四半世紀を越えてバランゴンバナナを作り続けて~西ネグロス州シライ地域の生産者たち~from フィリピン (PtoP NEWS vol.38 2020.06)
1990年に西ネグロス州中部・ラグランハ地域の生産者たちと本格化したバランゴンバナナの民衆交易ですが、大型台風被害やバナナ病害バンチトップに見舞われ、安定した出荷が難しくなるなか、産地は周囲の地域に広がっていきました。
そのひとつ、西ネグロス州北部・シライ地域では、もともとバランゴンバナナを栽培して地元の市場に出荷していた農民と出会い、オルタートレードはシライ地域から日本へのバナナの出荷を93年に開始しました。
ところがここでも2004年ごろからバンチトップ病害が広がり、収穫することができなくなってしまいます。
対策として病害にかかったバナナの徹底した抜き取りと植え替えを行い、病害撲滅に成功したシライ地域ではその後バランゴンバナナの最盛期となります。
ところが08年に入ってバンチトップ病害が再発して状況は深刻化し、復活が困難となった多くの生産者がサトウキビや他の作物栽培に転換せざるを得ない状況となりました。
パレンシア親子にとってのバランゴンバナナ
エディ・パレンシアさん(69歳)は93年、弟のジュンさん(46歳)は98年からオルタートレードへのバランゴンバナナの出荷を始めました。すでに他界した父ロレンソ・パレンシアさんも当初からの生産者でした。
ロレンソさんは、近くのサトウキビ畑と道路の間の畦(誰の土地でもない、という自己判断で)にまでちゃっかりバランゴンバナナを育てていました。袋掛け作業などはもっぱら息子やオルタートレードのスタッフが手伝うことになるのですが、本人はバランゴンバナナからの収入で妻のために家を建てテレビも買ったと、自慢げに訪問者に話すひょうきんな小農民でした。
息子のエディさんは地元の学校を卒業後、マニラに出て建設業の仕事に就き、次にクルーズ船の乗組員となって世界を航海しました。
高額な収入がありながら、34歳ごろに船を降りて故郷に戻り農業を始めた理由を聞くと「建設の仕事も船の仕事も契約が切れると仕事を失ってしまうけれども、農業はそういうことはないからだ」と言います。
父親から有機農法を教え込まれ、サトウキビも化学肥料を使わない栽培をしていたそうです。400本から始めたバランゴンバナナを4年後には2000本まで増やしましたが、バンチトップ病害で300本に激減。収入を補うためにココナッツなどを出荷しながらバナナの栽培を続けてきたにも関わらず、2019年の台風被害で全滅状態になってしまいます。
村の開発が進むなか、弟と一緒に「土地は手放したくない、農業を続けていきたい」と、再び300本のバランゴンバナナを植え込みました。
弟のジュンさんも、学校卒業後は製糖工場の警備員の仕事に就いたのですが、父親に学んで農業を継ぎ、バランゴンバナナの栽培を止めないようにと仲間たちを説得しています。
農業一筋のサムエルさんとレネボイさん
サムエル・シオテさん(48歳)は、学校を卒業してすぐに農業を始めました。「私は村の若者たちのように外に出稼ぎに行くことは考えませんでした。農業が好きで父親の後を継ぎました」と、3haの畑ではココナッツやサトウキビ、トウモロコシなどを栽培しています。
バランゴンバナナは川沿いの傾斜地に植え、風の吹き方などをよく観察して被害が少なくなる対策をしています。「バランゴンバナナは安定した収入源なので、農業で生計を立てていくには重要です」と語るサムエルさん。余裕ができたら畜産をやってみたいという夢があるそうです。
レネボイ・ソムブリアさん(50歳)は、知人の紹介でオルタートレードへの出荷を始めました。バランゴンバナナを生産しながら、24歳になってハイスクールで学び、30歳でカレッジを卒業しました。とにかく学ぶことが大切だと考えて頑張ったそうです。
灌漑設備がない場所では木々の間にバナナを植えた方が生育が良いことを発見して実践したり、糞やおが屑などが手に入ると作物に合う堆肥づくりを試したりとチャレンジ精神旺盛で、シライ地域を有機の村にしたいという夢もあります。
シライ地域はもともと町へのアクセスが容易で、学校を卒業すると町で就職することもでき、生産物は地元市場に販売できる地域でした。
しかし、バランゴンバナナの民衆交易を経験することでより安定した生計を立てることができるようになり、持続可能な農業への関心も高まったという話を農民たちから聞くことができました。
最近のエコツーリズムという新しい開発に対しても農業を軸としたサステイナブルな地域づくりを目指していく生産者たちの気運も感じました。
幕田恵美子(まくた・えみこ/ATJ)
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