コーヒー生産者ノンルワン村のジョンさん fromラオス(PtoP NEWS vol.39 2020.08)
ラオス風味のコーヒーを作り続ける生産者
ラオス南部、ボラベン高原に位置するパクソンから南下するとたどり着く村、ノンルワン。
同村出身の女性と出会って恋に落ちて結婚し、軍隊を退役してコーヒー栽培を営んでいるジョンさんは、現地パートナー団体ジャイコーヒー生産者協同組合(JCFC)の理念に共感し、筋トレや匍匐前進とは無縁の、自然に寄り添ったコーヒーを作り続けてきた一人です。
訪問するといつも嬉しそうに案内してくれるジョンさんのコーヒー畑は、畑というか森。自宅から凹凸の激しい轍の上でトラックを疾走させ、その荷台で揺さぶられること20分、恋しくなった地面に降り立つと、すかさず大型のヒルが嬉しそうに足元に寄り付き、頭上では「ワーンワーン」というグラスハーモニカのようなセミの鳴き声が出迎えてくれる、野性味溢れる土地に点在しています。
不思議とヒルに食われている様子もなく、畑を目指してサンダルで勝手知ったる森を歩きまわるジョンさん。道すがら、突如視界から姿を消し、斜め前方の地面にしゃがみこんだかと思うと、他人の土地で勝手にキノコを採取して大はしゃぎ。お気に入りの木の前で「写真撮ってー」とポーズを取るかわいい一面もある一方、集合写真ではよそ見に終始し、おおらかで飾るところのない気質が魅力のお方です。
土地が広いこともあってか、ジョンさんの畑のコーヒーはソーシャルディスタンスもバッチリ。主流のカティモール、ATJに多くが輸出されるティピカの他にも、複数の品種を育てています。一見さんにはとても区別できない各品種の実をこっそり採取し、後でどれがどれかを尋ねてみたところ、得意げな顔で淀みなく当ててくださいました。新しい土地を開墾して若い苗もたくさん植えており、きちんと次世代に引き継ぐ準備もされています。
コーヒーは農産物。しかもラオスでは各生産者がパーチメント(果肉を剥いて、中の種を洗って発酵させてから乾燥させた状態)に仕立てているため、条件は毎年異なります。自然相手の難しい仕事なのですが、ジョンさんの作るコーヒー豆の品質は、JCFCメンバ-の中でも抜群の安定感。いつ飲んでも、いい味がします。これは栽培から加工に至るまで、まさに矜持を持った丁寧な作業をされている証であり、柔らかくも明るい素朴な風味のラオス・ティピカは、そんな彼の人柄を思い起こさせずにはいられない味わいです。
若井俊宏(わかい・としひろ/ATJ)
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