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バランゴンバナナ

Balangon Banana
バランゴンバナナ
フィリピン
バランゴンバナナの産地フィリピン
フィリピン・ネグロス島の人びとの自立を支援する取り組みのひとつとしてバランゴンバナナの民衆交易が開始されたのは1989年のことです。
ネグロス島から始まったバナナの交易は、北ルソンやボホール島、台風被害の少ないミンダナオ島に広がっています。
  • ネグロス島

      ネグロス西州

      バランゴンバナナの出荷は、島の中央部にあるカンラオン山麓の村々から始まりました。ネグロス西州は、民衆交易の発祥の地です。西州は「砂糖の島」と呼ばれる所以であるサトウキビ畑が延々と広がっていますが、バナナの産地は主に山間部にあります。

      ネグロス東州

      島の中央を南北に走る山脈の東側、海の近くまで続く山間地にバランゴンバナナの産地があります。生産者たちはバナナ以外にトウモロコシなども栽培しています。山間地で収穫された農作物は農民自身が山を下りて市場まで運ばなくてはなりませんが、バランゴンバナナは山の中の集落まで集荷に行くので、生産者たちに喜ばれています。

  • ミンダナオ島

      南コタバト州ツピ

      バナナやパイナップル、パパイヤなどのプランテーションが広がる地域です。ココナッツ林の間にバランゴンバナナを栽培しています。生産者組合を設立し、栽培管理から出荷までを担っています。地元では”オーガニック・バナナ”を生産している団体として知られています。生産者はキリスト教徒、イスラム教徒、先住民族など多様で、バナナ事業がそれらの人たちをつなげ、平和構築に寄与していると州政府からも評価されています。
      ※化学合成農薬や化学肥料を使用せずに栽培していますが、有機認証は取っておりません。

      南コタバト州レイクセブ

      なだらかな丘陵と深い熱帯雨林に覆われた山々に囲まれているアラー渓谷流域に位置します。町にあるセブ湖は下流域の水源ともなっています。この地には、先住民族のオボ族やティボリ族が暮らしています。元々狩猟生活をしていた人びとが定住し、暮らしの基盤を作っていくためにバナナの栽培、出荷に取り組み始めました。生計手段を得ることで先祖から受け継がれた土地や文化を守ることにつながっています。

      コタバト州

      産地であるマキララ町とアラカン町は、フィリピンで最も標高の高いアポ山とそれに連なる山並みの中腹に位置します。周辺には高地栽培バナナやゴムなどのプランテーションが広がります。生産者たちは、プランテーション開発から地域の土地や環境を守るため、有機農業を推進しており、バランゴンバナナもその取り組みの一つです。

      北ミンダナオ

      ミンダナオ島の北ミンダナオ地方に属するミサミス東州、ブキノドン州に産地があります。生産者は先住民族の人びとです。全員小規模農民で、バランゴンバナナ以外にも他の種類のバナナやトウモロコシを栽培しています。バランゴンバナナの生産は、日々の生活を支えると同時に、カガヤン川流域の環境保護や、ヒガオノン族の先祖代々の土地や文化、地域社会を守ることにもつながっています。

  • ルソン島

      北ルソン

      ルソン島北部の山岳地にはイフガオ族やイゴロット族など様々な先住民族が暮らしており、バランゴンバナナの生産者の多くも先住民族の人たちです。ヌエバビスカヤ州、イフガオ州にバランゴンバナナの産地があります。バランゴンバナナの他に高原野菜や果物、コーヒーなどを栽培しています。

  • ボホール島

      フィリピン中部のビサヤ地方に位置する島の一つです。バランゴンバナナの産地は楕円形の島の南半分側にあります。生産者のほとんどが裏庭でバナナを栽培している小規模農民です。バナナ以外にココナッツ、切り花、コメ、野菜各種を栽培しています。東沿岸部の生産者は漁業も営んでいます。バランゴンバナナはそうした小規模農民たちの暮らしを支えています。

世界初、市民の手による地場バナナの輸入

1980年代に起きた砂糖の国際価格の暴落により、サトウキビのプランテーションが広がる「砂糖の島」ネグロス島では、仕事を失った多くの労働者とその家族が深刻な飢餓に見舞われました。1987年に支援の一環としてネグロス島からマスコバド糖の輸入が開始されました。マスコバド糖に続く第2の商品として考えられたのがバナナでした。

マスコバド糖の事業経緯はこちら

1982年に出版された『バナナと日本人』(鶴見良行著/岩波書店)は、日本人が安いバナナを食べることができている裏側で、フィリピンのプランテーション労働者の過酷な労働実態や、農薬との関連が疑われる病気を訴える労働者や住民が多いことを明らかにしました。「こんなバナナは食べたくない!」生産者にとっても消費者にとっても安全・安心で公正なバナナを求める消費者の声が高まりました。

一方、ネグロスの村では多くの人が裏庭や裏山にバナナを植えており、ネグロスの人びとはこれをマスコバド糖と同じように日本へ輸出することで自立の夢をかなえたいと考えました。数ある品種の中からバランゴンバナナが選ばれたのは、日本人好みの味であること、また、主に山間地で栽培されており現地ではあまり流通していないので、日本へ輸出してもネグロスの人びとの食を奪うことにならないことも考慮されました。バランゴンバナナの民衆交易は、ネグロスの人びとの自立したいという思いと、安全で公正な食べものを求める生協運動が出会って生まれたものです。1990年には本格的な輸入が始まり、世界初の「市民の手による、農薬不使用の地場バナナ」の民衆交易が実現しました。

産地と事業の広がり

輸入が始まった当初、日本に届いたバナナは真っ黒に腐り、軸はバラバラという状態で、試行錯誤の連続でした。その後も台風の影響やバンチトップ病などの病害のために出荷量も不安定で、熟度や傷みなど品質の問題も抱えていました。2000年には安定供給と事業の基盤づくりをめざして、台風の影響がほとんどなく土壌や気候に恵まれたミンダナオ島にも産地を広げることにしました。品質改善のために熟度管理(タグ付け)や栽培管理(袋掛けなど)といった作業も導入されました。

現在、ネグロス島や北ルソン、ボホール島、ミンダナオ島に3,000人を超える生産者がいます(2023年8月時点)。また、2017年からは韓国の生協もバランゴンバナナの民衆交易に取り組んでいます。生産者への栽培指導やバナナの集荷、パッキングなどは地域によりオルター・トレード・フィリピン社(ATPI)もしくは各地にある出荷団体が行い、日本及び韓国への輸出はまとめてATPIが担っています。

バランゴンバナナを出荷することで、生産者は定期的な現金収入が得られるようになり、子どもの教育費や基本的な衣食住を確保するための大切な手段となっています。また、産地によっては生産者はバナナだけを植えるのではなく、多種多様な作物を育て家族や地域内での米や野菜の自給にも取り組んでいます。

ATJレポート

産地の様子や生産者の声をはじめ、民衆交易に関わる人・もの・コトの情報をお届けします。

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