【PtoP NEWS vol.30 2019.02】エシカルバナナ・キャンペーン~「甘いバナナの苦い現実」を変えるために~ from フィリピン
皆さんは、バナナを買う時にどんなポイントで選びますか? 日本バナナ輸入組合による2016年の調査(複数回答可)では、1位が「価格が安いもの」、2位が「見た目のきれいなもの」、3位が「本数が多い」という結果が出ています。
安くて手軽な果物として定着しているバナナですが、わざわざ海を越えてフィリピンからやってくるバナナがなぜ国産のりんごやみかんよりも圧倒的に安いのでしょうか?
こうした「価格が安く」「見た目のきれいな」バナナを好んで買う日本の消費者が、フィリピンのバナナ産地での様々な問題を支えてしまっています。
■農薬散布がもたらす健康被害と環境破壊
大規模なプランテーションで栽培されるバナナは、病虫害やカビに弱い作物です。バナナをそうした外敵から守るために多様な農薬(殺虫剤、殺菌剤など)が大量に投入されます。
そして、「効率よく」散布をするために用いられる手段は、小型の飛行機による空中散布です。広大なプランテーションの上空から散布された農薬は、農園で働く労働者の上に降り注ぎ、さらには風に乗ってプランテーションの外にも飛散します。
まさに「毒の雨」です。周辺に家屋や学校、水源がある地域では、住民が健康を脅かされていますが、病気と農薬の因果関係を証明することはほとんど不可能です。
■大企業とバナナ生産者との不公正な契約
1988年に包括的農地改革法が発布されたフィリピンでは、それまで地主の元で農業労働者として働いていた人びとも土地を所有できるようになりました。
ただし、土地代は30年かけて返済しなくてはならず、そのために多国籍企業との栽培契約を結んだバナナ生産者(農家)の多くが、農業労働者時代と変わらない貧困に苦しんでいます。
多くの生産者たちは、企業が一方的に作った契約書の内容を十分に理解することなくサインをさせられてしまっている実態が明らかになっていますが、不公正なのは契約のプロセスだけではありません。
「独占的生産販売合意」と呼ばれる契約の中身は、企業の利益を守るための条項のオンパレードです。たとえば、バナナの買取り価格。ある企業は1箱13.5キロ(約65本)につき4.25ドル(約460円)という価格で生産者と契約をしています。
さらに安い価格の企業もあります。しかも、生産者は、企業によって決められた農薬や肥料の代金などの様々なコストが差し引かれた金額しか手にすることができません。
さらに、この買い取り価格は、15年や20年という契約期間中ずっと据え置きで、物価の変動に関わらず、生産者には買取り価格について交渉する余地がありません。
◆農地改革で土地を得た農家の苦難の声を伝えるため、現地NGOが作成した動画「債務の運命」
■安い賃金と劣悪な労働環境
農園で収穫されたバナナは梱包工場に運ばれ、洗浄・箱詰めされます。ミンダナオ島のある梱包工場の労働者たちへの聞き取りでは、賃金は1日365ペソ(約780円)の最低賃金程度であることが明らかになっています。
フィリピン政府が発表した全国水準の生活賃金(家族6人が暮らしていくのに必要とされる賃金)は、月42,000ペソ(約90,000円)です。夫婦2人で働いても生活賃金には遠く及ばない金額しかもらえていないのです。
また、バナナの輸送中の品質劣化を防ぐ目的で使用する薬品によって、労働者たちが体調不良を訴える事例も報告されています。
しかし、マスクや手袋、エプロンなどの支給頻度が十分ではなく、労働者自らで防具を購入しなければならないこともあり、お金がなければ素手で薬品や刃物を扱うこともあるようです。
■バナナの消費地・日本でのキャンペーン
こうした現地の実態を日本社会に広く知らせ、多国籍企業に是正を求めるムーブメントを作っていきたい、そのような思いから、2018年夏に立ち上げたのが「エシカルバナナ・キャンペーン」です。
最終的には、日本に輸入されるすべてのバナナが「エシカル(倫理的)なバナナ」―持続可能な農法で作られた地球にやさしく、生産から流通・小売りまでサプライチェーン上で働くすべて人の人権が守られているバナナ―になることを目指しています。
ウェブサイトには、それぞれの問題について、より詳しい情報を掲載しています。ぜひ一緒にキャンペーンを広めてください。
野川未央(のがわ・みお/APLA)
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