広がれ!村でのゴミ回収システム~エコシュリンプを守り継ぐために~ from インドネシア
今日は燃えないゴミの日だったのに出し忘れた…!なんて経験、皆さんもありませんか?決まった日にゴミを出せば回収してくれるシステムがあるからこそ、「ゴミの出し忘れ」も発生するわけですよね。自治体ごとにゴミの区分や収集の曜日は違えど、またゴミ袋の有料無料の差はあれど、決まった日にゴミを出しておけば回収されるということが「常識」として定着しているのが日本社会だと思います。
東南アジアなどを旅した際に、村の中を流れる川がゴミで埋め尽くされていたり、畑や田んぼの周りにもゴミが散乱していたりするのを見て、びっくりする人や残念に思う人が多いのは、その「常識」に当てはめて考えてしまいがちだからではないでしょうか。
自治的なゴミ回収のシステムづくり
そのような地域の多くは、自治体等がゴミを回収するというシステムが存在していないため、日々の暮らしで出るゴミは住民が自分で処理をするしかありません。
燃やせるゴミは自分の家の庭や畑で燃やす。では、燃やせないものは……?家の前に積み上げておくわけにもいかず、どこかに捨てに行くしかないわけです。川や空き地がプラスチックゴミで埋め尽くされてしまうのは、当然の帰結です。
インドネシア・東ジャワ州で環境活動を続けてきたKOIN(エコシュリンプの製造・輸出を担うオルター・トレード・インドネシア社のスタッフとエビ養殖農民が立ち上げたNGO)は、そうした状況をなんとか改善できないか、政府や地方自治体が動くのを待っているだけでは時間の無駄だと考え、日本の助成金や生協の支援(※)を受けて、同州シドアルジョ県の複数の村で自治的なゴミ回収システムを作り上げようと奔走してきました。
それらの村は、エコシュリンプの養殖池が広がる地域に隣接する村です。川と海の水が入り混じる汽水帯に位置する養殖池は、潮の満ち引きを利用して川から水を引き入れています。各池には水門があるので、ゴミなどが直接池に入ってくることはありませんが、自然環境に依拠して続けられてきたエビの養殖にとって、近隣地域のゴミ問題は他人事にすることはできません。
住民が理解するまで忍耐強く働きかける、それが自分たちの仕事
KOINが2015年6月にゴミ回収のプログラムを始めたクドゥン・ルペ村では、いまや路上や村内を流れる河川にゴミが散らかることがほとんどなくなりました。
当初は70世帯から始まりましたが、ゴミ回収プログラムに参加したいという家がどんどん増え、現在では約600世帯の家の前にコンクリート製のゴミ箱が並んでいます。
当初、ゴミの回収は、イスマエルさんとパエディさんという二人が村内の地区を分担して毎朝おこなっていました。2人は元々日雇いで大工仕事などしていましたが、早朝の数時間を使ってゴミ収集をし、再利用できるものは分別して廃品回収業者に売り、住民の合意のもと、その収益を報酬にしていました。
残念ながら、バエディさんは他界し、「ゴミを適切に処理することで生活環境が清潔になることを住民が理解するまで、忍耐強く人びとに働きかけていかなければならない。それをするのは自分たちしかいない」と力強く語ってくれていたイスマイルさんも病床に伏せていますが、二人の仕事は村の役場に引き継がれ、ゴミ回収はすでに定着しています。
成功モデルを別の村にも
クドゥン・ルペ村をモデルにして、KOINはゴミ回収を他の村にも広げようとしています。その一つ、バンジャルアスリ村でも、村長との話し合い、住民への説明会を経て、2019年10月から12月にかけて、村内600世帯にゴミ箱を配布しました。回収したゴミの分別処理のための土地も村内に確保し、さぁ、回収活動を開始!という矢先の12月末、これまでに経験したことのないような洪水が村を襲い、村内の500世帯が浸水の被害に遭いました。その水は2ヵ月近くも引かず、ようやく水が引いても家や商店の中は泥だらけ、道路もぐちゃぐちゃ……と大変な状況はまだまだ続いています。
そうした事情で、バンジャルアスリ村でのゴミ回収の開始は延期となっていますが、KOIN代表のイルルさんは「これほど深刻な洪水はこれまで体験したことがないので、気候危機の影響も懸念されますが、自分たちにできることからしていくしかありません。バンジャルアスリ村では、ほぼすべての住民がゴミ回収の活動に参加を表明しているので、早く洪水被害から回復して、ゴミ回収プログラムを開始させたい」と話しています。
野川未央(のがわ・みお/APLA)
※りそなアジア・オセアニア財団「環境プロジェクト形成」およびパルシステム生活協同組合連合会「地域づくり基金」のご支援を受けて実施しています。
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