パレスチナ・オンラインセミナー「パレスチナのオリーブ生産者は今 2024」報告
2024年12月19日、オンラインセミナー「パレスチナのオリーブ生産者は今 2024」を開催しました。
1 年以上にわたり続いたガザ地区での大量殺戮。パレスチナのオリーブオイルの産地、ヨルダン川西岸地区でもイスラエル軍や入植者によるパレスチナ人に対する暴力が頻発し、オリーブ生産者は日常的に暴力への恐怖や不安にさらされ、移動も極端に制限された生活を強いられています。2023年に引き続き、オリーブの収穫シーズンを迎えた現地から、イスラエル占領下の生産者の状況を伝えてもらうセミナーを開催しました。
今回は、パレスチナ農業開発センター(UAWC)の代表フアッド・アブサイフ氏より、ヨルダン川西岸地区の人びとが置かれている一般的な状況について、アルリーフ社(パレスチナ農業復興委員会PARCのフェアトレード事業会社)代表サリーム・アブガザレ氏より、2023年10月以降のオリーブ生産者の状況と2024年のオリーブ収穫について発表していただきました。
○フアッド・アブサイフ氏報告動画
○サリーム・アブガザレ氏報告動画
○UAWC 生産者ムナ・アワディさんインタビュー動画
トゥルカレム県のオリーブ生産者、ムナ・アワディさんのインタビュー動画。分離壁によって農地の半分を奪われたうえ、イスラエル軍の監視によって十分に農作業もできません。
○UAWC ファデル・ハマディさんインタビュー動画
ファデル・ハマディさんは、ヘブロン県アル・ムファルカ村に住む遊牧民。四方を入植地に囲まれ、ファデルさんを土地から追い出そうとする入植者の暴力や嫌がらせを日常的に受けています。
○PARC オリーブ生産者動画
トゥルカレム県ダイル・アル・グスーン村のオリーブ生産者は、分離壁の反対側にある畑にはイスラエル軍の許可なく立ち入ることはできず、2023年10月以降、その規制はいっそう厳しくなっています。
○サリーム氏、フアッド氏メッセージ動画(字幕付き)
お二人よりオリーブオイル民衆交易の意義と日本の皆さまへのメッセージを語ってもらいました。
質疑応答では、「なぜ、イスラエル人は、執拗にオリーブの木に対して攻撃をするのでしょうか」という質問が出ました。サリームさん、フアッドさんの回答です。
サリームさん
「一番の理由は、パレスチナの農業部門において最大の農産物であり、本当に西岸全域にオリーブ畑が広がっていることです。これは60年以上の占領の歴史を見てもわかることですが、現在イスラエルに接収されて入植地になった土地というのは、もともとはオリーブが植わっていたところがほとんどです。ですから、イスラエルがパレスチナの土地に入植地を拡大していくという大きな計画をより効果的に進めるため、戦略としてオリーブを狙うのです。こうして農民がオリーブの栽培自体が危険だと感じること、こうした脅威を感じさせることも意図しているのです。」
フアッドさん
「一つ付け加えさせていただきます。パレスチナ人にとってオリーブの木というのはアラビア語で“スムード”、つまり、忍耐強くここに留まり続けること、抵抗の象徴であり、パレスチナ人自身が根を下ろしているということの象徴なのです。エルサレムの隣のワラジャ村に樹齢5000年、世界最古と言われているオリーブの木があります。これがまさに何千年もパレスチナ人がここに生きてきたことの証であり、つまりオリーブの木を攻撃したり抜いたりするというのは、パレスチナ人をこの土地から引っこ抜くという象徴的な意味もありますし、そうした意図が入植者の側にはあるのだと思います。だからこそ、パレスチナ農民の人たちは命をかけてオリーブの木を守るのです。」
セミナーには141名の方が参加しました。参加者からは様々な感想や生産者へのメッセージを頂きました。多数お寄せいただいたの中からいくつかご紹介します。
<感想>
「パレスチナの厳しい状況に胸が詰まりました」
「一般メディアでは伝わってこない、リアルな西岸地区の現状を当事者の言葉で直接聞くことができて良かったです」
「想像していた以上にパレスチナの人々が日々の生活に制約を課されていることがわかりました」、
「パレスチナの人にとってオリーブは命の源なのだということがよくわかりました」
「朝家を出る時、無事に帰れるか分からない…と話される中で、それでもガザの状況は比較にならない、と話されていることがつらく心に残りました。ヨルダン川西岸で被害を受けている方も、ガザのことを思うと声をあげにくいのか…そうした状況が、本当につらいです」
そして、たくさんの方から「パレスチナの皆さんに想いを馳せながら、これからもパレスチナのオリーブオイルを使い続けます」というメッセージも届きました。
<生産者へのメッセージ>
「あの困難な状況の中でオリーブオイルが送られてくるのは奇跡をしか言いようがありません。」
「命をかけて生産・収穫を行っておられることに敬意を表します。」
「土地に根ざして生きる決意を応援します。希望や志をどうか持ち続けてください。」
「生産者の方々の真の笑顔を見られる日を実現したいです。」
「命の危険より自分たちの土地、オリーブを守るという気持ちの強さに感銘を受けました。」
「皆さんが平和にオリーブを栽培できて、私たちがそのオリーブオイルを買い続けられますように祈っています。」
感想や生産者へのメッセージにもあったように、パレスチナの人々にとってオリーブの木はかけがえのないものであることがお二人のコメントからひしひしと伝わってきました。フアッドさんが語っているように、オリーブオイルの民衆交易は、農民が祖先から引き継いだ土地に留まり、オリーブを生産しながら尊厳を持って生き続けるということへの連帯運動であることを実感できたセミナーだったと思います。
○セミナー全編アーカイブ
広報室 小林和夫
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