投稿者: okubo
<今月のおいしい!>乾季にはこれ!「サユールアサム」
「今月のエナック!(おいしい)」は、インドネシアのスープ「サユールアサム」。
※「エナック」はインドネシア語で「おいしい」という意味です。

酸っぱい野菜スープという意味のサユールアサムは、エコシュリンプ加工場工員、スハルニンさん(51歳)の家庭で最も人気の高い料理です。スハルニンさんの家庭ではさわやかな味が好まれて、暑い乾季には毎週1回は朝かお昼の食卓にあがる程です。この酸味は、一緒に煮込むタマリンドという木の実から出ます。味付けにはキャンドルナッツやガランガルといった東南アジア特有のスパイスも欠かせません。

もう一つの人気の理由は材料が手に入りやすく、安価なこと。八百屋さんではサユールアサム用にホウレンソウ、キャベツ、ハヤトウリ、もやしとピーナッツがセットになって売られています。また、自家製のスパイシーなトマト・サンバルを加えることもあります。
~サユールアサムの作り方~
【材料】
〇サユールアサム用野菜セット 1パック(空芯菜、スプラウト、キャベツ、ハヤトウリ、落花生)
〇スパイス
- タマネギ 5個
- ニンニク 3片
- クミリ(キャンドルナッツという木の実の種子)3個
- トウガラシ 2つ
- ガランガル(ショウガ科の植物の地下茎) 2センチ
- タマリンド (マメ科の植物の果実)1個
〇調味料
- 塩
- 砂糖


【レシピ】
①すべてのスパイスを臼ですりつぶす。
② 1リットルお湯を沸かし、ピーナッツとスパイスを入れる。
③ 10分ほど野菜が柔らかくなるまでゆでる。
④ 塩と砂糖を加えて味を調えて完成。
⑤ お好みによって自家製トマト・サンバルを加える。
~スハルンニさん家の食卓風景~

①果物 地場産のジェルック(オレンジ)とジャンブーアイル(グアバの一種)
②ごはん インドネシアの主食です。
③レンソと揚げ魚 レンソは緑豆のナゲットです。
④サユールアサム
⑤トマト・サンバル トラシ(エビのペースト)やトウガラシ、塩・砂糖を石臼(チョベ)ですりつぶしたサンバルは、欠かせない調味料です。料理の度に石臼でサンバルを作ります。
⑥クルプック 食事に必ず添えられる揚げせんべい。
~スハルンニさんの家族~

Q:ご家族は?
スハルニン:夫のヌル・アフマド(53歳、警備員)、娘のデラ・ヌール・アイナ(19歳、大学生)との3人家族です。
Q:普段は誰が料理をしているのですか?
スハルニン:私がしますが、時々娘がお手伝いしてくれます。
Q:1日に何回、誰と食事をしますか?
スハルニン:1日3食、家族全員で食事をとります。


インドネシアでは伝統的に食事は床に座ってとります。スハルニンさんの家では座卓もなく、主食のお米やスープ、おかずを大皿からそれぞれが取り分けたお皿を床の上に直接置いて食べます。
まとめ:小林和夫(ATJ広報室)
◆コラム「今月のおいしい!」では、産地の食事や食文化について紹介していきます。
前回の記事はこちら→フィリピンでも「ずいき」を食します。
フィリピンの代表的な家庭料理、醤油と酢で素材を煮込んだ「アドボ」が登場します。
【バナナニュース347】農民の厳しさを知っているから携わりたいと思った
~フィリピンからスタッフが来日!② ウィニー・ソベラノさん編~
フィリピンからスタッフが来日!①はこちらから

今回は、昨年来日したオルタートレード・フィリピン社(ATPI)スタッフのウィニー・ソベラノさんの紹介です。ウィニーさんは、現在ネグロス島の出荷責任者を担っています。入社から今年で24年目。ATPIで働き始めた理由を聞いてみました。
「きっかけは、学生時代のインターンシップでした。農学部の学生で、コースの一環でインターンとしてバランゴンバナナの現場に入りました。現場スタッフたちと各産地を回り、時には生産者の家に泊まらせてもらい、たくさん話をしました。その経験から、民衆交易の意義に感銘を受けて継続して働きたいと思い、卒業後の就職先として選びました。幸いなことに採用されてバナナの現場担当者になりました。自分も農家の出身です。フィリピンの農民たちの苦労や置かれている状況の厳しさを知っています。民衆交易(※)がどれだけ農民の助けになっているかを知り、自分もそれに携わる一人になりたいと思いました」。
来日中、ウィニーさんと接するなか、現場が抱える厳しさがありながらも、よりよくしていきたいと前向きな気持ちをもって積極的に仕事に向き合っている姿が印象に残りました。
来日中には、消費者との交流会で2016年にネグロス島を訪問したことのある方と偶然再会しました。お互いに名前を覚えており、旧友と久しぶりに会ったかのような二人。当時、現場担当者だったウィニーさんが今ではネグロス島の出荷責任者になっており、「長い時間が経ったんだね!」と互いに再会を喜びあっていました。
※モノ(バランゴンバナナ)を通じて生産者と消費者をつなげ、共に支えあう関係性を創る交易事業
<ウィニーさんの産地での仕事の様子>


※来日中に出会った消費者の方から、出荷量が減ってしまう時にカタログへの掲載がないため、買いたいけど買えないという話を聞いたとのこと。今後は生産者にそのことも説明したいと話していました。

ATJバナナ担当:吉澤
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カカオ生産者協同組合が立ち上がりました!

カカオキタ社(カカオキタはインドネシア語で「わたしたちのカカオ」の意)がカカオ豆を買い付けているパプア州ジャヤプラ地方のカカオ収穫状況は、2023年は年初から思わしくありませんで した。昨年が豊作だったので、今年は裏年なのでしょうか。
しかし、ピンチをチャンスにという言葉があるように、豆の集荷に苦慮するなかでカカオ生産者たちの間で協同作業を組織化して経済的な力をつけよう、という意欲がわいてきました。
新代表の悩みがきっかけに
昨年カカオキタ社代表のデキーさんが闘病の末亡くなった後、今年 2月にデキーさんの一人息子ハンス(34歳)がカカオキタ社スタッフや生産者の承認を得て代表に就任しました。カリスマ性のある父親の後ろにいつも隠れていて、自信があるのはバスケットだけというちょっと頼りない?ハンス代表。その彼から、カカオ豆の収穫が不調で昨年同時期の半分にも満たず、このままでは日本の消費者にチョコレートを届けられない、どうしたものか、と相談を受けた時、産地のひとつブラップ村の生産者たちは「カカオキタ社を助けてあげなければ!」と買い付けの協力を申し出てくれました。
親戚や知り合いがいる地域を回ってカカオ豆を集め、それをブラップ村の有志で再乾燥・選別して、自社の倉庫で作業する必要がないくらい、きれいな状態でカカオキタ社に売ってくれたのです。お陰様で6トンのカカオ豆を委託加工先のスラバヤに向け出荷することができました。
この経験から、数名のブラップ村生産者が村を越えたカカオのネッ トワークを構築し、一次加工(発酵・乾燥・選別)を行う仕事に本格的に取り組みたいと考えはじめ、それが「協同組合を立ち上げよう!」という動きにつながりました。

組織化の難しさを乗り越え、生産者たちの新たな挑戦がはじまる
ブラップ村とカカオキタ社のお付き合いはかれこれ7〜8年になりますが、デキーさんは最初の頃から協同組合を構想していました。生産者世帯が経済的に自立し、お金をパプア先住民族のコミュニティ内で循環させるために、「みんなで共同体経済を作ろう」と語っていたのです。しかし、生産者のやる気と覚悟が内部から立ち上がってくることを待つという姿勢で、組織化を強制することはしませんでした。パプアの先住民族を組織化する難しさは、彼らの伝統的な生活習慣にもその理由があります。協同作業を必要とする農耕民族と違い、狩猟採集民族のパプア人は単独または身内で行動することが基本で、狩猟の際は犬を数匹従えて一人で森に入って獲物を仕留めるのです。異なった意見を調整しながら目標に向かって人びとをまとめるのは新しい挑戦です。

組合を立ち上げるための話し合いでも、ついつい他人の発言をさえぎったり、一人で仕切ろうとする人が出たりと組織運営が前途多難であることは想像に難くありません。それでも、組合という枠のなかで話し合いをするなかで「誰でも発言権はあるよ」「透明性が大事だよ」という組合運営の民主的プロセスを喚起しながら、設立発起人20名の組合を登記することにこぎつけました。
名前の意味は”穏やかで清涼な川”
組合の名前は、”NGGAPU BU NGALI” (ンガプ・ブ・ンガリ)。ブラップ村があるグニェム地方の言語で”穏やかで清涼な川”という意味で、カカオ産地が広がる地域を流れる美しい清流「カリ・ビル (碧い川)」が組合のシンボルとなりました。

設立目的は「わたしたち、一緒に、民衆経済を築きあげましょう」。デキーさんが民衆交易を説くとき常に強調していた、「生産者と消費者、その他関わる人たちすべてが一致協力して民衆による民衆のための経済(交易)を発展させていく」ということです。理事メンバーには生産者たちの強い要望で、カカオキタ社のスタッフも数名加わることになりました。ハンス代表は「組合活動を通じて鍛えてあげる」という生産者の意向で、副専務理事に指名されました。

カカオ生産者とカカオキタ社が協同組合のなかでがっぷり四つに組んで新たな可能性に挑戦します。どうぞご期待ください!
津留歴子(つる・あきこ/カカオキタ社)
【動画】パレスチナ・オリーブ生産者インタビュー
※このインタビューは、2023年10月7日ハマスとイスラエル軍の武力衝突前に撮影されたものです。
ガザ侵攻が始まって以来オリーブ産地のヨルダン川西岸地区でも緊迫した状態が続いています。現地パートナー団体によると今年収穫出来たオリーブは予定収量のうち35%のみで、65%は収穫できずそのままとなっているそうです。日常的に土地の不当な没収や暴力にさらされ、そもそもが理不尽な環境下だった人びとの暮らしがより厳しい状況になっています。
そうした状況だからこそ、生産者のことを知ってもらいたいという気持ちも込め、インタビューを掲載することにいたしました。
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これまで、男性生産者が登場する機会はありましたが、女性生産者は、実は今回が初めてです。
お話いただいたのは、ヨルダン川西岸地区にあるオリーブオイルの産地アル・ヤムン村に住む、ヌハ・アフマド・タイェブ・ホシイェさん。ホシイェさんの家族は、夫と5人の娘と4人の息子。9人の子どもがいるお母さんです。
自分たちの土地で色々な野菜を育て、家畜の羊や牛のミルクからチーズやヨーグルトを作り自家消費用にしています。そうした生活のなかでオリーブは大切な収入源です。
家族総出で作業する収穫の時期は、オリーブの木の下で薪をくべて家族みんなで料理をしたり、ピクニック気分で一家が一緒に楽しむことができるお祭りのような季節なのだそうです。「オリーブの収穫は大好き」と話すホシイェさんのうきうきした表情からは、家族との楽しい時を過ごしながら収穫作業をしている様子が伝わってきます。
生産者にとってオリーブ畑は、単に収入源のためのオリーブを育てるというだけでなく、家族との時間を共有できるかけがえのない場所でもあります。「私たちにとって土地はとても大事なもの」、そう語る彼女の「とても大事」の言葉の重みが心に響きます。
パレスチナ・ヨルダン川西岸地区の状況について

2023年12月20日
アルリーフ社
(パレスチナ農業復興委員会(PARC)のフェアトレード事業会社)
ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人の都市・村落・難民キャンプに対する連日の侵攻
過去2カ月間、連日、イスラエル占領軍は、ヨルダン川西岸地区の各地、特にジェニン、ナブルス、トゥルカルム、ジェリコの難民キャンプに軍事侵攻を続けてきています。その主な目的は、抗議活動に参加したり、積極的に各種メディア・プラットフォームでイスラエルの占領による犯罪を暴露したりしているパレスチナ人の男性、女性、子どもを拘束することです。

攻撃により3人が死亡し、多数の負傷者が出た。
2023年1月からイスラエル軍に殺害された(西岸地区の)パレスチナ人は505人以上となり、特に10月7日以降だけで302人以上が殺害されています。2023年は(西岸地区の)パレスチナ人にとって最も殉教者の多い年となってしまいました。イスラエル軍がガザ地区で2万人以上のパレスチナ人(その多くが子どもと女性)を殺害し、5万2586人以上を負傷させ、170万人以上の住民をガザ地区南部に避難させたことで、大規模な人道的大惨事と虐殺に見舞われていることは言うまでもありません。2023年のこの75日間が、イスラエルの占領下で暮らすパレスチナ人にとって、過去75年間を通しても最も恐ろしく残虐なものであったことは否定できないのです。こうした状況にもかかわらず、すべてのパレスチナ人は、解放のため、そして私たちの土地の占領と植民地化を終わらせるための闘いにおいて、立ち直る強さと粘り強さを失っていません。
ヨルダン川西岸地区におけるイスラエル占領軍のパレスチナ人拘束キャンペーン
10月7日以降、イスラエル占領軍はガザ地区での人質事件への対抗として、ヨルダン川西岸地区で4575人以上のパレスチナ人を拘束し、2221件の「行政拘禁(注)」を命じました。イスラエル占領軍とパレスチナの抵抗勢力との間の人質交換取引によってイスラエルの刑務所から最近釈放されたパレスチナ人の報告によると、パレスチナ人被拘禁者には、食料、衣服、毛布などが十分に与えられず、看守による継続的な激しい暴行や身体的嫌がらせを受け、ひどい状況で生活しているといいます。これは、イスラエルの占領政策である「緩慢な死」の一環であり、パレスチナ人被拘禁者に対する継続的な拷問と医療怠慢という形で長年にわたって続いてきたことです。
イスラエルの刑務所でパレスチナ人が耐えている恐ろしい状況と拷問により、刑務所内でパレスチナ人拘禁者が死亡するケースが複数発生しています。被拘禁者・元被拘禁者問題委員会によると、イスラエルの刑務所には現在、子ども255人、女性150人以上を含む7800人のパレスチナ人被拘禁者がいます。特に、イスラエルの看守による虐待、拷問、脅迫と闘わなくてはいけない女性の被拘禁者に対する状況はより深刻です。
この侵攻と逮捕・拘束のキャンペーンは、パレスチナ人に対する嫌がらせと虐待、被拘禁者の家族への脅し、パレスチナ人の財産の破壊、侵攻した地域のインフラに破壊を引き起こしています。
イスラエルによるガザ地区への攻撃が続くなか、イスラエルは、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府の主な収入源となっている税収(イスラエル政府が代理徴収している)の移転を停止しました。その結果、パレスチナ人公務員は2カ月以上にわたり、月給を受け取っていません。そのうえ、イスラエル側で働く約13万9000人のパレスチナ人も仕事を続けることができなくなっており、パレスチナ市場に経済的災難をもたらし、失業率は急速に上昇しています。
これらイスラエルの占領がもたらす全てが、ガザ地区への侵略に反対するヨルダン川西岸地区での広範な抗議行動を阻止するために利用され、その結果、パレスチナ人の生活の多方面にわたるイスラエルによる支配が拡大しているのです。

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イスラエルによる抑圧的なやり方と、ガザ地区における残忍な民族浄化が明らかにしているものは何でしょうか。
それは、イスラエルによるパレスチナ人の土地の占領を終わらせ、国際法に従ってパレスチナ人に独立国家を保証する真の政治的解決をめざし、パレスチナ人の闘争を人道・安全保障問題としてではなく政治問題として扱うことによってのみ、このすべてを終わらせることができるのだということです。
パレスチナ人は75年もの間、そのために闘ってきたのです。しかし、それにもかかわらず、いまだに犯罪者扱いされ、特にガザ地区では集団処罰の対象になっているのです。
注:起訴・裁判などの司法手続きを経ないまま収監・拘禁する制度
「ガザの飢餓を止めろ」キャンペーン支援進捗報告

パレスチナ農業開発センター(UAWC)
2023年12月19日
10月7日から74日間にわたってガザ地区で続いている「ジェノサイド戦争」は、前例のない規模の破壊と(イスラエル軍による)意図的な戦略によって、「根絶のための戦争」へとエスカレートしています。この戦争によって、1万8500人以上のパレスチナ人の命が失われ、5万1000人以上が負傷した。破壊は人的被害だけにとどまらず、ガザ地区内の建物の60%以上が破壊され、1万人以上が行方不明となり、様々な地域のインフラが完全に破壊されました。
この戦争が際立っているのは、その残虐さにおいてだけでなく、農業や漁業といった食料生産に不可欠な民間インフラを組織的に標的にしていることです。イスラエル軍は、戦略的に、民間人の生活様式を混乱させ、破壊するために注力しており、それによってガザ住民の生存そのものを脅かしています。
現状で最も懸念されるのは、食料生産の基幹であるガザの農業が直面している甚大な破壊です。温室、農地、水道網、灌漑用井戸、農道、そして羊、鶏、牛などの家畜農場など、インフラの70%以上が破壊されています。最も深刻なのは、数千人の生計、そして栄養の供給源である漁業が受けている打撃です。漁船団の大部分が破壊されたり損傷したりして、すでに不足している食料資源をさらに減少させ、何千人もの漁師の生計に影響を及ぼしています。
イスラエルの戦時内閣による包括的封鎖がこの状況を悪化させ、食料、水、電気、燃料といった必要物資のガザへの流入を著しく制限しています。この封鎖は、戦争戦略の重要な要素であり、事実上、飢餓を武器として使用しているのです。これは、戦争における飢餓の使用を明確に禁止している国際法に著しく違反しています。
その結果、ガザは飢饉のような状態に見舞われており、100万人以上のパレスチナ人が生活必需品の切迫した不足に直面し、憂慮すべき規模の人道危機が引き起こされています。
「Stop Gaza Starvation(ガザの飢餓を止めろ)」キャンペーンの報告
◆目的と意義
- 目標:戦争によって引き起こされた悲惨な状況からの救済、特に深刻な食料不足と必需品不足への対応。
- 人道的重点:紛争の影響を深く受けている家族に、食料、水、衣料などの重要な物資を届ける。
- 飢餓と苦しみの緩和:緊急援助だけでなく、食料安全保障や生活環境への長期的な影響を軽減するための活動も行う。
◆支援範囲
- ガザ地区を中心に、加えて、ヨルダン川西岸地区の中で軍事活動や封鎖の特に激しい地域に積極的に働きかける。
- 支援対象者:最も弱い立場にある子ども、高齢者、医療を必要とする人びとを優先的に支援する。
◆戦略的アプローチ
- 協力と調整:現地のパートナー、コミュニティ・リーダー、国際組織と連携し、影響力とアウトリーチ活動を最適化する。
- 物流の課題:援助物資を安全かつ迅速に届けるため、地域の不安定性を克服する。
- 適応戦略:変化し続ける現場の現実、特に支援地へのアクセスや緊急ニーズに対応するため、継続的に戦術を見直す。
<本キャンペーンでこれまでに実施できた支援の概要>
【ガザ地区】
受益者数:10月24日のキャンペーン開始以来、合計で1万9500世帯に達した。ラファ、ハンユニス、ジャバリアの地域に集中して支援をしている。
- 約1万6500世帯に必要な飲料水を提供。
- 約2500世帯に食料バスケットを提供。
- 家や財産を失った500人の女性に対し、緊急のニーズを満たすための衣服を提供。
【西岸地区】
封鎖下にある地域の約120世帯に対して、家畜に必要な飼料を提供。羊の栄養補給と農業生計の継続に役立っている。
*なお、提供する物資は、地元の業者からの調達や10月7日以前の備蓄を活用し、迅速な援助展開が可能であった。さらに、地元の農場との協力は、リスク下での農業コミュニティの回復力を示している。


◆挑戦と困難
- 戦争による生活必需品の在庫減少や物価高騰は、供給するための物資の獲得と管理における課題を増大させている。
- 空爆による複雑な流通状況にもかかわらず、UAWCのチームは、最も弱い立場の人びとに支援を届けるという確固とした決意を持ち続けている。
- ガザ地区内のUAWCの事務所や苗床は甚大な被害を受け、運営に支障をきたしている。
【バナナニュース346号】フィリピンからスタッフが来日!

2023年11月下旬、バランゴンバナナの輸出事業者であるオルタートレード・フィリピン社(ATPI)からバナナの生産管理と出荷を担当するアーウィン・ソラノさんとウィニー・ソベラノさんが来日しました。滞在期間中には、気候変動によるバナナ生産への影響について話をする機会が多々ありました。
「想像してみて!明日収穫できると思っていたバナナが台風によって一夜にしてなくなってしまうんだよ」とアーウィンさん。バナナは木に見えますが多年草の草。実の重みで強風が吹くとすぐに倒れてしまいます。2021年末には大型台風オデットの上陸で、ネグロス島のバナナはほぼ壊滅状態になりました。約1年数ヶ月後に回復し、天候に恵まれ豊作になったと思ったら、今年の7月と8月に再び台風がやってきました。その後も南西季節風の影響で長雨や強風が続き、バナナの成長にとっては厳しい天候が続きました。
特にネグロス島では、バランゴンバナナの売上が主な収入源の生産者もいます。「倒れてしまったバナナを前にがっくりする生産者に、またバナナを育てようと励ますのは心が痛い時がある。でも、再び立ち上がりバナナを育てる生産者たちは本当に強い心を持ち、忍耐力のある人たちだと思う」とも話してくれました。バナナはちょっとユニークな植物で、トモロコシやお米のように、被害後に植え直さなくとも、脇芽がポコポコ生えてくるという特性があります。だから復活しやすいという面もあるかもしれないね、とバナナならではの話もしていました。





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PtoP NEWS vol.59
PDFファイルダウンロードはこちらから→PtoP NEWS vol.59


オンラインセミナー「パレスチナのオリーブ生産者は今」開催
2023 年 10 月 7 日に始まったハマスとイスラエルの武力衝突は双方の市民に多くの犠牲者を出し、とりわけガザ地区では深刻な人道危機が継続しています。マスメディアはガザ地区への爆撃について報道するものの、民衆交易オリーブオイルの産地があるヨルダン川西岸地区でも入植者によるパレスチナ人への暴力や強制立ち退きが頻発していることはほとんど報道されません。そこで、現地パートナー団体とオンラインでつなぎ、イスラエルによる占領が引き起こす諸問題やオリーブの収穫シーズンを迎えている生産者の様子を伝えてもらうセミナーを開催します。
【日時】
2023年12月13日(水)19時〜21時
【報告内容】
① ヨルダン川西岸地区の人びと、農民が置かれている一般的状況について
② 2023年10月7日以降の西岸地区の状況及びオリーブ収穫について
③ オリーブオイル民衆交易事業の意義について
④ ガザ地区・ヨルダン川西岸地区における緊急支援の進捗報告
【報告者】
フアッド・アブサイフ氏(パレスチナ農業開発センター・UAWC 代表)
サリーム・アブガザレ氏(アル・リーフ社 ジェネラル・マネジャー)
イザット・ゼイダン氏(パレスチナ農業復興委員会・PARC 事業ディレクター)
※各報告にはアラビア語・日本語の逐次通訳が付きます。
※UAWC、PARCは農民を支援するNGOで、(株)オルター・トレード・ジャパン(ATJ)が輸入しているオリーブオイルの出荷団体でもあります。アル・リーフ社はPARCのフェアトレード事業会社です。
■参加方法について
- オンライン会議ツールZoomを利用したウェビナーとなります。
- 参加費無料ですが、事前登録が必要です。以下からご登録ください。
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_oI3nSO00T2qsTRpPDAznBA
※セミナーは録画され、後日視聴ができます。セミナー開催後、登録時のメールアドレスに視聴URLをご案内します。
■本セミナーに関するお問合わせ先
・(株)オルター・トレード・ジャパン広報室(担当:小林、上田)
電話:03-5273-8176/Email: pr@altertrade.co.jp
・特定非営利活動法人APLA(担当:野川)
Email: info@apla.jp
【主催】株式会社オルター・トレード・ジャパン(ATJ)、特定非営利活動法人APLA
【バナナニュース345号】ブハイ村のアイマさん~ミンダナオ島コタバト州マキララ町~
2023年8月初旬に実施されたバナナ担当者産地視察(通称バナ担ツアー:バランゴンバナナを扱う生協・団体の担当者による産地視察、生産者との交流)で訪れた、ミンダナオ島コタバト州マキララ町のご紹介です。
※同ツアーで訪問した南コタバト州レイクセブもこちらで紹介しています。
- コタバト州の出荷団体・ドンボスコ財団
コタバト州マキララ町は、2013年からバランゴンバナナの民衆交易に参加した比較的新しい産地です。出荷責任団体であるドンボスコ財団(1988年組織化、1994年正式登録)は、バイオダイナミック農法を推奨・実践しており、自ら管理する圃場にはバナナだけでなく多種多様な動植物が共存しています。まずはその景色の美しさに魅了されました。

水も豊富で、パッキングセンターで洗浄に使う水は山から引いています。ドンボスコは、多国籍企業のプランテーションが広がり農薬散布で水源が汚染されることを避けるため、ヨーロッパの財団からの助成金で土地を購入し、土地を持っていない人びとに分配、彼らの収入源とすべくバランゴンバナナの出荷を始めました。






- 4年前に大きな地震を経験
今から4年前の2019年10月、この地域を震源とするマグニチュード6規模の地震が数回発生し、生産者を含む住民、コミュニティ、そしてドンボスコも、地崩れによるインフラや建物の崩壊など、甚大な被害を受けました。今回訪れたのは、地震の後、新たな土地に再建されたドンボスコ財団とブハイ村役場です。
※当時の被害状況や復興支援についての記事はこちらをご参照ください。
・地震発生
・続報


- バランゴンバナナの産地 ブハイ村
ブハイ村役場(バランガイホール)で出迎えてくれたのは、村長(チカさん・40歳)の妻でマラナオ族出身の生産者アイマさん(37歳)と、バゴボ・タガバワ族の120を超える世帯のリーダーであるインボックさん。


ブハイ村の住民は2,119人、465家族、419世帯(2023年8月訪問時)。村役場はドールのバナナプランテーションを抜けた小高い丘に建っています。昔このあたりはゴムやコーヒーの栽培が盛んで、その収入で学校に行けたそうですが、コーヒーの価格が下がりバナナに切り替わったとのことです。アイマさんの圃場はここからさらに遠く標高が高いマリワナグ集落にあります。
アイマさん「バランゴンバナナの出荷は地震の後から始めました。点在する3haの土地に1,000株、少しずつ増やしています。以前畑の中にあった小川は地震でなくなってしまったけど、日本からのカンパでもらったホースを使って今は別のところから水を引いているのでエルニーニョ(フィリピンでは雨が少なくなる)でも大丈夫。バランゴンは農薬を使わないし、費用もそれほどかかりません。まだ子どもが小さくてお金がかかるので、苗があればもっと増やしたい!」と意欲満々なアイマさん。「子どもは8人いて、1番上は20歳の大学生、一番下は生後4ヵ月。女の子は2番目の1人だけ。自分は17歳で結婚して高等教育は受けられなかったけど、子どもたちはきちんと卒業させてあげたい」と涙ぐむ場面も。ドールの農薬散布による被害はないか尋ねると、「バナナの圃場は遠いから被害はありませんが、住んでいるところでは以前は夜中の1~2時頃に農薬をスプレーしていて、時々臭くて目が覚めることも。ドールに訴えて今はその時間の散布はなくなりました」。
ドールがこの地域に来たのは2000年ぐらいで、土地を持っていない人たちはドールで働いているそうです。パッキングや花芽落とし、スプレー散布、花芽への注射などの仕事をしています。
ドンボスコ財団代表のベッツィさんは、「生産者の仕事になるからドールにはいてもらいたいが、オーガニックに移行して欲しいと願っている。以前ドールの上層部の人がドンボスコにきてその風景に驚いていた」と話してくれました。最後にインボックさんが語ってくれた夢は、「ゆくゆくは出荷量を増やして自分たちのパッキングセンターを作りたい。今の2倍ぐらいの量になればできるが、今の量も強風が吹くと半減してしまう」とのせつない思い。インボックさんはいわゆる篤農家で、彼が育てるバナナは1株で1箱作れる(通常は半箱くらい)そうですが、自然環境に委ねる部分が多いバナナ栽培は、なかなか思うようにいかないのが現実です。
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収穫シーズン真っただ中のオリーブ産地は今
パレスチナでは例年10-11月にオリーブを収穫します。10月7日以降、ATJオリーブオイルの産地であるヨルダン川西岸地区の状況がどうなっているか心配していましたが、アル・リーフ社(パレスチナ農業復興委員会・PARCのフェアトレード事業会社)より今年の収穫の様子を伝えるニュースレター(11月20日付発行)が届きました。
ヨルダン川西岸地区の概況
ヨルダン川西岸の政治・治安情勢は、2023年10月7日以前からすでに緊迫しており、その後エスカレートし続けている。今回のガザ攻撃が始まる前の20ヶ月前にイスラエルの極右新政権が誕生し、パレスチナ人の権利と自由に対する抑圧と収奪が強まり、これまでにヨルダン川西岸地区で470人以上、ガザ地区で89人以上のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺害された。
過去2年間、イスラエル占領軍は、何百ものパレスチナ人家屋の破壊を命じ、暴力的なイスラエル人入植者による何百もの攻撃を支援し、パレスチナ人の多大な物的・人的被害をもたらした。その上、パレスチナの土地におけるイスラエル人入植地は、ここ数年で加速的に拡大している。
このようなイスラエルの継続的な抑圧と、75年にわたる占領下でのパレスチナ人の闘いは、暴力の連鎖の爆発を引き起こしてしまった。最大の「天井のない刑務所」であるガザ地区における大規模な人道的大惨事をもたらしているイスラエル軍の空爆により、5500人の子どもを含む1万3000人以上のパレスチナ人が殺害されている。
パレスチナのオリーブ産業
オリーブの木はパレスチナの900平方キロメートル以上の土地に植えられており、約1,300万本にもなる。1967年以来、イスラエル占領軍は、80万本以上のオリーブの木を根こそぎにしたり、焼き払ったりしてきた。「植民地化・分離壁抵抗委員会」の報告書によると、入植地の近くにあり、アパルトヘイト分離壁によって隔離された土地の面積は、パレスチナでオリーブの木が植えられている土地の総面積の7%と推定され、その所有者は、イスラエル側からの許可がない限り、その土地に立ち入ることができない。そのため、これらの土地の所有者は、オリーブの実が盗まれたりオリーブの木が焼き払われたりされることに加え、自分たちの土地を取り戻すこともオリーブを収穫することもできない。このようなイスラエルによるパレスチナのオリーブ産業に対する妨害により、年間約1,500トン相当のオリーブオイル、約1,050万米ドル(約15億7,500万円)もの損失が出ている。
パレスチナのオリーブオイルの一般的な年間生産量は22,500トンである。オリーブは表作(豊作)・裏作(不作)がある作物で、表作では約33,000トン、裏作では約7,000トンから10,000トンと幅がある。2023年のオリーブオイル生産の初期予想は12,000トン、ヨルダン川西岸地区で10,000トン、ガザ地区は2,000トンであった。
10月7日以降のオリーブ産地の様子
イスラエルによるガザ侵攻が始まって以来、ヨルダン川西岸地区では212人以上のパレスチナ人がイスラエル軍によって殺害された。また、ヨルダン川西岸の各都市は、軍事検問所によって互いに隔離され、異なる地域間の移動が制限されている。
オリーブの収穫シーズンと重なり、一部のオリーブ農家はイスラエル入植地近くの農地に行くことが難しくなった。10月7日以降、動員された暴力的な入植者たちがオリーブ農家の暮らしを脅かしている。ナブルス近郊のアル・サウィヤ村でオリーブを収穫していた農民、ビラル・サレーさんがイスラエル人入植者によって殺害されたほか、多くの農民が定期的に襲撃され、一部の地域ではイスラエル人入植者によってオリーブの実が盗まれている。また、イスラエル側はいくつかの村でアパルトヘイト分離壁の反対側の農地に行く許可を農民に与えなかったため、通常の収穫量の20%から40%のオリーブしか収穫できていない村も複数ある。
10月7日から今日に至るまで、イスラエル占領軍は、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人農民がアパルトヘイト分離壁の反対側やイスラエル人入植地周辺の土地でオリーブを収穫することを妨げている。その中には、肉体的な暴行や銃撃も含まれており、オリーブを収穫している最中に農地で亡くなったり、負傷したりした農民も多数いる。
「植民地化・分離壁抵抗委員会」は、2023年上半期に140件のイスラエル人入植者の攻撃により根こそぎにされたり、破壊されたオリーブの木は8,340本にのぼると報告している。攻撃はラマラとアル・ビレ県に集中し合計で35件、次いでナブルス県で33件、ヘブロン県で24件であった。
“We Are With You”キャンペーン
パレスチナ農業復興委員会(PARC)は現在、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の様々な場所で毎年PARCが自主的に行っている“We Are With You”キャンペーンを進めている。このキャンペーンは15年間続けられており、主な目的は、イスラエルの占領と入植者の侵害に対抗して、オリーブの収穫期に農村部のオリーブ摘み取りでパレスチナの農民を支援することである。何百人もの地元ボランティアが、シーズン中、積極的にオリーブ摘みに参加し、キャンペーンの原動力となっている。残念ながら、今年は戦争が続いているため、外国人ボランティアはこのキャンペーンに参加することができなかった。
パレスチナ・ガザ地区で緊急支援物資配布が開始されました。
ATJのオリーブオイル出荷団体であるパレスチナ農業開発センター(UAWC)、パレスチナ農業復興委員会(PARC)は、それぞれ11月初めよりガザ地区内で自己資金で調達した食料や物資の配布を始めました。両団体からの報告です。
1.UAWC
UAWCは11月初めから「ストップ・ガザ飢餓キャンペーン」を開始しました。この活動は、紛争が続いているガザ地区とヨルダン川西岸地区の家族に必需品を提供することに重点を置いています。ここ数日の配布活動はガザ地区のカーン・ユニスとラファ地域に集中しています。UAWCのガザ地区スタッフとボランティアは、爆撃される危険性が高いのにもかかわらず支援を必要としている2,000世帯の人々に緊急支援物資を粘り強く届けてきました。
11月11日、約150世帯分の食料を保管していた倉庫が爆撃で破壊されました。幸いなことに、ボランティアやスタッフに死傷者は出ませんでした。援助物資の配布を効果的に継続するために新たな保管場所を探しています。
配布物資はガザの現地業者から調達しています。ガザで必要とされているものは膨大で、特に食料、ミルク、衣類、水、シェルターの確保に重点を置いています。在庫が限られているので、物資を確保するのは時間との戦いとなっています。現地の業者と緊密に協力しながら、私たちは最も弱い立場の人びとに援助が確実に届くよう全力を尽くしています。
2.PARC
PARCガザ地区事務所のスタッフ、ボランティアは、武力衝突が始まった初期の数日間、手持ち資金でガザ地区中南部のスーパーマーケットで物資を購入したり、その前から保管していた生活必需品を11月初めに学校等に避難している人びとに配布しました。


武力衝突前に収穫して在庫としてあった野菜をガザ地区中南部の農民から直接買ったり、手元にわずかにある燃料を使って井戸から汲み上げた飲料水も一緒に配りました。しかし、地上戦が激化している北部では飲料水等の配布はできませんでした。


エジプトとの境界にあるラファ検問所を通して国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)や赤新月社(国際赤十字連盟のイスラム教国の組織)が搬入する一部の物資を除くと、ガザ地区への物資の供給はありません。現在、スーパーマーケットの棚は空っぽです。
以上、両団体からの報告です。爆撃の恐れがある中、救援活動を行うUAWC、PARCのスタッフやボランティアには本当に頭が下がる思いです。
ATJでは、姉妹団体のNPO法人APLAと共同でパレスチナ・ガザ地区、ヨルダン川西岸地区救援カンパを呼びかけています。多くの方への拡散、募金へのご協力をお願いいたします。
▼支援内容や募金方法の詳細はこちらからご覧いただけます。