【バナナニュース353号】山から山を駆けめぐる!レイクセブの農業指導員たち
~バナナ担当者小島の出張見聞録⑥(不定期で掲載します)~
ジェンマーク(写真左、25歳)とジェイク(同右、27歳)はミンダナオ島レイクセブの先住民族ティボリ族出身で、出荷団体である高地アラー渓谷有機生産者法人(UAVOPI)の農業指導員として働いている。
主な業務内容は、生産者を訪問し、農業指導と圃場の状況を把握すること。但し、圃場は山間部に点在しており、訪問の実情には驚かされる。例えば、クルビ村ブルラハック集落には生産者が8名おり、標高1,000mほどのクルビ村中央から更に二山を越えなければならない。山奥で天候が崩れやすく予定通りに訪問できないことも多いが、生産者がバナナの栽培で困っていないか確認するためには欠かせない。
ネッド村へはレイクセブのパッキングセンターからバイクで片道5時間。ラムラハック村は歩いても歩いても山の中腹で、どこにいても遠くにバランゴンバナナの圃場がいくつも見える。彼らを含む5人で1,052名の圃場を確認しており、担当圃場を全て周るのに2~3ヶ月かかる。
時間や労力がかかっても、生産者を農業技術で手助けすることと化学合成農薬・化学肥料を使用しないという消費者との約束を守るために圃場訪問が大切なことを理解している。現金収入が乏しいことが多いレイクセブの生産者の収入を増やし、生活の質を上げる一助になるため、やりがいも大きい。2024年上半期はエルニーニョ現象のため乾燥度合が厳しく、その対策を教えると特に経験の浅い生産者に喜ばれた。誰かの力になれることや感謝されることは素直に嬉しい、とジェンマークとジェイクは話してくれた。
■ジェンマークとジェイクがUAVOPIに入った経緯
ジェンマークがUAVOPIで働き始めたのは、UAVOPI責任者のシッド神父から、大学の学費の足しにしてはどうかと雑務の仕事を与えてもらったのがきっかけだ。その後UAVOPIが働き手を募集した際にジェンマークが友人のジェイクを紹介した。2人は大学の農業コースを卒業し、現在もUAVOPIで働いている。
■農業指導時に少し大変なこと
農業技術の指導において大変なのは、頑固者タイプの生産者で、なかなか説得が難しい。例えば、バナナの花芽は取った方が良いのだが、花芽を取ると樹液が出るため、その樹液がバナナに付いてしまうと心配する生産者もいる。そういった時には、樹液が付いても余程酷い状態でなければ買い取ることを丁寧に伝えるのが彼らの仕事。最も大変なのは、農の経験に長けた生産者とのやり取り。指導員だが反対に学ぶことが多い。そんな時は大切だけど見落とされがちな農業技術を、隙間を狙うように伝えてみるのだとか。
レイクセブの景観
・クルビ村
この霧のおかげでエルニーニョでもバナナがよく育った
・ネッド村
ネッド村へは道がぬかるまなければ、パッキングセンターから1時間半くらいで着く。ただ山中で雨が降ったらほとんどの場合はその道は使えない。
彼らの主食の一つでもあるのに
・ラムラハック村
バナナはどこにあるでしょう?
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民芸品とアバカ~余談~
レイクセブのクルビ村では、アバカ(一般的にはマニラ麻と呼ばれる繊維作物)を収穫して、民族手芸として機織りをしていた。生地は1mで500ペソになるとのこと。つい「高く売れるね」と発言したところ、「アバカは年1-2回しか収穫できないし、1m織るのに1時間ほどかかり、かつ姿勢もきつい」と説明があった。生産者は気候や市場などの条件に合わせて栽培する作物を選んでいるようである。
因みにアバカもバナナも同じバショウ科なので見た目は瓜二つなのだが、見分け方はアバカの方が幹は細く葉っぱが上を向いている。
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