【バナナニュース356号】森林保全に繋がるバランゴンバナナ ~ミンダナオ島コタバト州マキララ~
~バナナ担当者小島の出張見聞録⑧(不定期で掲載します)~
※【お詫び】印刷版のニュースにて掲載した上記の写真はコタバト州マキララ地域ではなく、コタバト州バニシラン地域の写真でした。写真はありませんが、マキララ地域でも環境保全活動を行っています。
バランゴンバナナはどこの産地でも自然を守りながら栽培されているが、ミンダナオ島コタバト州では特に森林保全を意識して栽培されている。上の2枚の写真は同じ場所を撮影したものだが、左の写真は剝き出しの表土にバナナや果樹を植えたばかりで、右の写真は植えた作物が育った後のもの。剝き出しの表土が緑化していることがわかる。
コタバト州の出荷責任団体であり、フィリピン最高峰のアポ山の中腹にあるドンボスコ財団は、アポ山の森林保全を1つの活動目標にしている。多くの生産者はドンボスコ財団からの支援もあり、バランゴンバナナを含むドリアン、マンゴスチン、ランブータンなど多種多様な作物を植付けている。混植は、フィリピンで多発する乾燥、豪雨、強風などから作物を守るため、圃場の作物が全滅するリスクの低減にもなる。その中で、バランゴンバナナの強みは定期的な買取りと予め決まっている買取価格であり、生産者は一定の収入を確保して、家計の目途を立てながら、地元の自然環境を守ることができる。
生産者が植えている多種多様な作物
・多種多様な作物がある中で、バランゴンバナナの強みは定期的な買取と予め決まった買取価格。一定の収入の確保が可能になり、家計を立てやすくなる。極端な事例だと、出荷までに7年かかるパルカッタという木材の売値が大きく下がり続けており、今年はなんと木1本が300ペソ(約810円)でしか売れなかった。一方では、コーヒーやカカオのように国際価格の高騰を受け、買取価格が上がった作物もある。
・買取価格とは関係なく、多種多様な作物の植付けは圃場の作物が全滅するリスクの低減にもなる。例えば、2023年から2024年のエルニーニョ現象による乾燥/干ばつで、ミンダナオ島レイクセブの地域ではとうもろこしが不作気味だったが、バランゴンバナナは豊作であった。一方で、雨季には豪雨、強風でバランゴンバナナが株ごと倒れ、数量を落とすことがある。
コタバト州の緑化 Before/After
生産者が農作物を植付ける前と後の航空写真。BeforeはGoogle Mapの航空写真、Afterは同じ場所をドローンで撮影。
シャハミさんの圃場
出荷責任団体:ドンボスコ財団について
ドンボスコ財団は1994年に設立し、今年で30周年を迎えた(バランゴンバナナは2013年より開始)。バランゴンバナナを含む多種多様な作物の植付けを通して①自然環境の維持・回復、②安定した収入の確保、③企業的な生産様式に対する具体的な代替案の提示をしている。
ドンボスコ財団は生産者支援や広報活動を精力的に行っており、生産者への研修と支援(苗や肥料、道具の供給)、および、売り先の提供、化学合成農薬を用いない病害対策の研究、女性のエンパワーメント活動など、その活動は多岐に渡る。過去には、多国籍企業のプランテーションの進出を防ぐため土地の購入と個人の生産者への分配を行ったり、ドンボスコ財団を含む市民組織や畜産業界の陳情によりコタバト州では農薬の空中散布を禁止する条項を含む環境規定に関する条例が制定に関わったりした。
ドンボスコ財団の敷地は事務所だけでなく、バランゴンバナナの圃場、他作物の研修用圃場、牛やウサギの畜舎、たい肥センター、教会などが併設されている。
今後は、メディテーションセンターや、敷地内に流れている小川を利用した小水力発電設備の設置を計画している。将来的にはソーラーや地熱発電も挑戦する予定。
<バナナ担当者小島が産地で見聞きしてきたことを連載中!>
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