レポート

『遺伝子組み換えルーレット—私たちの生命のギャンブル』完成!

2015年11月4日

『遺伝子組み換えルーレット—私たちの生命のギャンブル』 米国で長く遺伝子組み換え企業の批判を先頭を切って続けているジェフリー・M・スミス氏が監督して制作したドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット−私たちの生命(いのち)のギャンブル』をぜひ日本語で見られるようにしよう、ということでアジア太平洋資料センター(PARC)のよびかけに応じて7月20日から始まったクラウドファンディング、おかげさまで当初の130万円を100万円以上大幅に上回る金額が集まり、このたび、日本語版DVDが完成しました。
 ご協力をいただいたすべてのみなさまに感謝を申し上げます。
 
 このドキュメンタリー映画は遺伝子組み換えがもたらす健康被害について、医療の現場(特に子どもたち)や家畜の病気について専門家、関係者の証言、そして数々の科学的研究結果を集めています。そして健康被害だけ警告するのではなく、どのようにそれから回復可能なのかを示す映画となっており、アレルギーや自閉症の症状に苦しむ子どもたちが回復していく、語る親たちの表情が見る者に勇気を与えます。
 
 映画で登場する米国の医師たちはすでに遺伝子組み換えとの関連の考えられる症例をいくつも扱っており、その事実に驚くとともに、まずはその事実を社会に知らせることから始めなければならないと考えております。

 この遺伝子組み換えによる健康被害問題は米国だけの問題ではなく、米国からの食料輸入に多くを頼る日本にとっても対岸の火事ではすまないものですが、また日本ばかりでなく、実は韓国や、フィリピン、インドネシアなどの国々でも同じ問題が存在していることと考えられます。とりわけ大豆は米大陸からの輸入に依存し、そのほとんどが遺伝子組み換えと考えられます。

 フィリピンでは遺伝子組み換えトウモロコシの栽培が10年間にわたって行われ、深刻な問題になっています。オルター・トレード・ジャパン(ATJ)ではフィリピンの科学者と農民の連帯組織であるMASIPAGが制作した遺伝子組み換えトウモロコシがいかにフィリピン農民を苦しめているかを扱ったドキュメンタリーに字幕をつけて2014年2月に公開しています。 フィリピン:遺伝子組み換えと闘う農民たち

 今年からはベトナムでの遺伝子組み換え作物の耕作が開始され、バングラデシュでは昨年始まったばかりの遺伝子組み換えナス(Btナス)が2年連続の凶作に終わったといいます。インドでは遺伝子組み換えカラシが栽培されようとしており、さらには遺伝子組み換えバナナの導入計画が検討されています。遺伝子組み換えコメであるゴールデン・ライスについては昨年、その承認に向けた宣伝キャラバンがフィリピンをかけめぐりました。

 しかし、残念なことにアジアの生産者や消費者のもとにも、日本の市民と同様、遺伝子組み換えによる被害についてはまだ十分な情報がないというのが現状です。マスコミは語らず、農業指導者や仲介業者ががあたかも農民の問題を解決する技術であるかのような宣伝で導入されていってしまう危惧が高くなっています。こうした中で、この遺伝子組み換え問題をアジアの人びととともに考え、それへのオルタナティブを見出していかなければならないと考えております。

 そして、このドキュメンタリーでも触れられますが、いよいよベトナム戦争で使われた枯れ葉剤に耐性のある遺伝子組み換えが生産間近といわれています。米国環境保護庁はWHOが発ガン性を認めたグリホサートの残留許容量を大幅(大豆などは2倍、ニンジンは25倍)に引き上げました(2013年決定、2014年実施)。遺伝子組み換えの健康被害の問題は今後、さらに深刻になる可能性があることにはやはり強く警鐘をならさざるをえません。

 米国では今回のドキュメンタリー映画などが多くの人びとに見られた結果、遺伝子組み換え食品を規制する声は高まりました。その結果、30の州で遺伝子組み換え食品表示義務を求める動きとなりました。しかし、遺伝子組み換え企業、食品メジャー企業はそれに対して、州や自治体の遺伝子組み換えを規制する権限を奪う通称DARK法案(米国人の知る権利を否定する法案)、HR1599を通そうとしており、すでに下院を通過し、上院での公聴会が開かれています。

 この事態に対して、このドキュメンタリー映画の監督であるジェフリー・M・スミス氏は表示義務を単なる「知る権利」としてキャンペーンするだけでなく、GMOによる健康被害こそ市民にしっかり伝えて、食の危険を知らせていかなければならないというメッセージを発表しています。まさにこの映画のコンセプトが今の米国で焦点となっているのです(DARK 法案、遺伝子組み換え食品表示義務化運動へのジェフリー・M・スミス氏からのメッセージ YouTube)

 こうした事態に対して、日本やアジアで健康被害に警鐘を鳴らし、オルタナティブな食のシステムを消費者に提案していくことの重要性はかつてなく高まっていると思います。ATJでは今後ともアジアなどでの遺伝子組み換え問題の状況や健康被害問題などの問題については継続的に情報を発信していく予定です。

 ぜひこの映画を活用して、まずは自分たちの食を変えていくことからはじめていきませんか?
 
 この映画の公式サイトも作りました。上映会のお知らせフォームもあります。そうやって一人でも多くの人たちに遺伝子組み換え食品の問題を知らせていく運動を広げていければと考えます。

 ぜひよろしくお願いいたします。

『遺伝子組み換えルーレットー私たちの生命(いのち)のギャンブル』公式サイト
 http://geneticroulette.net/
DVDのお求め(アジア太平洋資料センターのサイトに飛びます)
 http://www.parc-jp.org/video/sakuhin/gmo.html

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