レポート

【PtoP NEWS vol.27】特集:収穫シーズン真っ只中の、東ティモールに行ってきました。

2018年10月29日

昨今のコーヒー焙煎屋を覗くと、体感では2軒に1軒程度の割合で、東ティモールの豆が置いてあるように思います。

オルター・トレード・ジャパン(ATT)が東ティモール産のコーヒーを取り扱い始めて17年ですが、今後も「東ティモール」の名は、じわじわと広がっていくのではないでしょうか。

今回訪問した6月下旬は、コーヒーの収穫真っ只中。産地に行くと、どこへ行ってもコーヒー豆が軒先で天日干しされている光景が広がります。

そして、初めてその光景を見た私でもわかるほどに、オルター・トレード・ティモール(ATT)へ出荷される豆は丁寧に加工されていました。

この機会に、簡単にコーヒー豆が届くまでをご紹介します。生産者たちの努力を、ぜひご覧ください。

【①収穫】
東ティモールのコーヒー産地は、結構急斜面です。奥まった村に行くには、車一台分の崖っぷちの道をひた走ります。

一歩間違えたら一発アウト、なスリルを味わいつつ、その絶景に見とれていると、急斜面からヒトがひょっこり顔を出します。スキーのジャンプ台顔負けの斜面で、鼻歌交じりにコーヒーの実を摘んでいます。

【②選別】
コーヒーの実は、熟すと赤くなります。これが収穫適期。

ただ、もちろんバラつきがあるので、中には未熟で緑色だったり、過熟で黒っぽかったり、収穫後はカラフルな状態です。

この中から赤い実だけを選り分け、良い品質の実だけを加工できるようにしています。なお、取り除いたものは、一般業者に販売する豆になります。

【③果肉除去】
赤い実を、手回し果肉除去機に掛けて果肉を剥いていきます。商店街の福引を彷彿とさせるこの器具は、スリット(すき間)の調節が肝心。広すぎるとうまく剥けず、狭すぎると豆が欠けてしまいます。調子に乗って最速の回しに挑戦してみたところ、「豆が痛むからやめろー」と直ちに制止されました。

【④洗浄~発酵】
果肉を除去したコーヒー豆(つまり種)は、果肉の繊維でヌルヌルしている状態です。水で良く洗い、きれいになったところで、一晩水に浸けて発酵させます。このひと手間を惜しむと、出来上がった豆に雑味が出たりして、商品としての価値は落ちてしまいます。

【⑤ 乾燥】
発酵が終わった豆を天日乾燥。カラカラになるまで、良く乾燥させます。そうしないと、この後の保管中にカビ臭くなったりして、せっかくのここまでの努力が水泡に帰す可能性もあります。

今回は、各村の乾燥中・保管中の豆をひたすらクンクンと嗅いで回り、乾燥が不十分なものは乾燥し直すように徹底してお願いしてきました。

生産者にも一緒に嗅いでもらったところ、「あぁ確かに…」ということで、納得の様子。

赤く熟したコーヒーの実

赤く熟したコーヒーの実

こんな風にして、生産者は手間をかけて豆の一次加工をしています。とはいえ、十年ほど前までは赤い実の状態で売っていただけで、これらは全くやったことのなかった未知の作業。

そのため、ATTスタッフは、このようにして産地を回りながら、生産者と共に根気強く一次加工の品質向上に取り組んでいます。

生産者にとっては必要性が見えづらく、「正直めんどい」ところもあり、それが何のためになるのか腑に落ちるまでに時間がかかることもあるようです。それでも、品質の高い一次加工ができることはコーヒー農家自身にとっての強力な武器になると信じ、長い目で取り組んでいます。

養鶏プロジェクト

養鶏プロジェクト

またATTは、コーヒー豆の買い入れを通じた社会活動費の積み立てをしています。いくつかの村でその実績を見ましたが、どれもきちんと村からのニーズを話し合い、必要なものをできる範囲で作るという、身の丈に合った取り組みでした。

特に水資源が十分でない村も多いので、水タンクの設置を進める一方、敢えて水を使わないコーヒー豆の加工方法(果肉付きのまま乾燥させる方法で上手くいけば水洗式より豊かな味のコーヒー豆が得られる)を試験的に導入するなど、生産者の現状に合わせたより良い選択肢を考えてもいます。

主権回復(独立)から17年目を迎えた東ティモールは、人間に例えれば思春期そのもの。これからの人生に夢も希望も大いに抱いて良いお年頃ですし、実際に村には子どもたちがたくさんいます。

さらに美味しくなった東ティモールコーヒーを20年後に彼らと一緒に飲み交わすのを楽しみに、今できることを考えていきたいと思います。

若井俊宏(わかい・としひろ/ATJ)

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