空爆を避けるために避難生活を強いられ、人びとの暮らしは困難を極めています。

ATJは2004年よりパレスチナ農業復興委員会(PARC)、パレスチナ農業開発センター(UAWC)からヨルダン川西岸地区の農民が生産するパレスチナのオリーブオイルを輸入しています。西岸地区ではこれまでも武装したイスラエル人入植者によるオリーブ生産者への暴力行為、オリーブの木の破壊行為が頻発していましたが、ガザでの武力衝突が始まってから暴力行為がエスカレートし、子ども18名を含む64名が命を落としています。10月は年に1回のオリーブの収穫シーズンで、一年間で最も村に活気がある時期です。しかし、今年は入植者やイスラエル軍の暴力を恐れ、農民は村から離れた農地では収穫ができなくなっています。

PARC、UAWCは農民支援をしているNGOですが、ガザ地区においても活動をしています。PARC及びUAWCではそれぞれ10月10日と11日に声明を出し、一刻も早い停戦とガザ地区の人々が食料やライフラインが確保できるよう国際社会が行動を起こすよう強く求めています。ATJもこの声明に全面的に賛同します。ガザ地区、イスラエル市民の犠牲者がこれ以上増えないよう、ハマス、イスラエル政府双方が武力行為を直ちに停止することを求めます。

私たちATJは国際社会の一員としてガザ地区の人々、西岸地区の人々が安心して暮らせるようにできることを最大限行う所存です。

オリーブ収穫の様子(2022年)、後方の丘の上にあるのは入植地。

パレスチナ農業開発センター(UAWC)

ガザで意図的に飢餓を発生させているイスラエルに関する緊急声明

2023年10月11日

イスラエルは5日間にわたり、ガザ地区を壊滅させるためガザ地区への攻撃を続けており、前例がない緊急的な状況に陥っています。イスラエルの行為は、想像を絶する人道的大惨事を引き起こしています。パレスチナ保健省の発表によれば、現時点(10月11日)で1,055人の犠牲者と5,184人の負傷者が出ています。

イスラエルはガザ地区に対して全面戦争を宣言し、200万人を超えるガザのパレスチナ人住民が電気、水、食料、燃料、医薬品、あらゆる人道支援にアクセスすることを認めない無慈悲な封鎖を課しています。イスラエルのヨアヴ・ギャラント国防相は10月9日、この戦略について明言しました。 「我々はガザ地区を完全に包囲する。電気も、食料も、水も、燃料もない。我々は野蛮な人間と戦っており、それに応じた行為をとっている」。

イスラエルが戦争の武器として計画的に飢餓を利用していることに対して、国際社会が断固とした緊急性と決意を持ち、直ちに対応することを求めます。

イスラエルは病院、学校、モスク、市場、そして居住地区全体を無差別に破壊しています。さらにイスラエルは、ガザ地区への人道援助物資を空爆するとエジプトを脅し、援助物資輸送団をエジプトに撤退させました。ガザ地区からの唯一の国際的な出口でありエジプトへ続くラファ検問所は、イスラエルによってこの24時間の間に3回も爆撃されました。

この計算された攻撃は、ガザ地区住民が絶え間ない爆撃から逃れ、必要不可欠な人道援助にアクセスするための唯一の手段を断ち切っています。イスラエルがガザ地区への電力供給を遮断したため、唯一の電力源はガザ発電所となっていましたが、この発電所の燃料は底をつきました。イスラエルは、燃料を受け取った場合、発電所を攻撃すると脅しています。

イスラエルの攻撃は、ガザ地区住民の暮らしを支えるあらゆるインフラを計画的に破壊しています。食料生産に不可欠な農業や漁業のインフラは、容赦なく攻撃されています。漁師たちは、汚水が流出する海に近づくことができません。港は損壊し、漁に使う道具は跡形もなくなっています。分離壁に近い農地はイスラエル軍の空爆の標的となりやすく、農地が破壊されていなくても日々の農作業ができません。

農務省によれば、空爆は農地や養鶏場に甚大な被害を与えていますが、現場の状況を正確に把握することは不可能であるとのことです。食料の在庫は壊滅的に減少しており、ガザ地区のどこの商店でも深刻な品不足が報告されています。こうした攻撃を受けて、陸も海も想像を絶する環境破壊に直面し、人々の暮らしの復興はさらに阻まれることになります。

イスラエルの戦略は、爆撃を生き延びた人々にも生計手段がない将来を強いることを意図しています。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、この攻撃によって国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の食料援助は中断し、少なくとも112,759世帯が影響を受けています。養鶏・家畜部門は、深刻な飼料不足のために崩壊寸前であり、1,000人以上の牧夫の生活を危険にさらし、10,000人以上の生産者に影響を及ぼしています。これは、ガザの全人口に対する動物性タンパク質の供給と、肉や新鮮なタンパク源の供給を脅かします。鶏肉の市場への輸送は事実上停止しており、牛乳は冷蔵することも工場に販売することもできず、その結果、1日35,000リットルの牛乳が腐敗すると予想されています。海の封鎖により、4,000以上の水産業者が危機にさらされています。ガザの農業、養鶏、牛、魚、その他の生産物は、停電により冷蔵、灌漑、孵化や機械が機能せず、腐敗が進んでいます。

イスラエルがこうした戦術を用いるのは決して新しいことではありません。今回の衝突が始まる前、ガザ地区の人口の約65%が食料難に陥っていました。ガザ地区の農地の46%以上がアクセス不能になり、ガザ沖での漁業はイスラエルによって3〜6海里沖までに制限されているため、漁業は深刻な苦境にあえいでいました。

食料不安は人間が作り出した危機であり、イスラエルはガザ住民の大規模な飢餓を作り出しています。

国際社会が介入し、この危機をただちに終わらせることは、道徳的、法的な義務です。基本的な必需品である食料がガザの人々に届くように、市民のインフラを標的にした計画的な攻撃を即刻中止しなければいけません。

私たちは国際社会に対し、イスラエルによるガザ地区住民の虐殺を止め、封鎖を解除し、援助物資が入るための人道的回廊を確立するために、直ちに行動を起こすよう求めます。

ヨルダン川西岸地区 パレスチナ人に銃を向ける入植者(ヘブロン、トワニ村、UAWC提供)
ヨルダン川西岸地区 入植者が農道を封鎖(ナブルス、ブリン村 UAWC提供)

パレスチナ農業復興委員会(PARC)

イスラエル占領軍によるガザ地区の人々の虐殺を止めるための呼びかけ

2023年10月10日

誰もが知っているように、ガザ地区の人々はこの16年間、世界最大の「天井のない監獄」に住んでいます。そして、イスラエル・シオニスト軍による定期的な攻撃に苦しんできました。さらに、ガザ地区では水、食料、電気、医療品(このほかにも多数)へのアクセスを奪われています。この封鎖が流血の惨事を引き起こし、紛争をエスカレートさせ、すべての人々を地域戦争へと巻き込んでいるのです。

イスラエル軍による恐ろしい暴力と高層建築、住宅、病院、礼拝所、市場や広場に集まる市民を計画的に標的にした攻撃により、今日まで143人の子ども、105人以上の女性、高齢者を含む600人以上のパレスチナ人が命を失い、負傷者は4000人以上にのぼっています。

ガザ地区で行われた大虐殺は身の毛もよだつほど恐ろしいものです。家族全員が存在を消され、父親や母親を失った子どもが残され、病院の遺体安置所は子どもや女性の遺体で埋め尽くされ、土地や家屋はまっさらになってしまいました。

今こそ、世界中のすべての人々が不正義、侵略、占領に立ち向かう時です。従って、私たちは、世界の束縛を受けていない人々と政府に対して、この侵略に対する効果的で影響力のある姿勢を求めます。

さらに、私たちは、緊急の基本的サービスの提供を加速させ、避難所を求めて爆撃を受けた家から避難したり、国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)の学校に身を寄せている13万7千人以上のパレスチナ市民に届くようにすることを求めます。

結論として、私たちはパレスチナ市民の命と財産を保護し、占領政府に国際法、特に戦時下における市民の保護を定めた1949年のジュネーブ4条約と国際的に正当性のある議を尊重するよう求めます。

緊急報告「ガザへの攻撃のさなかにヨルダン川西岸地区エリアCで起こっていること」

2023年10月17日

オリーブオイルの出荷団体の一つ、パレスチナ農業開発センター(UAWC)から、現在のヨルダン川西岸地区の状況の報告が届きました。

現在、パレスチナ人、イスラエル人双方に多くの犠牲者が出ているガザ地区の深刻な状況はメディアでも連日、報道されています。しかし、パレスチナのオリーブオイルの生産者が暮らす西岸地区も入植者による暴力により、非常に緊迫した状況になっています。報告をご覧ください。

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2023年10月15日

ヨルダン川西岸地区のエリアCに住むパレスチナ人は、イスラエルがガザ地区への攻撃を続けるなか、イスラエル軍ならびに入植者による攻撃の激化により、深刻な危機に直面しています。これらの地域は、10月7日以降の戦争以前から常に標的とされ続けてきましたが、ヨルダン川西岸地区における暴力的な攻撃の震源地となっており、それにより、パレスチナ人コミュニティの存亡の危機が増長しています。

この悲惨な状況は、個別の事件が連続して発生しているのではなく、元々その土地に暮らしてきたパレスチナの人びとを一掃することを目的とした、入植者による暴力の組織的かつ残忍なキャンペーンの象徴的な出来事と言えます。

この1週間は、国連人道問題調整事務所(OCHA)が死傷者の記録を開始した2005年以来、ヨルダン川西岸地区で最も多くの死者が出た週となりました。この7日間で、イスラエル兵または入植者は、ヨルダン川西岸地区で少なくとも56人のパレスチナ人を殺害し、少なくとも1200人を負傷させました。殺された56人のうち、少なくとも13人は子どもでした。軍は400人以上を逮捕しています。イスラエルのイタマール・ベン・グヴィール国家安全保障相は、イスラエルの入植者民兵をさらに武装させるため、ヘルメットや防護服とともに10,000丁のアサルトライフル(突撃銃)を購入し、配布すると発表しました。

10月7日以来、少なくとも67件の入植者による攻撃(一部はイスラエル軍も関与)があり、死傷者や物的損害が発生しています。入植者による攻撃は1日平均8件に上り、今年に入ってから報告されていた1日平均3件に比べて大幅に増加しています。イスラエル兵と入植者は、自制することなく実弾を発射し、女性や子どもを含む民間人に危害を加え、殺害しています。憂慮すべきことに、こうした攻撃行為は、イスラエル軍や政府によって容認されているだけでなく、直接支援され、実行されることさえあります。イスラエル人入植者の攻撃は、特にエリアCにおいて、さらにエスカレートすることは確実です。

イスラエルは、明らかな恐怖心を生み出しています。軍の保護の下、入植者たちは大胆さを増し、特定のベドウィン(遊牧民族)コミュニティで見られるように、誘拐を試みることさえあります。入植者によるこうした暴力は、特に、すでに強制移住の危険にさらされているベドウィンやその他のパレスチナ人コミュニティに狙いを定めています。

10月12日、入植者たちは、ラマッラ近郊、南ヘブロン丘陵、ヨルダン渓谷の少なくとも3つのそのようなコミュニティを標的にし、家を離れて仕方なく退去するか、さもなくば耐え難い暴力と危険に直面しつづけるか、という事態をもたらしました。ワディ・シク、アラブ・アル=ムレイハット、アル・ハムラ、サムラのコミュニティでは、イスラエル人入植者や軍によって強制的に立ち退きさせられたという証言があります。こうした大胆な行為は、自分たちは免責されるという信念を持っていることを映し出しています。

ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人に対するイスラエルの攻撃激化は、これまでも大きな障害に直面しながらも、自分たちの土地に生活の糧を頼ってきた農民や農村コミュニティの人びとの生活に悲惨な打撃を与えています。

イスラエル軍はさらに、オリーブやグアバの重要な収穫時期の間、農民が自らの畑にアクセスすることを認めていません。パレスチナ人農民が畑にアクセスすることを組織的に防ぐイスラエル軍の動きは、農民から当面の収入源を奪うだけでなく、パレスチナ人コミュニティの長期的な食料安全保障をも脅かしています。これはパレスチナの食料主権、つまり尊厳をもって食料を入手し、生産し、消費する基本的な権利に対する露骨な攻撃です。これらの行為は、既存の抑圧的な制限を悪化させ、基本的人権の重大な侵害を映し出しています。

イスラエルはまた、重要なインフラを組織的に破壊しています。日常生活や生計手段確保に不可欠な道路や水路が標的とされ、使用不能にされています。このことは、エリアCのパレスチナ人コミュニティをさらに孤立させ、苦しみを悪化させ、食料や水といった基本的必需品を手にすることをさらに困難にしています。

国際社会は、こうしたあからさまな人権侵害が続いていることを目前にして、傍観すべきではありません。事態の緊急性は、エリアCのパレスチナ人コミュニティの安全と安心を確保し、加害者の非難されるべき行為に対する責任を追及するために、即時かつ断固とした行動を求めています。

事態の深刻さを明確に示すために、記録されている入植者による暴力事件を紹介します:

  • 武装した入植者が軍の保護のもと、ヘブロン東部のトワニ村、ナブルスのブリン、ヤツマ、カバラン村の住民に発砲。
  • ヘブロン東部地域での攻撃。マサファ・ヤタでの器物損壊、ジンバでの住宅や太陽電池の破壊など。
  • ワジ・アスシクでの30家族の完全な強制移住と、分離壁抵抗運動スタッフへの武力攻撃。
  • アル・ハムラ検問所に近いアイン・シブリ付近のベドウィンの集会に対する入植者の攻撃。
  • ドマからブリンに至るナブルス南部の村々の農民は、オリーブ畑にアクセスするのに極度の危険に直面している。
  • ヤタにて、入植者が至近距離からパレスチナ人を銃撃。
  • イスラエル軍が、サルフィートのデア・イスティヤの農道と水道管を破壊。
  • ブリン村のギバット・ロネン前哨地とブラチャ入植地付近のすべての農道が閉鎖された。
  • トゥバスでは、入植者が2人の若者を誘拐しようとした。
  • サルフィートのカラワット・バニ・ハッサン村でパレスチナ人がオリーブ畑へのアクセスを拒否されている。
  • ラマッラの西では、イスラエル軍がアル・ジャニヤ村とラス・カルター村のすべての入り口を封鎖している。
  • 分離壁の裏側に暮らすカルキリヤの農民は、移動制限のためにグアバを収穫できないと報告している。
  • 先週、ファガラとマサファ・ヤタで入植者の攻撃により強制移住させられたパレスチナ人の住居2部屋、井戸、フェンス、複数の樹木がブルドーザーによって取り壊された。

私たちは国際社会に対し、ヨルダン川西岸地区におけるイスラエルによるパレスチナ人への暴力・暴行を停止し、パレスチナ人を保護するため、またパレスチナ人の土地へのアクセスを保護するため、即時かつ断固とした行動をとるよう要請します。 以上

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< パレスチナのオリーブオイルの生産者が暮らすエリアC >

これはヨルダン川西岸地区におけるパレスチナの領土を示した地図です。ヨルダン川西岸地区はエリアA、B、Cと呼ばれる3つの地区に分類されます。濃い緑色の部分がエリアAまたはBです。

エリアA(西岸地区の18%)にはラマッラ、ナブルスなどの大きい都市が含まれ、行政も治安もパレスチナ暫定自治政府が担います。エリアB(西岸地区の22%)では、行政はパレスチナ、治安はイスラエルが権限を持っています。一方、主に農村部に広がるエリアCは西岸地区の60%近くの面積を占めますが、行政も治安も完全にイスラエル占領当局のコントロール下にあります。このように西岸地区ではパレスチナ自治政府が管轄するエリアAとBは一部であり、イスラエル統治下にあるエリアCが半分以上を占めているのです。

オリーブ生産者のほとんどがこのエリアCに住んでいます。この地域には120を超える入植地と約100の前哨地(将来の入植地建設の拠点とするために、入植者が当局の許可を得ずに、勝手に土地を占領し、バラックを建て、農地を開拓している場所)が西岸地区全体に広がっています。パレスチナ人とイスラエル人が隣り合わせで暮らすこのエリアCで入植者による暴力事件が頻発しているのです。

・赤い点が入植地、黒字の点が前哨地

※図はいずれもパレスチナ農業復興委員会(PARC)提供

パレスチナでは10月から年に1回のオリーブの収穫が始まりますが、今年は畑に行くことも危険でままならない状況のようです。私たちはオリーブ生産者が暮らすエリアC地区の状況を今後も注視してまいります。

広報室 小林和夫

UAWCガザ地区職員、イスラエル軍空爆の犠牲に

2023年10月16日

10月13日、イスラエル軍による空爆により、パレスチナのオリーブオイルの出荷団体の一つで農民支援をしているNGO、パレスチナ農業開発センター(UAWC)のガザ地区事務所のスタッフ、イスラム・アリさん(31歳)が亡くなられました。

彼女のご冥福を心からお祈りするとともに、多くの子どもを含む市民の命を奪う空爆・攻撃が一刻も早く止まるように、国際社会の一員として日本の私たちができることを模索し続けていきたいと思います。以下は、UAWCからの悲報です。

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ガザ地区へのイスラエル軍空爆により、私たちの親愛なる同僚であるイスラム・アリ(31歳)が死亡したことを伝えなければならず、私たちは精神的に打ちのめされています。

10月13日(金)、イスラエルの脅迫と避難命令により強制的に立ち退きを命じられ、ガザ地区南部に避難しようとしていたアルシャティ難民キャンプの一団をイスラエル軍が空爆しました。

イスラムは、イスラエルがこの奇襲攻撃で殺害した70人の一人であり、10月7日以来ガザで殺害された2215人のパレスチナ人の一人です。イスラムは強く自由な精神の持ち主であり、祖国に忠実で人生への深い愛を持っていました。彼女を知る誰もが、私たちの大義、土地や人びとに対する彼女のとてつもない献身を見ています。イスラムはコミュニティから愛され、彼女もコミュニティを愛していました。UAWCは、彼女が2017年に私たちと一緒に働き始めて以来、彼女と知り合えたことをとても幸運に思っています。

しかし、世界の沈黙はイスラエルが彼女の人生を奪うことを許しました。

重い気持ちと深い悲しみをもって、私たちは愛するイスラムを追悼します。彼女とすべての殉教者の冥福を祈ります。

1枚の写真から「日本では『カキ』パレスチナでは『カカ』」

2022年9月14日

日本の国果、柿。

「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」が詠まれた10月26日は柿の日。学名は、ズバリDiospyros kaki。

こんなにも日本と縁のある果物も、そうそうありません。が、パレスチナの古都ナブルスを徘徊していたら、新大久保駅前でトラック積みの桃を売るかの如く、山盛りになっている柿を路上販売するオジサンを発見。その後入ったレストランでも、デザートに柿。呼び方を聞いてみたら、「カカ」と言っていた。違う、それは「カキ」だ、と突っ込みを入れつつも、パレスチナの人は柿の美味しさを分かっていると知って、何だか一気に親近感が湧いたのでした。

若井俊宏(わかいとしひろ/ATJ)

”和”と楽しむパレスチナのオリーブオイル

2021年12月24日

 オリーブの栽培は、地中海沿岸から始まったとされ、現在では、米国のアリゾナやテキサス、南米、アフリカ 、オーストラリアなど、世界各地で栽培されています。日本の小豆島でも、明治時代からオリーブが栽培されてきました。

地域の個性溢れるオリーブ果実から搾ったオイル

 オリーブの実をギュッと搾り、果肉から抽出した油分がオリーブオイル。菜種油やごま油など、種から油分を抽出した油は多くありますが、果肉から取れる油はあまりなく、搾りたてのオリーブオイルはジュースのようだと表現する人もいます。

 土壌や気候、風士、地理、品種などの違いにより、様々な風味、個性のオリーブオイルが存在します。ワインの世界でよく聞かれる「テロワール」という言葉。日本語で表現するのは難しい言葉ですが、その土地の気候、風土に育まれた食材、土地の味、といったような意味でしょうか。今では、ワインだけでなく、農産物、チーズ、肉などにも使われるようです。

 オリーブ原産地の一つとされるパレスチナのオリーブオイルも、その土地で育ったオリーブならではの個性があります。ATJがお届けしているオリーブオイルは、パレスチナのヨルダン川西岸地区で育てられたナバリ種を中心としたオリーブの木から収穫された実から作られます。パレスチナでは、数千年前からオリーブ栽培が行われてきたとされ、今でも人びとの暮らし に深く根付いており、毎年10月~11月はオリーブを収穫してオイルに加工する季節です。

バレスチナと日本の食文化のコラポレーション

 出来るだけ多くの人にパレスチナのオリーブオイルを味わってもらいたいときまぐれやの吉田友則シェフにご協力いただきいろいろな食べ方を提案していただきました。

けんちん汁にひとたらし

 それを試してみてわかったことは、パレスチナのオリーブオイルが和の食材と非常に相性が良いということです。先ほどのテロワールの話からすると、遠く離れたパレスチナの土地の食べ物と 日本の食材?とピンとこないかもしれませんが、この意外な組み合わせ、はまります!
 例えば、私たちの食生活で身近な調味料である醤油や味噌とも相性がいいです。けんちん汁やみそ汁にひとたらし 。

かつおのオリーブオイル漬け

 また新鮮な魚(鯛でも鰹でも鰺でも何でも)を刺身にして、パレスチナのオリーブオイルに一晩漬けこみ、翌日、醤油をほんの少したらしてお召し上がりいただくと、この組み合わせの相性の良さを感じていただけると思います。

お豆腐にも

 豆腐やしらすなど、淡泊な味のものにはコクと風味を添えてくれます。キノコやゴボウ、レンコン、茄子、ピーマンなど、えぐみやあくの強い食材にもよく合い素材の味がまろやかに引き出されて、よりおいしくいただけるように思います。また、お茶漬けにもよく合います。刺身の切り身数枚をネギなどの薬味やとろろ昆布と共にご飯の上にのせ、熱々のダシをかけたお茶漬けに 。その上に、塩、オリーブオイル、お好みで醤油をかけるとおいしさがアップします。

お茶漬け

 そして、普段の朝食、目玉焼きもオリーブの風味を添えてちょっと一味アップ。パレスチナのオリーブオイルをフライパンに熱して、ふわっとオリー ブオイルの香りが出たところで、卵をフライパンに落とし、卵の白身の端がカリカリと焼けてきたら、お皿に移し、醤油をほんのひとたらししてお召し 上がりください。パレスチナのオリーブオイルの味と香りと和の調味料 が、いい感じに混ざり、味わい深い目玉焼きになること請け合いです。是非一度、お試しください。

 パレスチナのエキストラバージンオリーブオイルは、パレスチナのオリーブの果実を搾っただけで、一切の化学的処理加工をせずに作られたオイルです。オレイン酸やリノール酸などの天然成分が豊富に含まれたままで、健康効果の高い食品と言われています。いろいろな食材と組み合わせて、味を楽しみつつ、遠くパレスチナの大地からやってきたオリーブオイルなんだ、と少しだけかの地に思いをはせていただくことができたら幸いです。

中村桃子(なかむら・ももこ/ATJ)

パレスチナ・ガザ地区救援活動報告

2021年11月4日

2021年5月、ATJとAPLAはパレスチナのオリーブオイルの出荷団体であるパレスチナ農業復興センター(PARC)とパレスチナ農業開発センター(UAWC)の要請を受けて、イスラエル軍によるガザ地区爆撃で被災した家族への緊急救援を国内で呼び掛けました。これに対し、多くの団体・個人の皆さまから多額の募金を頂き、10月中旬までに計8,105,933円をPARCとUAWCに按分して送金することが出来ました。
この資金をもとにPARCとUAWCはそれぞれ食料支援を行いました。UAWCからの報告に続いて、PARCの活動を報告します。

パレスチナ農業復興委員会(PARC)の活動報告

ガザ地区では長年にわたるイスラエルによる封鎖や新型コロナウィルスの広がりにより貧困が拡大、失業率が上昇し、多くの家族が稼ぎ手を失っていました。そうした状況に追い打ちをかけるように、2021年5月、イスラエルによるガザ地区への攻撃があったのです。

爆撃により全壊家屋は1,174戸、半壊家屋は7,073戸に達しました。農業分野では、カンユニス市とベイトラヒラ市で数百エーカー(1エーカーは約0.4ヘクタール)の農地が爆撃され、イスラエルとの国境地帯に広がる畑や多くの養鶏場、畜産場も被害を受けました。そのため、ガザ地区の人々の生活環境は劇的に悪化しており、多くの家族が食事の確保に苦労しました。
こうした状況の中でPARCは、停戦後の5月末から自己資金で食料や毛布などの配布を行いました。

そして「ガザが血を流している(Gaza is bleeding)」救援キャンペーンを立ちあげ、海外の関係団体に募金を呼び掛けました。

食料品セット

日本やアメリカ、ベルギー、スウェーデン、オーストラリアのフェアトレード団体や人権団体からの募金によって、8月に500家族に食料品セットを配布することが出来ました。配布先の家族は、空爆によって家屋が全壊または半壊、被害を受けた農民、女性が世帯主の家族など最も困窮している家族です。

食料品セットの中身は、クスクス(小麦でできた粒状の主食になるもの)4キロ、デーツ(ナツメヤシの実)5キロ、ザータル(タイムなどのハーブミックス)1キロ、オリーブオイル1キロ、粉ミルク400g。いずれもパレスチナでは欠かせない食べ物です。

コンテナへの積み込み作業

食料品はヨルダン川西岸地区で用意しました。農民が無償で提供したものも含まれます。PARCはカレム・シャローム検問所を通ってガザ地区に配布物資を運ぶため、イスラエル当局と粘り強く交渉しました。その結果、ようやく8月中旬にガザ地区の500世帯に食料物資を配布することが出来ました。

今後、PARCは爆撃によって甚大な被害を受けた農業関連分野での復興事業に中長期的に取り組んでいきます。

パレスチナ・ガザ地区救援活動報告(パレスチナ農業開発センターより)

2021年10月12日

2021年5月にガザ地区で発生したイスラエル軍による爆撃により、もともと貧しい生活をしていた人々の状況がさらに悪化し、貧困、飢餓、ホームレスなどの問題が深刻化しました。イスラエル軍の空爆が停止した直後からオリーブオイルの出荷団体、パレスチナ農業開発センター(UAWC)は住民のニーズを調査しました。数千の家族は、家が全壊したり、大きな被害を受けたため、国連パレスチナ難民救済事業機関が運営を応援している学校に避難しなければなりませんでした。また、たくさんの事業所が破壊され、多くの家族が収入源を断たれました。

配布を待つ食料品セット

日本の皆さんからのご寄付により、最も支援が必要な338家族、約1,670人にお米、食用油、牛乳、豆類、鶏肉、マフトーゥル(別名クスクス、小麦粉から作る粒状の粉食)などが入った338個の食料セットを提供することができました。寄付金はこうした食料品の購入と配布に役立てられました。UAWCは、日本のパートナーや消費者の皆様から、被災地支援の一環として、資金面や精神面でのご支援をいただいたことに感謝しています。

 

<食料支援は協同組合も救った>

この活動の中で特記すべきは、食料支援活動によって危機的な状況にあった女性による協同組合が何とか存続できたことです。サハル・シャースさんがリーダーを務める女性協同組合は、ガザ地区南部にあるラファでマフトゥールや焼き菓子、スパイスなどの製品を製造・販売してきました。長年に及ぶガザ地区の封鎖、新型コロナウィルスの流行、さらにイスラエルの空爆によって大きな影響を受け、製品を販売することができなくなっていました。その結果、協同組合の事業を休止せざるを得ない瀬戸際まで追い込まれました。

マフトゥールの製造所

2021年7月からサハルさんは協同組合の6人の女性メンバーと一緒にマフトゥールを作っています。UAWCが食料セットに入れるマフトゥールの製造を業務委託したからです。彼女たちが嬉しかったのは数ある協同組合の中から、食料支援活動の協力団体として自分たちが選ばれたことでした。ほとんど機能していなかった地域の市場で製品を販売できなかったので、この申し出は大きな助けとなりました。食料支援を受けた家族にとっても、市場で探す苦労をせずにマフトゥールが手にできたのは大変ありがたいことでした。

マフトゥール

サハルさんは家族7人を支えていますが、一緒に働く6人の既婚女性も平均で7人くらいの家族がいます。そのうち2人は家族の主な稼ぎ手で、2人の障害者を含む全員の世話をしなければいけません。現在、マフトゥールと焼き菓子の製造が唯一の収入源です。

「決して大きな収入をあげている訳ではありませんが、この事業があれば、毎日の暮らしで最小限必要なものを購入出来ます。何より協同組合を何とか維持することができたのが嬉しいです」。

サナ・カラハ(UAWC代表アシスタント)

繰り返されるガザ地区への攻撃、 その背景にあるパレスチナ問題とは fromパレスチナ

2021年8月24日

2021年5月10日、パレスチナ自治区ガザがイスラエル軍による空爆に見舞われた。21日、ガザ地区を実効支配するハマスとイスラエル政府の間で停戦合意が交わされたが、子ども66人を含む242人のガザ住民が犠牲となり、2000人近くが負傷したと国連人道問題調整事務所(OCHA)は発表している。
ガザ地区では2008〜09年、2014年とこれまでもイスラエル軍による大規模な軍事攻撃があり、多数の尊い人命が失われてきた。

東エルサレムの分離壁と入植地

パレスチナ問題の経緯

パレスチナ問題の発端は、19世紀末ロシアやヨーロッパ各地でユダヤ人が迫害されるなか、ユダヤ人国家建設を目ざす「シオニズム」まで遡り、「土地なき民に民なき土地を」というスローガンの下、ユダヤ人のパレスチナ移住が始まった。しかし、そこは元々パレスチナ人が暮らしていた土地だ。
第一次世界大戦後、英国による委任統治が始まると、ユダヤ系移民は一気に増え、パレスチナ人との対立が激化した。英国の三枚舌外交はその後のパレスチナ人とユダヤ系移民の対立に拍車をかけることになる。1947年に、パレスチナ問題は国連の手にゆだねられ、パレスチナの土地にアラブとユダヤの二つの国家を作るという「パレスチナ分割決議」が採択された。当時のパレスチナに新しく移住し、パレスチナの1割にも満たない土地に住んでいたユダヤ人が57%の土地を得るという内容で、アラブ人はこの分割案を拒否した。しかし、イスラエルは1948年に独立を宣言し、第1次中東戦争(1948~1949年)で圧倒的な軍事力に物を言わせてパレスチナの占領を拡大した。

パレスチナ領土の変遷

イスラエルによる占領政策

イスラエル建国の前後にかけて、約75万人のパレスチナ難民が生まれた。パレスチナ人の間では「ナクバ(大災厄)」と呼ばれ、土地を追われた多数のパレスチナ人は難民となってイスラエルや周辺諸国に流れ込んだ。その後難民は増え続け、70年以上が経った今日、500万人以上のパレスチナ難民は故郷に戻ることができていない。
イスラエルは1967年、第3次中東戦争により、さらにヨルダン川西岸地区やガザ地区を軍事占領した。国連安保理はイスラエル軍の撤退を求めたが、イスラエルはこれに応じず、1970年代以降、パレスチナの土地への入植を拡大し、パレスチナ人の土地は虫食い状態となり、さらに2002年からは入植地を守るという名目で分離壁の建設を開始、西岸地区とイスラエルの境界であるグリーンライン(1949年の停戦ライン)を超えてパレスチナ側に深く入り込み、人びとが自由に移動できないなど日常生活に大きな影響が出ている。

分離壁

「エルサレム問題」とは

エルサレムには、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3宗教の聖地がある。1947年の国連のパレスチナ分割決議ではエルサレムを国連の永久信託統治区とした。1948年にイスラエル建国が宣言され、第1次中東戦争後の停戦でエルサレムは分断され、西エルサレムをイスラエルが、東エルサレムはヨルダンが統治することになった。ヨルダンは、当時イスラエルによってパレスチナ人村落から追われた多くの難民たちを「東エルサレム住民」として受け入れた。
1967年、第3次中東戦争後にイスラエルは占領を拡大。一方的に停戦ラインを変更し、エルサレム旧市街を含む東エルサレムを占領する。1980年に一方的に併合し、エルサレムを「永遠の首都」として宣言した。ただし、欧州諸国や日本を含む国連加盟国のほとんどがイスラエルによる東エルサレムの併合を承認していない。

分離壁に描かれたアート

イスラエルによる分離壁建設によってパレスチナ自治区から切り離された東エルサレムに住むパレスチナ人は、イスラエル側からも排除され閉塞状態に置かれてきたが、今回さらに、東エルサレムのシェイク・ジャラ地区のパレスチナ人169人(ナクバで家を失い、難民となった家族)をイスラエル人入植者が実力行使で立ち退かせようとする暴挙が発生した。それに対するパレスチナ人の抗議活動はイスラム教の聖地、アルアクサ・モスクにおけるイスラエル治安部隊との衝突に発展し、それが引き金となって、今回のハマスによるロケット弾の発射とイスラエル軍によるガザ地区への空爆に至った。
今回のガザ攻撃について、停戦合意は結ばれたものの、根本的な問題の解決は何一つなされていないのだ。

※第一次世界大戦において、オスマン帝国と戦った英国は、シオニストを支援すれば欧米在住のユダヤ人から協力を得ることができると考え、「パレスチナにユダヤ国家建設を支持する」という書簡を送り(バルフォア宣言)、一方でオスマン帝国からの独立を目指していたアラブ人に対して、「アラブの独立支持を約束する」というバルフォア宣言とは矛盾する書簡を送っている(「フセイン・マクマホン協定」)。さらに同盟国であるフランスとは、戦争終結後はオスマン帝国の領土を分割するという協定(「サイクス・ピコ協定」)を結んだ。

黒岩竜太 (くろいわ ・りゅうた/ATJ)

 

「パレスチナの声を聴く」オンラインセミナー開催!

占領下のパレスチナの状況や現地NGOの活動とその根底にある思いを直接NGOスタッフからじっくり聴かせてもらうセミナーを企画しました。参加費無料です。ぜひご参加ください!セミナーの詳細は、こちらからご覧ください。

セミナー案内:「パレスチナの声を聴く」連続オンラインセミナー

2021年8月11日

2021年5月、イスラエルによる11日間にわたる空爆により、パレスチナ・ガザ地区では256人が命を落とし、約2,000人が負傷しました。

爆撃の被害を受けた人々への物資の緊急配布時の様子

 なぜガザへの攻撃は繰り返されるのでしょうか。また、占領下のパレスチナの状況、現地NGOの活動とその根底にある思いを、直接NGOスタッフからじっくり聴かせてもらうセミナーを企画しました。
 私たち日本の市民に何ができるのかを考える機会としたいと思います。

被害を受けた温室(UAWC提供)

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《第1回》ガザ攻撃による被害と復興支援、そしてオリーブオイルの民衆交易 [終了しました]

日時:2021年9月1日(水)19時〜21時
スピーカー:ミラル・マフルーフ氏(パレスチナ農業復興委員会/アルリーフ社)
※アラビア語・日本語の逐次通訳あり
参加費:無料

オリーブの収穫作業

 5月のガザ攻撃による被害状況やその背景の説明、そしてパレスチナ農業復興委員会(PARC)によるガザ地区での緊急支援および復興支援活動について最新の報告をしていただきます。また、イスラエル占領下にあるヨルダン川西岸地区では多くの農地がユダヤ人入植地や分離壁に囲まれ、農民たちは農地の破壊や没収、入植者の暴力に晒されています。そうした状況下でPARCと農民が進めているオリーブオイル生産とその民衆交易(フェアトレード)の意義についてもお話いただきます。
【共催】株式会社オルター・トレード・ジャパン、特定非営利活動法人APLA

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《第2回》パレスチナにおける食料主権を取り戻すために [終了しました]

日時:2021年9月28日(火)19時〜21時半
スピーカー:フアード・アブー・サイフ(パレスチナ農業開発センター)、ドゥアー・ザーイド(パレスチナ農業開発センター)、大澤みずほ(日本国際ボランティアセンター パレスチナ事業担当)
※アラビア語・日本語の逐次通訳あり
参加費:無料
【共催】株式会社オルター・トレード・ジャパン、特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター、特定非営利活動法人APLA

コロナ禍で苦しむ都市住民3000家族に野菜の苗を配布

[digg]  5月のガザ攻撃により、住宅のみならず農業部門にも甚大な被害が出たことが、パレスチナ農業開発センター(UAWC)が停戦後に実施した調査で明らかになりました。日本ではほとんど知られていないガザ地区の農業の現状と今後の復興計画をお話しいただきます。オリーブオイルの出荷団体でもあるUAWCは、イスラエルの占領下にあるパレスチナの小農の権利、土地、水、種子を守るための地道な活動を続けてきているNGOです。種子バンクや小規模農民への支援などの活動について報告してもらい、その根底にある食料主権の重要性について、学び考えます。

 

<登壇者プロフィール>

Fuad Abusaif/フアード・アブー・サイフ
パレスチナ農業開発センター(UAWC) ゼネラル・ディレクター

Fuad.png数多くの農業プログラムや農民グループを創設、牽引するリーダーであり、人権活動家。「パレスチナ・ローカル・シードバンク」の創設者の一人でもある。持続的でコミュニティに根ざした開発手法を用い、農民の資源に対する主権強化を通じて、パレスチナの農業の発展に貢献してきた。世界的な農民運動「ビア・カンペシーナ」の一員であるUAWCの代表として、同運動のアラブ地域・北アフリカ地域での活動の発展にも大きな役割を果たし、農民の声を国の政策レベルだけでなく、地域や国際的な場にも届けている。「持続可能な開発と農業・植物保護」の修士取得。

Do’a Zayed/ドゥアー・ザーイド
パレスチナ農業開発センター(UAWC) シードバンク・ディレクター

農学者。植物生産・保護部門で農業科学の学士号を取得。ヘブロン大学の「天然資源とその持続可能な管理」に関する修士課程を首席で卒業。「パレスチナ・ローカル・シードバンク」の創設に関わり、以後10年間にわたって運営を担っている。在来種の種子の生産や気候変動の緩和・適応に関し、パレスチナ内でコンサルタントとして活躍中。

 

大澤 みずほ/おおさわ みずほ
日本国際ボランティアセンター(JVC) パレスチナ事業担当

看護師として国内で救急医療に従事。青年海外協力隊(パラグアイ)を経て、 保健医療の分野に限定せず、より包括的な支援に携わりたいと思い、2018年にJVC入職。 2019年には約半年間エルサレムに駐在し、現在は東京担当。

 

 

 

■お申込みについて
  • 各回ともオンライン会議ツールZoomを利用して開催いたします。
  • どちらか1回のみの参加も可能です。
  • 各回とも参加費無料ですが、事前のお申込みが必要です。お申込みは下記専用フォームよりお願いいたします。

お申込みフォーム:https://ws.formzu.net/dist/S60055496/

 

■本セミナーに関するお問合わせ先

株式会社オルター・トレード・ジャパン広報室(担当:小林)
電話: 03-5273-8176/Email: pr@altertrade.co.jp

特定非営利活動法人APLA(担当:野川)
Email:info@apla.jp

レシピ:パレスチナのオリーブオイルを使った和風サラダ

2021年7月14日

オリーブオイルは洋風のお料理だけのもの?いえ、違います!
パレスチナのオリーブオイルって実は和の食材との相性がいいのです。
今回使っているような香りの強い野菜と合わせると相乗効果となって、素材同士の良さがより引き出されます。

<材料>
・ 季節の葉野菜(セリ、みつば、冬だったら春菊): 適量
・ ひじき(乾燥)、豆類(水煮または蒸し豆)、炒りごまなど: 適量
 A 醤油1:オリーブオイル1:お酢0.5:ゲランドの塩・マスコバド糖: 各ひとつまみ
※サラダの量によって、分量は調整してください。

<作り方>
①ひじきは水で戻し、茹でて水気を切っておく。Aを混ぜ合わせておく。
②葉野菜を好みの長さに切って、ひじきや豆類と合わせる。皿に盛り、Aをかける。

パレスチナのオリーブオイルは、和の調味料との相性がよいことも特徴です。
サラダの具材には、雑穀類を入れても合います。この材料以外にも、色々な食材と合わせてパレスチナのオリーブオイルとの組み合わせを楽しんでくださいね。

【ガザ救援カンパ】農業へも大きな被害

2021年6月4日

ミサイル爆撃で穴ができた農地(UAWC提供)

5月のガザ爆撃では都市部だけではなく、イスラエルとの境界近くに広がる農地でも大きな被害がありました。

ガザのパレスチナ情報省によると、畜産施設、井戸、用水路など490の農業施設が損傷を受けました。15,000リットル以上の牛乳が市場に出せずに廃棄され、飼料や水の供給が止まった養鶏場では23万羽以上の鶏が犠牲となりました。

また、イスラエル政府によって海域が完全に封鎖されているため、3,600世帯の漁師が漁に出られない状況です。

パレスチナ農業開発センター(UAWC)が停戦後に行った現地調査によると、少なくとも2,100棟の温室、50台のソーラーパネル、 190の農業用溜池、50隻の漁船が損傷しました。また、50ヘクタールもの農地で作物が被害を受け、ミサイルにより220箇所の穴があいたと報告しています。

被害を受けた温室(UAWC提供)

餓死した若鶏

こうした農業への被害により野菜や果物、肉、卵や牛乳などの生産、供給が影響を受けており、ガザ地区の食料事情のさらなる悪化につながっています。また、被害を受けた農家は収入の道が断たれて生活が困窮しています。

パレスチナ農業復興委員会(PARC)とUAWCは、住居を失った都市住民や避難者、農家への食料の緊急配布を進めるとともに、ガザ地区での農業生産を復旧するための支援計画を検討中です。

畑の被害状況(PARK提供)

ATJ及びAPLAでは、引き続き、ガザ地区救援カンパを呼び掛けております。
ガザ地区への救援活動のご協力をお願いいたします。

【ガザ救援カンパ】食料配布支援が始まりました。

2021年6月3日

毛布などの寝具も配布された

5月21日、イスラエル政府とガザ地区を実効支配するハマスとの間で停戦が合意された後、国連が運営を支援する学校に避難していた人びとの多くが帰宅しましたが、9000人程がまだ親族の家に身を寄せています。約40%の住民が水道水を使えず、電気が供給されるのは1日わずか5時間と厳しい生活が続いています。

オリーブオイルの出荷団体のパレスチナ農業復興委員会(PARC)とパレスチナ農業開発センター(UAWC)は、爆撃の被害を受けた人々への物資の緊急配布の準備を進めてきました。そして、5月末より食料などの配布を開始しました。

物資の配布を待つ人びと

物資の配布場所では多くの人びとが順番で食料を受け取りました。オリーブオイルなど調味料、パン、クスクス(パレスチナの主食の一つ、小麦粉から作る)や米、豆類、野菜や果物、鶏肉や牛乳、缶詰などを詰めた食料セットを配布しました。

また、毛布やマットレス、幼児がいる家族にはおむつや粉ミルクも配られました。

飲料水も配布

食料セットを受けとる男性

 

空爆により広範囲で水道管が損傷したため、ガザ地区では約80万人が清潔な水道水を利用できていません。そのため、飲料水も一緒に配られました。

配布された野菜や果物

2005年から境界が封鎖され、物資や人の移動が厳しく制限されているガザ地区では、もともと60%以上の人びとが慢性的な食料不足に陥っており、国際機関などの食料援助に頼っていました。

 

さらに、10日間に及ぶ交戦では農民が爆撃を恐れて畑に行けなくなったり、漁師も漁に出ることを禁じられたため、新鮮な野菜や果物、卵や肉、魚などが流通せず、ガザ地区の食料事情は極端に悪化しました。

 

PARCとUAWCでは当面の期間、こうした食料支援を続ける予定です。

引き続き、パレスチナ・ガザ地区救援カンパへのご支援・ご協力をお待ちしております。詳しい募金方法については、こちらをご覧ください。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

パレスチナ・ガザ地区救援カンパのお願い

2021年5月26日

東エルサレムにあるシェイク・ジャラ地区におけるパレスチナ人居住者の強制立ち退き命令、そして、イスラム教徒にとって最も神聖な月(ラマダン)に聖地アルアクサー・モスクで起きた衝突をきっかけに、イスラエル政府とガザ地区を実行支配するハマスの間で大規模な戦闘が発生しました。

UNRWAが運営支援する学校に避難している家族の様子(PARC提供)

とりわけイスラエル軍によるガザ爆撃は5月10日から停戦となる21日まで続き、国連報告によると、ガザ地区では子ども66人を含む242人が犠牲となり、負傷者は1,948人にのぼりました。この間の住宅地への爆撃で15,700もの住居が破壊されました。そのため、停戦時には国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営支援する学校に約71,000人、親戚の家に約35,000人が避難していました。

生活に必要なものがほとんどない状況が続いています(PARC提供)

こうした事態を受けて、パレスチナのオリーブオイルの2つの出荷団体、パレスチナ農業復興委員会(PARC)及びパレスチナ農業開発センター(UAWC)では、爆撃によって家が壊された家族に対する緊急救援を開始しました。

弊社と姉妹団体のAPLAでは、パレスチナの人々に心からの連帯を込めて、両団体の活動を支援するため募金を呼びかけます。

何卒できる限りのご協力をお願い申し上げます。

UNRWAが運営支援する学校に避難している家族の様子(PARC提供)

 

救援活動について

  • 家から着の身着のままで避難したので、多くの避難民が食料や日常生活に必要なものを何も持ち出せませんでした。PARCはオリーブオイルや調味料、主食の一つであるクスクス、粉ミルクなどを詰めた食料セットを配布します。UAWCは食料セットに加えて毛布やおむつの配布も予定しています。
  • 食料は主にヨルダン川西岸地区の小規模農家や農業協同組合から購入し、ガザ地区に運搬します。
  • PARC、UAWCは独自に救援活動を行いますが、支援区域や支援者が重ならないように適時、情報交換しながら活動を進めます。物資配布はガザ地区職員の他、ボランティア、関係する青年、女性団体などの協力を得て行います。
  • 家を破壊された人びとの住居再建、大きな被害を受けた農地や農業施設の復興も大きな課題です。現地の状況に合わせて必要な支援を行っていきます。

 

募金方法

募金の受付の窓口は姉妹団体であるNPO法人APLAとなります。

■郵便振替
00190-3-447725 特定非営利活動法人APLA
※通信欄に必ず「ガザ救援」と明記ください。

■銀行振込み/クレジットカード決済
寄付フォーム からご寄付いただけます。「支援の種類」で「今回のみ」、「寄付の使途」で「81.ガザ救援」をお選びいただき、必要事項をご記入ください。

  • 領収書の発行は省略させて頂きます。領収書が必要な場合はAPLA事務局までご連絡下さい。
  • 募金総額の一部(上限10%)を事務経費のために使用させていただきますこと予めご了承ください。

パレスチナが燃えている~ガザ情勢~

2021年5月20日

メディアでも報道されておりますように、ガザ地区では5月10日よりイスラエル軍による爆撃が続き、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、5月19日現在、子ども63名を含む219名が犠牲となりました。

パレスチナのオリーブオイルの出荷団体、パレスチナ農業復興委員会(PARC)及びパレスチナ農業開発センター(UAWC)に関係者の安否を問い合わせたところ、PARCのフェアトレード事業会社であるアルリーフの職員、Nayef Al Neseroneさんの娘のパートナーであるMohammed Abu Ayeshさん(28歳)が爆撃で亡くなられたそうです。ATJが扱うオリーブオイルの産地であるヨルダン川西岸地区でも緊張が高まっており、イスラエル入植者によるオリーブ生産者に対する嫌がらせが発生している模様です。

2,200人以上の犠牲者を出した2014年の戦争以降、最大規模となった今回の爆撃がなぜ起きたのか、その背景についてはPARCからのアピール「パレスチナが燃えている~占領に終止符を、パレスチナに解放を」をご覧ください。

イスラエル政府、ハマス双方ともに攻撃を止める姿勢が見られない中、日々犠牲者が増えていく事態を受けて、5月17日、国内でもパレスチナに関わる4つのNGOが外務省に対して一刻も早い停戦に向けた外交的努力を求める声明を提出しました。ATJも呼び掛けを受けて、賛同団体として名前を連ねました(5月20日時点で15の団体が賛同しています)。

JVC – 【日本のNGO団体の声明】イスラエルおよびガザに一刻も早い停戦を – 声明/提言書など

壁に囲まれ逃げることもできない中で爆撃にさらされ、恐怖に脅えるガザの人たちが安心できる日が1日も早くくるように願っています。

 

 

レシピ:ほくほく野菜とエコシュリンプのオリーブオイルグリル

2020年10月13日

秋に美味しい、ほくほくのかぼちゃとさつまいもなどの秋の野菜と、エコシュリンプをたっぷりのオリーブオイルでマリネしてグリルしました。

エコシュリンプとソーセージの旨み、野菜の甘みが楽しめて、しかも調理もとっても簡単。
大人もこどもも楽しめる一品です。

<材料>
・エコシュリンプむきみ:200g
・ カボチャ:1/4カット
・ サツマイモ:小1本
・ ニンジン:1/3本
・ブロッコリ:適量
・ ぶなしめじ:1/2株
・ソーセージ:5本(今回はレモンとバジルの入ったソーセージ使用)
・ パレスチナのオリーブオイル:適量
・ ゲランドの塩 細粒塩:少々
・ 胡椒:少々

<作り方>
① エコシュリンプを解凍する。
② カボチャ、サツマイモ、ニンジンは一口大にカットする。ブロッコリーも食べやすい大きさにカット。ぶなしめじもバラしておく。
③ カボチャ、サツマイモ、ニンジン、ぶなしめじを電子レンジで5-10分蒸す。(野菜の大きさに合わせて時間を調整してください。)
④ 解凍したエコシュリンプに、パレスチナオリーブオイルとゲランドの塩をまぶしてマリネする。
⑤ ③で蒸した野菜をボールにいれて、たっぷりめのオリーブオリル、塩をかけて軽く混ぜる。(あまりぐちゃぐちゃ混ぜるとかぼちゃがくずれるので注意してください。)
⑥ 耐熱皿に③と④、そして一口大にカットしたソーセージをバランスよく盛り付ける。
⑦ 200℃に温めておいたオーブンで、25分ぐらいグリルする。
⑧ エコシュリンプに火が通ったら出来上がり。

★お好みで、チーズやパン粉を上から散らすと香ばしさもアップします。

レシピ:キホンのATJ万能ドレッシング

2020年9月2日

ほんのひとつまみのマスコバド糖を最後に加えるのがキモ!

お好みの調味料を追加して色々なアレンジもできます。

シャキっとみずみずしい野菜のサラダに大活躍の基本のドレッシングレシピをご紹介します。
「マスコバド糖はサトウキビの持つ糖分以外の栄養が多く残っているので、甘味の1種類としてとらえるのではなく天然の旨味調味料として使用しています」と、砂糖だけではないマスコバド糖の使い方を提案してくださる吉田シェフ監修のレシピです。
そのままはもちろんのこと、お好みの調味料を追加して色々なアレンジを楽しめます。パレスチナのオリーブオイルは、和風にも洋風にも馴染むのでドレッシングのベースとして幅広くご活用いただけます。

<材料>
・パレスチナのオリーブオイル:175㏄
・白ワインビネガーなどの西洋酢またはお好みの酢:35㏄
・ゲランドの塩 細粒塩:小さじ1/2
・マスコバド糖:小さじ1/4

<作り方>
①マスコバド糖以外の材料をよく混ぜる。
②最後にマスコバド糖を加えよく混ぜる。

★瓶などに入れて冷蔵庫で保管すれば半月以上もちます。

レシピ監修: きまぐれや 吉田友則シェフ

二重の災厄に苦しむパレスチナ~イスラエル占領下のコロナ事情~(PtoP NEWS vol.39 2020.08)

2020年8月31日

配布用の野菜の苗を育てる

 

世界的に新型コロナウィルス感染症が拡大し、人びとの暮らしに大きな影響を与えています。ATJのオリーブオイルの産地パレスチナでも、3月5日、キリスト生誕の地として知られるベツレヘム市で初の新型コロナウィルス感染者が確認されました。

パレスチナ自治政府は同日、1カ月間の緊急事態宣言を発令し、翌日に全国の小中高や大学の休校、ベツレヘム市はロックダウン(都市封鎖)を行いました。さらに3月中旬にはすべての自治体が封鎖となり、人びとや物資の移動が厳しく制限され、7月現在も継続中です。

 

農民が都市住民に野菜を提供

UAWCが配布した野菜を受け取った子どもたち

こうした状況に対してオリーブオイルの出荷団体であるパレスチナ農業開発センター(UAWC)とパレスチナ農業復興委員会(PARC)は、オリーブの産地であるヨルダン川西岸地区の住民のニーズに応える形で支援を行ってきました。

最初に実施した活動は感染予防対策です。消毒薬や石けんなどを詰めた衛生キットを配布したり、医療NGOと協同して感染予防セミナーを行いました。

PARCが配布したフードバスケット

ロックダウンが継続すると、ベツレヘム市をはじめとする都市住民は食料、特に野菜不足に悩まされました。

UAWCはヨルダン川渓谷や北部の農民の協力を得て、3月下旬に4台のトラックで計30トンもの野菜をベツレヘム市に運び、配布しました。

PARCもエルサレム市などの住民に23トンの野菜を届け、さらに海外のフェアトレード団体や人道団体に協力を呼びかけて1500家族に小麦粉や調味料を詰めたフードバスケットを提供しました。

 

野菜を植えることのもう一つの意味

空き地が家庭菜園に変身

野菜などの農産物がなかなか市場に出回らない状況を見て、次にUAWCが取り組んだのが「土地に戻って耕そう」キャンペーンです。

UAWCは2003年、ヘブロンに在来種の種子銀行を設立し、パレスチナの気候風土で育まれた在来種の保存と普及に取り組んできました。短期間で育つキュウリ、ナス、トマト、オクラ、ズッキーニ、カボチャ、インゲン、スイカなどの夏野菜の苗を育て、約3000家族に配布しました。住民たちは庭や空き地、屋上やベランダなど空間があればどこでも工夫して菜園を作りました。配った苗は最終的に40万本に達し、住民が新鮮で栄養ある野菜を手にできるようになりました。

パレスチナは、イスラエルにとって農産物の最大の輸出先の一つとなっており、市場にはイスラエル産の野菜や畜産物が溢れかえっています。皮肉なことにパレスチナは食料をイスラエルに依存しているのです。

 

土地に戻って野菜を植えよう

UAWCのフアッド・アブサイフ理事長はこう話します。

「土地や水といった生産手段や市場をイスラエルに奪われ、自給出来ていないという脆弱な食料事情がコロナ禍をさらに大きな災厄にしてしまいました。国内で地産地消の仕組みを整えることが、人びとの暮らしを支え、食料を保障することにつながります。野菜の苗を植えることは、パレスチナ人にとって新型コロナウィルスから身を守るだけではなく、イスラエル占領に対抗する手段でもあるのです。」

 

 

コロナが浮き彫りにしたパレスチナの非日常性

ガザ地区で行われた併合反対の抗議集会

新型コロナウィルスのために世界中で多くの人びとが移動を制限された不自由な暮らしを強いられています。

しかし、占領下のパレスチナ人にとって、こうした制限はいまに始まったことではありません。主要道路の至るところに検問所やバリケードが設置され、ユダヤ人入植地との間には数百キロにわたる分離壁が建設され、日常生活に支障をもたらしています。

また、入植者によるパレスチナの農民に対する暴力、オリーブの木を引き抜いたり焼いたりする破壊行為が、卑劣なことに、新型コロナウィルスで移動制限が厳しくなった3月以降倍増しています。

さらに、パレスチナ国家の存在そのものを脅かす大問題が起きています。イスラエルのネタニヤフ首相が、ヨルダン川西岸地区の面積の30%に相当するユダヤ人入植地とヨルダン渓谷のイスラエル領併合を進めようとしているのです(※)。

すでに60万人以上のユダヤ人が住む入植地建設は国際法違反として、国際社会から長い間批判を浴びてきました。また、肥沃で水資源が豊かなヨルダン渓谷はパレスチナの「食糧庫」と呼ばれ、約6万6000人のパレスチナ人が暮らしています。併合されると、この地でパレスチナ人が住み続けることは不可能とフアッドさんは断言します。

他の場所では異常とされることが日常化しているパレスチナの現実。私たちは改めてパレスチナと人びとと共に何ができるか考えたいと思います。

ペットボトルで育てる野菜

小林和夫(こばやし・かずお/ATJ)

 

※APLAとATJは、パレスチナに関係するNGO、市民団体などと連名で、日本政府外務省に対してイスラエルによる併合を阻止するための適切な行動を取るよう要請する声明を提出しました。

日本国際ボランティアセンター(JVC) AIDA声明 「イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合を阻止する行動を取るよう国際社会に求める」

 

●新型コロナウィルス感染予防のため、フィリピンやインドネシア、東ティモールなどの他の民衆交易品の産地でも、人びとはさまざまな制約の中で生産活動に従事しています。産地の様子は民衆交易産地における新型コロナウィルスの状況で随時報告していますので、ご覧ください。

 

 

民衆交易産地における新型コロナウィルスの状況

2020年7月31日

新型コロナウィルスの世界的な感染拡大が続いています。民衆交易の現場では生産者たちがどのような生活を送っているのでしょうか。また、生産活動に影響や支障は出ていないのでしょうか。状況を産地ごとに随時報告します。

◆フィリピン(バランゴンバナナ・マスコバド糖産地)

◆インドネシア(エコシュリンプ産地)  ◆東ティモール(コーヒー産地)

◆インドネシア・パプア(カカオ産地)  ◆パレスチナ(オリーブオイル産地)

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◆フィリピン(バランゴンバナナ・マスコバド糖産地)
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〇2020年8月14日

ダバオ(ミンダナオ島)で最終検品中のジェイソンさん

7月末から連日のように4,000人前後の新規感染者の発表があります。8月10日は6,958人に達し、その約60%はマニラ首都圏での感染者です。8月11日時点で、累計の感染者は139,538人、死者数は2,312人にのぼっています。陽性率は10%を超えてきています。感染者の48.5%が20代および30代で、死者数の61.7%が60歳以上で占められています。現在の感染者の内、約91%が軽症、約7%が無症状という状況です。

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〇2020年7月6日 

バランゴンの産地はすべて、現段階で政府による規制レベルの中で最も緩い地域に属しています。規制の緩和を受けて、現在出荷が止まっているバランゴンの産地はありません。オルタートレード・フィリピン社スタッフも通常の体制に戻っていますが、マスク着用やソーシャルディスタンス、出社時の検温など実施しています。州境を超える長距離バスはまだ運行されていなかったり、フィリピン国内での島間の移動は依然として禁止されているため、職員が産地を訪ねることはまだ困難です。

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ジプニー(乗り合いバス)も運行が再開に(写真はコロナウイルス流行前)

〇2020年5月11日

全国の感染者の7割近くを占めるマニラ首都圏では依然としてロックダウンが継続されています。一方、バランゴンバナナの産地は感染者数が少ないため、隔離措置や市町村をまたぐ移動も緩和されました。西ネグロス州では農業、漁業、病院、小売業などは全面的に、生活必需品以外の製造業、床屋、修理業などは50%の事業再開が可能となり、日常の暮らしが徐々に戻りつつあります。ネグロスではバランゴン生産者やスタッフに感染者は出ていないとのことです。

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バナナを運ぶトラックに貼られた通行許可書(ミンダナオ島)

〇2020年4月17日
マスコバド糖およびバランゴンバナナの産地であるネグロス島においては、東京に比べるとかなり感染者数が少ない段階で、西州が3月30日、東州が4月3日からロックダウン(都市封鎖)になっています。4月15日時点では、都市封鎖の期間は西州は4月30日まで、東州は5月2日までとされています。(共に当初の予定よりも延長されています。)

 

ロックダウン後は、人の移動が厳しく制限され1世帯に1枚の外出許可書が配布されました。家から外出できるのは1人のみで、外出時にはマスク着用が義務付けられています。自治体をまたいでの移動も厳しく制限されているほか、飛行機や船を使ってのネグロス島と他島間の人の移動は停止されています。
貨物については規制の対象外で、農家は外出制限の対象外であるため、ネグロス島でのバランゴンバナナの出荷はなんとか継続できる見込みです。

しかし、州内の自治体によって規制内容が異なるケースがあったり、検問強化で激しい交通渋滞が発生したりと、日ごとに状況が変化している中で、バランゴンバナナは生産者にとって貴重な収入源であるため、集荷を担うスタッフは出荷が継続できるように尽力してくれています。

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◆インドネシア(エコシュリンプ産地)
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〇2020年4-6月の状況

インドネシアにおける新型コロナウイルスの拡大は、首都ジャカルタから始まり、そこから各地に広がったと考えられています。2020年3月31日付大統領令において公衆保健緊急事態が宣言され、新型コロナウイルスへの迅速対応における大規模社会的制限に関する政令が発布されました。具体的には、学校の休校、職場の業務休止、宗教活動の制限、社会文化活動の制限、交通手段の制限など、細かく定められています。

6月17日現在、新型コロナウイルスによる全国の感染者が3万8277名、死者2134名と広がっており、政府は国内の移動制限(陸路、空路、海路の旅客の往来を原則禁止)や、夜間の営業禁止など、厳しい措置を取っています。

ATINA工場敷地内に入る前には丁寧な手洗いが必要

しかしながら、飲食産業に関しては、パンデミック(世界的な感染爆発)下においても「健康を守るためのプロトコール(規定)」を適用したうえでの業務継続は可能である、という産業大臣の決定があり、オルター・トレード・インドネシア社(ATINA)でも、加工工場のすべての部門で規定をしっかり守りながら操業を継続しています。

 

■生産者とのコミュニケーションを大切に
新型コロナウィルスの拡大は、水産業を含めて各界に多大な影響を及ぼしていることは紛れもない事実です。しかし、エコシュリンプの養殖池における実務的な問題はまったくなく、エコシュリンプの生産者は通常通り、養殖池での生産・収獲を続けてきています。一方で、感染拡大を防ぐための地域における防疫対策は強化され、各地の生産者たちは養殖池エリアへの外部者のアクセスを制限し、基本的に地元住民(生産者)しか入域できないようにしています。けれども、ATINAの監査員は例外として、養殖池を訪問することを認められています。必ずATINAの制服を着用し、身分証明書を所持して地域の検問を通過することがルーティーンになっています。当初、外部からの来訪者を嫌がる生産者もいましたが、ATINAは地域の生産者のリーダーと協議し、エコシュリンプが事前監査がルールであることをあらためて理解してもらったうえで、 監査員による養殖池の訪問と監査を実施しています。

生産者にとっての障壁は、優良な稚エビの入手がしづらくなっていることです。品質の良い親エビはアチェから届いていますが、新型コロナウィルスのパンデミックによって、多くの飛行機の運航中止や減便が続いており、いつ通常に戻るかはわからない状況です。また、シドアルジョにある多くの工場は、市場からの需要が止まったことで、操業を減らしたり、止めたりせざるを得なくなりました。当初は、こうした一般的な状況を見て、一部のエコシュリンプ生産者は、自分たちが収獲したエビも買ってもらえないのではないか、というようなパニックに陥った人もいました。しかし、ATINAはすぐに各地の生産者とコミュニケーションをとりました。東ジャワのシドアルジョとグレシックでは、監査スタッフが生産者を訪問し、また、南スラウェシのピンランでは、オンラインビデオ会議ツールを活用して、通常通りのスケジュールでエコシュリンプの買い付けを実施することを説明したので、生産者の不安はすぐになくなりました。

■南スラウェシでの買い付けを休止
しかしながら、5月中旬、スラウェシ島のマカッサルとジャワ島のスラバヤを結ぶ飛行機の運行が突然止まるという事態になり、ATINA工場まで航空便でエビを輸送しているため、ピンランでのエビの買い付けを休止せざるを得なくなってしまいました。当然ながら、ピンランのエビ生産者たちは大きな不安を感じていますが、どうしようもない状況であるということには理解を示してくれています。ただ、残念なことに、ATINAの買い付けがストップしてしまって以降、養殖池からエビが盗まれるという事件が発生しているとの報告が届いています。

このように、エコシュリンプの生産者も直接的、間接的な影響を受けていますが、生産者と消費者の関係性をより強くすることで、共に新型コロナウィルスの世界的パンデミックの時代を乗り越えたいと強く思います。(報告:ATINAヘンドラ・グナワン)(APLA機関紙『ハリーナ』2020年8月号特別報告から)

※スマトラ北端に位置し、西はインド洋、東はマラッカ海峡、北はアンダマン海に面している。2004年12月に発生したスマトラ島沖・津波では約13万人もの死者数が出るほど、甚大な被害を受けた。

 

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◆東ティモール(コーヒー産地)
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〇2020年4-5月の状況について

東ティモールでは2020年3月27日に1カ月の期限付きで非常事態宣言が発令され、28日から、移動、5人以上が集まること、不要不急の屋外での活動、宗教行事や慶事行事が制限されました。学校もすべて休校となっています。その後国会で2度の延長が通り、6月中旬現在も非常事態宣言下にあります。

独立から今年で18年目を迎える小さな島国、東ティモール。医療インフラに限りがあること、隣国インドネシアで感染が拡大していることなどから、感染拡大を防ぐための措置が続いています。

APLAの現地スタッフや首都ディリ在住の松村優衣子さんから話を聞く限り、非常事態宣言が発令された直後は、市民の多くは新型コロナウイルスについてわからないことが多いことからある種のパニックや恐怖に襲われ、家にこもって過ごす人がほとんどだったそうで、ディリ市内は閑散としていたそうです。しかしながら、1週間ほど経つと、状況に慣れてきた人が多く、だいぶ落ち着いてきたと言います。ディリなどでも日用品を販売するお店は、1家庭に1人のみの来店、開店時間を短くする、手洗いとマスク着用を徹底するといった対策を取りながら当初から営業を続けていましたが、東京で緊急事態宣言の発令について報道された時のような「買い占め」は発生しなかったといいます。そもそも金銭的な余裕がない市民がほとんどで、「買い占め」をできる人が少ないという事情もありそうです。なお、政府は、非常事態宣言下の経済状況を鑑み、1世帯につき100米ドルの補助金の支給を発表しましたが、実際に支給がされ始めたのは、6月に入ってから。対応の遅さは日本も同じですね……。

 

■コーヒー産地では

エルメラ県のコーヒー産地からは、町で週に1〜2度開かれる定期市が開催されないことで、自分たちが作った野菜を売る場所がなくなる、生活に必要な日用品やお米などを購入することができない、といったことから、大きな不安を感じているという声が届いてきていました。これに対して、現地のオルター・トレード・ティモール社(ATT)では、5月前半に667世帯に米、食用油、石けんの支援を実施したそうです。コーヒーの買い付けに使うトラックにディリで購入したそれらの物資を積み込み、エルメラ県内各村のコーヒー生産者グループに運ぶ様子は、こちらから動画でご覧いただけます。なお、エルメラ県ではコーヒーの収穫シーズンが始まりました。生産者が収穫・加工したコーヒーの買い付け、輸出という一連のプロセスに大きな影響が出ないことを心から祈るばかりです。

APLAは、この間、コーヒー生産者地域での作物の多様化やエルメラ県内の公立学校での学校菜園・環境教育活動を続けてきましたが、非常事態宣言下においてはディリ在住のスタッフが移動することも難しく、活動は休止せざるを得ない状況が続いてきました。現在状況を見ながら、スタッフたちは活動を再開させる準備を進めています。(APLA機関紙『ハリーナ』2020年8月号特別報告から)

 

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◆インドネシア・パプア(カカオ産地)

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〇2020年8月1日

パプア州全体では感染者数1211名、その多くは、現地パートナーのカカオキタ社が活動するジャヤプラ県に集中(854名)しています(6月12日現在)。ジャヤプラ県では、医療施設が十分でない事もあり、3月から空港と港を封鎖するなど、早めにCOVID-19対策を進めていますが、市場などの人が集まる場所でクラスターが発生しています。

カカオキタ社の事務所がある町の大通りでも、COVID−19対策の啓蒙のためのバナーが至る所に掲げられ、町中の食堂、商店、スーパーの入り口には、臨時の手洗い場所と石鹸が設置されています。スーパーをはじめ商業施設の入り口では警備員による検温と手の消毒を求められ、予防対策はかなり徹底しています。

この間、政府により午後2時以降の外出・移動規制が出されていたため、カカオキタのスタッフたちも生産地の村でのカカオ豆の買い付けは、早朝に出て昼過ぎには戻るという形を取り、午後の活動を休止していました。村での生活には何も変わりがないことが確認できていましたが、6月に入り規制が緩和されたことから、町の人びとの暮らしも徐々に通常に戻りつつあります。

また、カカオキタでは生産者の生産物(カカオ、マンゴー、野菜など)を使ったアイスクリームやお菓子の製造・販売を行うカフェのオープンに向けて準備を進めてきていましたが、COVID-19対策のために、飲食はまだ始めることができていません。それでも、アイスクリームやお菓子の持ち帰り販売を積極的に行なっています。カカオキタの若手スタッフと地域の起業家やNGOとがつながり、COVID-19予防を兼ねたアイスクリームの販促キャンペーンの活動を展開してきました。

このキャンペーンは、カカオキタのチョコレート・アイスクリームを購入してもらうと、市場で働く女性たちに石けんやマスクを寄付するというもので、カフェのスタッフやSNSでつながった仲間たちがキャンペーンを立案し、製造や配送まで分担して作業しました。

キャンペーンの効果もあり、1ヶ月で過去最高の約2000個のアイスクリームを売り上げ、5月16日、キャンペーンスタッフ全員で州都ジャヤプラにあるPasar Mama Mama(お母さんたちの市場)を訪れて、そこで働く女性たちに石けんを配布しました。また別の日に、教会で布マスクを配布しました。

カカオキタカフェのマーケティングを担当するアプリは、「コロナウイルスの脅威が広がるなか、人びとへの啓発と感染の予防に貢献できるうえに、カカオキタの売り上げにつながるWin-Winのモデルになれば嬉しい」と話しています。(APLA機関紙『ハリーナ』2020年8月号特別報告から)

 

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パレスチナ(オリーブオイル産地)

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〇2020年4-5月に実施された支援活動(PARC)
パレスチナ農業復興委員会(PARC)はエルサレムやラマラといった主要都市だけでなく、パレスチナの食糧庫として知られるヨルダン川渓谷の農村部でも食料の配布を行いました。イスラエルで感染者数が激増し、イスラエル政府が同国内で働いていたパレスチナ人労働者に帰宅命令を出したため、収入の道が途絶えた家族、及び移動制限のため農産物を販売できなくなった農民を対象に行いました。

フードバスケットを届けている様子

フードバスケット

 

 

 

 

 

 

また、海外のフェアトレード団体や人道団体に協力を呼び掛けて1500家族にフードバスケットを提供しました。フードバスケットの中身は小麦粉や調味料、オリーブオイル、消毒用アルコールなどです。日本でも グリーンコープ生活協同組合連合会とオイシックス・ラ・大地株式会社が資金協力をしました。

 

〇2020年4-5月に実施された支援活動(UAWC)

食料配布の後、パレスチナ農業開発センター(UAWC)は「土地に戻って耕そう」キャンペーンに取り組みました。

家庭菜園でズッキーニを収穫

市場が閉鎖されたり、移動制限のため農産物が手に入りづらい状況となったことをうけ、自家消費用の野菜栽培が出来るように、短期間で育つキュウリ、ナス、トマト、オクラ、ズッキーニ、カボチャ、インゲン、スイカなどの夏野菜の苗を約3,000家族に配布しました。UAWCは2003年に在来種の種子銀行を設立し、パレスチナの気候風土で育まれた在来種の保存と普及に取り組んできましたが、その活動が役に立ちました。
住民たちは庭や空き地、屋上やベランダなど空間があればどこでも工夫して菜園を作りました。配った苗は最終的に40万本に達し、住民が新鮮で栄養ある野菜を手にすることが出来ました。

ペットボトルがプランターに

種子銀行で配布用の野菜苗を育てる

 

 

 

 

 

 

 

 

〇2020年3月31日 
今月5日、初の新型コロナウィルス感染者が確認されました。場所はキリスト生誕の地として知られ、世界的な観光地でもあるベツレヘム市。翌日にベツレヘム市はロックダウン(封鎖)され、それから2週間以上にわたって封鎖が続いたため、食料、特に野菜が不足する事態になりました。

ベツレヘムに野菜を運ぶトラック

住民からの支援要請を受けたオリーブオイルの出荷団体パレスチナ農業開発センター(UAWC)は、ヨルダン川渓谷の農民に協力を依頼。200人以上の農民と8つの生産者組合が応えて、23日、UAWCが手配した4台のトラックに25トンもの野菜を積んでベツレヘムの市民に届けました。野菜はヨルダン川渓谷と西岸地区北部の農民が無償提供しました。

野菜のトラック積み込み作業の様子(動画)

ウェブサイトの情報によると、パレスチナでは3月末までに100人以上が感染し、ヨルダン川西岸地区のすべての学校、大学、モスクや教会は3月5日から1か月間閉鎖されているそうです。パレスチナでも一日も早く新型コロナが収束するようにエールを送りたいと思います。