カカオキタ・カフェfrom インドネシア・パプア州
11月にると、パプアでは、家々からクリスマスソングが流れ、街ではクリスマスの飾り付けが始まります。カカオキタ社では、クリスマス前に「カカオキタ・カフェ」のプレ・オープンを目指して、建物の建築やメニュー作りが進められました。*1
「カカオキタ・カフェ」のはじまり
パプアの先住民族の人びとが育てるカカオを通じて、カカオ生産者と日本の消費者がつながり、ともに未来を作ろうという取り組みが始まり、地元NGOであるパプア農村開発財団(YPMD)*2を母体として、事業体の「カカオキタ(インドネシア語で“私たちのカカオ”の意)社」が設立されたのは2011年のこと。
インドネシア・パプア州は、ニューギニア島の西半分に位置し、先住民族の人びとが豊かな自然と共存した暮らしを営んできました。
一方で、天然資源を求める外部資本による鉱山開発、森林伐採などんほ大規模な開発が進められ、人びとは先祖代々の土地を追われることになり、その伝統的な文化と暮らしが脅かされています。
また、東南アジア地域の著しい経済発展の波は、パプアにも押し寄せており、外部から持ち込まれた生活様式やインターネットに氾濫する情報や娯楽は、伝統的な社会に変化を強い、人びとはその変化に直面しながら暮らす道を模索しています。
カカオキタ社の代表であるデッキーさんの元には、カカオ生産者をはじめ、生まれた場所や民族や組織を超えた多様な人びとが集まっています。皆で昼夜語り合い、ギターを弾き、歌を歌い、踊る。そうしたなかで、パプアの農村と周りの人びとをつなぎ、未来を語り、次の世代の活動へつなげていく場所として「カフェ」の構想が生まれてきたのです。
チョコレートから始まって
これまでにカカオキタ社は、先住民族の生産者が育てたカカオの輸出や、カカオ豆の購入代金を銀行口座に振り込む貯蓄プログラムなど、農村部の生産者の生計の向上を目指す取り組みを進めてきました。
また、地域の人とモノの循環を生み出す取り組みの一環として、2016年から地元パプアで、生産者のカカオを使った板チョコレートを売り始めました。しかし、都市部の一部のスーパーでは売られるようになったものの、限られた層に届けることしかできていませんでした。
そこで、カカオキタ・カフェでは、アイスクリームを一押しメニューとして出そうと計画中です。生産者が丁寧に育てたカカオ豆を磨り潰してペーストにしたものに砂糖とミルクを加えて混ぜ、凍らせただけのシンプルなアイスクリーム。
試しに売ってみたところ、美味しいいと口コミで広がり、カカオキタ社事務所にアイスを買いにくる子どもや大人が絶えない人気の商品になりました。皆が自分たちのカカオをいつでも味わえるようになったのです。
カカオだけでなく、森ではマンゴー、ジャックフルーツ、ココナッツなどさまざまな果物が採れます。カフェのメニューには、この村の産物を使ったアイスクリームやお菓子も販売する予定です。
「カカオキタ・カフェ」を創る
今、若手のアプリ、ジミー、ハンス、エリック、そしてちょっと年長のサルモンたちが中心となり、カカオキタ・カフェの構想づくりと開業に向けた準備を進めています。皆が挙げたカフェのコンセプト・キーワードは、①自然、②オーガニック、③カカオ生産者の暮らし、④生産者と街をつなぐ「バザール(市場)」。
カフェブーム到来中のインドネシア。パプアの街にも素敵なカフェがいっぱいできてきています。カカオキタ・カフェに取り組む若ものたちにとってもカフェはクールで素敵な場所。パプアの新しい世代の皆はどんな「カフェ」づくりを目指していくのでしょうか。
義村浩司(よしむら・ひろし/カカオキタ)
*1 生協から寄せられた寄付金を用いてカフェ開設の準備が進められています。
*2 YPMD(パプア農村開発財団)は、1984年の設立以来、インドネシア・パプア州の先住民族の村々で、農産物の共同出荷や飲料水プログラムの実施など、農民の生活の向上と経済的な自立の支援を続けてきました。
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