レポート

【バナナニュース321号】生産者たちのクリスマス

2021年12月3日

 フィリピンでは9月頃からクリスマスを迎える準備が始まります。建物や家にはクリスマスライト、家中には大小問わずのクリスマスツリーが飾られ賑やかになります。家族や友人の集まり、忘年会、クリスマスパーティーの準備で、人びとの間にワクワクした空気が流れます。子どもたちは仲間と一緒にクリスマス・キャロルを練習し、近所の家々をノックして心を込めて歌います。それぞれに自分のマニト・マニタ(秘密のサンタ)がいて、プレゼントを交換するのがフィリピンの伝統です。

 国民の約9割がキリスト教を信仰するフィリピン。12月16~24日までの明け方にはミサ(シンガン・ガビ)が開かれ、キリストの誕生を記念するための霊的な準備をするために多くの人が参加します。 9つのミサをこなすと願いが叶うというフィリピン人の信仰もあります。クリスマスイブにはさらに多くの人が集まり、ミサの後には家に帰ってノチェ・ブエナと呼ばれるイエス・キリストの誕生日であるクリスマスを告げる祝宴をあげます。

 コロナ禍になり2回目のクリスマスを迎える今年、様々なことが規制されて静かなクリスマスを迎えようとしていて、こうしたクリスマスの日々は昔のことのようです。

◆バランゴンバナナ生産者ローリーさん一家のクリスマス(ネグロス西州・DSB産地)

左からローリーさん(父)、グランディさん(母)、ドロシーさん(娘)
バナナの手入れをするローリーさん(バナナ150株を栽培、半月に1回8-10株のバナナを出荷)

 「コロナ禍の前は、妻と娘でドアや窓にランタンを飾り、クリスマスツリーを準備しました。ツリーは、農場から採ってきたコーヒーの木の枝に畑にある綿やリサイクルペーパーを用いた色紙を飾ります。クリスマスライトだけ外で買ってきて飾り付けに加えていました。
しかしコロナが広がってからクリスマスという気になれず、飾り付けはしていません。質素なクリスマスディナーを家族でとるくらいです。スパゲティ、フライドチキン、鶏肉のスープ、ビーフンとパンを食べます。14歳になる娘は、インターネットからの情報でサンタクロースはいないと思っています。私が小さかった頃は、両親や祖父母から話を聞いて信じていたものですが…」。

◆バランゴンバナナ生産者マリベルさん(ネグロス西州・シライ市ランタワン)

マリベルさん

 11月から1月にかけて、クリスマスツリー、クリスマスライトとランタンを飾り付けます。家も、キリストの誕生を象徴するような、魅力的でありながら簡単に作れるデコレーションで飾ります。「ノチェ・ブエナのディナーにはサラダ、スパゲティ、パン、フライドチキンとハムを準備し、家族で集まって簡単にお祝いします。カトリック信者としての家族の伝統ですもの」とマリベルさん。クリスマスには、イハドとイハダ(注1)へプレゼントを贈ります。

注1:フィリピンでは子どもが洗礼を受ける際に名付け親(男性はマニノイ、女性はマニナイ)が決められます。名付け親はその子どもの面倒を見ることとされていて、名付け親になった子どもの男の子をイハド、女の子をイハダと呼ぶ。

バナナの手入れをするマリベルさん(バナナ180株を栽培、毎月約10株のバナナを出荷

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