バナナニュース261号:バランゴンバナナ産地紹介 ~北ルソン~

2016年12月2日

ルソン島北部にあるヌエバ・ビスカヤ州とイフガオ州は、バランゴンバナナの産地の1つです。この地域の人々はバランゴンバナナを「グヨッド」と呼び、昔から裏庭で栽培し、自家消費や地元の市場に販売していました。1996年からは、オルタートレード社(ATC)にバランゴンバナナを販売しています。

ソウミル村:バランゴンバナナ生産者

多くのバランゴンバナナ生産者はイフガオ族、イゴロット族といった先住民族で、他にイロカノ、ビサヤからの移民がいます。2015年は、バランゴンバナナの出荷数量全体の4.7%を占めている産地です。北ルソンのバランゴンバナナ産地はATCが管理をしており、バナナ栽培のサポート、持続可能な農業に向けたサポートなどを行っています。

バランゴンバナナ産地の中には、山奥に位置している産地もあり、険しい道を歩き圃場へ行く必要があります。

バランゴンバナナの生産者の多くは零細農家であり、バランゴンバナナから得た現金収入は、日用品(食品・衣服・石鹸など)の購入費用や子どもの学校までの交通費などに活用されています。ATCが2014年に行った調査では、他の産地に比べ総収入におけるバランゴンバナナの収入の割合は小さく、バランゴンバナナからの現金収入は全体の約9%です。

北ルソンは台風が上陸しやすい地域であり、2016年10月にも2つの台風が上陸し、特に台風22号(フィリピン名:ラウィン)の被害が大きく、2016年12月現在、バランゴンバナナの出荷を行うことができていません。バランゴンバナナ栽培を行っていく上で、様々な課題がありますが、台風被害は最も大きな課題の一つです。

アルフォンソリスタ:生産者ジョニー氏

一方でバランゴンバナナには大きな意義があると話してくれたのは、イフガオ州アルフォンソリスタ町のバランゴンバナナ生産者の1人であるジョニー氏。同地域は、「Corn Country」と呼ばれており、遺伝子組み換えトウモロコシのプランテーションが広がる地域ですが、「バランゴンバナナは、遺伝子組み換えトウモロコシに替わる作物になる可能性があると感じている」と話してくれました。

「バランゴンバナナは定期的な現金収入源だけではありません。例えば、化学合成農薬を使用せずに栽培しているので、作り手も食べ手も安心できるバナナです。また、バランゴンバナナを通じて、様々な人が繋がり、良好な関係を築き、生活の質の向上のため協力し合っています。」(北ルソン・バランゴンバナナ生産者ジョニー氏)

事業部商品一課 黒岩竜太

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バナナニュース260号:干ばつ被害からバランゴン復活!豊作です!!

2016年11月16日

大規模なエルニーニョ現象に伴う深刻な干ばつ被害から、バランゴンバナナの収量がようやく復活しました!産地の一つのミンダナオ島ツピ町に先月訪問してきました。ツピでは出荷量が昨年比の20%まで落ち込み(8割の減少)、バナナだけでなくココナツなど他のすべての農産物が被害を受けました。食事の内容を質素にする、よその畑で労働をするなどして、苦しい台所事情をなんとかしのいできたという生産者にも会いました。収量の回復のために、鶏糞などの施肥にも励んだとのことです。産地には活気が戻ってきています。
冬場はバナナの需要が落ちる時期ですが、生産者の苦労と喜びのつまったバランゴンバナナを是非みなさんご注文ください!!

ツピは今年の干ばつ被害を最も受けた産地で、出荷量は大きく減少しました。それが今ようやく回復してきています。
6月訪問時の様子はこちら

【バナナニュース256号】ミンダナオ島ツピの干ばつ被害状況

 

 

 

お米の代わりにバナナを食べました
ノノイ・スンカンさん(53歳)は、親から引き継いだ0.25ヘクタールの畑に、200本ほどのバランゴンとココナツ、カカオなどを混植しています。バランゴンはよく手入れされていて、立派に育っていました。ただ、5月までの干ばつの際は、収量が激減し、生活が大変だったとのことです。
「干ばつの際は収入が大きく減りました。他の人の畑で働いたり、大工の仕事をするなどして何とかしのぎました。日々の食事では、お米の量を減らしました。通常は三食ともお米を食べますが、当時は朝食をサババナナ(比較的干ばつに強い調理用バナナ)にかえました。ただ7歳になる一人息子には、三食ともお米を食べさせました。」
「夢は、子供を大学まで通わせることです。いい職に就いて欲しい。自分のように苦労してほしくないです。」
「冬に向けて日本のバナナの消費量が落ちると聞きましたが、畑ではようやく干ばつ被害から回復して収量が伸びてきています。美味しく安心・安全なバナナを届けられるようにしっかりと世話をしていますので、皆さん是非食べてください。」

見込みのない親株を切り倒した状態。アルバート・バラソンさんの畑(2016年6月)

見込みのない親株を切り倒した状態。アルバート・バラソさんの畑(2016年6月)

10月には、その脇芽は大きく成長していました。アルバート・バラソさんの畑(2016年10月)
10月には、その脇芽は大きく成長していました。アルバート・バラソさんの畑(2016年10月)

生活を節制した話は別の生産者からも聞きました。おかずを鶏肉から安価な魚の干物やギナモス(フィリピン風塩辛)にかえたり、炊飯器ではなく薪でご飯を炊くなどして節電したりなど。収入が少ないときは、それが普通だよと話してくれました。

 

安心・安全なバナナを育てたい
バナナは順調に回復していますが、多くの生産者の主要な収入源であるココナツの回復は1月以降のとのことです。現在収穫を迎えているココナツは干ばつ中に生育した実であるため、1本の木につく実の数が少なく、また1個あたりの重さも軽いとのことで、3割ほど収入が減少しているそうです。
それでも、6月に訪問したときに比べて、生産者やスタッフからは活気を感じることができました。

 

 

パーフェクト・クルスさん(2009年から出荷)は、昨年10月に作付けした450株のうち300株は一度も収穫を迎えないまま干ばつでダメになってしまいました。今回訪問した際には、6月に欠株になっていた場所に新たなバランゴンの苗が植え直されていました。また、生き残ったものの、干ばつの影響で通常より3-4か月生育が遅れている150株の収穫がこの12月から始まることを楽しみにしていました。
「バランゴンの出荷に携わる以前は、ココナツの木の下でパイナップルやパパイヤを農薬を使って育てていました。だけど、農薬は畑で働く人にも良くないし、土もダメにしてしまうことが気になっていました。また世界の多くの人もオーガニックな食べ物を求めていると思います。だから今はバランゴンを栽培しています。日本の皆さん、今後も安心・安全なバナナをがんばって栽培していきますので、これからもバランゴンバナナをよろしくお願いします!」

パッキングセンターにも活気が戻ってきています!

パッキングセンターにも活気が戻ってきています!

事業部商品一課 松本敦

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バナナニュース259号:バランゴンバナナ産地紹介~レイクセブ~

2016年10月25日

生産者が暮らしている山間の地域

ミンダナオ島南部の南コタバト州にあるレイクセブは、2006年からバランゴンバナナを出荷している産地です。標高は500m以上、高いところでは1,000m以上あり、住民の約65%はオボ族、ティボリ族といった先住民族、残りの35%が他島からの移民です。バランゴンバナナ生産者の多くも先住民族です。

レイクセブに住んでいる先住民族は元々狩猟採集生活を送っていました。ラタン(籐)採集、焼畑農法、炭作り、狩猟などで生活してきましたが、環境の変化のなかでそのような生活を送ることが厳しくなっていました。

バランゴンバナナの畑

先住民族にとって、バランゴンバナナの出荷は、新たな側面を持っています。安定的な販売先があるバランゴンバナナ栽培は、採集のために山奥まで出かける必要がなく、自分たちの家の近くで栽培ができる現金収入源であり、安定的な生活に寄与しています。

レイクセブの出荷責任団体であるUAVFI(高地アラー渓谷農事法人)は、バランゴンバナナ交易を通じて次のようなことを目指しています。

① レイクセブの自然環境を守る
② 先住民族の生活の向上
③ 多国籍企業のプランテーションのレイクセブへの進出拡大を防ぐ

一方で、レイクセブは山間部に位置しているため傾斜もきつく、雨季になるとバナナの集荷に困難を生じます。また、これまで栽培経験のない先住民族の生産者にとって、栽培技術を習得することにおいては課題もあります。元々狩猟採集生活を送ってきた先住民族にとって、作物をしっかりと手入れし、栽培することは大きなチャレンジであり、UAVFIスタッフも現場で生産者に指導・サポートしながら、バランゴンバナナ栽培に取り組んでいます。

ロバート・スランさん
「私はレイクセブでバランゴンバナナ民衆交易が始まった2006年からオルタートレード社にバランゴンバナナを販売しています。バランゴンバナナから得た現金収入で日用品を買うことができ、大きな助けになっています。また、子どもが学校に通うための交通費、お小遣いなどにも充てています。」

ボイエット・マドロンさん
「私はバランゴンバナナ生産者であり、また生産者のサポートを行っている現場スタッフでもあります。バランゴンバナナから得た現金収入で、私たち生産者は日用品の購入、学校に通うための子供のお小遣いを工面することができています。これからも品質のいいバランゴンバナナを作るよう努力しますので、バランゴンバナナを継続的に購入してください。」

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バナナニュース258号:バランゴンバナナ産地紹介 ~西ネグロス州~

2016年9月28日

西ネグロス州の多くの産地では傾斜地にバランゴンバナナを植えています。

西ネグロス州の多くの産地では傾斜地にバランゴンバナナを植えています。

ネグロス島の西半分を占める西ネグロス州の人々は、イロンゴ語を話します。バランゴンバナナを輸出しているオルタートレード社(ATC)の本社は、西ネグロス州の州都バコロドにあります。西ネグロス州の主要な産業は砂糖産業(サトウキビ栽培、製糖、精製)であり、大規模なサトウキビプランテーションが多く見受けられます。2015年は、バランゴンバナナの出荷数量全体の約7.9%を占めている産地です。
バランゴンバナナの生産者の多くは零細農家であり、バランゴンバナナから得た現金収入は、日用品(食品・衣服・石鹸など)の購入費用や子供の学校までの交通費などに活用されています。ATCが2014年に行った調査では、他の産地に比べ総収入におけるバランゴンバナナの収入の割合は小さく、バランゴンバナナからの現金収入が全体の約8%です。
西ネグロス州のバランゴンバナナ産地はオルタートレード社(ATC)が管理をしており、生産者の暮らしの向上、持続可能な地域作りを目指し、生産者の組織化及び組織強化、バナナ栽培のサポート、持続可能な農業に向けたサポートなどを行っています。

パンダノン村の西安者の皆さん

パンダノン村の西安者の皆さん

西ネグロス州の産地の1つであるパンダノン村では、2006年に生産者協会(PIBFA)を設立し、バランゴンバナナ栽培に取り組んでいます。現在22名の生産者がおり、その内16名の生産者がバランゴンバナナだけでなくサトウキビも栽培し、マスコバド糖製糖工場(ATMC)に販売しています。2015年には、サトウキビの有機及びフェアトレード認証を取得しています。
バランゴンバナナ生産者は、①自分たちの家族、地域の人々の生活の向上、②有機農業の技術の向上を目指しています。また、しっかりとした組織を持つことで、政府や他の組織とも関係を持つことができ、様々なサービス、助成を受けることができています。

 

 

パンダノン村の生産者からのメッセージ:

エレゼル・マガパンさん

エレゼル・マガパンさん

エレゼル・マガパンさん
「バランゴンバナナからは定期的に現金収入を得ることができ、年に1回のサトウキビ収穫までの貴重な現金収入源です。また、他の作物の買取り価格は供給が多いと安くなりますが、バランゴンバナナは価格が一定なので、期待通りの現金収入を得ることができます。日用品購入の現金収入を得るために、今後もバランゴンバナナを植え続けます。」

ロヘリオ・トラべリアさん

ロヘリオ・トラべリアさん

ロヘリオ・トラベリアさん
「バランゴンバナナから得た現金収入は、日用品の購入に充てています。バランゴンバナナ栽培の難しい点は、しっかりと手入れをしても、台風や干ばつといった自然災害で、期待していた収量を得ることができない時があることです。また、バンチートップ病が広がると大変です。現在はバランゴンバナナの出荷数量が少ないですが、日本の消費者が産地を訪問して下さることを嬉しく思っています。」

ドローレス・セラルボさん

ドローレス・セラルボさん

ドローレス・セラルボさん
「バランゴンバナナを通じて、日本の消費者と良い関係を築けています。日本の消費者が産地を訪問して下さることが、私たちの誇りです。」

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【バナナニュース257号】バランゴンバナナ産地紹介 ~東ネグロス州~

2016年8月18日

ネグロス島の東半分を占める東ネグロス州は、セブアノ語圏であり、1989年にバランゴンバナナのテスト輸出を行った産地です。山々が海沿いまで迫る土地柄であり、バランゴンバナナの多くは山間部の傾斜地などに植えられています。バランゴンバナナの主要産地の1つであり、2015年は出荷数量全体の約28%を占めています。

ロウアカンダボン村を訪問した生協組合員と生産者

ロウアカンダボン村を訪問した生協組合員と生産者

生産者の多くは零細農家であり、バランゴンバナナから得た現金収入は、日用品(食品・衣服・石鹸など)の購入費用や子供の学校までの交通費などに活用されています。バランゴンバナナ以外に、ココナッツ、トウモロコシ、多品種のバナナを植えている生産者が多くいます。ATCが2014年に行った調査では、他の産地に比べ生産者の総収入におけるバランゴンバナナの収入の割合が多く、バランゴンバナナからの現金収入が全体の約28%を占めています。
東ネグロス州のバランゴンバナナ産地はオルタートレード社(ATC)が管理をしており、生産者の暮らしの向上、持続可能な地域作りを目指し、生産者の組織化及び組織強化、バナナ栽培のサポート、持続可能な農業に向けたサポートなどを行っています。

東ネグロス州では、奥深い山の中にバランゴンバナナを植えている生産者もいます。

東ネグロス州では、奥深い山の中にバランゴンバナナを植えている生産者もいます。

東ネグロス州の産地の1つであるロウアカンダボン村では、生産者がカンダボン・バントリナオ・サルバション生産者協会(CBSFA)を設立し、バランゴンバナナ栽培に取り組んでいます。CBSFAは①組織の発展、②子供たちを大学まで通わせる、③食べ物に不自由することなく健康に過ごし、農業を継続していくことを目指し、活動をしています。
他の産地では、ATCスタッフが袋掛け等の栽培管理状況の確認を行っていますが、CBSFAでは、自分たちで確認をする仕組みを導入しています。そのことで、ATCから5ペソ(約12円)/箱の活動資金が支給され、この資金で、買付所を兼ねている集会所も建設しました。ゆくゆくは自分たちでバランゴンバナナの買付けまで行うのを目標にしています。
また、ATCのサポートを受けながら、養豚にも取り組んでおり、豚の糞尿の堆肥・肥料としての有効活用にも取り組んでいます。

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<ロウアカンダボン村の生産者からのメッセージ>

ニコラス・パロマーさん

ニコラス・パロマーさん

ニコラス・パロマーさん:
「バランゴンバナナからの現金収入は日用品を買うのに役立っています。台風などといった天候被害で、バナナが収穫できなくなってしまうことが課題です。バランゴンバナナ栽培を通して、家族の生活を良くしていきたいと考えています。
バランゴンバナナ民衆交易は、仲買人が存在せず、生産者と食べ手が直接関係を持つことができます。」

 

ホメル・カシドさん

ホメル・カシドさん

ホメル・カシドさん:
「除草、バランゴンバナナの袋掛け、タグ付け、収穫が大変な作業です。バランゴンバナナは私たち農家の生活を良くしていくことに役立っています。」[/box]

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【バナナニュース256号】ミンダナオ島ツピの干ばつ被害状況

2016年7月15日

バランゴンバナナは干ばつ被害に伴う収量の減少により、3月末以降、十分にバナナをお届けできない状況が続いています。今回の干ばつは、大規模なエルニーニョ現象(現在は終息)とフィリピンの乾季(2-5月)が重なったためにもたらされました。
5月下旬から雨が降りだし、現在フィリピンは雨季に入っています。しかし、5月までの干ばつの影響が大きく、収量の低迷が継続しています。回復は10月以降となる可能性があります。
干ばつの被害を最も受けた産地はミンダナオ島南コタバト州のツピ地域です。昨年の出荷量に比べて8割減少しており、現在の全体の収量不足の主要な要因となっています。ツピはバランゴンバナナ出荷数量全体の約3割を占め、東ネグロス州と並び出荷量が最も多い産地でした。

ツピの状況

ツピの畑の様子。枯れずに生き残っているが幹は細い。

ツピの畑の様子。枯れずに生き残っているが幹は細い。

6月上旬にツピを訪問してきました。雨は5月最終週から降り始めていますが、干ばつの被害は深刻で、収量は4-5か月間は大きく回復しない可能性があります。川の近くの畑、灌水にお金をかけることができる生産者などは、干ばつの被害を和らげることができていますが、そのような対応ができている生産者はごく一部。多くの生産者が大きな被害を受けています。

細い幹の株からは生育不良の小さい実しかならない。

細い幹の株からは生育不良の小さい実しかならない。

脇芽の成長を促すため、見込みのない親株を切り倒した状態。

脇芽の成長を促すため、見込みのない親株を切り倒した状態。

枯れてしまった株は1-2割ほどと推測されますが、生き残った株についても、親株からの収穫の見込みはなく、次の世代の株の成長を待つしかない状態です。親株に実がついても、実は非常に小さく(日本で売られているモンキーバナナ並みかそれよりも小さい)、生育不良のものばかりです。親株は幹が細く、乾燥気味で、これから実がなっても小さい実しか付ける見込みがありません。そのため、次の世代(脇芽)の生育に栄養を回すために親株を切り倒す作業が始まっています。

ツピでは他の果樹も深刻なダメージを受けていました。枯れてしまったドリアンやランソーネスの木を多く見かけました。一方、ツピの多くの畑でバランゴンと混植されているココナッツは、幸い干ばつの中でも収量がある程度維持された作物でした。
生産者によると、今年の干ばつの程度は過去に例のないものだったとのことです。今年は特に気温が高いことが特徴でした。
生産者たちは現在、干ばつの被害を受けた圃場の復興作業(見込みのない親株の切り倒し、植え替え、施肥等)に取り組み始めています。

枯れてしまい欠株となった場所に新しく苗を植える作業

枯れてしまい欠株となった場所に新しく苗を植える作業

ツピの生産者 アルバート・バラソさん

アルバートさん(写真左)

アルバートさん(写真左)

2014年からバランゴン栽培を始めた新しい生産者です。今年8月に60歳を迎え、奥さんは公務員です。約2,270本のバランゴンバナナを植えており、干ばつの前には1回の収穫で約30バンチ(全房)出荷できていましたが、今はその1/5の6バンチ程度です。
現在の主な収入源はコプラ(ココヤシの果実の胚乳を乾燥したもの)。「ココナッツはまだ干ばつの影響を受けていませんが、3-4カ月後に収穫するものは収量が落ちるだろう」と話していました。
干ばつ被害を受けたものの、バランゴンの作付けを今後も増やしていきたいと、前向きに語ってくれたバラソさん。
「1989年からツピで農業をしています。今年の干ばつは、期間は短かったのですが、非常に暑かったのです。昔、7か月間干ばつが続いた年がありましたが、そのときはそれでもトウモロコシの栽培ができましたが、今年はできないほどの暑さでした。
6ヘクタールの土地があり、2ヘクタールがバランゴン。その他は、ココナッツ、果樹、コーヒーなどを栽培していますが、皆干ばつの被害を受けました。ランソーネスやドリアンの木はいくつか枯れてしまいました。バランゴンについては、見込みのない親株を切り倒す作業を終えたところです。
バランゴンを始めたきっかけは、ココナッツと混植する作物を探していて、畑に近づくことのある孫のことを思うと農薬を使う作物は植えたくなかったので、バランゴンを選びました。また他の作物と違ってバランゴンは盗難被害にあわないので、安心して夜眠ることができるのもいいです(注)。今回は干ばつ被害にあってしまいましたが、今後も作付けを増やしていきたいと思っています。」
(注:ツピ地域ではバランゴンの市場がないため盗難被害にあわないという意味。ツピではラカタンなど他の品種のバナナが食べられています)。

ツピの生産者 アルボレダ・ゼナイダさん

アルボレダさん(写真左から2人め)、自宅前で息子、娘、孫といっしょに。

アルボレダさん(写真左から2人め)、自宅前で息子、娘、孫といっしょに。

教会の活動から帰ってきたところをインタビューしました。干ばつの被害で収入が落ち込み大変そうな状況でしたが、インタビュー中も横から明るい娘さんの茶々が入り、悲壮感までは漂ってはいませんでした。インタビュー後に畑にお邪魔しましたが、復興作業(見込みのない株の切り倒しなど)まで手が回っていない状況でした。
「6歳のときに家族でツピに引っ越してきました。1983年に21歳で恋愛結婚。当時夫は農業(ココナッツ・トウモロコシ・パイナップル・カルダバ(バナナ)等)とトライシクル(3輪タクシー)の運転手で生計を立てていました。私も一緒に農業を手伝いました。
子供は14歳~32歳の6人。長男は運転手の仕事をしています。3人が大学に入学しましたが、お金が足りず、3人とも卒業はできませんでした。ちなみに私はハイスクールを2年で中退。夫は大学を2年で中退しています。
2014年1月に夫を亡くしました。現在は、2人の娘、1人の息子、3人の孫と7人で暮らしています。そのうち、学校に通っているのは、14歳の息子(警官になるのが夢)と、9歳の孫です。
現在の収入源は主に農業で、その他に家の前で小さなサリサリストア(小さな雑貨屋)があります。1ヘクタールの畑には、バランゴン、ココナッツ、グヤバノ、その他の果樹が植わっています。
2002年からバランゴン栽培をしています。ココナッツの間にバランゴンを植えました。現在は午前中の3時間、畑に出て作業をしています。義理の息子が日曜日に畑を手伝ってくれています。またバランゴンに袋掛けをする作業は、14歳の末の息子がはしごに登って行い、私ははしごを下で支える担当です。
干ばつによる被害で1月からほとんどバランゴンからの収入はありません。天候が順調なときは週に150㎏くらいの収量が見込めるのですが、先週は20㎏ほどの収穫があった程度です。水源から遠いため、潅水は行えませんでした。ココナッツも干ばつの影響を受けています。
現在は収入が減っていて、食事の量を減らすことまではしていないですが、近所の金貸しからお金を借りています。5,000ペソ(約1.2万円)を借りて、毎日100ペソずつ返済し、60日かけて6000ペソを返済する仕組みです。畑の復興作業が目下の課題です。」

事業部商品一課 松本敦

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バナナニュース255号:パナイ島で新しいパッキングセンター稼働!

2016年6月9日

2013年の大型台風ヨランダ、2014年の台風ルビー、2015年には干ばつと、多くの天候被害を受けたパナイ島。昨年末はバランゴンバナナが豊作で、たくさんのバランゴンバナナを収穫することができましたが、現在は干ばつの影響で、再び出荷数量が減少しています。そんなパナイ島から、うれしいお知らせが届きました!

台風ヨランダ以降、出荷数量が少なかったこともあり、この間パナイ島で収穫したバナナはネグロス島までトラックで運ばれ、箱詰めされていました。半日以上かけて運んでいるため、もちろんバナナの品質にもよくありません。

パッキングセンター開所式

パッキングセンター開所式

2016年4月、パナイ島のバランゴンバナナ産地の近くに、収穫をしたバナナを箱詰めするパッキングセンターを設置しました。
「天候被害による数量減少を乗り越え、パッキングセンターをパナイ島につくることができました。これでパナイ島で箱詰めすることができるようになったので、バナナの品質が良くなるでしょう」と、開所式でATC社長のヒルダ氏は述べました。

バナナの洗浄・箱詰め方法を指導するATCスタッフ(中央男性)

バナナの洗浄・箱詰め方法を指導するATCスタッフ(中央男性)

パナイ島のパッキングセンターでは7名がバランゴンバナナの箱詰めに従事することになります。皆バナナ箱詰めの仕事を早く覚えたいと意欲的で、真剣にATCスタッフの指導に耳を傾けていました。4月29日に最初の箱詰め作業が行われ、合計227箱のバナナが箱詰めされました。
台風ヨランダ以降、度重なる天候被害を乗り越え、新たな一歩を踏み出したパナイ島産地。これからもバランゴンバナナをよろしくお願い致します。

事業部商品一課 黒岩竜太

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バナナニュース254号:フィリピンで干ばつ!!~バランゴンバナナ産地被害状況~

2016年5月2日

現在、大規模なエルニーニョ現象(注)とフィリピンの乾季(12-5月)が重なり、フィリピンでは干ばつおよび高温に見舞われています。フィリピン農業省は、4月5日に、農業における被害総額が99億ペソ(約240億円)に達したと発表しており、バランゴンバナナも被害を受け、収量が減少しています。特に被害が大きいのはミンダナオ島ツピであり、ツピがある南コタバト州では、非常事態宣言が出されています。

バランゴンバナナの産地については「バランゴンバナナが日本に届くまで① ~バランゴンバナナ圃場の様子~」をご参照ください。

 

水不足で折れてしまったバナナ

水不足で折れてしまったバナナ

ツピでは、干ばつの影響を受け、バランゴンバナナの生育は鈍化しており、生産性が著しく低下しています。通常よりもバンチ(全房:房の連なり)が小さく、出荷基準に満たない細いバナナが増えています。また、収穫頻度も少なくなっており、通常であれば毎週収穫できますが、2週間に1回の収穫になっている圃場もあります。

ツピでの灌水の様子

ツピでの灌水の様子

バランゴンバナナ以外の農作物も干ばつの被害を受けており、ツピのバランゴンバナナ生産者によると、「過去にも干ばつは経験しているが、今年のようなひどい干ばつは初めて」とのことです。

4月の降雨量:左が過去30年の平均、真中が今年の4月の降雨量、右が平年比。赤くなっている地域が平年の40%未満。PAGASAのHPより

4月の降雨量:左が過去30年の平均、真中が今年の4月の降雨量、右が平年比。赤くなっている地域が平年の40%未満。PAGASAのHPより

 

 

フィリピンの多くの地域で、4月1日から14日までの降雨量は過去30年の平均を大幅に下回っており、ミンダナオ島の大半の地域では平年の40%未満の雨しか降っていません。PAGASA(フィリピンの気象庁)の予測では、4月もフィリピンの約四割の地域で、3カ月連続で例年の40%未満の降雨量になる見込みであり、特にミンダナオ島は引き続き厳しい状況が続きます。ツピでは、ポンプを使用しての灌水を行っている生産者もいますが、その努力もむなしく、今後も収量低迷が続くことが予想されます。

(注)エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です。

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バナナニュース253号:バランゴンバナナが日本に届くまで⑥~バナナのリパック~

2016年4月15日

長い旅路を経て追熟加工されたバランゴンバナナ。大きな房の状態で、ダンボールに箱詰めされて輸入されているので、皆さんにお届けするには、リパックをする必要があります。リパック後は各取引先に納品、その後皆さんに配達されます。皆さんが今食べているそのバランゴンバナナは、約1ヶ月前にフィリピンで収穫されたものなのです。

バランゴンバナナの袋詰め

バランゴンバナナの袋詰め

バランゴンバナナのリパックを行っているのは千葉県、三重県、福岡県の3か所。品質を確認し、大きな房からバナナを切りながら500g・1kgなどに計量、その後袋詰めをします。袋詰めの際には皆さんが今読んでいるバナナニュースも封入します。

 

 

バランゴンバナナの房を切り分けて計量

バランゴンバナナの房を切り分けて計量

産地などによって大きさが様々なバランゴンバナナ。皆さんも大きなバナナが届いたり、小さなものが届いたり、そんな経験はありませんか。大きさが均一のプランテーションバナナに比べリパックが難しいのですが、長年バランゴンバナナをリパックしている人は、見ただけで大体どの程度の本数に切ればいいのかわかるそうです。なので作業が早い!バナナを切って計量する作業は一番経験が必要だそうです。

バランゴンバナナ生産者とユーパッケージの皆さん

バランゴンバナナ生産者とユーパッケージの皆さん

また、バランゴンバナナは一般的なプランテーションバナナに比べて品質にばらつきがあります。

「今はだいぶ良くなったけど、昔は品質が悪いことが多く、持ったら軸からバナナがバラバラ落ちて、リパックするのが大変だった」

と話してくれたのは長年バランゴンバナナをリパックしているユーパッケージの社長、大崎さん。バランゴンバナナの前はプランテーションバナナのリパックの仕事をしていたそうですが、初めてバランゴンバナナを見た時は、見た目が悪くて驚いたそうです。今でも品質にばらつきがある時がありますが、生産者の苦労を思って、丁寧に作業をしてくれています。
栽培から皆さんのお手元に届くまで、様々な人を介しているバランゴンバナナ。まさに「ひとからひとへ 手から手へ」を通じて届くバナナなのです。

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バナナニュース252号:バランゴンバナナが日本に届くまで⑤ ~日本輸入から追熟加工~

2016年2月5日

フィリピンを出港したバランゴンバナナは東京と大阪の港に運ばれます。輸入青果物であるバランゴンバナナは、海外からの病害虫の侵入を防ぐことを目的に、まず植物検疫を受けます。植物検疫時に、燻蒸の対象となる虫が発見された場合、青酸ガス燻蒸を受けます。青酸ガスは揮発性が高いので、果実の中に残留しにくく安全性が高いものです。

ちなみに・・・皆さんが食べている黄色く熟したバナナ、産地では未熟な状態で収穫されます。なぜなら、熟したバナナはミバエなどといった日本の農業に深刻な被害を及ぼす害虫が寄生している恐れがあるため、植物防疫法で、熟した状態でのバナナの輸入は禁止されているからです。

 通関後は、追熟加工までバランゴンバナナは温度管理がされている倉庫で保管されます。

倉庫で保管されているバランゴンバナナ

「最初にバランゴンバナナを見たときは、黒くて、汚くて、山から収穫して持ってきた!という感じがしました。それまではプランテーションで栽培されているキャンディッシュ種のバナナしか見たことがなかったので、これで本当に売れるのかと思いました。でも食べると美味しかった!」

そう話してくださったのは、バランゴン交易が始まった当初からバランゴンバナナを見てきている通関業者、株式会社上組の安岡さん。その後、バナナの手入れや収穫後の工程の改善が行われ、徐々に品質も良くなっていきました。今のバランゴンバナナは、最初の頃とは比べものにならないぐらい品質が良いとのこと。それでも、プランテーションで作られたバナナの方がきれいで、「バランゴンバナナは他社のバナナに比べ傷が多い」と当時を知らない職員からはよく言われます。

 

追熟加工するムロは神奈川県、三重県、佐賀県の3か所にあり、そこで数日間追熟加工されます。集約型のプランテーションとは異なり、産地にバラつきがあるバランゴンバナナは、なかなか同じようには仕上がりません。産地・バナナによって特徴もあるそうで、例えば標高の高い産地で収穫されたバナナは、色づきが始まるまで時間がかかるそうです。また、夏は少し青め、冬は黄色めに加工するなど、季節の変わり目はムロと連絡しながら、加工を調整しています。

バランゴンバナナの追熟加工を担当して下さっている会社の職員も、「バランゴンバナナは他のバナナに比べ、味が濃くて美味しい!」と言っています。様々なバナナを見てきている人々からも美味しいとお墨付きをもらっているバランゴンバナナ。

収穫されてからここまでの期間は約1ヶ月!長い旅路を経たバランゴンバナナが皆さんのお手元に届くまであと少しです!!

事業部商品一課 黒岩竜太

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バナナニュース251号:バランゴンバナナが日本に届くまで④ ~バナナの箱詰めから出荷~

2016年1月26日

様々な産地から買付けされたバランゴンバナナは、パッキングセンターまで運ばれ、品質確認、洗浄、軸をカットして整えた後に計量され、箱詰めされます。パッキングセンターでの作業は週又は隔週に1回、2日~3日程度。

バナナを丁寧に洗浄するスタッフ

バナナを丁寧に洗浄するスタッフ

簡単そうに思える作業ですが、実際にやると大変。例えば、バランゴンバナナは化学合成農薬を使用せずに育てているので、虫がついていることがあるのですが、働いている人は皆が口をそろえて「バナナとバナナの間を洗うのが難しい」と言います。

バナナを傷つけないように優しく、丁寧にバナナの洗浄をしていますが、それでも虫などが付着した状態で日本に輸入されてきてしまうこともあります。また、いろいろなサイズのバナナをきれいに箱詰めするのもパズルのようで、慣れない人がするとなかなかうまくいきません。

 

バナナの箱入れにチャレンジ中の日本人訪問者

バナナの箱入れにチャレンジ中の日本人訪問者

実際にパッキングセンターを視察し、作業を経験した日本人からは、「バナナを隙間なく、それぞれつぶれないように詰め込んでいくのはとても難しかった」。

「あ、すごい簡単・・・第一印象です。洗って箱に詰めるだけ。でも、いざ作業をしてみるとなかなか上手くできません」といった声がありました。

 

そんな熟練した技術が必要なパッキングセンターでは様々な人が働いており、何年も働いている人がたくさんいます。夫婦で働いている人、普段は他の仕事をしていてバランゴンバナナのパッキングがある時だけ働いている人、バランゴンバナナを自ら育てながらパッキングセンターでも働いている人。ミンダナオ島ツピではキリスト教徒とイスラム教徒が一緒に働いており、バランゴンバナナ民衆交易はキリスト教徒とイスラム教徒の平和的な関係性構築に貢献していると言われています。

生産者の手を離れてからも、様々な人が関わっているバランゴンバナナ。箱詰めされたバナナはコンテナに積まれ、いよいよ日本に向けて出発です!

 

 

「日本の皆さんがバランゴンバナナを買ってくださり感謝しています。

私たちは自分たちの仕事の質を上げていくよう努めていますので、今後とも引き続きバランゴンバナナを購入してください!」

(東ネグロス州ドマゲッティパッキングセンター・スタッフ一同)

「北ミンダナオでバランゴンバナナ交易が今も続いていることに感謝しています。

日本の皆さんがバランゴンバナナを気に入ってくださり嬉しいです。」

(北ミンダナオパッキングセンター・スタッフ一同)

事業部商品一課 黒岩竜太

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【バナナニュース247号】バランゴンバナナが日本に届くまで① ~バランゴンバナナ圃場の様子~

2015年9月18日

バランゴンバナナ産地

バランゴンバナナ産地

1989年にネグロス島から始まったバランゴンバナナの出荷。今年で26年目を迎えたバランゴンバナナ民衆交易ですが、現在はネグロス島だけでなく、北ルソン、ボホール島、パナイ島、ミンダナオ島(北ミンダナオ、マキララ、ツピ、レイクセブ)からバランゴンバナナが出荷されており、3,000人以上の生産者がバランゴンバナナを栽培しています。

バランゴンバナナ民衆交易の歩みをご参照。

今回からシリーズで、バランゴンバナナがどのような産地で栽培されていて、どのような工程を経て日本の食卓に届くのかをご紹介していきます。

まずはバランゴンバナナの圃場について。

 

ミンダナオ島レイクセブ。圃場によっては標高1000m以上のところでバランゴンバナナが栽培されています。

ミンダナオ島レイクセブ。圃場によっては標高1000m以上のところでバランゴンバナナが栽培されています。

バランゴンバナナの圃場の特徴は、地域によって異なります。海抜0mの産地から標高1000m以上の産地、幹線道路へのアクセスが良い産地からトラックが入ることのできない山道を何キロも歩かなければならない産地。中にはまだ電気・水道などが通っていない産地もあります。

 

 

近年、美味しさを売りにした高地栽培バナナを頻繁に見かけるようになりましたが、バランゴンバナナの一部の産地は、昔から高地でバナナを栽培していたのです!

東ネグロス州タンハイ村。川の近くの産地で、海抜0mの圃場もあります。

東ネグロス州タンハイ村。川の近くの産地で、海抜0mの圃場もあります。

また、産地によって受けやすい天候被害なども異なります。例えばバランゴンバナナ産地の1つである東ネグロス州タンハイ村。ここは海抜0mであり、川の近くにある産地ですので、大雨が降ると洪水被害を受けやすい産地です。

また、風向きによって強風被害を受けやすく、葉っぱが切れ切れになりやすい産地もあります。葉っぱが切れ切れになると、バナナは光合成をうまく行うことができず、生育不良を起こしてしまいます。山奥にあり、アクセスが悪い産地では、大雨が降ると収穫に行けなくなるという問題も発生します。

北ルソン・ソウミル村。バランゴンバナナの圃場に行くには山道を歩きます。

北ルソン・ソウミル村。バランゴンバナナの圃場に行くには山道を歩きます。

東ネグロス州ボナウォン村。大雨が降ると圃場に収穫に行けなくなることも。

東ネグロス州ボナウォン村。大雨が降ると圃場に収穫に行けなくなることも。

多国籍企業のバナナプランテーションのように一律管理されていないので、バランゴンバナナの手入れも生産者によって異なり、中には意欲的で様々な工夫をしている生産者もいます。例えば、自分でミミズ堆肥を作っている生産者、家畜の糞尿を有効活用している生産者など。3,000以上の生産者がいるので、生産者の農業技術の底上げというのは、課題の1つです。

 

バナナの表面に、葉のこすれなどによるキズや虫害を防ぐために、バナナの実に袋をかけるパンダノン村の生産者。

バナナの表面に、葉のこすれなどによるキズや虫害を防ぐために、バナナの実に袋をかけるパンダノン村の生産者。

また、標高の低い産地で育てられているバランゴンバナナは、標高の高い産地に比べ、早く収穫できる傾向がある、土壌が豊かで水が豊富な産地のバナナは実が大きく育つ傾向があるなど、産地によって様々な特徴を見せてくれます。

 

今度、バランゴンバナナを食べる時は、このバランゴンバナナはどんな産地から来ているのだろうと思いを馳せながら食べてみてください!!

ミンダナオ島ツピ及びレイクセブについて詳しく知りたい方は、下記動画をご覧ください!

 

バランゴンバナナ物語~ミンダナオ島ツピ・レイクセブ~

商品一課 黒岩竜太

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【バナナニュース246号】ビクターさんは今!! ~バランゴンバナナの価値と課題~

2015年8月19日

ビクターさん交流会を通しての学び

2013年9月に来日したミンダナオ島ツピのバランゴンバナナ生産者であるビクター・コルテスさん。日本での消費者との交流会を通して、バランゴンバナナの価値を再認識することができたと言います。

「バランゴンバナナ生産者として、日本に行くことができたことを光栄に思っています。日本での経験を通して、生産者と消費者が交流していくことの重要性を学ぶことができました。また、日本の消費者との交流を通して、バランゴンバナナの価値を再認識することができました。

バランゴンバナナはTUBAGA(ツピのバランゴンバナナ生産者組合)にとって、重要な事業です。また、バランゴンを通して、生産者、栽培を手伝っている人々、消費者が繋がることができています。

有機農業の大切さについても、改めて学ぶことができました。農薬を使用せずに栽培しているバランゴンバナナは、生産者にも、環境にも良いバナナです。そのようなバナナ栽培を続けていく必要があります。」

 

現在のツピの状況について

現在、ツピでは多国籍企業の契約栽培によるパパイヤやバナナ、大規模なパイナップルプランテーションなどが拡大しています。バランゴンバナナ以外にも数多くの現金収入の手段がある中で、生産者がバランゴンバナナを作り続けていることに、ビクターさんは感謝していると言います。

パイナップル・プランテーション

ミンダナオ島ツピに広がる広大なパイナップルプランテーション

 

一方で今後もバランゴンバナナ栽培をツピで続けていくには、買取り価格などの経済的価値、生産者と消費者の関係などの社会的価値を高めていく必要があるとビクターさん。

 

 

 

日本の消費者へのメッセージ

[box type=”shadow”]「今後もバランゴンバナナ民衆交易を続けていくには、生産者と消費者の関係を強化していく必要があります。そのことが、生産者の暮らし、地域を良くしていくことに繋がります。」[/box]

 

取材・まとめ 商品一課 黒岩竜太

 

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【バナナニュース245号】 ボイさんは今!!   ~交流会での経験を日々の仕事に活かして~

2015年7月17日

日本での交流会後の仕事・暮らしについて

干ばつの影響及びその後の強風の影響を受けてしまったボイさんのバランゴンバナナ

2014年10月に来日した東ネグロス州マンフヨッド町ロウアカンダボン村のバランゴンバナナ生産者でありオルタートレード社(以下:ATC)のスタッフであるロッドジム・カトゥバイさん(通称:ボイさん)。現在、バランゴンバナナは2014年12月に結婚した長女リゼル夫婦が世話をしていますが、今年の2月から6月の干ばつ及び台風によってもたらされた強風の影響でバナナがうまく育たず、収穫がほとんどない状況です。「バランゴンバナナの世話を通して、私は様々なことをバランゴンバナナから始めることができたことを娘夫婦に理解してもらいたい」と語るボイさん。

「消費者が生産者の現状を知ること。また生産者が、なぜ消費者がバランゴンバナナを食べているのかを知ることが重要」と話すボイさん。日本での交流会後は、ロウアカンダボン村の生産者、他の地域を担当しているATCの現場スタッフに日本での経験を共有してきました。継続的な交流を通して、生産者はバランゴンバナナには安定的な販売先があると感じることができ、今後もバランゴンバナナ栽培を続けていこうという想いにつながっています。

ギフルンガン町、ビンドイ町の活動計画について話し合っているボイさんとATCスタッフのウィニーさん

また、ボイさんの仕事にも大きな変化がありました。以前はマンフヨッド町を担当していましたが、2015年3月からはギフルガン町、ビンドイ町を担当しています。ロウアカンダボン村を含めたマンフヨッド町は現在、ボイさんのパートナーであるアナさんが担当していますが、時折生産者との会合に参加するなどして、アナさんをサポートしています。

 現在担当している地域は、ボイさんが住んでいる地域から約90㎞離れており、山道などを移動しなければならないため、バイクで片道3時間程かかります。朝6時に家を出て、帰ってくるのが夜11時頃という生活を送っており、必要であれば産地で寝泊まりもしているボイさん。家に戻る頃には家族はすでに寝ており、以前のように家族と一緒に食事をとるのが少なくなったとのこと。「現場スタッフとして、求められていることはしっかりやりますが、やはり家族が恋しい」と少し寂しげに話すボイさん。

 現在担当しているギフルガン町、ビンドイ町はバランゴンバナナの手入れをしている生産者が少ない地域のため、生産者協会の組織化及び強化のサポートだけでなく、バナナの袋掛け・タグ付け、脇芽の管理といったバナナの手入れ方法も生産者に教えています。

生産者との会合をファシリテートするボイさん

「バランゴンバナナには安定的な売り先があるので、バランゴンバナナ栽培を軸に生産者協会を組織し、強化をしていくことができます。バランゴンバナナは生産者協会の“傘”であり、生産者の生活向上のため、バランゴンバナナだけでなく、他の農作物、家畜へと多様化していくことを目指しています。」

 一方で、生産者の組織化は簡単な仕事ではないと言います。「生産者を組織化していくためには、理論と実践が伴わなければいけません。そうすれば、生産者に説明していくことも容易になり、円滑にコミュニケーションを取ることができます。」

消費者との交流を通して感じたこと

 「日本での交流会を通して、改めて生産者と消費者が強い関係性を構築することが必要であると気付かされました。」来日前から、多くの消費者がロウアカンダボン村を訪問しており、消費者との交流を通して、消費者はただバランゴンバナナに関心があるのではなく、産地の環境や持続性、生産者の暮らしに関心があることを感じることができたと言います。

「消費者が産地に来るということは、生産者にとっては非常に喜ばしいことであり、消費者がただバランゴンバナナにのみ関心があるのではなく、他のことにも関心があることの証でもあります。」

日本の有機農家を訪問して学んだこと

 日本では有機農家も訪問することができたボイさん。「日本の農業技術は非常に高く、有機農業の価値を評価している売り先があるということを今回の訪問を通して学ぶことができました。農家として、日本の高い技術をそのまま取り入れていくのは難しいですが、日本で学んだ農業技術を少しでも実践できればいいなと考えています。例えば、農業において、土づくりというのが非常に重要であるということを学びました。このような学びを自分の農業、そして仕事に活かしていきたいと思います。」

 ATCでは2013年8月にBOX(Bio-Organic eXchange)という食品宅配のサービスの取り組みを開始しました。これはATCが関わりを持っている小規模生産者が育てた農産物をネグロス島バコロド市の消費者に届けるという事業ですが、2013年11月の台風ヨランダ以降、BOX事業は休止しており、2015年6月に再開しました。ボイさんは、日本の生協の取り組みがBOXの参考になると言います。BOXがうまくいくためには、「消費者が信頼できる農産物を届けることを大事である」と話していました。

日本の皆さんへのメッセージ

「日本で会った人々のことは、絶対に忘れません。皆さんは私を農家として認めて下さり、また私を温かく迎え入れてくれました。消費者と生産者が目指していることを実現するために、今後もATC/オルター・トレード・ジャパン(ATJ)/消費者/生産者の強固な関係が続いていくことを望んでいます。私たちの世代が第一線を退いたとしても、次世代がバランゴンバナナ民衆交易を続けていってくれることを望んでいます。本当にありがとうございました!」

取材・まとめ 商品一課 黒岩竜太

 

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【バナナニュース244号】ジェイムスさんの今! ~よりよいバランゴンバナナを届けるための挑戦~

2015年6月25日

ジェイムスさんの仕事

2013年9月に来日したジェイムス・シモラさんは、ミンダナオ島のバランゴンバナナの産地の1つであるレイクセブで、バランゴンバナナの出荷責任者を務めています。現在はバランゴンバナナの収穫から買付、箱詰め、出荷までの全工程を管理しています。

レイクセブの先住民族のバランゴン生産者とジェイムスさん

レイクセブの先住民族のバランゴン生産者とジェイムスさん

「日本に行ったことにより、消費者を含めた、バランゴン交易全体を理解することができました。また、品質・数量の大切さを日本での交流を通して実感することができました。日本人は規律をしっかりと守るだけでなく、訪問したセットセンター、倉庫、追熟ムロなどでは、衛生管理がしっかりとされていました。」

 

日本でバナナの状態を確認するジェイムスさん

日本でバナナの状態を確認するジェイムスさん

日本での交流後、ジェイムスさんは日本での経験をレイクセブの生産者に共有し、品質及び安全面の重要性を生産者に伝えました。より品質の良いバナナを作るため、バナナの手入れに関する研修も改めて行いました。また、買付時点及び箱詰め時点での廃棄を減らすために、収穫後の運搬方法の向上にも取り組んでいます。

「バランゴンバナナの収穫及び運搬の見直しを行うことで、廃棄されるバランゴンバナナが減りました。また、雨季に比べると乾季はバナナ1本1本もより大きく育ち、病虫害被害も減少し、出荷数量が増えます。」

 

 

 

 

日本での交流会について

日本で熟したレイクセブのバナナとご対面!

日本で熟したレイクセブのバナナとご対面!

「生産者と消費者の交流は、お互いの経験を共有し、学び合える場であり、強固な関係性を築いていくために必要です。私は日本での交流会で、先住民族であるレイクセブの生産者が直面している課題や希望を消費者の皆さんに話しました。私たちの知識、経験を交流会では共有することができ、バランゴンバナナ栽培の難しさについて消費者の皆さんにお伝えすることができたと感じています。」

 

「また、交流は日本の消費者の皆さんにとっても新たな発見があったのではないでしょうか。例えば、バナナがどのように育つのかを知るなど。日本の子供たちが、バナナを描くように言われ、大きな木にバナナがなっている絵を描いたことを今でも覚えています。生産者と消費者の交流は、バランゴンバナナで繋がっている異なる人々が、交流を通してお互いの経験を共有し、お互いの理解を深めていく場であると感じています。」

 

日本の皆さんへのメッセージ
「レイクセブの生産者を代表して、バランゴンバナナを買い続けて下さっていることに、感謝の意を表したいと思います。長年、バランゴンバナナを買い続けて下さり、ありがとうございます。消費者の皆さんの協力がなければ、私たちの努力が無駄になってしまいます。
日本での交流が、お互いの関係の強化に繋がり、今後も私たちの関係が続いていくことを望んでいます。」

取材・まとめ 商品一課 黒岩竜太

 

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【バナナニュース243号】マカオさんは今!~日本での交流が役立っています~

2015年5月11日

2012年9月に来日したネグロス島パンダノン村のバランゴンバナナ生産者であるウバルド・マカオ・セラルボ(通称:マカオ)さん。2013年7月にパンダノン村のバランゴンバナナ生産者協会の副委員長に選出されました。現在は、自分の畑の手入れだけでなく、副委員長として生産者協会の活動にも積極的に取り組んでいます。

2013年の選挙で選ばれた生産者協会の新役員

2013年の選挙で選ばれた生産者協会の新役員

パンダノン村のバランゴンバナナ栽培

日本での交流後、バランゴンバナナの作付け拡大に取り組んでいるマカオさん。しかし、病害被害を受け、出荷数量は思ったように増えていないとのこと。また、日本での経験を他の生産者にも伝えています。他の生産者は、マカオさんの経験を通して、バランゴンバナナが日本でどのように食べられているのかを知ることができ、消費者に必要とされていることを実感することができているとのこと。その結果、パンダノン村でのバランゴンバナナの作付けは増えています。

一緒にバランゴンバナナの集荷を行うマカオさんとダイアナさん

一緒にバランゴンバナナの集荷を行うマカオさんとダイアナさん

「日本でお会いした消費者の皆さんに、バランゴン栽培に力を入れ、出荷数量を増やしていくことを約束しました。帰国後、バランゴンバナナの作付けを拡大したのですが、病害被害が広がり、バナナの数量を増やすことが出来ませんでした。皆さんとの約束を守ることが出来ず、大変申し訳なく思っています。
私を含めたパンダノン村のバランゴンバナナ生産者は、病害被害などといった困難がありますが、今後もバランゴンバナナの作付け拡大に取り組んでいきます。」

 

マカオさんが行っている農業
日本の農家との交流が、農業技術の向上に繋がったと語るマカオさん。
「日本に行く前は、知識ではなく経験のみに基づいて農業をしていた。日本で訪問した地域から、お米や野菜を植えるには、土作りが非常に重要であるということを学びました。作付けの前にしっかりとした準備をすることが、非常に重要。また、農家は細かなことにも気を配ることが大切だということを日本の農家との交流を通して学ぶことが出来ました。」
以前は水牛(カラバオ)で土を耕していましたが、現在は購入した耕耘機で土地を耕しています。「水牛に比べ耕耘機は早く簡単に土を耕すことができる。例えば水牛で15日かけて耕していた土地も、耕耘機であれば6日で耕すことができる。」と説明をしてくれたマカオさん。
また、マカオさん一家の主収入源はサトウキビですが、2012年からサトウキビを、マスコバド糖製糖工場(ATMC)に販売しています。2012年からオルタートレード社(ATC)のサポートを受けながら、有機栽培への転換に取り組み、現在作付けを行っているサトウキビから有機認証を取得することが出来ました。
「慣行栽培であれば、1ha当たり8袋(約50㎏/袋)の化学肥料で足りるが、有機転換の1年目は、マッドプレス(製糖過程で出る有機資材)、石灰、リン鉱石などといった有機肥料を多く畑に投入しなければならず、畑での仕事が増え、大変だった。2年目、3年目は畑の土の質が良くなり、1年目に比べると有機肥料の投入量も少なくなった。」

 

マカオさん、妻/ダイアナさんとズゥイちゃん

マカオさん、妻/ダイアナさんとズゥイちゃん

家族も増えました
2013年5月に9番目の子供であるズゥイちゃんが産まれ、子育てにも奮闘しているマカオさん。また、息子の1人であるマルジュン君は、2012年に約6ヵ月間、カネシゲファーム・ルーラルキャンパス で有機農業の研修を受け、現在はマカオさんと一緒に農作業を行っています。
「カネシゲファーム・ルーラルキャンパスの研修でマルジュンの農業知識は増えたが、まだまだ私がマルジュンに農業を教えているよ」と笑いながら話すマカオさん。

 

最後にマカオさんからのメッセージです。
「この間、産地及び日本で積み重ねてきた交流を通して、素晴らしい関係を築くことができています。私たち生産者にとっては、消費者の皆さんとの交流は、生活の一部になっています。」

マカオさん
カネシゲファーム・ルーラルキャンパスの詳細に関しましては、APLA(あぷら)のウェブサイトをご確認ください。
http://www.apla.jp/activities/negros-philippines/kf-rc

取材・まとめ 商品一課 黒岩竜太

 

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【バナナニュース242号】伝統的な箒が作られている村、カンルソン

2015年4月21日

西ネグロス州の山奥にあるバランゴン産地であるカンルソン村。主に自給用に植えられている、美しい水田が見受けられるこの村では、タイガーグラスと言うススキのような草の穂を束ねた伝統的な箒が手作りされています。柔らかく扇のように広がるこの草は、箒に適しています。フィリピンでは一般的に、家の外回りの掃き掃除を行う時にはヤシの葉の芯を束ねた箒(ティンティン)を使い、室内の掃き掃除の時には、タイガーグラスを束ねた箒を使います。

タイガーグラス

収穫されたタイガーグラスを道端で天日干し

カンルソン村の人々の主な収入源はこの箒作り。タイガーグラスの収穫期を迎えると、道端でタイガーグラスを乾燥させている風景を目にします。タイガーグラスの収穫は年に1回。約1,000本の草から約30本の箒を作ることができます。生産者によって収穫量は異なりますが、年に約30,000~60,000本のタイガーグラスを収穫することができ、箒を作っています。1本1本、丁寧に手作りされた箒は、1本約40ペソ(2015年4月時点のレートで100円強)で販売されますが、コストが約10ペソかかるとのことです。

マルキランシア家

バランゴン生産者のガリー・マルキランシアさん一家

箒作りが主な収入源ではありますが、タイガーグラスの収穫が年に1回。そのため、定期的な現金収入を確保する必要があります。その役割を担っているのがバランゴンバナナ。ATCはカンルソン村に2週間に1回、バランゴンバナナを買いに行っています。生産者によってバランゴンバナナからの収入源は異なりますが、平均すると生産者1人あたり、約450ペソの現金収入を2週間に1回、バランゴンバナナから得ています。タイガーグラスやお米の収穫がない時には、バランゴンバナナからの定期的な現金収入は非常に重要であると生産者は話します。

切れ切れになってしまったバランゴンの葉っぱ

台風クイニーで葉っぱが切れ切れになってしまったバランゴン

ただし、カンルソン村も昨年の台風21号(現地名:クイニー)で大きな被害を受けた産地の1つ。台風クイニーにより、実をつけていた収穫間近なバナナが約4,400本倒れ、多くの生産者の収穫量が約1/4程度に減少してしまいました。今はタイガーグラスの収穫時期ですので、箒からの収入を得ることはできていますが、やはりバランゴンバナナからの現金収入が無くなったことで生活は厳しくなったと生産者は言います。

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台風クイニー後は、バンチトップ病という病害被害も広がってしまいましたが、ATCと一緒に、病気の拡大を防ぎながら、バランゴンバナナの回復に努めています。

【バナナニュース241号】台風ヨランダ復興支援完了報告

2015年4月17日

2013年11月にフィリピン中部を襲った台風30号(フィリピン名:ヨランダ)には、日本、マスコバド糖でつながる韓国、ドイツ、フランス、スイスの生協、フェアトレード団体から多額の募金が寄せられました。日本国内で集まった義援金のうち21,248,616円が、オルター・トレード社(ATC)により、パナイ島、ネグロス島、ボホール島のバランゴンバナナやマスコバド糖用サトウキビの生産者に対して緊急支援(食料は一般住民にも配布)と産地の復興支援に活用されました。

このうち、もっとも被害が大きかったパナイ島での163名のバランゴン生産者に対する復興支援活動を写真でご紹介します。

○バナナ生産復興のためにバナナの苗22,700本、元肥として鶏糞112トンとマッドプレス(サトウキビの搾りかす)40トンを配布しました。

バナナ生産者に支給されたボロ(山刀)

 

○倒伏したバナナを片付けるためにシュレッダー(裁断機)1台、生産者全員にボロ(山刀)を支給しました。このほかにも各産地にバナナを植え付けるための鋤が配布されました。

 

 

 

プラントでミミズ堆肥を生産

○バナナ生産に効果が高いと言われているミミズ堆肥(家畜の糞やバナナの茎など植物の残渣をミミズに食べさせてその糞を有機肥料とする)を、生産者たちが自分たちで生産できるように小規模プラントを設置し、技術研修を実施しました。

 

 

 

台風ヨランダ復興 パナイ 野菜

バナナとカボチャを混作

○自家消費用として、かぼちゃ、大根、オクラ、ニガウリなどの種を配布しました。収穫できるまでの1年間、バナナからの収入は期待できないので、2-3ヶ月で育つ野菜は貴重な食料となりました。

 

 

 

灌漑用に設置された手押し型ポンプ

○せっかく植え付けたバナナの苗も雨水頼りの地域では枯れてしまうケースがありました。そのため、農業用水の確保が課題として挙がってきました。その対策として手押しポンプや自転車揚水型ポンプ計9基を設置し、地下水を汲み上げて農業用水として利用することができるようにしました。

 

 

 

ソーラーパネルの設置作業の様子

〇バラサン町サルバシオン村では太陽光パネルを使った灌漑用水システムも設置しました。初期投資はかかりますが、一定規模の用水量を確保でき、その後の維 持費が安く環境にも優しいためパイロット事業として施工しました。太陽光で地下水を汲み上げて丘陵地にあるタンクに貯水し、パイプで畑に水を送る仕組みです。これにより約20世帯が恩恵を受けることができる見込みです。

 

 

 

ソーラーパネルで汲み上げた水

〇フィリピンの農村ではサルバシオン村のように電気や水道などのインフラが整備されていない地域がまだ広く残っています。水は飲料水として、電気は家庭の照明、ラジオやテレビ、携帯電話の充電などに活用されるなどライフラインとしても貴重です。

 

 

生産者の努力により回復したバランゴンバナナ生産ですが、残念ながら昨年11月に台風により再度被害を受けてしまいました。しかし、ミミズ堆肥プラントや灌漑施設、ソーラーパネルは現在も稼働しています。

【バナナニュース240号】度重なる台風にも負けず~東ネグロス州バナナ生産者~

2015年2月24日

昨年11月28日、台風21号(フィリピン名:クイニー)がネグロス島中部を横断し、東ネグロス州では、バナナ全体の約20%にあたる約18,000本が倒伏してしまいました。昨年シリーズで紹介したボイ・カトウバイさんが住むロウアカンダボン村でもバナナ全体の約30%が倒れてしまいました。

2013年11月の超大型台風ヨランダでは若いバナナの木も茎から折れたため、回復には1年程度の時間がかかりましたが、今回被害を受けたのは実を付けたバナナだけ。3-4ヶ月後には次の世代のバナナが成長し収穫できる見込みのため、生産者も大きく落胆しているわけではありません。

ロウアカンダボン村の生産者、ホメルさん

ホメルさんは2008年からバランゴンを出荷している生産者。作付拡大に取り組み、バナナの手入れも丁寧に行い、バランゴンを3,000本まで増やしてきました。しかし、台風によって毎週1,500本程度の出荷量が半減してしまいました。ホメルさんの収入のほぼ100%がバランゴンからです。半減は大きな打撃ではあるものの、主食であるトウモロコシと野菜は自給できており、買うのは干し魚、コーヒー、調味料程度なので何とかしのげるとのことでした。

ATCは倒伏した約18,000本の植え替え用苗の植え付けに際して1本あたり6キロの鶏糞を配布して、生産者が早くバナナ生産を復興できるように支援しています。これにより7-8月頃には台風前の生産量まで回復できる見込みです。

近年、フィリピンでは大型台風が度々発生しています。また、進路が南下しミンダナオ島を通過したり、発生期間が長期化するなど異常気象の影響が及んでいると考えられています。

台風以外にも、東ネグロス州では1月から強風の影響でバナナの葉っぱが切れ切れになる被害が生じています。ネグロスでは例年1月からアミハンと呼ばれる北東季節風が例年吹くのですが、特に今年のアミハンは強く、生産者からは台風のような強風が吹いているという声が上がっています。バナナの葉っぱが切れ切れになると、光合成をうまくすることができず、生育が遅くなる、実が大きくならないなど、バナナの成育に影響してしまうので、生産者も心配しています。

強風で切れ切れになったバナナの葉

因みにアミハンは(フィリピンで他の季節に吹く風と比べると)冷涼で乾燥した風で、シベリアの寒気が吹き込むものだそうです。元をたどると日本の冬の季節風と同じなんですね。

読者アンケート

よろしければ、このニュースを読んだ感想をお聞かせください。生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
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【バナナニュース】ボイさん・アナさん一家の物語 最終編

2015年2月4日

バナナニュースでは6回にわたって東ネグロス州マンフヨッド町ロウアカンダボン村のバランゴンバナナ生産者であり、オルター・トレード社(ATC)地域開発担当スタッフでもあるロッドジム・カトゥバイさん(ボイさん)とパートナーのアナさんを紹介してきました。二人の出会いからこれまでの家族のストーリー、バランゴン民衆交易との関わり、ボイさんにとって初めての海外旅行となった日本訪問、そして最終回は長女リゼルの結婚式で大団円を迎えました。

読者アンケートではたくさんの方から感想、コメント、家族へのメッセージが寄せられました。改めてお礼を申し上げます。ボイさん、アナさんへのメッセージはご家族にすべて伝えました。

ボイさんボイさんからのコメントです。
「自分の暮らし、家族、農業や家畜の取り組みに関心を持って、たくさんのメッセージを下さったことを大変うれしく思います。昨年は日本の2つの生協が私の村を訪問して下さり、10月には私が日本で消費者の方々と交流するという本当に貴重な機会をいただきました。ロウアカンダボン村の生産者がどのように消費者と関係性を築いてきたのか、他の村の生産者にも共有したいです。」

もっともメッセージが多かったのが最終回リゼルの結婚についてでした。

ボイさん・アナさん一家の物語⑥ ~長女リゼルの結婚式~

○ 甘いバナナがよりスウィートに感じます!
○ 結婚式の写真が、バナナとともに届きました。ご結婚、おめでとうございます。フィリピンでも、かかあ天下の家庭が幸せなようですね!
○ お幸せな笑顔を見て私までも幸せな気持ちになりました。軽トラックに乗って教会に向かう写真は映画のワンシーンのようです、などなど。

リゼルさんはマンフヨッド町にある小学校で臨時教員として働き始めました。みなさんからのメッセージに対しては、暖かいメッセージに心からの感謝の気持ちをお伝えしたい、との返事がありました。

ATJでは今後もボイさん、アナさん、リゼルさんの様子を折に触れてお伝えしたいと思います。