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二重の災厄に苦しむパレスチナ~イスラエル占領下のコロナ事情~(PtoP NEWS vol.39 2020.08)

二重の災厄に苦しむパレスチナ~イスラエル占領下のコロナ事情~(PtoP NEWS vol.39 2020.08)

配布用の野菜の苗を育てる

 

世界的に新型コロナウィルス感染症が拡大し、人びとの暮らしに大きな影響を与えています。ATJのオリーブオイルの産地パレスチナでも、3月5日、キリスト生誕の地として知られるベツレヘム市で初の新型コロナウィルス感染者が確認されました。

パレスチナ自治政府は同日、1カ月間の緊急事態宣言を発令し、翌日に全国の小中高や大学の休校、ベツレヘム市はロックダウン(都市封鎖)を行いました。さらに3月中旬にはすべての自治体が封鎖となり、人びとや物資の移動が厳しく制限され、7月現在も継続中です。

 

農民が都市住民に野菜を提供

UAWCが配布した野菜を受け取った子どもたち

こうした状況に対してオリーブオイルの出荷団体であるパレスチナ農業開発センター(UAWC)とパレスチナ農業復興委員会(PARC)は、オリーブの産地であるヨルダン川西岸地区の住民のニーズに応える形で支援を行ってきました。

最初に実施した活動は感染予防対策です。消毒薬や石けんなどを詰めた衛生キットを配布したり、医療NGOと協同して感染予防セミナーを行いました。

PARCが配布したフードバスケット

ロックダウンが継続すると、ベツレヘム市をはじめとする都市住民は食料、特に野菜不足に悩まされました。

UAWCはヨルダン川渓谷や北部の農民の協力を得て、3月下旬に4台のトラックで計30トンもの野菜をベツレヘム市に運び、配布しました。

PARCもエルサレム市などの住民に23トンの野菜を届け、さらに海外のフェアトレード団体や人道団体に協力を呼びかけて1500家族に小麦粉や調味料を詰めたフードバスケットを提供しました。

 

野菜を植えることのもう一つの意味

空き地が家庭菜園に変身

野菜などの農産物がなかなか市場に出回らない状況を見て、次にUAWCが取り組んだのが「土地に戻って耕そう」キャンペーンです。

UAWCは2003年、ヘブロンに在来種の種子銀行を設立し、パレスチナの気候風土で育まれた在来種の保存と普及に取り組んできました。短期間で育つキュウリ、ナス、トマト、オクラ、ズッキーニ、カボチャ、インゲン、スイカなどの夏野菜の苗を育て、約3000家族に配布しました。住民たちは庭や空き地、屋上やベランダなど空間があればどこでも工夫して菜園を作りました。配った苗は最終的に40万本に達し、住民が新鮮で栄養ある野菜を手にできるようになりました。

パレスチナは、イスラエルにとって農産物の最大の輸出先の一つとなっており、市場にはイスラエル産の野菜や畜産物が溢れかえっています。皮肉なことにパレスチナは食料をイスラエルに依存しているのです。

 

土地に戻って野菜を植えよう

UAWCのフアッド・アブサイフ理事長はこう話します。

「土地や水といった生産手段や市場をイスラエルに奪われ、自給出来ていないという脆弱な食料事情がコロナ禍をさらに大きな災厄にしてしまいました。国内で地産地消の仕組みを整えることが、人びとの暮らしを支え、食料を保障することにつながります。野菜の苗を植えることは、パレスチナ人にとって新型コロナウィルスから身を守るだけではなく、イスラエル占領に対抗する手段でもあるのです。」

 

 

コロナが浮き彫りにしたパレスチナの非日常性

ガザ地区で行われた併合反対の抗議集会

新型コロナウィルスのために世界中で多くの人びとが移動を制限された不自由な暮らしを強いられています。

しかし、占領下のパレスチナ人にとって、こうした制限はいまに始まったことではありません。主要道路の至るところに検問所やバリケードが設置され、ユダヤ人入植地との間には数百キロにわたる分離壁が建設され、日常生活に支障をもたらしています。

また、入植者によるパレスチナの農民に対する暴力、オリーブの木を引き抜いたり焼いたりする破壊行為が、卑劣なことに、新型コロナウィルスで移動制限が厳しくなった3月以降倍増しています。

さらに、パレスチナ国家の存在そのものを脅かす大問題が起きています。イスラエルのネタニヤフ首相が、ヨルダン川西岸地区の面積の30%に相当するユダヤ人入植地とヨルダン渓谷のイスラエル領併合を進めようとしているのです(※)。

すでに60万人以上のユダヤ人が住む入植地建設は国際法違反として、国際社会から長い間批判を浴びてきました。また、肥沃で水資源が豊かなヨルダン渓谷はパレスチナの「食糧庫」と呼ばれ、約6万6000人のパレスチナ人が暮らしています。併合されると、この地でパレスチナ人が住み続けることは不可能とフアッドさんは断言します。

他の場所では異常とされることが日常化しているパレスチナの現実。私たちは改めてパレスチナと人びとと共に何ができるか考えたいと思います。

ペットボトルで育てる野菜

小林和夫(こばやし・かずお/ATJ)

 

※APLAとATJは、パレスチナに関係するNGO、市民団体などと連名で、日本政府外務省に対してイスラエルによる併合を阻止するための適切な行動を取るよう要請する声明を提出しました。

日本国際ボランティアセンター(JVC) AIDA声明 「イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合を阻止する行動を取るよう国際社会に求める」

 

●新型コロナウィルス感染予防のため、フィリピンやインドネシア、東ティモールなどの他の民衆交易品の産地でも、人びとはさまざまな制約の中で生産活動に従事しています。産地の様子は民衆交易産地における新型コロナウィルスの状況で随時報告していますので、ご覧ください。

 

 

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