インドネシア・南スラウェシのエコシュリンプ生産者たちの挑戦
エコシュリンプの養殖池が広がる地域における河川環境の改善のために、KOIN*は2015年から東ジャワ州シドアルジョ県において住民主体の家庭ゴミの回収システムづくりに取り組んできました(詳細はこちらをご覧ください)。これまでKOINが活動の立ち上げを支援してきた県内5つの村では、それぞれ村の住民自治組織を中心に家庭ゴミ回収が継続され、現在に至っています。また、そうした目に見える成果が他地域の住民にも刺激を与え、新たな動きにつながってきています。
*エコシュリンプの製造・輸出を担うATINAのスタッフとエビ養殖農民の有志たちが立ち上げたNGO。
コロナ禍で活動開始
新たに動き出したのは、オルター・トレード・インドネシア社(ATINA)が日本向けのエビを買付けているもう一つの地域、南スラウェシ州ピンラン県のエビ生産者たちです。
彼/彼女たちが、KOINによるシドアルジョの事例に刺激を受け、自分たちの地域が直面しているゴミ問題を同じように解決していきたい!という熱い思いを表明したのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前のこと。
その後、 ATINAとKOINの協力を得て準備を進め、2020年9月にピンラン県のエビ生産者や地元出身の学生たちによって「KONTINU(インドネシア・ブラックタイガーに関心のある者たちのコミュニティ)」というNGOが正式に立ち上がりました。
そして、エコシュリンプの養殖池が広がるランリサン村での活動を手探りでスタートさせます。コロナ禍で移動や社会活動に様々な制約があるなかでの挑戦です。具体的には、地域住民に対する説明会の開催と住民組織の形成、コンクリート製のゴミ箱の製作と村内への配置、三輪オートバイを改造したゴミ回収車の調達、村内で募集・面接をして採用した2人のゴミ回収人の研修……といった準備を経て、2021年6月から村での家庭ゴミの回収活動が動き出しました。
ゴミを資源として活用
ランリサン村での活動が開始され1年強が経過した2022年8月、現地を訪問することができました。KONTINUのメンバーに村内を案内してもらい、まずは、村のゴミの選別場を見学しました。現在、村の住民組織と協力して、2人の回収スタッフが月・水・土の週3回、自動三輪車で村内の家庭ゴミを回収しています。見学した当日も、2人の女性がプラスチックゴミを手選別していました。
選別したプラスチック、ビン、缶などは、県内の回収業者に販売しています。その売上は、KONTINUではなく、村の住民組織の収入となり、活動を継続する資金に充てているとのことでした。
さらに、回収した食品残渣を活用して蛆虫を育てている場所に向かいました。事前に蛆虫と聞いて想像していたものとは少し違う見た目でしたが、ネットで作った小屋の中でたくさんの幼虫が育っていました。話を聞くと、幼虫そのものではなく、脱皮した殻を粉砕して、エビの頭や魚粉などと混ぜて、ナマズやテラピアなどの淡水魚用の餌を製造・販売しているとのことでした。魚粉は、漁師さんたちが海で獲ったものの市場では値がつかない雑魚を乾燥させたものだそうです。有機ゴミや未利用資源がうまく地域の中で循環していることが素晴らしいですね。
気候変動の影響も深刻化
2022年12月末、オーストラリア付近で発生した低気圧の影響を受け、スラウェシ島南部に大雨と強い風がもたらされ、ピンラン県各地で高潮による洪水被害が起きました。養殖池は、海に沿って広がっているため、大雨による水位の上昇と海からの大波によって、エビや魚の多くが流されてしまったようです。
なお、この地域の多くの家屋は伝統的な高床式のため、住居には大きな被害は出ていないとのことですが、養殖池の土手の修繕には多大な労力がかかります。復興に向けた作業、そして動きはじめた地域のゴミ問題に対する行動に加えて、気候変動の影響に対する対策も切実な課題となっています。
野川未央(のがわ・みお/APLA)
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