<ヨルダン川西岸地区からの緊急警報>イスラエルによる侵略と抑圧の激化
ガザ地区での停戦発効後、ヨルダン川西岸地区でのイスラエルによる軍事攻撃がこれまで以上にエスカレートしています。ヨルダン川西岸地区ラマッラーに本部を置くパレスチナのオリーブオイルの出荷団体、パレスチナ農業開発センター(UAWC)より、緊急警報と行動の呼びかけが届きました。
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2025年1月27日
パレスチナ農業開発センター(UAWC)
日本語訳:NPO法人APLA
UAWCは、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区(以下、西岸地区)でイスラエルによる暴力が急速に激化していることについて、緊急アピールを出します。ガザでの「停戦」後、イスラエル占領軍は、軍事的戦略ならびに要員を西岸地区に移すと発表しました。それに伴い、イスラエル占領軍は、西岸地区での作戦の範囲と強度を拡大させ、「ナハール旅団」を含む部隊をガザから西岸地区に再配置する計画を宣言しました。これらの動きは、パレスチナの土地に対する支配を拡大し、パレスチナ社会を解体しようとするイスラエルの組織的な動きの明らかな強まりを示唆しています。
進行中の侵略と抑圧の激化は、パレスチナ人の存在を消し去り、入植植民地の現実を押し付けることを目的とした、組織的な民族浄化政策の一環です。強制移住、家屋の取り壊し、重要なインフラを標的とした攻撃を含む行為は、国際法上の人道に対する罪にあたります。
イスラエル占領軍の軍事作戦の激化は、西岸地区のジェニン市ならびにジェニン難民キャンプでの大規模な侵攻に見られるように、ガザと同様の壊滅的な破壊をもたらす戦術を露骨に採用しています。イスラエル占領軍は、空爆、ミサイル、重機を使って、2,000世帯以上を強制的に退去させ、何十人もの死傷者を出し、道路や重要なインフラを故意に破壊しました。ジェニン政府病院を孤立させ、数百人の市民と医療従事者を病院内に閉じ込めたことも含まれます。
こうしたイスラエル占領軍の軍事作戦の激化と並行して、イスラエル人入植者たちも暴力的な攻撃を強めており、ガザでの軍による壊滅的破壊をモデルにし、西岸地区のパレスチナ人の街や村を完全に破壊する「第二のナクバ」を公然と呼びかけています。イスラエル人入植者による暴力は記録的なレベルで急増し続けており、イスラエル政府による完全な免責と支援のもとにパレスチナ人コミュニティを標的にした組織的な攻撃が行われています。「ヨルダン川西岸地区保護コンソーシアム(WBPC)」は、身体的暴行、放火、財産の破壊を含む入植者による暴力事件が2,274件以上記録されていると報告しています。
西岸地区における土地収奪は、歴史的な規模に達しており、この1年だけでも数千人のパレスチナ人が土地を追われ、生活を奪われ、土地との歴史的なつながりを絶たれてしまいました。
イスラエルによる西岸地区の土地収奪は依然として続いており、2024年には、過去20年間で収奪された面積の合計よりも広い土地がイスラエルの占領体制によってパレスチナ人から奪われました。西岸地区の大部分を占め、歴史的にも食料の供給を果たしてきたC地区は、最も深刻な脅威に直面しています。前述のWBPCは、C地区内の195のコミュニティ(58,000人のパレスチナ人)が強制移住の危険にさらされていることを確認しています。このうち39,000人は、入植者による暴力の激化、土地へのアクセスの制限、家屋やインフラの継続的な取り壊しといった差し迫った脅威にさらされています。WBPCの報告によると、これら195のコミュニティからの強制移住により、C地区の18%、すなわち西岸地区全体の11%が、入植地拡張のためにイスラエルに乗っ取られてしまう危険にさらされているといいます。すでに約2,000人のパレスチナ人が、入植地拡張のために没収された自らの土地から強制移住させられています。国際的緊急介入がなければ、さらに数千人のパレスチナ人が家と生計手段を失うことになります。
さらに、検問所、ゲート、道路封鎖地点が急激に拡大していることによって、西岸地区全域でパレスチナ人が移動停止を余儀なくされています。「植民地化・分離壁抵抗委員会」の報告によると、西岸地区全域で898の移動を妨げる障害物があり、特にC地区のコミュニティ間の移動と基本的サービスへのアクセスが制限されています。重要な道路や村の入り口が封鎖され、緊急医療、教育、人びとの生計手段が著しく妨げられています。「パレスチナ赤新月社(PRCS)」は、負傷者や遺体へのアクセスが数時間遅れたり、完全に拒否されたりしているケースを報告しています。このような計画的な隔離によって、パレスチナ人コミュニティは、重要なサービスを受けることも、生活を維持することもできず、窮地に陥っているのです。その一方で、イスラエル人入植者たちは自由に何の妨げもなく、移動し続けているのが現状です。
今後数ヶ月のうちに、イスラエルは、ヨルダン渓谷の中央部と北部を中心とした西岸地区の約30%を皮切りに、西岸地区の大部分を併合しようとすると私たちはみています。この動きを後押ししているのは、パレスチナ人の一斉移住について言及した米国のドナルド・トランプ新大統領にほかありません。私たちはまた、移動制限がさらに厳しくなり、西岸地区内の街、村、難民キャンプが互いに完全に隔離され、パレスチナ人にとって地域間の移動がほぼ不可能になり、生命が脅かされるようになることも予見しています。このことは、パレスチナ人が孤立した居留地やゲットーに住むことを余儀なくさせるでしょう。第二次世界大戦中にユダヤ人が強いられたように––。
私たちはまた、もうひとつの重大な脅威も認識しています。ある国際的な援助団体が、イスラエルの入植政策に同調し、その圧力に屈する形で、C地区を援助資金提供の対象から除外し始めていることです。私たちは、パレスチナの農業セクター全体がC地区に根ざしているということを改めて強調します。この重要な地域を除外した農業セクターへの介入は無意味であり、パレスチナの農民が直面する課題の核心に取り組むことはできません。
緊急行動の呼びかけ
西岸地区におけるイスラエルによる侵略と抑圧の激化は、暴力、強制移住、植民地化を連動させた戦略によるものです。国際社会は、イスラエルの責任を追及し、パレスチナ人の生命を守るために断固として行動すべきです。また、各国は、イスラエルはヨルダン川西岸の占領を終結させなければならないという国際司法裁判所と国連総会による決定(注)が示している法的義務を遵守しなければなりません。
UAWCは以下の通り呼びかけます:
- 即時の国際介入:西岸地区における軍事作戦と入植者による暴力の停止の要求
- 責任にもとづいた措置:武器禁輸、貿易停止、制裁の実施、国際司法裁判所で継続中の裁判を含む国際的な法的措置の支援
- パレスチナ人の不動の抵抗と食料主権への支援:強制移転、破壊、生計手段の喪失に対抗しているパレスチナ人コミュニティに対して、破壊された農地やインフラを再建するための直接的な財政的・物質的支援の供与
西岸地区の状況は悲惨であり、イスラエルによる侵略と抑圧は日々激化していくことが予想されます。私たちは強く求めます、世界中の市民社会、政府、あらゆる組織が連帯を強め、パレスチナ人にとっての正義を求めて動くことを。何もしないことの代償は、失われた命、破壊された地域社会、そして深刻化し続ける人道危機によって測られることを忘れないでください。
注(訳者補足):
- 国際司法裁判所は、2024年7月19日、イスラエルが続けるパレスチナの占領政策が事実上の併合であり、国際法違反であるとの判断を示し、イスラエルに対し、可能な限り速やかな占領状態の終結、入植活動の即時停止とすべての入植地の撤去の義務があるとの勧告的意見を出した。
- 国連総会は、2024年9月18日、国際司法裁判所が7月に出した勧告的意見を踏まえ、イスラエルに対し、占領下のパレスチナ領域での「違法な駐留を遅滞なく終結させる」ことを要求する決議案を、日本を含む賛成多数で採択した。
原文(英語)はUAWCのウェブサイトからご覧いただけます。
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UAWCからの呼びかけを受け、ATJとしてどういった具体的な行動が取れるか、検討していきたいと思います。
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