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たくさんの人びとの手作業・手仕事で生み出されるマスコバド糖 from フィリピン(PtoP NEWS vol.42 2021.02)

たくさんの人びとの手作業・手仕事で生み出されるマスコバド糖 from フィリピン(PtoP NEWS vol.42 2021.02)

ネグロス島、サトウキビの収穫風景

 

お菓子作りにも、お料理にも、コーヒーにも個性を残しつつも調和する、絶妙なバランスで多くの皆さまに愛されているロングセラー商品マスコバド糖。

マスコバド糖担当となって約1年。黒糖のような癖のない、白砂糖のような淡泊な味でもない、黒とも白とも似つかないこの不思議なお砂糖の由縁を知るために、2019年11月、産地であるフィリピン・ネグロス島を初めて訪れました。

 

カンラオン火山の麓に広がるサトウキビ畑

ネグロス島は、別名「砂糖の島」と呼ばれるほど、古くからサトウキビ栽培が盛んです。サトウキビがよく育つ温暖な気候と、カンラオン火山の麓で培われたミネラル豊富な火山灰土壌、収穫後のサトウキビを運びやすいゆるやかな傾斜の土地。色々な要素が相まって、フィリピンの砂糖生産の半数以上を占める一大産地です。

しかしその背景には、スペインの植民地時代にサトウキビ産業が持ち込まれ、米国が経済制裁したキューバの代わりとしてフィリピンからの砂糖輸入枠を拡大したことで、「砂糖の島」と化した歴史があります。

 

 

サトウキビの収穫

刈り取ったサトウキビをトラックに積み込みます。

西ネグロス州ナカラン生産者協同組合のサトウキビ畑を訪れました。収穫は朝早くから。しかし、さすがは熱帯地方。朝から強い日差しが降り注ぎます。生産者は涼しい顔で作業に当たりますが、なかなか過酷な環境です。

サトウキビは手刈りで収穫されます。私も収穫体験をさせてもらいました。やはり素人、前夜に雨が降ったためか、地面がぬかるんでいて、力が伝わらず、生産者のように素早くきれいに切れません。熟練のスキルが必要なようです。ちなみに、沖縄など日本で栽培されるサトウキビは、現在は機械での収穫が主流だそうです。余計な枝葉を取り除きながら手作業で収穫する方法は、機械での収穫に比べて、土などの不純物を含みにくいと言われています。それがマスコバド糖のクセの少ない味につながっているかもしれません。

収穫後は束にして作業員が肩に担ぎ、両足の幅程しかない細いはしごを渡りながら、トラックに積み込みます。その重さは約30キロ!バランス感覚と強靭な体がないと為せない技です。

 

シンプルな製法

シロップを手作業でかき混ぜると、乾燥してみるみる粉末になります。

通常の白砂糖は、煮詰めたジュースからろ過を繰り返し、遠心分離機にかけ、結晶化したものから作られますが、マスコバド糖は、サトウキビから取り出したジュースを煮詰めて乾燥させて作ります。

この製法を現地では「モスコバド」と呼んでいます。マスコバド糖の語源です。運ばれたサトウキビは、ベルトコンベアーに流され、短くカット。ローラーで搾りだされ、集められたジュースを、不純物を取除きながら、シロップ状になるまで煮詰めていきます。

また、搾汁後のかすも燃やして工場の燃料として利用されます。

 

大きな“ダマ“もつぶして使う

ダマを潰して粉末状にします。

乾燥後、粉末になったマスコバド糖は袋詰めして保管します。

また、乾燥中にダマにならないよう注意しますが、シンプルな製法ゆえ、それでもダマになりやすいのです。パッキング現場で、様々な大きさのダマを見つけました。中にはソフトボール位の大きさのものも。

そのダマも無駄にせず、機械で揺すりながら小さく切断していきます。さらにヘラで潰して粉末状にして、手作業でパック詰めします。

 

みんなでつくるから「“マス”コバド」

収穫から製造までを一連の流れを振り返ると、大地と太陽の恵みを存分に含んだサトウキビの成分をできる限り損なわない作り方を改めて確認できました。一方、サトウキビ生産者から製糖工場の工員の方々まで、たくさんの人の手作業・手仕事により成り立っているのです。マスコバド糖は、みんなでつくるという意味を込めて「“マス”(大衆“=Mass)コバド」と名付けられました。マスコバド糖を使う消費者の皆さんもその“マス”に含まれています。親しみを持ってご愛顧いただければ嬉しいです。

中村智一(なかむら・ともかず/ATJ)

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