【PtoP NEWS vol.29 2018.12】パプア・クラフトチョコレート「CACAOKITA PAPUA」の美味しさの秘密 from インドネシア
森からはじまる
チョコレートが恋しくなる季節の到来です!
インドネシア・パプア州のカカオ産地では今年もカカオ豆の収穫が始まっています。
パプアのカカオ栽培は、1950年代に当時この地域を統治していたオランダが苗を持ち込んだのが始まりでした。
その後1969年にパプアがインドネシアに併合されてからも、インドネシア政府がカカオ栽培を奨励したため生産者は増えました。
しかしながら、国際市場価格に左右され、買付価格が不安定なことに生産者の不満も多く、近年、カカオの木は鬱蒼とした森の中で放置される状態が続いてきました。
カオキタ社は、パプア州のカカオ生産者が収穫したカカオ豆を集荷・加工し日本へ販売しています。
2012年の活動開始以来、生産者とがっぷり四つに組んでカカオ栽培を改善するプログラムを進めてきました。それは村の生産者が協働でカカオの森の手入れをするというとても基本的な取り組みですが、これにより今まで他の樹木に埋もれていたカカオの木が姿を現し、太陽の光が十分に注ぐようになり、カビを原因とする病気や病害虫による被害が減ってきました。その結果、2018年前半には良質なカカオがたくさん収穫できました。
発酵
収穫されたカカオポッド(カカオの果実)から取り出した種(生豆)を発酵、乾燥させるといわゆるカカオ豆となります。
生産者はこれまで政府に指導された方法でカカオの生豆を発酵・乾燥させていましたが、日本のチョコレート作りの専門家から、周囲の気候に合わせ温湿度計等を用いて発酵状態をモニターする方法を教わりました。
それ以来、カカオキタの発酵担当者は毎日午前11時と午後6時に発酵箱内の豆の温度を計測し、発酵の終点を見極めて乾燥に回すなど、発酵の方法にも工夫を凝らしています。こうした積み重ねで、しっかりと発酵した風味の良い豆を作ることができるようになりました。
カカオ豆からチョコレートへ
こうして作られたカカオ豆は、ジャワ島の東部ジェンブル市郊外にあるインドネシア珈琲カカオ研究所(ICCRI)に運ばれます。
ICCRIはオランダ植民地時代の1911年にコーヒーとカカオの品種改良や栽培技術の普及のために設立された研究所ですが、所内の一角に機械工房があります。
毎日キーン、ガリガリーと鉄板を切り貼りしてチョコレートを作る機械を製造し、地域の生産者に届けています。
工房の創設者スリムラト博士はドイツでチョコレートの加工を学んだ後、生産者や地域の人びとが、自分たちの手でチョコレートを作って販売出来れば収入も増えて地域の活性化にもつながると考え、小規模で安価な製造機械の開発と加工技術の普及を20年以上前にスタートしました。
小さな工房の手作りチョコレート
ICCRI内にはここで作られたチョコレート製造機械を備えた小さな工房があり、ICCRI内の農場や近隣のカカオ生産者のカカオ豆を使って色々なチョコレートを製造し地元で販売しています。カカオキタは、この一角にパプア州産カカオ専用の工房を設け、クラフトチョコレートを作り、日本とパプアの人びとに届けています。
中南米や欧州では古くから小さなチョコレート工房が町に点在し、チョコレートが作られてきました。スパイスや砂糖と共にお店の中でザリザリと磨り潰して固めたザクザクのチョコレートは地元の人びとのおやつとして愛されています。
ここカカオキタの工房では、職人の手で毎日少しずつチョコレートが作られています。しっかりと発酵・乾燥されたパプアのカカオ豆には、ほのかに甘酸っぱい森の果実の風味が残っています。
「このカカオのおいしさを届けたい」というカカオキタの想いを受けたICCRI工房の職人たちは、カカオ豆を小型の焙煎機で少しづつ焙煎し、焙煎度合と味を確認しながら、カカオの果実の風味が残る様に少し浅めで焙煎を止め、ゆっくりと殻を取り除き、すり潰し、砂糖を加えてさらに数日間練り上げて行く作業を続けています。
パプアの森で育ったカカオは、ここで森の果実の香りを残したまま、ちょっと無骨な板チョコレートに変わり、日本やパプアの人びとに届けられているのです。
津留歴子(つる・あきこ/ATJ)
義村浩司(よしむら・ひろし/ATJ)
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