カテゴリー: レポート(バランゴンバナナ)
バランゴンバナナ
【バナナニュース343号】活気に満ちた女性生産者たち
2023年8月初旬、2018年を最後にコロナ禍で見送られてきたバナナ担当者産地視察(通称バナ担ツアー:バランゴンバナナを扱う生協・団体の担当者による産地視察、生産者との交流)が5年ぶりに実施されました。
訪問した産地はミンダナオ島の4産地。ミンダナオ島の各産地では、2022年以降作付け拡大が進んでおり、地元でもバランゴン事業が認知度を高め広がってきています。

これまでバナナ担当者がミンダナオ島の産地を訪問した回数は限られ、バートナー団体や生産者たちと直接交流した機会がネグロス島に比べて圧倒的に少ないため、現地側からのたっての希望で今回の訪問が決まりました。その中から、最も標高の高い産地、レイクセブをご紹介します。
レイクセブについての説明はこちらもご参照ください:バナナニュース259号:バランゴンバナナ産地紹介~レイクセブ~)
※この記事では、出荷責任団体UAVOPI(高地アラー渓谷有機生産者法人)が旧名のUAVFI(高地アラー渓谷農事法人)になっています。

今回訪れたのは、バランガイ・ランフゴンのコロンボン集落(標高800~900m)。傾斜がきつく、舗装はされているものの所々穴ぼこのある道を慎重に進んでいった先に、バランゴンの圃場が現れました。写真で見るよりも角度のある斜面にバナナが植えられています。


交流会にはたくさんの生産者が集まり、バランゴンバナナに対する思いや日々の暮らしについて様々なコメントをいただきました。



リーダーのマゲンテイさん(33歳)、妻のアニアさん。2019年からバランゴンバナナを出荷しています。
マゲンティさん「日本とは遠く離れているが家族だと思っている。すごい傾斜地だと思われるだろうが頑張って世話をしている。農作業が好きで、作物が順調に育っているとか、バナナがいっぱい花をつけたとか、毎日楽しみがある。ただ、バナナを運ぶのに人を雇うのでお金がかかる」
アニアさん「道ができる前からバナナを栽培している。昔はサツマイモ、トウモロコシ、キャッサバばかり食べていたが、今は米も時々食べられるようになった。皆さんがきてくれて嬉しい。実際のバナナ栽培を見てほしい。バナナは自分が食べるのにもいい」

長い髪をなびかせたヘルミソニオさん
「お互いの笑顔が見られるのが嬉しい。テレビや映画でしか見たことのない外国人がきた。バランゴンバナナは2013年から始めた。ここの気候にも合っている。1日3回食事ができるし、お米も、たまに売りに来る魚も食べられる」

赤ちゃんを抱っこしたリンリンさん
「このバナナがあって本当に助かっている。現金収入が得られる。女性なのになぜバナナの世話なの?と言われるが、貧しくても、ただ人にお金を恵んでもらうのではなく、私はバナナを栽培して子どもたちを育てていく」
また別の男性からは、「薬を使わずに自力で世話をしている。バナナの栽培方法について教えてほしい」といったコメントもありました。
生産者の女性からの「日本語が聞きたい」というリクエストに応えて、日本からの参加者も一人ひとり日本語で自己紹介をしました。その間ずっとスマホで動画を撮っている生産者もいました。

天候被害を受けやすいバナナ栽培ですが、皆が頑張って育てたバランゴンバナナがこれからも無事に日本に届き、この先も交流が続いていきますように。
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生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
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【バナナニュース342号】「私たちは良い品質のバナナを育ててるんだ」
~バナナ担当者小島の研修出張見聞録④(今後不定期で掲載します)~

ネグロス西州ランタワン村に圃場視察で訪問した際、生産者が「私たちは良い品質のバナナを育ててるんだ」とにっこりと話してくれた。少しギョッとしてしまった。ネグロス島のバナナの品質は他の産地と比べて良好とは言えず、日本での廃棄率が高い産地だからだ。日本の選別場で撮影した写真を見せて、「品質不良で一部が廃棄されている」と伝えたら、生産者は悲しんでいた。
その圃場視察後、州都バコロド市の露店で売られているバナナを見て回った。皮は極めて黒く、実まで傷みがあるバナナも平気で売られていた。地元のスーパーマーケットで販売されている高価な有機栽培バナナ(ラカタン種)ですら、軸腐れと傷が多かった。フィリピンでは、果実も野菜と同じく栄養摂取の意味合いの方が重視されると現地スタッフも話しており、青果物に対する品質基準は日本より寛容だ。
フィリピン国内消費用のバナナと日本への輸出用バナナを同じ基準で考えても仕方がないが、現地で売られているバナナと比べると確かに生産者のバナナの品質はとても良かった。生産者の言葉を思い出し、複雑な気持ちになり、少し悲しい気もした。「私たちは良い品質のバナナを育ててるんだ」と言うように、収穫時のバランゴンバナナには問題がないように見えるが、消費者に届くまでの長距離輸送と日数の経過で徐々に品質が悪化していってしまう。生産者が自信を持って生産したバランゴンバナナの品質をそのまま消費者にお届けできない歯痒さを感じた。
🍌バコロド市の露店やフィリピンで売られているバナナ
フィリピンの露店やスーパーマーケットでは、生食用や調理用の色々な種類のバナナが売られています。

商店街の店前に露店がチラホラ並んでいる。

他にも果実や衣服が多く集まるコーナーもある。



露店で購入したトルダン。1本約10円。
房ごと買わなかったから、割高となった。このバナナの購入理由は、皮がはち切れるほど熟していておいしそうだったから。トルダンは甘酸っぱい。

生食用のラカタン種(細い方。最上段)と料理用のサバ種(上から2段目の左側)のバナナ。
ラカタンは有機栽培バナナらしく高価でも軸腐れやダイヤモンドスポットという病害の傷が多く、品質はそこまで気にされていない様子。
個人的にはラカタン種が一番好き。酸味が少なく、甘い。


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【バナナニュース341号】マンティケル村から遥々と
~バナナ担当者小島の研修出張見聞録③(今後不定期で掲載します)~
■トラックの荷台に乗ってバナナの集荷へ
バランゴンバナナの産地、ネグロス島東州マンティケル村は山奥に位置しており、集荷作業が特に大変な地域の1つだ。
山道が険しくなると普通車では通行が難しくなったため、集荷トラックの荷台に乗り、資材と共にマンティケルの集荷場まで運ばれた。

体は跳ねるし、強雨に晒されて、アトラクションの様だったが、この道を生産者や運搬担当者、バランゴンバナナは通るのだと実感した。
※産地までの険しい山道を進む臨場感あふれる映像です。画面が激しく揺れますのでご注意ください

集荷作業後、トラックはバナナが高温に晒されないように日没後の午後7時にマンティケル村を出発し、70㎞離れたドマゲッティ・パッキングセンターに到着したのは日を跨ぎ午前1時になっていた。雨で道がぬかるみ、山をゆっくり降りてきたからだ。
その後、バナナはフィリピン国内の2つの港を経由して、約15日間かけて日本の港に到着する。日本の港からも追熟加工施設、リパックセンター、配送センターという長旅を経て、遥々皆さんに届く。

ネグロス島東州のバランゴンバナナは品質上の問題が少なくないが、インフラ状況、フィリピンの高温多湿な気候、青果物の足の早さ、栽培期間中の化学合成農薬や収穫後の防カビ剤・防腐剤の不使用という諸条件の中で、むしろよく耐えているなと荷台に揺られながら率直に思った(※)。
また、市場へのアクセスから疎外されやすい集荷作業が大変な地域こそバランゴンバナナの買い付けはより重要になり、そこから買い取る意義も実感した。
※品質については定期的にフィリピン側とも共有し、少しでも良いバランゴンバナナをお届けできるように努めています。
☆バナナ集荷場の様子☆
▼バナナを担いで集荷場に運んで来る生産者
▼馬で運んでくる生産者も


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【バナナニュース340号】初めてフィリピンでバランゴンバナナを食べて
~バナナ担当小島の研修出張見聞録②(今後不定期で掲載します)~
生産者の畑で熟したバランゴンバナナを初めて頂いたのは、初の海外出張の現場研修2日目でした。
とにかく多くの情報を吸収するんだと意気込みながら、バナナの写真を撮り、食味検査のように食べ、少し香りと甘味が強めだったとメモは残っていますが、もっと大切な味わうことは意識の外でした。


次に出会った生産者に再びバランゴンバナナを頂きました。前回の反省から、なるべく主体的に味わうようにしました。美味でした。それと同時に海外に居ながらも、日常感というか安心感を覚えました。担当者としてバランゴンバナナを日常的に食べていたからだと思います。
フィリピンにはマンゴー、ドリアン、ジャックフルーツなど美味しい果物はいくらでもありますが、そのバナナは心和らぐほど味わい深かったです。
味は思い入れや自分の食べる姿勢で大きく変わる気がします。バランゴンバナナが美味しいことは勿論ですが、折角ならこのニュースを読んでいる人がより“美味しく”感じられる情報を届けたいです。そう思っていただけるように生産者やバランゴンバナナについて発信していきます。
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<今月のおいしい!>晴れの日には「ティノラ」
「今月のナミット!(おいしい)」は、バランゴンバナナの生産者の家庭で晴れの日に振舞われる料理「ティノラ」。
※「ナミット」はネグロス西州の現地語であるイロンゴ語で「おいしい」という意味です。

フィリピン・ネグロス西州に住むマリベル・パレンシアさん(55歳)さんは、誕生日のお祝いやお客さんが来た時にはこの特別なスープを作ります。
ネグロス島特産の地鶏でつくるスープは肉から出るエキスと青パパイヤ、ニンニク、ショウガ、レモングラス、唐辛子の葉などの素材が自然な味と香りを醸し出します。そうそう肉が食べられない村の人にはたいそうなご馳走です。
~ティノラの作り方~

【材料】★印の材料は、パレンシア家で育てたもの。
★地鶏500g、ココナッツオイル 小さじ1、タマネギ1個、ニンニク2片、★ショウガ1片、★唐辛子1個、★青パパイヤ 小1個、★レモングラス1茎、★唐辛子の葉 適量、水4カップ
調味料:塩、砂糖 各適量

【作り方】
①鍋で鶏肉を柔らかくなるまでゆでる。
②刻んだタマネギ、ニンニク、ショウガを油でじっくりと炒め、香りが出てきたら鶏肉を入れ、炒める。
③鍋に水を入れ、鶏肉、唐辛子、青パパイヤ、レモングラスを加え、5分ほど煮込む。
④最後に唐辛子の葉を加え、1分ほど煮て完成。
~バランゴンバナナ生産者の暮らし~
オルタートレード・フィリピン社(ATPI)のエリアさんが、マリベルさんに食生活について聞いてみました。
Q. エリア:ご家族は?
A. マリベル:姉のマリア・ルス(61歳、バナナ・野菜栽培)、甥のジャッキー(32歳、レストランのコック)、孫のサラ(今年6月に幼稚園入園)と私の4人家族です。


Q. エリア:バランゴンバナナ以外で作っている作物を教えてください。
A. マリベル:野菜はカボチャ、サツマイモ、ナス、トウガラシ、モリンガ(木の葉で栄養価が高く、近年スーパーフードとしても注目)、果物はバランゴンの他にサバ(調理用バナナ)やセニョリータといったバナナ、パパイヤ、グヤバノ、ポメロ(文旦の仲間)、カカオ、ココナッツ、アボカドなどです。丘陵地なのでお米は作っていません。




Q. エリア:いろいろと作っているんですね。
A. マリベル:お米やお肉は買いますが、野菜や果物は家や近所の生産者から買った地場産です。「ティノラ」も自家栽培の材料をできるだけ使っています。サリサリストア(村にある家族経営の雑貨店)ではインスタントの固形鶏ガラスープ(1つ5ペソ)も売っていますが、レモングラス、唐辛子の葉、ショウガやパパイヤなどスープに風味をつける材料が庭にあるので、滅多に買いません。バランゴンの他にサバやセニョリータ、グヤバノ、ポメロ、カカオ、ココナッツ、アボカドなどの果物が収入源となっています。
Q. エリア:誰が調理するのですか。
A. マリベル:普段はジャッキーが調理します。ジャッキーは食堂でコックとして働いています。
Q. エリア:食事は何時頃ですか。
A. マリベル:1日3回、朝食8時、昼食は正午、夕食は午後7時頃です。
☆フィリピン 食の豆知識☆
○ フィリピンの主食はお米で、基本的な調味料は塩、醤油、酢、ニンニク、タマネギ、唐辛子とシンプルです。小玉のタマネギは香りが強く、ニンニクやショウガと同じように食用油(ココナッツオイル)と一緒に炒めて香り付けします。パパイヤは熟すと果物として生で食べますが、若いパパイヤはこのように野菜として料理します。

○ 食卓では中央に置いたごはんやおかずを各自が一つのお皿にとって、スプーンか手で食べるのがフィリピン・スタイルです。
○ 食事作りはジャッキーさんが日常的に行っています。彼がコックだから特別という訳ではなく、フィリピンでは男性も一般的に台所で調理します。
聞き手:エリア・マカタガイさん(ATPI社広報担当)
まとめ:小林和夫(ATJ広報室)
◆コラム「今月のおいしい!」では、産地の食事や食文化について紹介していきます。
【バナナニュース339号】夏はバランゴンバナナのスムージーボウルはいかが?
夏にバナナを楽しむ方法としてよくご紹介するのがバナナスムージーですが、今回はヨーグルトをベースに作るスムージーボウルをご紹介します。
牛乳や豆乳だけのスムージーより少しとろみがあります。バランゴンバナナの甘さとヨーグルトの酸味でさっぱり食べていただけます。

【材料】1人分
〇 バランゴンバナナ 1.5本
〇 ヨーグルト 100g
〇 牛乳or 豆乳 50cc
<トッピング用>
バランゴンバナナ(分量外)、季節に合わせたお好みのフルーツのスライス、ナッツ、カカオニブ、ミント、きな粉、ココアパウダーなど
【作り方】
① トッピング用以外の材料をミキサーにかける。
② ①を器に入れ、トッピングの具材を載せる。
★ミキサーがない場合は、ジップ付保存袋に①を入れて、バナナを潰しながら混ぜる。
こんな時におすすめ♪
・あまり食欲がない時の朝食に。バナナ1本食べるより気分が上がります!
・休日の朝食のデザートに。
・夏の子どものおやつに。トッピングも一緒に楽しめます!
【バナナニュース338号】「Gusto ko ug kabayo(馬が欲しい)」 ~北ミンダナオ、バラグナン村~
~バナナ担当小島の研修出張見聞録(今後不定期で掲載します)~

村の中央に舗装道路が走っており、その道を進むとやがて山道になり、その山道を登っていくとバナナの圃場に着く。近い圃場は村から徒歩で約20分、遠い圃場は2時間以上かかる。
「Gusto ko ug kabayo(馬が欲しい)」。
生産者リコさんが民衆交易を通して叶えたい目標だと言う。リコさんの圃場は遠いため、馬がいれば圃場への行き来がずっと楽になる。馬は圃場の草を勝手に食べるのでその分の餌代はかからず、収穫時には飼い主のそばで待つことができる。馬は10,000ペソ(日本円にして約24,000円)する。頑張ってお金を貯めて5年後くらいには購入したいそうだ。
▼馬に乗ってバナナ畑に向かいます🐴
村ではバランゴンバナナはココナッツに次ぐ、現金収入を得る大切な手段だ。村から市場へ農作物を運ぶ手段がない人が多く、仲買人が来ても買取価格が変動し安く買われる懸念もある。バランゴンバナナは価格が安定しているため、安心して着実に目標を達成する一助になる。
リコさんの場合は馬だが、子どもの学費、車の購入など目標は様々。バナナからの収入を暮らしに必要な日用品の購入に充てる人もいる。バランゴンバナナの民衆交易はそんな生産者約2,800名と繋がっている。
◆バラグナン村の様子◆








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【バナナニュース337号】バランゴンバナナの産地をご紹介 その2
バランゴンバナナは、フィリピンの4つの島から届いています。標高や地形、気候が異なる様々な地域で生産されています。
今回は【ミンダナオ島】にある4つの地域のご紹介です。


北ミンダナオ
生産者は先住民族のヒガオノン族で小規模農民です。バランゴンバナナを生産することは、カガヤン川流域の環境保全や、先祖代々の土地や文化を守ることにつながっています。
コタバト州
周辺にある高地栽培バナナやゴムのプランテーション開発から地域の土地や環境を守るため、有機農業を推進しています。バランゴンバナナの生産もその取り組みの一貫です。
南コタバト州ツピ
生産者組合が設立され、地元では無農薬栽培バナナを生産している団体として知られるようになりました。生産者はキリスト教徒、イスラム教徒、先住民族など多様で、バナナの事業が人びとをつなげ、平和構築に寄与しています。
南コタバト州レイクセブ
元々狩猟生活をしていたオボ族やティボリ族が定住し、暮らしの基盤を作っていくためにバナナの栽培、出荷に取り組み始めました。20年以上の取り組みで、定住できる家ができ、病気の子どもが減ったり、子どもが学校に行けるようになりました。
それぞれの地域の特色が産地紹介ページにてご覧いただけます。



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バランゴンバナナの熟度管理にこの道具あり!
バランゴンバナナの輸入が始まった当初からある課題、それはバナナの熟度管理でした。日本に届いた時には過熟で真っ黒、反対にバナナが細くて未熟だと追熟加工しても黄色くならない …。
それを改善するために始まったのが「タグ」付けです。
輸出するバナナは約80%の熟度で収穫するのが目安になります。バナナの花芽が出揃い花蕾を切り落とす作業の時に、タグ(リボンの様なビニールテープ)をバナナに括り付け、8~12週間後に収穫するという目印にします。
タグは週ごとに色分けされており、それに基づいて適切な収穫時期の目途をつけます。このタグ付けを導入したことで、2~3ヵ月後にどれくらいのバナナが収穫できるかという収量の予測にも役立てられるようになりました。
とはいえ、標高や地形、気候などが異なる様々な地域で栽培されるバランゴンバナナ。熟度のばらつきは永遠のテーマではありますが、タグ付けの導入で熟度管理が大きく改善されたことには変わりありません。
吉澤真満子(よしざわ・まみこ/ATJ)
【バナナニュース336号】バランゴンバナナの産地
バランゴンバナナは、フィリピンの4つの島から届いています。標高や地形、気候が異なる様々な地域で生産されています。今回は4つのうち3つの島をご紹介します。
ネグロス島
1989年に最初にバナナを届けた産地。「砂糖の島」と呼ばれ、サトウキビ農園が広がります。農園労働者たちが生活の術を自分たちで創るためにバナナの民衆交易が始まりました。ネグロス西州、ネグロス東州、両方に産地があります。
北ルソン
イフガオ族やイゴロット族など様々な先住民族が暮らしており、バランゴンバナナの生産者の多くも先住民族の人たちです。ヌエバビスカヤ州、イフガオ州にバランゴンバナナの産地があります。バランゴンバナナの他に高原野菜や果物、コーヒーなどを栽培しています。
ボホール島
生産者のほとんどが裏庭でバナナを栽培している小規模農民。東沿岸部の生産者は漁業も営んでいます。バナナ以外にココナッツ、切り花、コメ、野菜各種を栽培しています。
\ バランゴンバナナの産地は多様! /
それぞれの地域の特色が産地紹介ページにてご覧いただけます。




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【バナナニュース335号】バナナでフードロス削減!ぽこぽこバナナプロジェクト
皆さまにお届けしているバランゴンバナナは、皮が厚く、比較的傷みに強いバナナですが、実は出荷前の選別で輸入量の約7~8%が正規品として使用できずに廃棄されてしまいます。出荷の基準は、見た目だけでなく実の中まで傷みが生じているか、総合的に判断しています。
実際には規格外としてはじかれるのは過熟、軸腐れや傷が大きいもの、病気にかかっているものなどが中心です。傷があったり、軸が少し傷んでいても実の中が大丈夫なバナナは可能な限り出荷するようにしています。そのため、皆さまのお手元に届くバナナの中にもお世辞にもきれいとは言えないものがあるかと思います。
🍌ぽこぽこバナナプロジェクト

バナナを何とか有効活用できないかと始まった取り組みが「ぽこぽこバナナプロジェクト」です。(株)オルター・トレード・ジャパンの姉妹団体である特定非営利活動法人APLAが“フードロス削減アクション”の一環として実施しています。
このプロジェクトを通じて、結果的に廃棄されてしまうバナナの量を減らすとともに、バナナを通じた出会いをきっかけに、様々な活動が生み出されるようにと、2021年から活動を始めています。

現在、このプロジェクトによる規格外バナナは、学童クラブ、大学生のゼミやサークル、カフェや学園祭、地域のお祭りなどに活用され、少しずつ輪が広がってきています。
\ 各地に広がるぽこぽこの輪 /

子どもたちが自ら企画し、おやつを手作りしたり、レシピを提案したり、突然マルシェを開いたり。子どもたち一人ひとりの「得意」が発揮され、大きな学びの機会になっています。

多彩なメニューが並び、お客さんにも大好評。毎年定番のイベントになっていきそうです。
↑ 各写真をクリックすると詳細レポートがご覧いただけます。
プロジェクトにご興味のある方は、ぜひ「ぽこぽこバナナプロジェクト」のウェブサイトをご覧ください♪
※現在、バランゴンバナナは国内で4つのリパックセンターから出荷されています。プロジェクトの活動はそのうち千葉県にあるリパックセンターで廃棄される分を活用しています。
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【バナナニュース334号】ミキサーで混ぜるだけ!簡単・バナナチーズケーキ
バナナの味わいと風味もしっかり残り、チーズとの相性もGOOD!
ミキサーで材料を混ぜて焼くだけの簡単レシピです。
香り豊かなバランゴンバナナは、バランゴンバナナの産地でも、お菓子作りによく使われています。
ぜひ、チャレンジしてみてください。

★バナナチーズケーキの作り方★
<材料> 直径15cmの丸型ケーキ型の分量
・バランゴンバナナ:2本
・クリームチーズ:200g
・生クリーム:100cc
・マスコバド糖:50g(他の砂糖でもOK)
・卵:2個
・薄力粉:大さじ2
<作り方>
- クリームチーズは常温に戻しておく。
- 全ての材料をミキサーかフードプロセッサーに入れて混ぜる。
- ケーキ型に生地を入れ、170℃に予熱したオーブンに入れて、40~45分焼く。
- 焼きあがったら冷まし、冷蔵庫で冷やす。翌日まで寝かせるとよりおいしくなります。

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【バナナニュース333号】再びフィリピンに台風が上陸
2022年10月28日から30日にかけて台風22号(フィリピン名:パエン)がフィリピンに上陸しました。
この台風は昨年甚大な被害をもたらした台風22号(フィリピン名:オデット)ほど強力ではありませんでしたが、フィリピンの広範囲に影響を及ぼし、過去最高の日降水量を記録する地域や各地で洪水の被害も多くありました。
その一因として、フィリピンでは森林伐採された山々が多いため、鉄砲水や土砂崩れが起きやすい状況があることが指摘されています。

<バランゴンバナナの産地への被害>
前号のバナナニュースでは、昨年の台風オデットの被害から回復するネグロス島の様子をお伝えしました。今回もネグロス島は台風の被害に遭い、バナナへの影響がでています。天災とはいえ、復興に向けて頑張ってきた生産者たちの努力や収穫を待ちわびていた気持ちを思うと残念でなりません。
また、これまで台風の通り道ではなかったフィリピン南部にあるミンダナオ島の産地の一つ、レイクセブでも被害がありました。4日間にわたる大雨と強風により、標高が高い地域にあるバナナが影響を受けました。
両産地とも被害の影響は来年2月まで続き、3月以降は回復してくる見込みです。更なる天候被害が起きないよう祈るばかりです。
今回台風の影響があったものの、被害がなかった地域からのバナナの出荷量が多いため、皆様のお手元には通常通りバナナをお届けいたします。
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【バナナニュース332号】 台風の被害から復活!バランゴンバナナを食べてほしい!
<2022.11.11追記>
2022年10月28日~30日にかけて台風22号(フィリピン名:パエン)がフィリピンに上陸しました。この台風の影響により、再びネグロス島のバナナに被害が出ております。今回は人的被害や家屋倒壊などの報告は届いておりません。
地域によって異なりますが、ネグロス西州で約35%、ネグロス東州で約40%のバナナの出荷量が減少する見込みです。
その他、バランゴンバナナの地域としては、ミンダナオ島レイクセブでも被害が発生しました。両産地とも来年3月頃回復の予定です。今回台風の影響があったものの、被害がなかった地域からのバナナは日本に届いており、皆様のお手元には通常通りバナナをお届けいたします。
<台風の被害から復活>
バランゴンバナナの産地であるネグロス島やボホール島では、昨年12月に大型台風の被害を受けて出荷量が低迷していました。
ネグロス島では、日本を含め海外から届いた支援金で、生産者に鶏糞を配布し、買取や箱詰めをするスタッフたちも手伝ってバナナの栽培管理を強化し、復興に向けて頑張ってきました。今年12月頃に昨年並みの収量に回復予定だったところ、9月後半には出荷量が戻ってきました。





<応援ありがとう!バナナをたくさん食べてください!>
今年はバナナの生育に適した天候が続き、台風被害を受けていない産地のバナナも豊作です。そのためバナナが余る状態になり、生産者からの買取を控えて量を調整している状況です。

台風被害後、バナナが出荷できない時、日本からの支援や応援が届き、生産者たちのモチベーションがあがり、大きな励みになったとたくさんの御礼のメッセージが届きました。
生産者たちの感謝の気持ちがこもったバランゴンバナナを、ぜひたくさん食べてください!

\ バナナ、たくさん食べてね! /

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【バナナニュース331号】🍌ウェブサイトが新しくなりました🍌

バランゴンバナナを取扱う(株)オルター・トレード・ジャパンでは、ウェブサイトをリニューアルしました。
新しいウェブサイトでは、バランゴンバナナをはじめ、その他の民衆交易やフェアトレード商品の食べ方、使い方がたくさん紹介されています。
ぜひのぞいてみてください♪


バナナのレシピは、定番のバナナスムージーやスムージーボウルなどご紹介しています。
熟したバナナや余ったバナナは冷凍しておいて、牛乳とミキサーで混ぜてスムージーにどうぞ。熟したバランゴンバナナは砂糖やハチミツを入れなくても充分甘くておいしくいただけます。
バランゴンバナナにこの道具あり!

バランゴンバナナを箱詰めするパッキングセンターを訪れると、観覧車を1m四方に縮小したような木製の道具があります。一見何に使うの?と思いますが、バナナを詰める箱を組み立てて糊付けするためのマシンなのです。使い方はいたって簡単。組み立てたダンボールの底をクルクル回る板に固定して糊付けし、左右についているストッパーで押さえます。マシンを回して次のセットで同じ作業をする…。1箱ごとに回しながら5箱作って、一巡して戻ってくると糊がくっついて箱ができあがっているというもの。
この道具の故郷はバナナプランテーションがあるミンダナオ島。最初は4箱組み立てられるミンダナオ版を使っていましたが、その後ネグロス島で5箱作れるように改造したそうです。このマシンに出会う前は、糊を塗った箱の上に重い石を載せて乾くまで置いていましたが、これには場所と時間が必要です。この道具を導入したことでかなりのスピードアップになったそう。 実際に動かしているところを見ると、よくできているなぁと感心してしまいます。まさにバナナにこの道具あり!です。
吉澤真満子(よしざわ・まみこ/ATJ)
【バナナニュース330号】 世界的な経済危機がやってきて~バナナ生産者の状況~
現在、世界的な燃料高騰や食料価格などの上昇が続いていますが、フィリピンのバナナ生産者たちの生活にも大きな影響を与えています。今回は、ネグロス島とミンダナオ島の生産者に現在の暮らしぶりを聞いてみました。
◆エドアルド・カニエタンさん(ネグロス島東州)

2015年からバナナの出荷を始め、約1000本のバナナを育てていましたが、昨年の大型台風の影響で約8割のバナナが倒れてしまいました。台風前まではバランゴンバナナの収入は1回の出荷当たり1,000~1,600ペソでしたが、5月に出荷を再開した際の収入は600ペソ、7月には1,600ペソ分のバナナを出荷するまでに回復しました。
バナナが回復し始めた一方、世界的な経済危機がやってきました。これまでリッター当たり40ペソであった燃油が90ペソになり、配送コストが値上がりして町の市場へ農作物を売りに行けない時も出てきました。昨年はアボカドの販売で2,000ペソの収入がありましたが、今年は配送コストがかかるので収入は半減しています。日用品も、食用油がリッター当たり40ペソから44~50ペソへ、魚もキロ当たり230~250ペソで買えたのが280~320ペソへ値上がりしました。



田んぼを1.5ha持っており、収穫したお米の半分は自家消費用、半分は販売に回しています。肥料も1袋当たり900ペソから3,200ペソへ高騰してしまったので、肥料を少なくした結果、生産量も落ちてしまいました。その他、自家消費用に鶏やアヒルを育て、ヤギも販売用にと育てて何とか暮らしをやりくりしています。

バランゴンバナナは私の家族にとって大変貴重な定期収入になっていて、魚、砂糖、コーヒー、食用油、石鹸など日用品を購入する費用に充てています。畑の近くまで買い付けに来てくれるので、売上がほぼそのまま収入になります。
バランゴンバナナはこの不安定な経済状況において生き延びるための希望になっています。
◆ビエンベニード・トト・ベルマスさん(ミンダナオ島ツピ)

バランゴンバナナを出荷し始めてから15年が経ちます。最近バランゴンバナナの生産者組合の栽培指導員としても働くようになりました。600本のバランゴンバナナの株を育てており、月に約6,000ペソの収入があります。バランゴンバナナのほか、ランソーネス、マンゴスチン、ドリアン、ココナツ、バナナのサバ種などを栽培しています。
ここ最近、日用品や燃料が高騰したことにより、家計や農場経費の出費も慎重にしています。基本的な生活必需品のみ購入し、親族の集まりへの参加やモールへのショッピング、遠方への旅行は最小限にして、親戚や友達を家に招待するのも本当に必要な時だけになりました。




収入を増やすために、裏庭や畑の端に様々な野菜を植え、バナナのサバ種やカカオの苗を植え直しています。畑での仕事も見直しました。草刈り機を使用する代わりに、週末の朝早くにバナナの株の周りのみを手で草刈りしています。使用する鶏糞の量も予算に合わせて調整しました。これまで3か月ごとに撒いていましたが、6か月ごとにして労賃や配送コストの経費を減らすようにしています。
バランゴンバナナからの収入は月々の光熱費や鶏糞の購入、バナナの栽培作業を手伝ってくれる人への労賃に充てています。今回の危機があっても人生は続きます。そんな時は、より賢く、現実的にならなくてはと思っています。
※1ペソ=2.4円/8月12日のレートで換算
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生産者へのメッセージは生産者に伝えていきます。よろしくお願いいたします。
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みんなの力を合わせて乗り越える~台風オデットの被害を受けて~
2021年12月16日から17日にかけてフィリピンを通過した大型台風22号(フィリピン名:オデット)により、バランゴンバナナ及びマスコバド糖の原料となるサトウキビの生産者たちは大きな被害を受けました。オルタートレード・フィリピン社(ATPD*1社長のノルマ・ムガールさんに被害を受けたネグロス島の復興状況を聞いてみました。

サトウキビ畑の状況
台風が通過した時期は、サトウキビの収穫シーズンが半分過ぎた<らいの頃でした。本来、サトウキビは強風に強い作物と言われていますが、今回の台風ではたくさんの茎がなぎ倒されました。その影響で糖分含有量が減り、砂糖としての生産量が減ってしまうおそれがありましたが、台風後の天候がよく、サトウキビの回復がよかったため、心配したほどの影響はありませんでした。ただ、泥にまみれたり、強風で絡まりあったサトウキビを収穫するのは困難を要し、通常より収穫に時間や労力がかかりました。そのため、余計にかかった人手の労賃は、災害支援の募金から補填しました。
まずはバナナ畑の復興を
台風の通過によりネグロス島の生産者たちのバナナは、ほとんどなぎ倒されてしまいました。今回の台風は今までになく最悪だったと生産者が口々に言っていました。どれだけ民衆交易のバランゴンバナナが生産者たちの暮らしを支える基盤だったのかを痛感しました。まずはバランゴンバナナを復興させることが生産者たちにとって最優先です。
それを実現するために、生産者たちに肥料(鶏糞)を配布し、散布してもらうことにしました。これまで施肥は限られた地域でのみ実施してきましたが、今回は村の中の橋が壊れたり、道路状況が悪かったりするために肥料を運搬できない地域を除いて全産地に配布しました。今年は乾季にも雨が降り、バナナの成育にとって好条件だったことも手伝って、葉っぱが元気で実の成長が早くなり、施肥の効果を多くの生産者が認識しました。

結の精神で
一時的に仕事がなくなってしまったバナナの買付や運搬を担う現場スタッフ、バナナの箱詰めをするパッキングセンターで働くパッカーたちも、生産者の畑に出向いて一緒に作業を実施してもらうことにしました。フィリピンには「バヤニハン」という、共同体での助け合い、相互扶助の制度*2がありますが、それをバナナの復興においても意識的に実施したのです。現場スタッフには対価として日当を支払いました。

現場スタッフの中には生産者である人もいますが、雇用されて働いている人も多くいます。これまでは単にバナナを買い付けたり運搬したりすることが主で、生産者のことについて知る機会がほとんどない人もいました。今回生産者たちの畑に行くことにより、バナナが作られる背景や生産者のことを知るきっかけになりました。生産者や畑のことを知ることで、それが自分たちの仕事とつながっているという意識を持ってほしいし、これからも その意識を高めていかなくてはなりません。
今回の台風被害は甚大だったものの、施肥や 「バヤニハン」の実践はバランゴンバナナの生産者や現場スタッフの意識改革を促したとも言えます。施肥の効果もあり、バナナの回復が 1~2ヵ月早まっており、9月頃から前年の平均出荷量程度に回復する予定です。
今回の台風からの復興は、日本の皆さんからのご支援がなければ、すべての被災地へ手を差し伸べることはできませんでした。日本からの応援によって生産者たちも復興に向けて、また歩みだすことができました。すべての関係者が感謝と希望、目的をもって懸命に前に進もうとしたこの復興事業は、民衆交易の歴史の中に刻み込まれることでしょう。
インタビュー・まとめ 吉澤真満子(よしざわ・まみこ/ATJ)
*1オルター トレード・フィリピン社:バランゴンバナナ、マスコバド糖の輸出を担っている。
*2日本の農村社会にある「結(ゆい)」に相当。
【バナナニュース329号】コロナ禍の教育事情~その後の最新情報/2022年~
コロナ感染拡大が世界的に広がった後、フィリピンでは2020年10月から「遠隔教育システム(課題学習)」が実施されてきました。オンライン学習や学校から配布される課題を在宅で学習するという仕組みです。それが導入されてからもうすぐ2年が経過します。
2022年2月、教育省長官より、保健省が示した生徒・学校関係者が安全に過ごすための厳格な実施要項「学校安全評価(SSAT)」に合格した学校は対面授業を再開できることを発表しました。2021年11月~12月に実施された運用の試験期間中に、SSATに合格した学校リストを地方自治体が提出し、全国で6,686校が対面授業に向けて準備ができている状況でした。そのうち6,586校が公立学校、100校が私立学校でした。
一方、高等教育(大学、専門学校など)を監督する高等教育委員会(CHED)は、2020~21年には「フレキシブル・ラーニング(注1)」を実施していましたが、この方針を延長し、従来の教室で学習する対面方式に完全に戻ることはないという方針を出しています。もしまたパンデミックが来たときに、教育関係者を同じリスクにさらすようなことはしたくないという理由からです。 また、従来の対面式授業に戻ることは、オンライン用のテクノロジーの導入や教師の訓練、施設の改修などへの投資を無駄にすることになるとも言及しています。
【フィリピンの教育制度】
学校年度:6月~5月(4、5月は夏休みで長期休暇)
□ 小学校:幼稚園(5歳~)6年生(7年)
□ 中学校:7~10年生(4年)
□ 高校:11~12年(2年)
□ 高等教育:大学・専門学校など(高卒以降)
注1:時間や場所、聴講の有無などを選ばずに学習できる形態。必ずしもテクノロジーを駆使した手法に限らない。
生徒たちの心境と今
「遠隔教育システム(課題学習)」からようやく対面授業へと移行する運びになりましたが、移行期間であるがゆえに、学校によって状況は様々なようです。2021年9月にバナナニュースでご紹介した「コロナ禍での教育事情<都会編>」に登場したジェレミーアール君、ピート君、10月にご紹介した「コロナ禍での教育事情<農村編>」に登場したアナリザ&アイラ・ヴィリアメントさん姉妹ほか、合計5人の生徒たちに現在の様子を聞いてみました。
【都市・小学校の事例】
◆オルタートレード・フィリピン社スタッフ アーウィンさんの長男
ジェレミーアール君の場合(11歳)
ジェレミーアールくんの通うラ・サール大学付属小学校はネグロス西州バコロド市内にあります。2020年から2022年5月までオンライン授業が実施されてきました。2022年8月から2023年5月までは、「混合学習」が実施されることになり、週に2日間教室での対面授業、3日間オンライン授業が実施されることになりました。
「親にとっては、いくつかの教科において調査などのサポートをする必要があり、その時間をどう作るかが課題でした。オンライン授業に参加するためにパソコンを購入したり、インターネットの接続や電気系統の故障の時のためのバックアップ用の機材を準備したりと出費がかさみました。ただ、オンライン授業であれば子どもの感染リスクが減るのでその点は安心できました。
この間、息子も長期間にわたる自宅での学習の間に、どのように過ごすかを学んできました。運動をしたり、家事を手伝うなどです。私たち親も息子本人も、オンラインと対面との混合授業のあり方がよいと考えています。対面授業により先生と議論ができたり詳しく教えてもらうことができる一方、オンライン授業ではウイルスに感染するリスクを減らせるからです。投資した機材も活用できるし、昨今の燃料高騰で値上がりしている学校までの交通費も節約できます」と父親のアーウィンさんが話してくれました。

【都市・中学校の事例】
◆オルタートレード・フィリピン社スタッフ ビクトリアさんの長男
ピート君の場合(14歳)
ピート君もネグロス西州バコロド市内にある私立学校セント・ジョセフ・スクール・ラ・サールに通っています。2022-2023年の学習年度は、新しく「同時併用クラス」と「課題学習」を選べる方式をとることになりました。夜間クラスに通う生徒は引き続き「課題学習」をすることも可能で、自宅でインターネットのアクセスがない生徒は教室での対面授業と「課題学習」の併用もできて、生徒が選択できるようになっています。
「同時併用クラス」とは、生徒たちを25人ずつの2グループに分けて、隔週で学校に登校するするという方式です。登校していない生徒たちは、同じ授業をオンラインで受けます。オンラインで参加している生徒たちは、教室での先生と生徒たちのやりとりを見聞きすることができ、教室とオンラインの生徒たちが同時にやりとりすることもできます。健康に問題を抱えている生徒など教室での授業に参加しない子は、オンラインで参加することもできます。

「2年も課題学習を自宅でしてきたので、学校での授業になれば先生から直接学べるし、やっとクラスメートと会うことができてうれしいです!」とピート君。お母さんのヴィクトリアさんは、「オンラインと教室での授業の併用により、徐々に通常の授業へと移ることができて満足しています。ウイルスへの感染の機会を軽減しつつ、先生から直接学ぶことの重要性や子どもの社会性を育むことができるからです。ただ今回の「同時併用クラス」により学費が4%値上がりし、コロナ禍の前に家庭教師に支払っていた費用より高くなります。我が家にとって息子の教育費は何より最優先なので、家計をどうやりくりできるか思案中です。片親である私にとって、教育を受けさせることが唯一子どもにできることだからです」と話します。
【農村・大学の事例】
◆サトウキビ生産者・ヴィリアメント一家
アナリザ(21歳)&アイラさん(20歳)姉妹
二人とも地元のラ・カルロータ市立大学へ通っています。学校までは、家から公共の交通機関を使い50分かかります。現在まで課題学習とオンライン授業が続いていて、学校での対面授業の再開についてはまだ通知がないとのこと。「課題学習だと充分理解できない内容があったり、インターネットの通信状態がよくないときは、学習がはかどりません。早く対面授業が再開してほしいです。より学習の理解を深めるために先生に教えてもらいたい。友だちと交流する機会も減り残念です」と二人は話します。ご両親はインターネットでの調査学習に頼りすぎていて充分学習内容の理解が進んでいないことを心配しています。「その分を私や妻が教えるというわけにもいきません…」と、父親のアルセーニョさん。
【農村・高等教育の事例】
◆バランゴンバナナ生産者(シライ市ランタワン) ドナ・ドーモさんの息子
マーク君の場合(18歳)
ネグロス西州シライ市にあるランタワン高校へ通っています。学校は徒歩で20分ほどの場所にあります。2020年から自宅での課題学習が続いていましたが、2022年6月から教室での対面授業が再開しました。「課題学習は難しかったです。理解できない科目がありましたが、すぐに先生に聞けないもどかしさがありました。グーグルで調べたりもしましたが、僕の住んでいる地区はインターネットの電波が弱く、通信速度がとても遅いのです。インターネットの通信環境がいい場所を探し回るということをしていました」。お母さんのドナさんは「課題学習になったことで、新しい機械を購入したり、インターネットの通信費で出費がかさみました。村の中で小さな商店を開いていますが、収入はわずかです。そのため、肥育豚を育てて売ったお金を教育費に充てました」。
【農村・大学の事例】
◆バランゴンバナナ生産者(シライ市ランタワン) ルイサ・レゴドンさんの娘
ヴァネッサさんの場合(18歳)
ネグロス西州タリサイ市にあるフィリピン・テクノロジー大学の3年生です。家から大学までは35km離れていて、コロナ禍以前は、公共交通機関(ジプニーとトライシクル)を使い、登校に約2時間かかっていました。そのため、彼女は大学近くに下宿して、週末に家に帰る生活を送っていました。コロナウイルスの感染が拡大してからは、2020~2021年の学校年度(2020年6月~21年5月)は課題学習で、2021年の途中からオンライン学習も始まりました。2022年6月からは学校での授業が再開されています。
課題学習だった時は、学校まで課題を取りに行かなくてはならず、その課題を決められた期日までに学校に提出しなくてはなりませんでした。コロナ禍で公共交通機関の運行が止まったり、地区ごとのロックダウンがあった関係で、課題の受け取りと受け渡しが難しくなり、バイクをレンタルして学校の行き来をしました。この影響で家計の出費がかさみました。「オンライン学習は課題学習よりずっとよかったです。分からないことなどを直接質問することができたからです。それでも対面授業が望ましいと考えていたので、再開してとてもうれしいです」とヴァネッサさんは話してくれました。
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フィリピン 台風オデット復興事業<中間報告>
昨年12月16日夜から17日にかけてフィリピン中部を直撃した台風22号(フィリピン名:オデット)により、ネグロス島のバナナとサトウキビ、多数の生産者や事業関係者の家屋が全半壊する甚大な被害が出ました。オルタートレード・フィリピン社(ATPI)とオルタートレード財団(ATPF)では、海外の関係団体からの支援をもとにバナナとサトウキビの生産復興及び生活支援事業を進めてきました。ATPI社長のノルマ・ムガール氏をはじめとするチームがネグロスのバナナとサトウキビの全産地を訪ね、モニタリングした事業の進捗状況や台風から半年たった産地の様子を報告します。
<海外パートナーから多大な支援>
復興事業は主に収入が確保されるまでの生産者や事業関係者の当面の生活支援、バナナとマスコバド糖の原料となるサトウキビの生産復興からなります。総事業予算は1,248万ペソ(約2,800万円)でした。
ATPI/ATPFからの支援呼びかけに応え、マスコバド糖を輸入しているヨーロッパのフェアトレード団体、日本・韓国でバナナやマスコバド糖を扱っている生協・産直団体、APLAから合計9,663,137ペソ(約2,170万円)もの募金が寄せられました。ATPIとATPFは支援金をもとに、生活支援事業及びバランゴンバナナとサトウキビの生産復興事業を中心に支援活動を進めてきました。
- 生活支援事業
〇食料支援
当面の食料として合計1,605家族に対し、10キロのお米を提供しました。内訳はバナナ生産者838名、サトウキビ生産者543名、「the BOX」(野菜宅配事業)生産者11名、現場スタッフやパッカー、製糖工場職員など213名です。
〇屋根材配布
家屋が全半壊した生産者254名(現場スタッフ1名を含む)を対象に屋根材(トタン板)を配布しました。倒壊したボホール島のパッキングセンター、ネグロス東州カクハ村のバナナ集荷所再建のために資材も支援しました。また、台風被害を受けたサトウキビ生産組合が共同で運営する養鶏場や農場12件にも、資材が提供されました。
【バナナニュース324号】<大型台風 22 号・その後> 屋根材の配布を実施しました
- バナナ、サトウキビ生産復興事業
台風ではネグロス島の90%以上のバナナが被害を受け、十分な供給が出来ない状況が続いています。そのため、ATPI/ATPFはその復興を最重要課題としてこの間、取り組んでまいりました。
例年3月から本格的な乾季に入るため、苗の確保や植付が不安視されていましたが、今年はラニーニャの影響もあって乾季でも降雨があり、脇芽がよく育ちました。生産者は自分の畑で育った脇芽を融通し合い、株として新たに植え付けました。植えた株や、茎や葉が傷ついたバナナの成長を早めるため、ATPI/ATPFでは鶏糞をバナナ生産者へ配布しました。第1回目として2月より配布を始め、現在までにネグロス西州で190,705キロ、ネグロス東州で220,961キロを配布しました。土壌が肥沃でないため、施肥の効果が十分に出なかった地域も一部ありましたが、多くの産地では施肥によって予想以上のスピードでバナナが成長し、9月頃から前年の平均出荷量程度に回復する予定です。
【バナナニュース325号】<大型台風22号・その後2>バナナの畑の回復と生産者
【バナナニュース328号】<大型台風22号・その後4>結でバナナ畑の復興を
サトウキビも強風によって倒伏する畑が目立ちましたが、台風に比較的強いサトウキビはその後、順調に回復しています。さらに成長を促進するため鶏糞の配布を予定しています。
<台風被災後の生活について>
出荷するバナナがないため一時的に収入が途絶えたバナナ生産者は、この間サトウキビ農園や水田、トウモロコシ畑で仕事をしたり、都市部の建設現場で働いたり、お手伝いさんや魚の行商など何かしらの仕事を得て糊口をしのいできたそうです。また、バナナ生産者同様、バナナの買付担当、運搬担当やパッカーなど現場で働くフィールドワーカーも仕事が減り、収入が激減しました。ATPIではそうした現場スタッフの生活支援の一環として、倒伏したバナナ畑の片付けや整地作業、株の植付、鶏糞の配送と施肥などの作業を週2-3日してもらい、対価として作業賃を支払いました。現場スタッフからは以下のメッセージが届いています。
ATPI/ATPFでは今後もバナナとサトウキビ生産の生産向上に向けて、産地での鶏糞の配布を進めています。