みんなの力を合わせて乗り越える~台風オデットの被害を受けて~
2021年12月16日から17日にかけてフィリピンを通過した大型台風22号(フィリピン名:オデット)により、バランゴンバナナ及びマスコバド糖の原料となるサトウキビの生産者たちは大きな被害を受けました。オルタートレード・フィリピン社(ATPD*1社長のノルマ・ムガールさんに被害を受けたネグロス島の復興状況を聞いてみました。
サトウキビ畑の状況
台風が通過した時期は、サトウキビの収穫シーズンが半分過ぎた<らいの頃でした。本来、サトウキビは強風に強い作物と言われていますが、今回の台風ではたくさんの茎がなぎ倒されました。その影響で糖分含有量が減り、砂糖としての生産量が減ってしまうおそれがありましたが、台風後の天候がよく、サトウキビの回復がよかったため、心配したほどの影響はありませんでした。ただ、泥にまみれたり、強風で絡まりあったサトウキビを収穫するのは困難を要し、通常より収穫に時間や労力がかかりました。そのため、余計にかかった人手の労賃は、災害支援の募金から補填しました。
まずはバナナ畑の復興を
台風の通過によりネグロス島の生産者たちのバナナは、ほとんどなぎ倒されてしまいました。今回の台風は今までになく最悪だったと生産者が口々に言っていました。どれだけ民衆交易のバランゴンバナナが生産者たちの暮らしを支える基盤だったのかを痛感しました。まずはバランゴンバナナを復興させることが生産者たちにとって最優先です。
それを実現するために、生産者たちに肥料(鶏糞)を配布し、散布してもらうことにしました。これまで施肥は限られた地域でのみ実施してきましたが、今回は村の中の橋が壊れたり、道路状況が悪かったりするために肥料を運搬できない地域を除いて全産地に配布しました。今年は乾季にも雨が降り、バナナの成育にとって好条件だったことも手伝って、葉っぱが元気で実の成長が早くなり、施肥の効果を多くの生産者が認識しました。
結の精神で
一時的に仕事がなくなってしまったバナナの買付や運搬を担う現場スタッフ、バナナの箱詰めをするパッキングセンターで働くパッカーたちも、生産者の畑に出向いて一緒に作業を実施してもらうことにしました。フィリピンには「バヤニハン」という、共同体での助け合い、相互扶助の制度*2がありますが、それをバナナの復興においても意識的に実施したのです。現場スタッフには対価として日当を支払いました。
現場スタッフの中には生産者である人もいますが、雇用されて働いている人も多くいます。これまでは単にバナナを買い付けたり運搬したりすることが主で、生産者のことについて知る機会がほとんどない人もいました。今回生産者たちの畑に行くことにより、バナナが作られる背景や生産者のことを知るきっかけになりました。生産者や畑のことを知ることで、それが自分たちの仕事とつながっているという意識を持ってほしいし、これからも その意識を高めていかなくてはなりません。
今回の台風被害は甚大だったものの、施肥や 「バヤニハン」の実践はバランゴンバナナの生産者や現場スタッフの意識改革を促したとも言えます。施肥の効果もあり、バナナの回復が 1~2ヵ月早まっており、9月頃から前年の平均出荷量程度に回復する予定です。
今回の台風からの復興は、日本の皆さんからのご支援がなければ、すべての被災地へ手を差し伸べることはできませんでした。日本からの応援によって生産者たちも復興に向けて、また歩みだすことができました。すべての関係者が感謝と希望、目的をもって懸命に前に進もうとしたこの復興事業は、民衆交易の歴史の中に刻み込まれることでしょう。
インタビュー・まとめ 吉澤真満子(よしざわ・まみこ/ATJ)
*1オルター トレード・フィリピン社:バランゴンバナナ、マスコバド糖の輸出を担っている。
*2日本の農村社会にある「結(ゆい)」に相当。
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