SAVE Negros:環境にやさしい持続可能な農村コミュニティづくり-その2-
農地改革後、元サトウキビ労働者たちの自立への取り組み
◆ダマ生産者協会がめざすこと
『私たちにとって強い組織づくりとは、自分たちの考え方で土地を耕作できて、生産性をより高めていける力を持つこと。多様な作物栽培や畜産を含めての有畜複合農業をすすめること、自己資金の積み立てができること、子どもたちを学校に通わせ、衛生環境もよく快適な家屋に住めること、みんなが楽しく暮らせ、美しい風景があること。このことが、私たち大人が過去に経験してきた厳しい状況から、子どもたちを守る手段なのです』
オルタートレードが、ダマ農園の人びとに出会ったのは2004年でした。
ダマの生産者たちは、農地改革が実施された後にサトウキビの有機栽培や環境活動に取り組んできました。今では、オルタートレードのマスコバド糖原料のサトウキビに関しては、最も安定した生産団体に成長しています。
2006年には有機認定を取得し、2012年には最優秀フェアトレード団体としての認定を取得しました。さらに、フェアトレード市場にマスコバド糖を販売することで、プレミアム価格を得ることができるようになりました。
土地を手にするまで
こうしたダマの生産者たち(DAFWARBA:Dama Farm Workers Agrarian Reform Beneficiaries Associationメンバー)の歴史は、彼らがサトウキビ農園労働者だったころ、正当な労働者の権利を勝ち取るための困難と闘争から始まります。
ダマ・サトウキビ農園は、フィリピン政府の農地改革プログラムの対象となり、1992年に最初のダイアローグが行われ、幾度とない交渉の末2003年6月にようやく、土地所有裁定証書(CLOA)が発行されました。
当時、彼ら(農地改革受益者たち)が土地について何か要求することに対して、地主の猛烈な反発が続きました。時には抑圧行為や暴力ざたになることさえもありました。農園労働者(農地改革受益者)たちのなかには、解雇されたり地主が雇う武装した民兵に殴られたり、嫌がらせで農園で働くことができなくなったりする人びとも続出しました。そうした辛い経験は、ダマの仲間どうしが結束して協力する原動力ともなりました。
生産者としての自立を目指して
1988年に採択された包括的農地改革法は、農業労働者(農地改革受益者)を保護し、貧しい小規模農民を支援する法令であるべきものでした。土地なし農民と農園労働者は1人当たり平均1ヘクタールの農地を手にして、そこを耕作することで貧困から抜け出せるであろうという計画でした。
しかしながら、このプログラムは不十分なもので、労働者の生活をよくしていくためには、さらに土地が必要で、その土地で生産性をあげるためには資金や技術支援などが必要でした。農地改革受益者とは、純粋なサトウキビ労働者で、サトウキビ農園制度のなかで不十分な賃金を受けとり、農地を管理できる何の農業技術もない労働者でした。
ダマ農園の農地改革受益者たちは、支援団体の助けを借りながら、生産者協会として組織力をつけ、農地改革で得た個人の土地を共同化して集団経営の形をとりました。
DAFWARBAメンバーの土地は、合計で90.31㌶の耕作地があります。そのうち40.69㌶にサトウキビが作付けされ、10.10㌶に自給用の米をつくることを決めて実施してみました。2015年にはメンバー用の米は自給できるようになり、余剰を販売できるようにもなりました。
残りの38㌶はマホガニー林となっています。この林は、元々地主が、サトウキビ農園の土地を農地改革対象外になることを目論んで、マホガニー林に仕立てたものでしたが、農地改革を免れることはできずに、立派なマホガニー林となりメンバーの財産となりました。
ダマの生産者たちは、さらに野菜づくり、養鶏や養豚、魚の養殖などを始めました。
農業用の水を確保するために、地方行政や民間団体と連携して灌漑設備もつくりました。
余剰生産物の販売のために、精米所や食肉加工なども手掛けています。
生産者たちの収入源も多様になり、またサトウキビもマスコバド糖として民衆交易やフェアトレードという消費者との信頼関係のなかで取り扱われるようになりました。
そうした彼らにとって、AFTAによる関税引き下げ問題の影響はさほど大きくなさそうです。
ダマの生産者たちは、農園労働者から生産者となり、サトウキビのモノクロップ生産から多様な有畜複合農業へと変革してきました。
それは、ダマ生産者協会としてメンバーたちが、子どもたちの未来を守るために目ざすことを確実に実行してきた成果なのです。
(ATC News Letter: People’s Link Issue No.3 April 2015より要約)
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