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遺伝子組み換えイネ: ゴールデン・ライスの危険

遺伝子組み換えイネ: ゴールデン・ライスの危険

 ここのところ、遺伝子組み換え米、ゴールデン・ライスをめぐって騒がしくなってきています。

 遺伝子組み換えでビタミンAを強化した米、ゴールデン・ライスで発展途上国で深刻な問題になっているビタミンA欠乏症(VAD)に対応しようということで、フィリピンにあるIRRI(国際稲研究所)で開発が進んでいます。現在、商業栽培の開始の承認をめざして、活発なキャンペーンが行われています。

 今年2015年3月には遺伝子組み換え推進論者であるパトリック・ムーアがゴールデン・ライスの承認を訴えるツアーをフィリピン、バングラデシュ、インド3カ国をめぐって行い、4月8日にはビル・ゲイツがIRRIを訪問しています。世界で最も富裕とされるビル・ゲイツはBill and Melinda Gates Foundationという財団を作っており、この財団は慈善活動を目的に掲げていますが、遺伝子組み換えに多額の投資を行っており、遺伝子組み換えを拒むアフリカなどでも遺伝子組み換え普及のために多額を投資しています。そして、このゴールデン・ライス開発のためにも1030万ドル(約12.3億円)という多額の資金をIRRIに寄付していると言われます。

 それではこのゴールデン・ライスはビタミンA欠乏症の解決に役立つのでしょうか?

誤った解決策

 フィリピンの農民や学者のネットワークである市民組織MASIPAGはこのゴールデン・ライスを不要で間違った解決策だと言います。ビタミンA欠乏症や他の栄養失調、飢餓は食品の中の栄養素が欠けているために起こされているものではなく、人びとが適切な食料にアクセスする権利が奪われている貧困状況が生み出しているものであり、社会経済的な問題です。現実にモリンガなどビタミンAを豊かに含む作物を取ることで十分解決ができることができるからです。

 遺伝子組み換え作物はその耕作には農薬や化学肥料が不可欠となります。そして種子も高い費用を遺伝子組み換え企業に支払わなければならなくなります。伝統的な農業をやってきた農民にとってはとても負荷が高くなります。実際にフィリピンで2002年から導入が始まった遺伝子組み換えトウモロコシでは導入の結果、小規模な家族農家は借金を重ねて、農業をあきらめ土地を失うケースも出ています。農薬や化学肥料の投入により土壌が劣化する問題も指摘されています。遺伝子組み換えにより、企業は種子、農薬、化学肥料を売ることで利益を得ることができますが、農民の生活は厳しくなる一方になったとMASIPAGは研究調査結果を発表しています。

 結局、遺伝子組み換えは農民を貧困化させてしまうことで、人びとの栄養状況をさらに悪化させる懸念がひじょうに強いということができます。

ゴールデン・ライスは安全か?

 さらに、このゴールデン・ライスははたして人体にとって安全か、という問題があります。残念ながらこのゴールデン・ライスが人体に安全であるということを保障するデータはありません。逆に、ゴールデン・ライスが危険をもたらす可能性があることが指摘されています。

  • 遺伝子組み換え米は米の遺伝子とウイルスやバクテリアの遺伝子を組み合わせたもの。米の中にそのような遺伝子を組み込むことの安全性は確認されていない。
  • 遺伝子の安定性が損なわれる危険がある。
  • カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)が組み込まれるが、この導入がDNAの撹乱材料になる可能性がある。
  • 免疫を損なったり、人体に毒性を持ったり、あるいは逆に栄養を損なう可能性があるかないか、実験しなければならないが、データがない。
  • 米は自家受粉なので、ゴールデン・ライスが花粉によって他の米を汚染する危険性は少ないとしているが、実際には自家受粉の場合でも花粉の飛来は大きな問題となる。

 ゴールデン・ライスが促進されることで社会的にも農業生産が企業の手に握られてしまうという懸念がある上に、このような健康上、環境上の懸念が払拭されることなく、強まる状況で、ゴールデン・ライスが商業栽培に向けて宣伝されているのが現状だということができます。

アジアでの遺伝子組み換え農業の大規模推進をめざすトロイの木馬

 このゴールデン・ライスはアジアに遺伝子組み換えを大々的に推進するためのトロイの木馬だとMASIPAGは批判します。

MASIPAG: ゴールデンライスに反対

 中国やインドで大規模に作られているBtコットンを除き、まだアジア地域での遺伝子組み換え農業の占める割合は大きなものではありません。フィリピンでは27%のトウモロコシが遺伝子組み換えになっていると考えられます。ベトナムは今年から遺伝子組み換えトウモロコシの栽培を開始すると報道されています。バングラデシュはBtナス(虫が食べたら死ぬBt毒素を作り出すナス)の栽培を始めましたが、2期連続、大凶作だったと報道されています。

 このゴールデン・ライスはこうした停滞状況を一気に変えるために導入されようとしています。基本的に発展途上国向けのコメであり、日本に輸入されるものとして考えられているわけではありませんが、アジアでの農業、そして食の安全が大変な危険に晒されていることに対して、日本の市民社会からも懸念を表明する必要があると思います。
 フィリピンはもちろん、インド、スリランカ、インドネシア、日本の農民・市民団体がゴールデン・ライスに対して反対の共同声明をあげています。https://www.facebook.com/photo.php?fbid=903582229663753 (2015年3月12日、英文)

「健康にいい」遺伝子組み換えに注意!

 これまでの遺伝子組み換えは雑草対策や害虫対策が中心でした。消費者にとっての利益はまず存在しませんでした。これに対して、今後、「健康にいい」という名目で消費者にアピールする遺伝子組み換えが続々と登場しようとしてきています。ビタミンAを強化したゴールデン・ライスはその一例ですが、この他にもオメガ3脂肪酸を豊富に含んだ遺伝子組み換え大豆、アレルギーを治療する遺伝子組み換えイネなども登場しようとしています。しかし、どの品種も、確実な安全性を示すデータが明らかにされていません。そして、どれも遺伝子組み換えでなければ他の手法では解決できないという症状というわけではなく、他に手段があるにも関わらず、遺伝子組み換えを売るためにそうした機能が利用されているだけというのが実際ではないかと思います。

 日本でも花粉症対策のイネなども作られて、すでに隔離圃場での実験栽培が認められています。今後、日本でもそうした「健康にいい」遺伝子組み換えが本格的に耕作され、市場に出てくる可能性もあります。

 農業のあり方、健康の保ち方までがこうした遺伝子組み換え企業の利益によって変えられていってしまう可能性があります。医食同源といいますが、私たちの食生活と農業、健康と環境は密接に関わっています。日々の食事は、世界で起きているさまざまな問題と密接に関わっています。私たちの健康も世界の環境も共に守られる道をめざす必要があります。

参考

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