ドキュメンタリー「”The Iron Wall” 鉄の壁」~パレスチナの人びとの自由を阻む壁~
国際的な意味で「壁」と聞くと、まず思い浮かぶのは「ベルリンの壁」ではないでしょうか。1948年8月13日から建設が始められたこの壁は、当時のソ連が、占領統治していた東ベルリンから西ベルリン(西ドイツ側)への住民流出を防ぐ目的で作られたと言われます。旧東ドイツ領内に飛び地として存在していた西ベルリンを取り囲むようにめぐらされ、1989年11月の崩壊まで40年以上に渡って存在し続けました。
ベルリンの壁は壊されましたが、このように何らかの政治的・差別的な意図を持って大規模に建設された壁に囲まれている場所は、世界中探してもパレスチナにしか見当たらないと思います。
特にヨルダン川西岸地区を取り囲むように建設されているこの壁は、ベルリンの壁の約4.7倍、全長700km以上にも及び、2002年にイスラエルによって建設が始まりました。名目は、「イスラエル国民をテロリストの攻撃から守る」とされていますが、実際にはグリーンライン(1967年の軍事境界線≒現ヨルダン川西岸地区とイスラエルとの境界線)よりヨルダン川西岸地区へ食い込み、その内部に違法に建設されているイスラエル人入植地をイスラエル側へ取り囲むかのように伸びています。明らかに、違法な入植地を強制的に領地として併合する意図が見て取れ、計画上では、ヨルダン川西岸地区の46%がイスラエル側に取り込まれるという試算もあります。
2004年7月、国際司法裁判所は、ヨルダン川西岸地区へ食い込んだ壁の建設は違法であり、壁は速やかに撤去され被害を被った住民への補償がなされるべきであるという勧告を出しています。同年の国連総会決議においても、イスラエルに対し、その勧告に従うように求めた決議が採択されています。
しかしながら、イスラエルはこれらの勧告を一切無視し、今日に至るまで分離壁の建設を続行してきているのです。分離壁がヨルダン川西岸地区に食い込むということは、壁のルート周辺にあるパレスチナ人の土地が奪われ、また分断され、そして壁の「向こう側」が強制的にイスラエルになってしまうことを意味しています。このようにして、ただでさえ占領下で困難を強いられているパレスチナの人々の生活が、さらに奪われていく実態があります。
オリーブオイルを出荷している現地パートナーであるPARCは2006年に、このパレスチナの現状を広く伝えたいとドキュメンタリー「The Iron Wall(鉄の壁)」を制作しました。そして京都YWCA有志の方々が、日本で伝えたいと日本語版を制作し、ご厚意によりこの度、ATJウェブサイトで公開することになりました。10年近く前のものではありますが、ここに含まれている内容は今なおヨルダン川西岸地区で起こっていることです。ぜひご覧いただければ幸いです。
事業部商品二課 若井
制作・著作権:Palestinian Agricultural Relief Committees(2006年)
日本語字幕:京都YWCAブクラ
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