レポート

一刻も早い停戦を - 2023年10月ハマス、イスラエル武力衝突

2023年10月20日

イスラエルとパレスチナ・ガザ地区において10月7日に始まったガザ側からのロケット弾と、イスラエル側からのミサイルの応酬は未だ止むことがなく、双方の市民に多数の死傷者が出る事態となっています。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、現地時間の10月18日時点でイスラエルでは死者1,300名、負傷者4,562名(イスラエル政府の発表)、ガザ地区では死者3,478名、負傷者12,500名(ガザ保健省の発表)にのぼっています。ガザ地区では食料、水、電気、燃料、医薬品が不足し、人口の半分近くの100万人が空爆を避けるために避難生活を強いられ、人びとの暮らしは困難を極めています。

ATJは2004年よりパレスチナ農業復興委員会(PARC)、パレスチナ農業開発センター(UAWC)からヨルダン川西岸地区の農民が生産するパレスチナのオリーブオイルを輸入しています。西岸地区ではこれまでも武装したイスラエル人入植者によるオリーブ生産者への暴力行為、オリーブの木の破壊行為が頻発していましたが、ガザでの武力衝突が始まってから暴力行為がエスカレートし、子ども18名を含む64名が命を落としています。10月は年に1回のオリーブの収穫シーズンで、一年間で最も村に活気がある時期です。しかし、今年は入植者やイスラエル軍の暴力を恐れ、農民は村から離れた農地では収穫ができなくなっています。

PARC、UAWCは農民支援をしているNGOですが、ガザ地区においても活動をしています。PARC及びUAWCではそれぞれ10月10日と11日に声明を出し、一刻も早い停戦とガザ地区の人々が食料やライフラインが確保できるよう国際社会が行動を起こすよう強く求めています。ATJもこの声明に全面的に賛同します。ガザ地区、イスラエル市民の犠牲者がこれ以上増えないよう、ハマス、イスラエル政府双方が武力行為を直ちに停止することを求めます。

私たちATJは国際社会の一員としてガザ地区の人々、西岸地区の人々が安心して暮らせるようにできることを最大限行う所存です。

オリーブ収穫の様子(2022年)、後方の丘の上にあるのは入植地。

パレスチナ農業開発センター(UAWC)

ガザで意図的に飢餓を発生させているイスラエルに関する緊急声明

2023年10月11日

イスラエルは5日間にわたり、ガザ地区を壊滅させるためガザ地区への攻撃を続けており、前例がない緊急的な状況に陥っています。イスラエルの行為は、想像を絶する人道的大惨事を引き起こしています。パレスチナ保健省の発表によれば、現時点(10月11日)で1,055人の犠牲者と5,184人の負傷者が出ています。

イスラエルはガザ地区に対して全面戦争を宣言し、200万人を超えるガザのパレスチナ人住民が電気、水、食料、燃料、医薬品、あらゆる人道支援にアクセスすることを認めない無慈悲な封鎖を課しています。イスラエルのヨアヴ・ギャラント国防相は10月9日、この戦略について明言しました。 「我々はガザ地区を完全に包囲する。電気も、食料も、水も、燃料もない。我々は野蛮な人間と戦っており、それに応じた行為をとっている」。

イスラエルが戦争の武器として計画的に飢餓を利用していることに対して、国際社会が断固とした緊急性と決意を持ち、直ちに対応することを求めます。

イスラエルは病院、学校、モスク、市場、そして居住地区全体を無差別に破壊しています。さらにイスラエルは、ガザ地区への人道援助物資を空爆するとエジプトを脅し、援助物資輸送団をエジプトに撤退させました。ガザ地区からの唯一の国際的な出口でありエジプトへ続くラファ検問所は、イスラエルによってこの24時間の間に3回も爆撃されました。

この計算された攻撃は、ガザ地区住民が絶え間ない爆撃から逃れ、必要不可欠な人道援助にアクセスするための唯一の手段を断ち切っています。イスラエルがガザ地区への電力供給を遮断したため、唯一の電力源はガザ発電所となっていましたが、この発電所の燃料は底をつきました。イスラエルは、燃料を受け取った場合、発電所を攻撃すると脅しています。

イスラエルの攻撃は、ガザ地区住民の暮らしを支えるあらゆるインフラを計画的に破壊しています。食料生産に不可欠な農業や漁業のインフラは、容赦なく攻撃されています。漁師たちは、汚水が流出する海に近づくことができません。港は損壊し、漁に使う道具は跡形もなくなっています。分離壁に近い農地はイスラエル軍の空爆の標的となりやすく、農地が破壊されていなくても日々の農作業ができません。

農務省によれば、空爆は農地や養鶏場に甚大な被害を与えていますが、現場の状況を正確に把握することは不可能であるとのことです。食料の在庫は壊滅的に減少しており、ガザ地区のどこの商店でも深刻な品不足が報告されています。こうした攻撃を受けて、陸も海も想像を絶する環境破壊に直面し、人々の暮らしの復興はさらに阻まれることになります。

イスラエルの戦略は、爆撃を生き延びた人々にも生計手段がない将来を強いることを意図しています。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、この攻撃によって国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の食料援助は中断し、少なくとも112,759世帯が影響を受けています。養鶏・家畜部門は、深刻な飼料不足のために崩壊寸前であり、1,000人以上の牧夫の生活を危険にさらし、10,000人以上の生産者に影響を及ぼしています。これは、ガザの全人口に対する動物性タンパク質の供給と、肉や新鮮なタンパク源の供給を脅かします。鶏肉の市場への輸送は事実上停止しており、牛乳は冷蔵することも工場に販売することもできず、その結果、1日35,000リットルの牛乳が腐敗すると予想されています。海の封鎖により、4,000以上の水産業者が危機にさらされています。ガザの農業、養鶏、牛、魚、その他の生産物は、停電により冷蔵、灌漑、孵化や機械が機能せず、腐敗が進んでいます。

イスラエルがこうした戦術を用いるのは決して新しいことではありません。今回の衝突が始まる前、ガザ地区の人口の約65%が食料難に陥っていました。ガザ地区の農地の46%以上がアクセス不能になり、ガザ沖での漁業はイスラエルによって3〜6海里沖までに制限されているため、漁業は深刻な苦境にあえいでいました。

食料不安は人間が作り出した危機であり、イスラエルはガザ住民の大規模な飢餓を作り出しています。

国際社会が介入し、この危機をただちに終わらせることは、道徳的、法的な義務です。基本的な必需品である食料がガザの人々に届くように、市民のインフラを標的にした計画的な攻撃を即刻中止しなければいけません。

私たちは国際社会に対し、イスラエルによるガザ地区住民の虐殺を止め、封鎖を解除し、援助物資が入るための人道的回廊を確立するために、直ちに行動を起こすよう求めます。

ヨルダン川西岸地区 パレスチナ人に銃を向ける入植者(ヘブロン、トワニ村、UAWC提供)
ヨルダン川西岸地区 入植者が農道を封鎖(ナブルス、ブリン村 UAWC提供)

パレスチナ農業復興委員会(PARC)

イスラエル占領軍によるガザ地区の人々の虐殺を止めるための呼びかけ

2023年10月10日

誰もが知っているように、ガザ地区の人々はこの16年間、世界最大の「天井のない監獄」に住んでいます。そして、イスラエル・シオニスト軍による定期的な攻撃に苦しんできました。さらに、ガザ地区では水、食料、電気、医療品(このほかにも多数)へのアクセスを奪われています。この封鎖が流血の惨事を引き起こし、紛争をエスカレートさせ、すべての人々を地域戦争へと巻き込んでいるのです。

イスラエル軍による恐ろしい暴力と高層建築、住宅、病院、礼拝所、市場や広場に集まる市民を計画的に標的にした攻撃により、今日まで143人の子ども、105人以上の女性、高齢者を含む600人以上のパレスチナ人が命を失い、負傷者は4000人以上にのぼっています。

ガザ地区で行われた大虐殺は身の毛もよだつほど恐ろしいものです。家族全員が存在を消され、父親や母親を失った子どもが残され、病院の遺体安置所は子どもや女性の遺体で埋め尽くされ、土地や家屋はまっさらになってしまいました。

今こそ、世界中のすべての人々が不正義、侵略、占領に立ち向かう時です。従って、私たちは、世界の束縛を受けていない人々と政府に対して、この侵略に対する効果的で影響力のある姿勢を求めます。

さらに、私たちは、緊急の基本的サービスの提供を加速させ、避難所を求めて爆撃を受けた家から避難したり、国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)の学校に身を寄せている13万7千人以上のパレスチナ市民に届くようにすることを求めます。

結論として、私たちはパレスチナ市民の命と財産を保護し、占領政府に国際法、特に戦時下における市民の保護を定めた1949年のジュネーブ4条約と国際的に正当性のある議を尊重するよう求めます。

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