レポート

セミナー国際家族農業年と人びとの食料主権にご参加を!

2014年6月2日

日本では「輸出できる農業」、「農業への企業参入」ばかりが強調され、マスコミを賑わしています。しかし、国連機関が大きく方針を変更して企業的大規模農業経営から小規模家族農業への転換を推進するに至っていることをご存じでしょうか?
国連農業食糧機関(FAO)、国連貿易開発会議、国連環境計画などは小規模生産の優位性を指摘し、そして気候変動や飢餓問題への対処のために、大規模農業の推進をやめ、小規模生産に迅速に転換することを求めています。

GRAINのレポート“HUNGRY FOR LAND” 国際的NGO、GRAINはその小規模生産の必要性を見事にまとめています。

GRAIN: Hungry for land: small farmers feed the world with less than a quarter of all farmland

大規模農業では大量の化学肥料と農薬を使った農業を大型機械を使って行います。農業に投入されるエネルギーと農産物から得られるエネルギーを比較すると、圧倒的に投入されるエネルギーが大きいのです。化石燃料を大量につぎ込んで見かけの生産性を上げているが、長期的には土壌の破壊、化石燃料の枯渇などにより、持続可能性が疑われています。

土地面積当たりの生産性を比較した場合、むしろ小規模農業の方に軍配があたります。持続性、生産性ともに小規模農業が有利なことになります。

そして小規模農業は多くの職と食料を保障します。世界の平均的な小農民は2.2ha以下の土地で生活を営んでいますが、たとえば南米の大規模農場では100haあたり1人未満~2人程度の職しかもたらさないといいます。大規模農場が進出した地域では生きられる人の数が減ってしまうのです。

GRAINによると、小規模生産者は現在世界の25%の農地しか保持していませんが、非工業化諸国では8割の食料生産を担っているといいます。しかし、その小規模生産者が今、危機に陥っています。

国際金融資本や穀物メジャー、遺伝子組み換え企業などのアグリビジネスの連携の元、各国政府での規制緩和が進み、大規模経営の農場に小農民は圧迫され、離農を余儀なくされるなど、小規模生産者の農業生産は縮小しつつあり、一方、大規模農場の規模は拡大しつつあります。

これが世界にもたらす社会的、環境的破壊は小さくありません。

大規模農業によって蝕まれる女性の権利

現在、世界の食料生産の担い手の過半数を占めるのが女性です。しかし多くのケースで女性の権利は認められていません。世界の人口爆発をコントロールするにはこうした女性の権利を認めることがもっとも有効な政策になりますが、女性の土地の権利の承認などは遅々として進みません。

さらにこうした大規模農園の進展により、女性農民の役割は周辺におしやられ、代わりに機械の操作など賃金労働は男性に占められ、女性は清掃などの役割に追いやられてしまいます。もちろん大規模農園では単位当たりの職が小規模農業に比べて桁違いに少なくなってしまいます。

失業層、飢餓層を生み出すこうした大規模農業経営がこれ以上進むと、危険であることに気がついたFAOなどの国連機関が小規模生産の支援に方向を転じたことは重要な意義があると思われますが、逆に言えばそれだけ世界の食料生産は危機的な状況にあるといえます。

国際家族農業年と人びとの食料主権

残念ながら日本ではまだその意味が十分報道されていません。そこでATJは上智大学グローバル・コンサーン研究所(IGC)と協力して、セミナー「国際家族農業年と人びとの食料主権- 国連食糧農業機関(FAO)のパラダイム転換を学ぶ」を開催します。

講師はFAOの国連世界食料保障委員会専門家ハイレベル・パネルのメンバーとしてFAOの小規模農業への投資の重要性を検証する作業グループの提言作成に加わった関根佳恵さん。この問題の第一人者です。

この問題は日本の農業政策だけでなく、日本政府のODAにも大きく関係していきます。さらにいうなら、日本や海外での雇用問題から社会全般に関わってくる課題です。

ぜひ、ご参加ください!

国際家族農業年と人びとの食料主権- 国連食糧農業機関(FAO)のパラダイム転換を学ぶ 2014年6月14日 上智大学

オルター・トレード・ジャパン政策室室長 印鑰 智哉

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